監修 好川寛 プロゴ税理士事務所
Peppol(Pan European Public Procurement Online)とは、電子化した請求書などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための世界標準規格です。
2023年10月1日から開始されたインボイス制度に伴い、適格請求書を電子データで発行・受取できる「電子インボイス(デジタルインボイス)」を活用する準備が進められています。
デジタル庁とデジタルインボイス推進協議会(EIPA)は、日本における電子インボイス(デジタルインボイス)の標準仕様を、国際標準規格の「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを発表しました。
本記事では、Peppolの概要やPeppolに準拠した電子インボイス(デジタルインボイス)の導入が経理業務にもたらすメリットについて解説します。
目次
Peppol(ペポル)とは
Peppol(Pan European Public Procurement Online)とは、電子化した請求書などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書の仕様」「運用ルール」「ネットワーク」に関する世界標準規格です。国際的非営利組織のOpen Peppolという団体により管理されています。
Peppolは、各業界や企業が行っている電子データ取引(EDI)の中継地点となり、電子インボイスなどの電子文書を標準化します。
たとえば、各企業が使用する会計ソフトで電子化した請求書や発注書などの電子データも、Peppolへ接続するための事業者(もしくはシステムそのもの)であるアクセスポイントを通じてPeppolネットワークに接続できます。
これにより、中小・零細企業など企業規模にかかわらず、企業間での電子取引をスムーズかつ簡略化して行うことができるようになります。
現在はその利用が世界的に促進されており、世界40カ国以上で導入・利用がされています。
日本版Peppol「JP PINT」とは
現在、日本の電子インボイス(デジタルインボイス)の推進協会である「EIPA」は、デジタル庁と連携し、Peppolの規格をベースとした日本の電子インボイス(デジタルインボイス)の標準仕様「JP PINT」の策定を進めています。
世界で広く利用されているPeppolをベースとすることによって、規模の大小にかかわらず幅広い企業が導入コストをかけずに電子インボイス(デジタルインボイス)の利用を開始できること、そして、国内企業や海外企業を含めたさまざまな企業間でのグローバルな電子取引をスムーズに行える仕組み(ネットワーク)を作ることが目的です。
また、JP PINTはPeppolネットワーク上でやりとりされる電子インボイス(デジタルインボイス)に限り適用されます。紙の適格請求書やPeppolネットワーク以外での電子インボイス(デジタルインボイス)のやり取りに関しては、JP PINTに基づく必要はありません。
JP PINTは今後、日本の商習慣や消費税制度に対応するため、仕入明細書等の整備や必要なアップデートが行われる予定です。
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Peppolを用いた電子インボイス(デジタルインボイス)の取引フロー
Peppolは、4つのコーナー(C)を経由しデータのやり取りを行う「4コーナーモデル」の構造となっています。
ユーザー(売り手(C1))は自身のアクセスポイント(C2)を通じてPeppolネットワークに接続し、買い手のアクセスポイント(C3)に文書の電子データを送信します。買い手のアクセスポイント(C3)が受信した電子データは、買い手(C4)に届けられます。
Peppolの利用者は、アクセスポイントを介してネットワークに接続することで、Peppolネットワークに参加しているすべてのユーザーと電子インボイス(デジタルインボイス)のやりとりができます。
この仕組みは、電子メールがメーラーからインターネットプロバイダを経由して受信者に届くのと同じような仕組みです。
出典:デジタル庁「よくある質問:Peppolネットワークでの電子インボイス(デジタルインボイス)のやり取りについて(概要)」
Peppolに準拠した電子インボイス(デジタルインボイス)が導入された場合のメリット
Peppolを利用した電子インボイス(デジタルインボイス)取引のメリットとして、主に以下の3つが挙げられます。
経理業務の自動化による効率化
現在、電子メールなどで請求書等のやり取りが可能です。しかし、取引先との文書やり取りに際して、異なるシステム間での取引だったり、データ形式がExcelやPDFなどさまざまだったりと、システムや仕様は一律化されていないケースが多くあります。
インボイス制度導入に当たって電子インボイス(デジタルインボイス)を採用する場合、Peppolネットワークを利用することで、適格請求書のデータや取引先名や金額、消費税率などの情報が自動で入力され、分類が可能になります。
手間がかかるとされている仕入税額控除の計算も自動で行え、経理業務の効率化につながるでしょう。
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電子インボイス(デジタルインボイス)取引の負担軽減
Peppolは、売り手のシステムから買い手のシステムへ、人手を介さずに請求情報を直接データ連携し、自動処理を行うシステムです。
Peppolは売り手と買い手の利用システムに規定がないため、双方が異なる請求システムを利用していても、発行された電子インボイス(デジタルインボイス)を、Peppolネットワーク上でやりとりできます。
Peppolの利用者は、Peppolに対応したクラウドサービスや会計システムを自身で選択・利用することができるため、負担が少なく快適なUI/UXで電子インボイス(デジタルインボイス)のやりとりが可能となります。
海外取引がしやすくなる
世界規格のPeppolはヨーロッパを中心に導入が進んでおり、今後さらなる拡大が期待されています。
世界的な潮流に沿った仕組みを採用することで、海外企業と同じ基準の電子インボイス(デジタルインボイス)取引が可能となり、海外企業との取引の効率化が期待されます。
まとめ
Peppolをベースにした電子インボイス(デジタルインボイス)が標準化されることによって、システムとの連携による経理業務の効率化や、これまで以上に海外企業との取引が増えることが期待できます。
しかし、日本版Peppol「JP PINT」はまだ仕様の策定段階のため、今後の電子インボイス(デジタルインボイス)とPepolの仕様策定の動向に注目しましょう。
電子インボイス(デジタルインボイス)の扱いについて把握すると同時に、Peppolへの理解も今から深めておきましょう。
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よくある質問
Peppol(ペポル)とは?
Peppol(Pan European Public Procurement Online)とは、電子インボイスなどの電子文書をネットワーク上でやり取りするための世界標準規格です。文書の仕様や運用ルール、ネットワークに関する規格を定めています。 詳しくは記事内「peppol(ペポル)とは」をご覧ください。
peppolの仕組みは?
Peppolは、4つのコーナー(C)を経由しデータのやり取りを行う「4コーナーモデル」アーキテクチャを採用しています。
ユーザー(売り手(C1))は自身のアクセスポイント(C2)を通じてPeppolネットワークに接続し、買い手のアクセスポイント(C3)に文書の電子データを送信します。買い手のアクセスポイント(C3)が受信した電子データは、買い手(C4)に届けられます。
記事内「Peppolを用いた電子インボイス(デジタルインボイス)の取引フロー」では、イラスト付きでわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
peppolの目的は?
国際的非営利組織である「OpenPeppol」によって管理運用されているこの規格は、元々は欧州の国同士での取引の際、各国が持つ独自の仕様によって事務処理が非常に煩雑になるという課題を解決するために開発されました。
日本版peppol「JP PINT」はインボイス制度にも対応できる?
デジタル庁は、インボイス制度における適格請求書や仕入明細書の記載事項を満たすことができるよう作成されていると発表しました。
したがって、売り手(C1)や買い手(C4)のシステムは、これらの標準仕様を用いることで、適格請求書などの記載事項を満たすデータセットを生成することが可能です。
詳しくはデジタル庁「よくある質問:JP PINTについて(概要)」をご覧ください。
監修 好川寛(よしかわひろし)
元国税調査官。国税局では税務相談室・不服審判所等で審理事務を中心に担当。その後、大手YouTuber事務所のトップクリエイターの税務支援、IT企業で税務ソフトウェアの開発に携わる異色の税理士です。