請求書の基礎知識

見積書の有効期限に目安はある?期限の決め方や記載なしの場合も解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

見積書の有効期限に目安はある?期限の決め方や記載なしの場合も解説

見積書に記載される「有効期限」とは、見積書に記載した金額で商品やサービスを提供する期限のことです。

一般的な見積書の有効期限は、2週間から6ヶ月程度で設定します。期限の長さに法的な決まりはないため、有効期限を設定しなくても問題はありません。ただし、見積書の有効期限を設定しておくと、直近で起こりうる価格変動への対応や、取引先との契約の促進につながるなどのメリットがあります。

本記事では、見積書に記載する有効期限の一般的な長さや書き方、記載なしの場合や有効期限が過ぎた見積書の扱いについて解説します。

目次

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見積書に記載する有効期限の一般的な期間

見積書に記載される「有効期限」とは、見積書に記載した金額で商品やサービスを提供する期限のことです。有効期限は、2週間から6ヶ月が一般的な目安といわれています。

見積書の有効期限に法的な決まりはなく、見積書の発行側が自由に期限を設定できます。たとえば、発行から「1週間」、「1年間以上」、「有効期限を設けない」などといった見積書でも正式な文書として機能します。

ただし、有効期限を設定した見積書を発行した時点で、記載した有効期限の撤回ができなくなると民法で定められています。見積書を発行する前には、設定した有効期限が適切かをチェックしてから、取引先へ送付することを推奨します。

なお、民法の条文に「申込者が撤回する権利を留保したときはこの限りではない」とあるように、事前に見積書の備考欄や送付時のメールの文面に「後から撤回する可能性がある」旨を記載すれば、民法上は見積もりを撤回できます。しかし、頻繁な撤回は自社への信頼を損ねる恐れがあるため、自社都合での安易な撤回は控えたほうがよいでしょう。

出典:e-Gov法令検索「民法|第五百二十三条」

見積書に有効期限を記載する理由

見積書の有効期限は、記載しなくても違法にはなりません。それでも見積書に有効期限を設定するのは「提供サービスの価格変更へ柔軟に対応するため」「取引先に契約を促すため」という2つの理由があります。

提供サービスの価格変更に柔軟に対応するため

原材料の高騰や調達難、円安傾向の強まり、賃上げの要請など、さまざまな要因により、商品やサービスのやむを得ない値上げが必要な状況が出てくる場合があります。

たとえば、4月の見積もり時点で自社商品Aの単価を1,000円と設定していても、原価高騰で3ヶ月後の7月には300円の値上げを想定しているケースなどが考えられます。こういった状況に陥った際、見積もりの有効期限を決めていないと、7月に取引先から発注がきても4月時点の見積もりの単価「1,000円」で販売しなければならなくなる可能性があります。

この時、4月に発行した見積書の有効期限を2ヶ月にしていれば、7月には有効期限が切れています。つまり、7月に発注を受けた際に、改めて単価1,300円で見積もりを出して販売が可能です。

このように見積書の有効期限は、提供商品・サービスの価格変更に備えるために有効です。なお、期限を決めるときは、取引先の検討期間の要望を汲むとよいでしょう。

取引先に契約締結を促すため

見積書に有効期限を記載することで、期限内での契約締結を取引先に促せるというメリットがあります。

有効期限のない見積書は「検討を後回しにしても問題ない」と、契約や判断を先送りされる可能性があります。

一方で、有効期限を定めた場合、その期限は取引先の意思決定の期限となります。期限があると、取引先は有効期限内に間に合うように予算案や稟議などのスケジュールを立てるといった、契約を検討する意識が高まります。

見積書の有効期限の書き方

見積書の有効期限の書き方や記載箇所に法的な決まりはありません。ただし、取引先に期日の誤解が生まれないよう、具体的な日付や期限、起算日(見積日から起算なら見積日)を記載しましょう。

見積書の有効期限の書き方

有効期限の記載例

  • 2024年4月10日
  • 見積日より1ヶ月間
  • 見積もり後1ヶ月

有効期限を設定して発行した見積書の内容は、原則、記載の有効期限内は撤回ができません。有効期限を設定する際は、見積書の内容にも誤りがないかしっかりとチェックしましょう。

出典:e-Gov法令検索「民法|第五百二十三条」

見積書に記載すべき項目

見積書の記載内容やレイアウト、フォントなどは自由に設定できます。ただし、取引先に誤解を与えたりトラブルのもとになったりしないよう、明確に記載することが大切です。

一般的な見積書の記載項目には、次の8つが挙げられます。


見積書に記載すべき項目概要
タイトル「見積書」「御見積書」といったタイトル
宛名・依頼者情報見積書の発行先である取引先名
見積日・見積番号見積もりを実施した日や見積書の番号
会社・担当者情報見積書の発行元の会社名や個人名、会社の連絡先など
有効期限見積書の有効期限
商品の詳細見積もりした商品の詳細、数量、単価、金額など
小計・消費税・合計額見積金額の小計、消費税、合計額
備考支払条件、納期、そのほか特筆すべき事項など

見積書の書き方については、別記事「見積書の書き方を徹底解説|精度の高い見積もりの仕方や役割についても解説」にて詳しく解説しています。

見積書に有効期限の記載がないとどうなる?

見積書に有効期限を記載しなくても法的な問題はありません。ただし、有効期限がない見積書は民法上「相当の期間が経過しないと撤回できない」と定められています。ここでいう「相当の期間」とは、取引内容や業界の慣行、時期などから判断されるのが一般的です。

つまり、見積もり後に商品・サービスの金額を変更すべき事情が発生しても、「相当の期間」が経過していない場合、取引先から発注があれば見積もりの金額通りに商品・サービスを提供しなければなりません。後から物価高騰や相場暴騰が発生して見積もりが適正価格でなくなったときは、赤字でも受注する必要があります。

なお有効期限なしの見積書であっても、有効期限ありのものと同じく、見積書を発行する側が事前に撤回の権利を留保した場合は見積もり内容を撤回できる可能性があります。

出典:e-Gov 法令検索「民法|第五百二十五条」

見積書の有効期限を過ぎた場合

見積もり後に取引先から発注がないまま見積書の有効期限が過ぎると、効力を失い見積書の内容は無効になると民法で定められています。

2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

出典:e-Gov法令検索「民法|第五百二十三条」

ただし、有効期限が過ぎた見積書の内容が完全に無効となるわけではありません。有効期限が過ぎた後、取引先から見積書の内容と同じ金額や条件で発注を受けた場合は、見積書の再発行をせずに契約を締結できます。有効期限を過ぎた見積書については、民法で以下のとおり規定されています。

(遅延した承諾の効力)
第五百二十四条 申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。

出典:e-Gov法令検索「民法|第五百二十四条」

条文によれば、有効期限が切れた見積書にて取引先から発注があると、その遅れた発注は新しい申し込みとして扱われます。

しかし、有効期限によっては見積日が半年以上前になるため、自社商品・サービス以外の部分の金額(公的機関の手数料や下請業者の金額変更など)が変更になり、見積内容と合わなくなるかもしれません。

取引先からの発注時に金額や条件の変更がある場合は、新しい金額や条件を記載した見積書を発行し、改めて取引先に検討してもらうことになります。商品・サービスの金額が変更になる場合は、有効期限が切れる前に、有効期限が過ぎた後の再見積もりは金額が変更になる旨を取引先に伝えておくことで、無用なトラブルを避けられます。

なお、金額変更がない場合であっても、見積書の有効期限が切れている場合には、念のため社内で再見積もりを行ったほうがよいでしょう。

まとめ

見積書の有効期限の長さに、法的な決まりはありません。一般的には、2週間~6ヶ月の間で設定されます。見積書の有効期限は法律上必ず設定しなければならないものではありませんが、見積書の有効期限を定めておくことで、期限を過ぎた後の金額変更への対応や、取引先への契約締結の促進などが可能になります。

ただし、発行した見積書の内容は、有効期限を含めて原則として撤回ができません。発行する際には、見積内容が正しいかどうかを入念にチェックしましょう。

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よくある質問

見積書の有効期限の目安は?

見積書の有効期限の目安は、2週間から6ヶ月です。これはあくまで目安であり、法的な決まりはありません。実際に見積書の有効期限を設定する際は、取引内容や業種などを考慮して、自社や取引先にとって最適な期限を決めましょう。

詳しくは記事内「見積書の一般的な有効期限」をご覧ください。

見積書に有効期限がない場合は?

見積書に有効期限を設定していなくても、法的な問題はありません。ただ、有効期限を設定していないと、民法に定められているところの「相当の期間」が経過しないと見積もり内容の変更ができなくなります。

詳しくは記事内「見積書に有効期限を記載する理由」「見積書が有効期限なしの場合」などをご覧ください。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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