受注とは、企業や個人から商品やサービスの注文を受けることを指します。受注から納品までを管理する「受注管理」は、ヒューマンエラーの防止や顧客満足度向上につながる重要な業務です。
本記事では、受注の基礎知識や受注管理の流れ、受注管理でよくある問題について解説します。
目次
受注とは
受注とは、顧客から商品やサービスの注文を受けることを指します。企業や個人から商品やサービスの注文を受けることを「受注する」といいます。
企業が商品やサービスを提供するためのプロセスの始まりであり、ビジネスにおける重要な活動です。受注管理を適切に行うことで、顧客満足度を高め、企業の信頼性を向上させることができます。
受注に関連する主な用語として以下のようなものがあります。
- 受注生産
- 受注販売
- 受注残
受注生産とは
受注生産とは、顧客の注文を受けてから製品を生産する方式のことです。
この方式は、在庫をもたずに生産を行うため、在庫コストを抑えられるのがメリットです。また、顧客の要望に応じたカスタマイズが可能であり、特別仕様の製品を提供できます。
【受注生産の主なメリット】
- 在庫リスクの軽減
- 顧客のニーズに合わせた製品の提供
- 資源の有効活用
一方で、受注生産にはデメリットもあります。生産開始までに時間がかかるため、納期が長くなる可能性があり、急ぎの注文には対応しづらい点が挙げられます。
受注販売とは
受注販売は、顧客の注文を受けてから商品を販売する方式です。
受注生産と異なり、すでに在庫として保有している商品を販売するケースが多いです。この方式は、迅速な納品が可能であり、顧客満足度を高めることができます。
【受注販売の主なメリット】
- 迅速な納品が可能
- 顧客への即時対応が可能
- 在庫管理が容易
ただし、在庫を保有する必要があるため、在庫管理コストが発生し、需要変動に対応するための適切な在庫管理が求められます。
【関連記事】
在庫管理とは?必要性や管理方法、在庫管理システムを導入するメリットを解説
受注残とは
受注残とは、受注されたものの、まだ納品が完了していない注文のことを指します。
受注残が多い場合、納期管理が重要となり、効率的な生産計画や在庫管理が重要です。受注残を適切に管理することで、顧客への納期遅延を防ぎ、信頼性を維持できます。
【受注残管理のポイント】
- 納期管理の徹底
- 生産計画の最適化
- 在庫管理の強化
受注と〇〇の違い
受注と発注の違い
受注が注文を受けることであるのに対し、発注は注文を行うことを指します。
たとえば、メーカーが小売業者から注文を受ける場合、メーカーは受注し、小売業者は発注することになります。
発注については別記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
【関連記事】
発注とは?発注書(注文書)の役割と注意点、作成方法をわかりやすく解説
受注と売上の違い
受注と混同しやすい言葉に「売上」と「利益」があります。
受注とは、売上が発生する可能性がある状態のことを指します。あくまでも可能性なので、受注後に何らかの理由でキャンセルが発生した場合、売上にはなりません。
一方の売上とは、商品や商品やサービスの販売によって得られた金額の合計を意味します。また、利益とは、売上から経費などを差し引いた残りの金額です。
受注が取引が完了していない状態なのに対し、売上や利益はすでに取引が完了している状態のことを指しています。
受注管理が必要な理由
受注管理とは、個人や法人の取引先から注文を受け、商品やサービスを納品するまでの一連の流れを管理する業務のことです。
受注管理では、取引先からの注文内容を正しく把握し、在庫部門や生産部門と連携して、最終的に正しく納品する必要があります。
また、受注管理をすることで以下のようなメリットにもつながります。
ヒューマンエラーを防止する
受注管理の大きな目的は、ヒューマンエラーを防止することです。
受注業務には多くのステップが含まれ、それぞれのステップで複数の人が関与します。そのため、手作業によるミスが発生しやすく、ミスが業務全体に波及するリスクがあります。
受注管理システムを導入することで、データの入力ミスや伝達ミスを減らし、プロセス全体の精度を高めることが可能です。これにより、納期遅れや誤配送などの問題を未然に防ぎ、業務の信頼性を向上させることができます。
顧客満足度の向上
正確な受注管理は、顧客満足度の向上にも直結します。
顧客は注文通りの商品やサービスが指定の納期に届くことを期待しています。受注管理がしっかりと行われていれば、顧客の期待に応えることができ、顧客満足度向上につながるでしょう。
特に、納期厳守と品質の確保は顧客満足度の重要な要素です。受注管理システムを導入することで、問い合わせにも迅速に対応できるようになり、より良い顧客サービスを提供できます。
結果としてリピート注文や新規顧客の獲得につながり、企業の成長に貢献します。
受注管理の方法・流れ
受注管理の流れは、「有形商材」と「無形商材」で異なります。
有形商材とは、目に見える形で品物がある商材のことで、以下のようなものが該当します。
【有形商材の例】
- 自転車
- 食料品
- 医薬品
- 家具
- 家電 など
一方、無形商材とは、形のない商品やサービス、情報のことで、以下のようなものが該当します。
【無形商材の例】
- システム
- Webサービス
- 金融商品
- 人材派遣
- 人材教育
- コンサルティング
- データ、プラットフォーム
- 広告 など
それぞれの受注管理の流れを解説します。
有形商材の受注管理の流れ
1. 注文内容を確認し、見積書を作成する
注文を受けたら内容を確認し、必要に応じて見積書を作成します。なお、見積書は金額交渉などの理由により内容が変わった場合は、都度作成し直すようにしましょう。
2. 取引契約を締結する
見積もり条件に取引先の同意が得られたら、必要に応じて契約締結を行います。トラブル防止のため、商品の保証期間や納期、支払方法、支払日などをよく確認しましょう。
3. 在庫を確認し納期を連絡する
商品の在庫がない場合は、商品の生産に要する時間を考慮して納品予定日を連絡しましょう。また、商品の生産に必要な部品がない場合は、部品の取り寄せにかかる時間も考慮する必要があります。
4. 受注伝票や注文請書を作成する
在庫や納期を確認し出荷条件が整ったら、社内用に注文記録を残すための受注伝票を作成します。
必要に応じて、その受注伝票をもとに注文請書を発行し取引先へ送付します。注文請書の発行に法的義務はありませんが、納品ミスを防ぐために発行することがあります。
注文請書については、別記事「注文請書とは?記載すべき項目や収入印紙の必要性について解説」で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
5. 出荷し納品する
商品を出荷し、取引先に納品します。また、必要に応じて出荷指示書や納品書を作成します。
無形商材の受注管理の流れ
1. 注文内容を確認し、見積書を作成する
取引先から引き合いを受けたら、注文内容を確認し見積書を作成します。見積書の作成は基本的に一度ですが、他社と競合し取引内容に変更が発生した場合は複数回作成する必要があります。
2. 取引契約を締結する
提示した見積もり条件に取引先が合意した場合は、必要に応じて契約書を取り交わします。契約は両者の合意があれば原則として口頭でも成立しますが、両者の認識の齟齬を避けるため、文書で残すことを推奨します。
3. 指定の納品方法で納品する
見積書や契約時の指定の納品方法で納品します。人材育成やコンサルティングの場合は、契約内容に応じたサービスを提供します。
受注管理でよくある問題
受注管理でよくある問題として、以下が挙げられます。
受注管理でよくある問題
- 業務の属人化
- 納品までのリードタイムが長い
- 在庫管理との連携不足
これらの問題は、効率的な業務運営や顧客満足度に直接的な影響を与えるため、早急に対策を講じることが大切です。各問題について、詳しい内容と対応策を解説します。
業務の属人化
業務の属人化とは、特定の人に依存して業務が進められている状態のことです。
たとえば、電話・SNS・ECサイトなど受注手段が多様化していると、それぞれに対応するスタッフが不足する場合があります。このように、販売手段ごとに業務プロセスが異なると、業務の標準化が難しくなり、特定のスタッフに依存する状態が生まれます。
業務の属人化を解消するためには、次のような対策が有効です。
属人化への対策
業務プロセスの標準化:
定期的に業務プロセスを見直し、本当に標準化できないかどうかを検討する
受注管理システムの導入:
受注プロセスを自動化することで、スタッフの業務負担を軽減し、人材不足や属人化の問題を解決する
納品までのリードタイムが長い
受注管理におけるもうひとつの問題は、納品までのリードタイム*が長引くことです。
※作業の始めから終わりまでに要する時間
リードタイムが長引いてしまう問題の主な原因としては、以下の点が考えられます。
【リードタイムが長引く原因】
在庫不足:
在庫管理が適切に行われていない場合、必要な商品をすぐに出荷できず、納品までの時間が長くなる
部門間の連携不足:
受注管理・在庫管理・出荷管理などの部門間で、情報共有や連携が不十分な場合、業務が滞りやすくなる
リードタイムが長いと顧客満足度が低下し、注文のキャンセルや新規顧客の獲得に悪影響を及ぼすおそれがあります。
これらの問題を解決するためには、次のような対策が有効です。
リードタイム短縮への対策
在庫管理システムの導入:
在庫の状況をリアルタイムで把握し、必要な商品を適切に管理することで、納品までのリードタイムを短縮できる
部門間の情報共有の促進:
受注管理システムを導入し、部門間での情報共有をスムーズに行う
在庫管理との連携不足
受注管理と在庫管理の連携が不十分であることも、よくある問題のひとつです。
受注情報が在庫管理システムに正確に反映されない場合、在庫切れや過剰在庫が発生し、納品遅延や無駄なコストが生じます。それぞれを別個で稼働させている・全て手作業で打ち込んでいる等の場合に起きやすいです。
この問題を解決するためには、以下の対策が有効です。
連携不足への対策
統合された管理システムの導入:
受注管理システムと在庫管理システムを統合し、一元的に管理することで、情報のズレやミスを防ぐことができる
自動化の推進:
受注から在庫管理、出荷までのプロセスを自動化することで、効率的かつ正確な管理が可能
以上の対策を講じることで、受注管理の課題を解決し、業務の効率化と顧客満足度の向上を図ることができるでしょう。
受注管理でミスを防ぐ3つのポイント
受注でのミスは取引先からの信頼度を失うことにつながります。フローを可視化する・販売管理システムを利用するなど、適切な受注管理が行える環境に整えることが重要です。 ここからは、受注管理でミスを防ぐ3つのポイントについて紹介します。
受注から納品までの業務フローを可視化する
受注から納品までのフローは、誰がどのフェーズを担当し、誰が窓口となり、どのツールを使用するのかなどを明確にし、社内で共有する必要があります。
特に、新しいサービスや商品の場合はフローが曖昧になりがちで、受注はしたものの、納品までの工程で止まってしまうケースも少なくありません。
そのようなトラブルを未然に防ぐためにも担当者やフローは可視化し、進捗を共有できるようにしましょう。
Excelやスプレッドシートで管理しない
Excelやスプレッドシート等の表計算ソフトを用いて、受注管理を行っている企業は少なくありません。
Excelセルに入力できる値を制限することはできますが、基本的にはどのような値でも入力できるため、入力ミスなどのヒューマンエラーが発生する可能性があります。
ヒューマンエラーの発生は、Excelやスプレッドシートで受注管理することのデメリットです。また、Excelやスプレッドシートはデータ量が多くなると操作性が悪くなることもあるため、受注管理で使用するのは避けたほうがよいでしょう。
販売管理システムを導入する
販売管理システムとは、受注管理を効率化するためのシステムです。
販売管理システムを導入することで、取引先ごとの状況を簡単に把握することができ、業務にかかる工数削減につながります。また、受注確認やお礼メールも自動化できるため、ヒューマンエラーの削減を期待できます。
さらにはペーパーレス化により、紙代や印刷代などの消耗品コストも削減できます。
販売管理システムについて詳しく知りたい方は、別記事「販売管理とは?目的や流れ、販売管理システム導入のメリット、選び方を解説」も併せてご確認ください。
まとめ
受注管理は、企業の効率的な業務運営と顧客満足度の向上に不可欠です。
受注管理を効率よく行うには、受注管理システムの導入が効果的です。これにより、業務効率が向上し、人的ミスの減少と顧客満足度の向上の両方が期待できます。
また、適切な受注管理の実践は、企業の信頼性を高め、長期的な収益向上に寄与します。受注管理のメリットと業務内容を理解し、効率化に向けた取り組みを進めましょう。
よくある質問
受注管理のメリットは?
受注管理の主なメリットは以下のとおりです。
- 業務効率の向上
- 人的ミスの減少
- 顧客満足度の向上
手作業に頼らないことで効率が上がりミスが減ることで、結果的に顧客の信頼を上げることができます。
受注管理の業務内容は?
受注管理の業務内容は多岐にわたりますが、主な内容は以下の通りです。
- 見積書の作成:顧客の要望に対する見積書を作成します。
- 注文受付:見積書の内容に顧客が合意した場合、取引契約を締結します。
- 在庫確認:注文内容に応じて在庫を確認し、納期を設定します。
- 伝票作成:出荷条件が整ったら、受注伝票や注文請書を作成します。
- 出荷・納品:受注が確定した後、商品の出荷と納品を行います。
詳しくは記事内「受注管理の方法・流れ」で解説しています。
受発注業務とは?
受発注業務は、受注と発注の両方のプロセスを含む業務です。
受発注業務を円滑に行うためには、システムの活用や業務フローの可視化が重要です。業務の標準化や自動化を図ることで、効率的かつ正確な受発注業務が可能となります。