東証とは「東京証券取引所」の略称で、主に株式市場を提供し、その市場にて株式の売買を行うところです。
国内最大規模の証券取引所である東証の株式市場には、国内有数の大企業も多く上場しています。上場企業は3,800社以上であり、その平均取引金額は1日3兆円を超えています。
国内外の投資家から株式の売買が多く行われる東証では、株式の売買業務だけでなく、それに伴う業務も多岐に渡ります。また、提供している株式市場の活性のため、株主が安心して取引を行える信頼性の高い株式市場の管理・運用も東証の仕事です。
本記事では、東証の事業概要や業務内容を中心に、2022年4月4日(月)から再編された株式市場の市場区分についても解説します。
目次
東証(東京証券取引所)とは
東証とは「東京証券取引所」の略称であり、株式の売買を行う証券取引所のことを指します。東証は、金融商品市場を運営しており、国内株式、外国株、社債・国債などの債券や先物などの金融商品を取り扱っています。
また、東証は金融商品の取引に関わる業務を行う日本取引所グループのうちの1社でもあります。日本取引所グループは以下の会社で構成されています。
日本取引所グループ
- 東京証券取引所
- 大阪取引所
- 東京商品取引所
- JPX総研
- 日本取引所自主規制法人
- 日本証券クリアリング機構
日本に証券取引所は、東証・名古屋証券取引所・福岡証券取引所・札幌証券取引所の4つが存在しますが、そのなかでも東証の規模は国内最大です。
東証の企業情報は以下のとおりです。
東証の概要
- 商号:株式会社東京証券取引所
- 所在地:東京都中央区日本橋兜町2-1
- 電話番号:03-3666-0141
- 営業時間:8時45分~16時45分
- 立会時間:9時から11時30分、12時30分から15時
- ※注文受付時間は8時から11時30分、12時05分から15時
- 営業日:月曜日から金曜日
- 休日:土日、祝日、12月31日、1月1日~1月3日
東証(東京証券取引所)の業務内容
東証の具体的な業務としては以下の4つが挙げられます。
- 株式の売買
- 取引の決済
- 上場を希望する企業の審査
- 市場や証券会社、取引の調査
株式(有価証券)の売買
東証の株式市場はプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つに分かれており、2023年12月現在の東証の株式市場に上場する企業は全体で3,900社を超えます。
東証の株式市場での株式売買のほとんどはコンピューター上で取引されます。東証では、arrowheadという売買システムを採用しており、1日平均3兆円を超える株式の取引を担っています。また、取引を担うarrowheadの管理運用や日々のアップデートも東証の仕事です。
arrowheadでは、投資家からの株式の売買注文を集め、定められたルールに基づき株式の売買を成立させます。
株式売買のルール
- 価格優先(1番高い値段の買い注文と1番安い値段の売り注文が優先)
- 時間優先(注文の金額が同額であった場合、より早い注文が優先)
arrowheadの機能には売買の成立だけでなく、不正売買の監視機能やシステム接続に異常があった際の注文取消など、株式売買に関わるリスク防止の機能も備えられています。
また、成立した取引の情報や日々の始値・終値・安値・高値などの情報をリアルタイムで発信しているのもarrowheadです。
取引の決済
arrowheadでの株式の取引成立後、取引された株式とその金額を決済することも東証の仕事です。
前述したように、東証では1日の取引額が3兆円を超え、取引件数は多い日で1億件を超えます。1日のうちで決済処理しなくてはならない数が膨大なため、多くの機関と協力して決算を行います。株主が安心して取引ができるように、正確かつスムーズな決済のシステムとルールが整備されているのです。なお実務は、日本取引所グループ子会社の日本証券クリアリング機構が担います。
出典:日本証券クリアリング機構「会社概要」
上場を希望する企業の審査
上場は希望するすべての企業ができるものではありません。上場するためには、申請前の外部監査を含めた所定の手続きを行い、東証の審査を受け、提示された要件全てを満たす必要があります。
そのため東証は、株式市場に上場を希望する企業が、法令を遵守した経営をしているかや上場要件を満たしているかなどを審査し、投資家が安心して投資や株式の売買を行えるようにしています。
また、東証では信頼のおける企業のみを東証の株式市場に上場させるため、市場ごとに基準を定め、多くの条件を設定しています。具体的には、上場を希望している企業の成長性や安定性、ガバナンスなどの条件を一つひとつ確認します。
【関連記事】
上場とは?株式上場するメリット・デメリットや非上場との違いについて解説
市場や取引、証券会社の調査・分析
株式市場や株式取引、取引を行う証券会社の調査・分析も東証の仕事です。
株式市場の調査では、証券会社からの注文に異常がないか、株価の変動に大きく関わる情報やニュースがないか、株価が大きく変動した場合の要因などを調査・分析します。これらの調査は取引時間が終了した後も継続されます。
ほかにも、日々の取引で相場操縦やインサイダー取引などの不正が行われていないかも確認しなければなりません。
また、東証は株式の売買を行う市場を提供していますが、投資家が直接東証の株式市場で株式の売買を行うことはできません。投資家は東証での株式の売買を認められた証券会社を通して、株式の注文や売買をすることになります。
そのため、東証での取引を行っている証券会社が適切に営業しているのか、管理体制やシステムの運用状況なども定期的に調査し、株主が安心して株式の売買ができる体制を整えています。
問題や不正が見つかった際には、必要な指導の実施や株式取引を一時的に停止させるなどの対策を講じます。
出典:なるほど!東証経済教室「東証のしごと」
東証(東京証券取引所)の3つの市場区分
東証の株式市場では、2022年4月4日から新しい市場区分が始まりました。
これまで東証には、市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQ(スタンダード・グロース)の4つの市場区分がありました。
これらの市場を再編し、2022年4月4日から新たに3つの区分として、グローバル企業が中心の「プライム市場」、国内経済の中核を担う「スタンダード市場」、高い成長性が期待できる「グロース市場」が始動しています。
今回の市場再編によって海外投資家を呼び込み、流動性が高まることによる日本市場の活性化が期待されています。
出典:日本取引所グループ「市場構造の見直し」
プライム市場
プライム市場は東証の株式市場の中でも上位の市場で、主に東証一部に上場していた企業が上場しています。
プライム市場の概要は以下のとおりです。
プライム市場の概要
- 国際的な投資家からの投資対象となる規模と高い流動性がある
- 株主との対話に重点を置き、持続的な成長と企業価値向上を確約する
- より高いガバナンス水準を満たし、安定した経営基盤と財政状態である
プライム市場は上位市場であるため、その分上場審査も一番厳しい市場です。また、TOPIX(*1)(東証株価指数)の対象となる企業もこの市場から選ばれています。
(*1)東証の上場企業を対象にした株価指数で、国内の経済動向を表す指標として使用される名称。
【関連記事】
プライム市場とは?東証一部との違いやメリット・デメリットについてわかりやすく解説
スタンダード市場
スタンダード市場はプライム市場の下位市場ではあるものの、主に東証一部や東証二部に上場していた企業が上場している市場です。
スタンダード市場の概要は以下のとおりです。
スタンダード市場の概要
- 公開されている株式として一般投資家の投資対象となる一定の流動性がある
- 上場企業として基礎的なガバナンス水準がある
- 持続的な成長と企業価値向上を確約する
- 安定した経営基盤と財政状態である
プライム市場よりも上場基準は緩和されていますが、上場基準を下回ってしまうと上場廃止になってしまうリスクが存在します。上場を維持するには、継続した事業成長や安定した経営体制の確立などの企業努力が必要不可欠です。
グロース市場
グロース市場は前述した2つの市場とは異なり、主にベンチャー企業や新興企業向けの市場です。
グロース市場の概要は以下のとおりです。
グロース市場の概要
- 高い企業成長を実現するための事業計画がある
- 一般投資家の投資対象となる最低限の流動性がある
- 事業規模と企業の成長にあった適切なガバナンス水準がある
グロース市場は新興企業向けの市場であるため、上場基準は他の市場よりも大幅に緩和されていますが、上場維持のためには継続した企業成長が求められる市場です。
市場再編の背景や目的、それぞれの市場の上場基準など詳しく知りたい方は、別記事「東証再編はいつから?市場区分見直しの目的や影響について分かりやすく解説」をあわせてご確認ください。
まとめ
東証は株式の売買だけでなく、投資家が安心して投資ができる市場の形成やその管理を行っています。
日本取引所グループの子会社であるためグループ会社同士の連携も強く、上場や株式取引に関わる多くの業務が円滑に進み、情報は日々アップデートされています。
国内最大規模の証券取引所であるため、審査も厳しいです。また、市場再編に伴い、各市場の上場維持基準の水準が上がったため上場を維持するための企業努力や継続した企業成長が求められるようになりました。
国内外の投資家からの信頼が厚い東証への上場は、より多くの資金調達につながるだけでなく、社会的信用の向上も期待できます。東証への上場を検討している人は、まず、東証がどのようなところなのか、どの市場が向いているのかなどをチェックしてみましょう。
freeeで内部統制の整備をスムーズに
IPOは、スモールビジネスが『世界の主役』になっていくためのスタート地点だと考えています。
IPOに向けた準備を進めていくにあたり、必要になってくる内部統制。自社において以下のうち1つでも該当する場合は改善が必要です。
- バックオフィス系の全てのシステムにアクセス権限設定を実施していない
- 承認なく営業が単独で受注・請求処理を行うことができる
- 仕入計上の根拠となる書類が明確になっていない
freee会計のエンタープライズプランは内部統制に対応した機能が揃っており、効率的に内部統制の整備が進められます。
内部統制対応機能
- 不正防止(アクセスコントロール)のための、特定IPアドレスのみのアクセス制限
- 整合性担保(インプットコントロール)のための、稟議、見積・請求書発行、支払依頼などのワークフローを用意
- 発見的措置(モニタリング)のための、仕訳変更・承認履歴、ユーザー情報更新・権限変更履歴などアクセス記録
- 国際保証業務基準3402(ISAE3402)に準拠した「SOC1 Type2 報告書」を受領
詳しい情報は、内部統制機能のページをご確認ください。
導入実績と専門性の高い支援
2020年上半期、freeeを利用したマザーズ上場企業は32.1%。freeeは多くの上場企業・IPO準備企業・成長企業に導入されています。
また、freeeではIPOを支援すべく、内部統制に関する各種ツールやIPO支援機関との連携を進めています。
内部統制を支援するツール・連携機能
IPOに向けた準備をお考えの際は、freeeの活用をご検討ください。