監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ
自動販売機特例とは、自動販売機やコインランドリーといった代金決済から物品・サービスの受け渡しまでがひとつの機器で完結する場合に、適格請求書(インボイス)の交付・保存義務が免除される制度です。
本記事では、自動販売機特例の対象事例や、自動販売機特例が適用された場合の帳簿の扱いについて詳しく解説します。
インボイス制度と適格請求書について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
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目次
自動販売機特例とは
自動販売機特例とは、インボイス制度において自動販売機で物品を購入した場合に、インボイスの交付や保存義務が免除される制度のことです。
自動販売機やコインランドリーの利用料金は基本的に少額になるケースがほとんどであり、取引の一つひとつに対して請求書や領収書を発行するとなると事務的負担が大きくなります。自動販売機で完結する取引で、紙ベースのインボイスを発行することは非効率かつ非現実的であるため、自動販売機特例が設けられました。
たとえば、会議や商談などで提供する飲料を自動販売機で購入した場合、自動販売機特例の適用によりインボイスの保管は不要です。
ただし、これが適用されるのは自動販売機での購入費が3万円未満の場合に限ります。自動販売機であっても、3万円を超える購入費が発生する場合にはインボイスが必要になるため注意が必要です。
自動販売機特例の対象
自動販売機特例の対象となるのは、機械装置のみで代金決済から物品・サービスの受け渡しまで完結するものに限ります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
自動販売機特例の対象例
- 飲料、食料品の自動販売機
- コインランドリー
- コインロッカー
- 金融機関のATMによる各種サービス
上記の定義から外れるものとして、取引自体は機械装置を介して行っていたとしても、物品・サービスの受け渡しが機械装置の外で発生するものは自動販売機特例の対象外です。具体的には、以下のようなものが該当します。
自動販売機特例の対象外例
- 自動券売機やコインパーキング
- セルフレジ
- インターネットバンキングによる各種サービス
インターネットバンキングのようなインターネット上の取引は、機械装置を用いていないとみなされるので注意してください。
自動販売機特例適用における帳簿の扱い
自動販売機特例が適用される場合にはインボイスの保存は不要ですが、仕入税額控除を受けるためには帳簿保存が必要です。インボイス制度においては、取引金額によって対応が異なるので注意してください。
また、コインランドリーのような自動サービス機での取引では、適格簡易請求書(簡易インボイス)が認められています。保存帳簿に必要な記載事項とあわせて、理解しておきましょう。
仕入税額控除を受けるためには帳簿保存が必要となる
自動販売機特例が適用される仕入税額控除を受けるために、インボイスの保存は不要ですが、帳簿保存は必要です。なお、帳簿には一定の事項を記載しなければなりません。
記載事項が見直された
自動販売機特例が適用される保存帳簿には、以下の記載事項が必要です。
保存帳簿の記載事項
- 課税仕入先の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率対象の場合は、その旨を記す)
- 対価の額
- 特例の対象となる旨
自動販売機特例の制度が開始されたときは、「課税仕入先の住所または所在地」の記載も求められていました。しかし、2024年度に閣議決定された税制改正によって、2023年10月1日以降に行われた取引については「課税仕入先の住所または所在地」の記載は不要となっています。
出典:国税庁「令和6年度税制改正の大綱について(インボイス関連)」
取引金額によって対応が異なる
自動販売機やコインランドリーにおけるインボイス対応は、取引金額によって異なります。なお、取引金額は1回の取引の税込金額によって判定されます。つまり、自動販売機で飲料を購入する場合は、本数に関係なく1回の取引で支払う金額(飲料1本分)が判定基準です。
取引金額が1万円未満の場合
1回の取引金額が税込1万円未満であれば領収書やレシートは不要であり、帳簿への必要事項の記載によって仕入税額控除が認められます。これは、インボイス制度開始から6年間(2029年9月30日まで)は少額特例が適用されるためです。
少額特例とは、一定規模を満たさない事業者に対して事務負担を軽減させるための措置を指します。特例の対象になるのは、基準期間の課税売上高が1億円以下または特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者です。
基準期間は、個人事業者の場合にはその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度の期間が該当します。
出典:国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)の概要」
取引金額が1万円以上3万円未満の場合
たとえば、会議や商談などで提供する飲料を自動販売機で購入した場合、1回の取引金額が税込1万円以上3万円未満の場合であれば自動販売機特例が適用され、領収書やレシートを保管する必要はありません。
取引金額が3万円以上の場合
1回の取引金額が税込3万円以上の場合は、仕入税額控除を受けるために、インボイスの交付を受ける必要があります。この場合は、領収書やレシートの保管が必要となり、領収書やレシートに必要事項が記載されていれば適格簡易請求書(簡易インボイス)として認められます。
なお、現時点では経過措置として、インボイス登録番号が記載されていない領収書やレシートでも、税額の80%が控除されます。
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適格簡易請求書が認められる
コインランドリーのような自動サービス機での取引では、適格簡易請求書(簡易インボイス)が認められています。適格簡易請求書とは、通常の適格請求書(インボイス)よりも記載事項を簡略化した請求書です。
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まとめ
自動販売機特例は、インボイス制度において自動販売機で物品を購入した場合に、インボイスの交付・保存義務が免除される制度です。自動販売機以外にも、コインランドリーやコインロッカーなど、機械装置のみで代金決済から物品・サービスの受け渡しまでが完結し、1回の取引金額が税込3万円未満の場合に適用されます。
なお、コインランドリーのような自動サービス機での3万円以上の取引においては、インボイスの交付が必要です。この場合、適格請求書だけでなく適格簡易請求書(簡易インボイス)も認められます。適格簡易請求書にはレシートや領収書が必要となるため、発行されたレシートや領収書は保存しておきましょう。
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よくある質問
自動販売機特例とは?
自動販売機特例とは、インボイス制度内の特例を指し、自動販売機などで物品を購入したときに、取引金額が3万円未満の場合に限り、インボイスの交付・保存義務が免除される制度です。
詳しくは記事内「自動販売機特例とは」をご覧ください。
自動販売機特例で住所が不要になるのはいつから?
自動販売機特例では、2023年10月1日以降におこなわれる取引から「課税仕入先の住所または所在地」の記載は不要となりました。
詳しくは記事内「記載事項が見直された」をご覧ください。
自動販売機特例の対象となるものは?
自動販売機特例の対象は、飲料、食料品の自動販売機やコインランドリー、コインロッカー、金融機関のATMによる各種サービスなど、機械装置のみで代金決済から物品・サービスの受け渡しまでが完結するものです。
詳しくは記事内「自動販売機特例の対象」をご覧ください。
監修 宮川 真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。