IPOの基礎知識

監査役とはどんな役員?役割や必要な資格・要件、設置義務、IPOを目指す場合の対応などを解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

監査役とはどんな役員?役割や必要な資格・要件、設置義務、IPOを目指す場合の対応などを解説

監査役とは株式会社における機関のひとつで、円滑な業務執行や組織健全性確保の観点から取締役や会計参与といった役員の業務を監督する役職のことです。なお、企業には監査役以外にも、業務上・会計上の不正がないかをチェックする役割や機能が存在します。

本記事では、監査役の役割、会計監査人との違い、監査役の設置義務、監査役になる条件などについて詳しく解説します。IPOを目指す場合の対応などについても説明していますので、参考にしてください。

目次

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監査役とは

株式会社における機関のひとつである監査役は、業務執行や組織運営の健全性を保つという観点から役員の業務を監査・監督する役職のことです。

監査役は、会社法上では役員に該当します。そのため雇用契約ではなく、取締役と同様に委任契約の上で業務にあたることから任期が定められています。株主総会で選任が行われ、人選に変更があった場合は登記申請が必要です。

なお、監査役は取締役より少ない人数で設定されるのが一般的です。


出典:e-Gov法令検索「会社法 第三百八十一条」

監査役の役割

監査役が担う役割は、主に以下の3点に分類できます。

  1. 業務監査
  2. 会計監査
  3. 監査報告の作成

1. 業務監査

業務監査とは、企業の事業活動や組織運営、制度運用を対象にした監査のことで、取締役が管掌しているすべての業務が定款や法令などに抵触していないかをチェックする作業です。

経営目標の達成に向けて業務が適切かつ合理的に行われているか、法令や定款などの社内規程に沿って組織が運営されているか評価・報告することを目的としています。

2. 会計監査

会計監査とは、企業の計算書類や会計帳簿などが適正に作成されているかをチェックする作業のことです。

計算書類や会計帳簿などが法令や会計基準に準拠しているか、重要な誤り・不正がないかなどの検証を目的として行われます。

3. 監査報告の作成

監査役には監査報告を作成し、当該事業年度における監査結果を株主総会で報告する役割もあります。

監査報告の主な内容(項目)は以下の通りです。

監査報告の主な内容

  • 監査の方法およびその内容
  • 事業報告などの監査結果
  • 計算書類およびその附属明細書の監査結果
  • 監査役の意見

監査役監査とは

先述した監査役の役割のうち、「業務監査」と「会計監査」を合わせて監査役監査といいます。

取締役が職務執行にあたって法令や定款を遵守しているかを株主に代わって管理・監督するための作業で、いい換えれば経営を行っている取締役を監視し、専横を防止するのが監査役監査の目的です。監査役監査によって違法性や不当な行為が発覚した場合、監査役はそれを是正する責務を負います。

監査役監査の流れややり方は各企業の監査役および監査役会の判断によって異なりますが、大まかな流れは以下のとおりです。

監査役監査の流れ

  1. 取締役会の監督
  2. 定期監査の実施
  3. 取締役会への報告
  4. 監査報告書の作成
  5. 株主総会への報告

監査役と会計監査人の違い

監査役とは別に、会社の監査を担う役割として会計監査人が存在します。会計監査人とは外部の独立した立場から会計監査を担う者のことで、株式会社の計算書類やその附属明細書、臨時計算書類ならびに連結計算書類のチェックを行います。

監査役が「内部の機関」であるのに対し、会計監査人は「外部の機関」という違いがあります。また、監査役には資格要件がなく、その会社の社員として長く勤めてきた人が就任するケースもありますが、会計監査人は公認会計士や監査法人でなければ就くことができません。


出典:e-Gov法令検索「会社法 第三百九十六条」

【関連記事】
内部監査とは?目的や流れ、確認項目をわかりやすく解説

監査役の設置は義務?

監査役の設置は、すべての株式会社にとって義務となるわけではありません。

以前は、株式会社には「株主総会」「取締役会」「監査役」が必須とされていましたが、2006年5月1日に会社法が施行されてからは、条件を満たす場合に限り監査役を設置しなくてもよくなりました。

監査役を置くことにより、「組織のトラブルや不祥事の予防に役立つ」「金融機関からの信用が高まる」「投資家や株主の信頼を得やすい」などのメリットが期待できます。そのため、設置が義務付けられていない会社が任意で設置するケースもあります。

監査役の設置が義務になるケース

監査役の設置が義務になるのは、次に該当する場合です。

  • 取締役会設置会社
  • 会計監査人設置会社(大会社)

取締役会設置会社

取締役会とは、株式会社の経営における意思決定機関のことです。取締役会設置会社は、原則として監査役を設置する義務があります。ただし、公開会社(株式の譲渡制限がない会社)ではない会計参与設置会社の場合、監査役の設置は任意です。

会計監査人設置会社(大会社)

会計監査人設置会社も、監査役を設置しなければなりません。大会社(資本金5億円以上、もしくは負債合計額が200億円以上)は会計監査人の設置が必須となるため、必然的に監査役の設置義務が発生します。

監査役を設置できないケース

ここまで監査役の設置が義務となるケースを紹介しましたが、反対に監査役を設置できないケースもあります。

次に該当する場合は、会計監査人設置会社であっても監査役を設置することができません。

  • 監査等委員会設置会社
  • 指名委員会等設置会社

監査等委員会設置会社

監査等委員会設置会社は、3名以上の取締役で構成される監査等委員会が取締役の業務執行の監査を担う形態の会社です。この場合、監査役を設置することはできません。

指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社は、それぞれ3人以上の取締役で構成された「指名委員会」「監査委員会」「報酬委員会」という3つの委員会が、取締役の業務執行を監査する形態の会社です。こちらの場合も監査役は設置できません。

IPOを目指す場合はどうすべき?

上場企業には監査役会などの設置が義務化されており、IPOに際しても設置が必要です。

また、IPOを見据える場合は監査役会などの設置に加え、管理部門内の体制構築や内部統制フローの構築、内部監査体制の構築、リスクコンプライアンス委員会の設置などを行いIPOの条件を満たすことはもちろん、コーポレートガバナンスを強化していくことも重要です。

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監査役になるための資格となれないケース

監査役になるために必要な公的な資格はありません。よって、基本的には誰でも監査役になることが可能です。

ただし、監査役に求められる役割を考慮すれば、ある程度の法律・会計知識や、管理部門の勤務経験を有していることが望まれます。

監査役の欠格事由

監査役には、欠格(監査役になれない)事由や兼任を禁止する条件があります。

この後に紹介するようなケースに該当する場合、監査役になれない、または監査役就任後に兼任前の立場を辞任したことになるので注意が必要です。

監査役になれないケース

  • 法人
  • 成年被後見人もしくは被保佐人または外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
  • 会社法や一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、金融商品取引法、民事再生法や破産法の一定の規定に違反・刑に処せられ、その執行を終わった日(あるいは執行を受けることがなくなった日)から2年を経過していない者
  • 上記に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたはその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)

監査役の兼任禁止の条件

  • その会社の取締役・支配人・使用人
  • 子会社の取締役・支配人・使用人
  • 子会社の会計参与・執行役(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)
出典:e-Gov法令検索「会社法 第三百三十五条」

監査役会とは

監査役会とは、取締役会による会社の経営、業務執行を監督する機関のこと。監査役会を設置しなければならないのは、公開会社かつ大会社である株式会社です。

会社法上、監査役会は「半数以上の社外監査役を含む3名以上の監査役で組織される合議体で常勤の監査役を選定しなければならない」と定められています。


出典:e-Gov法令検索「会社法 第三百九十条」

まとめ

監査役は、業務執行や組織運営の健全性を保つため、取締役や会計参与などの役員の業務執行を監査・監督する役職のことです。

条件によっては監査役の設置が義務付けられるケースや設置できないケースもあります。また、設置が任意であっても、トラブルの予防、金融機関や投資家・株主からの信頼獲得などの目的で監査役を置く企業も少なくありません。

監査役の選出にあたってはいくつか条件があり、監査役になれないケース(欠落事由)も存在するため、確認が必要です。

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よくある質問

監査役とは?

監査役は株式会社における役員の一種で、取締役や会計参与などの業務執行を監査・監督する役職のことです。業務や会計上の不正がないかを確認・是正する役割を担います。

詳しくは記事内の「監査役とは」をご覧ください。

監査役監査とは?

監査役監査とは、株主の利益を守るために監査役が行う監査活動のことです。取締役が職務の執行にあたって法令や定款を遵守しているかを、株主に代わって管理・監督するために行われます。

詳しくは記事内の「監査役監査とは」をご覧ください。

監査役は誰でもなれる?

監査役としての欠格事由(監査役になれない理由)や、兼任禁止の条件が定められており、それらに該当する場合は監査役になることができません。

詳しくは記事内の「監査役になるための資格となれないケース」をご覧ください。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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