帳合(ちょうあい)とは、卸売・小売業界においては仕入れ・販売の取引関係のことです。特定の業者間で継続的な取引が行われている状態を「帳合取引」と呼びます。
本記事では、帳合の意味や役割のほか、メリットとデメリットについて解説します。
目次
リベートとは
リベート(rebate)とは、英語で手数料・謝礼・賄賂を意味します。卸売業や小売業の取引高に応じて、メーカーがその仕入代金の一部を払い戻すことを指します。
リベートの目的をわかりやすくいえば、メーカーの販売促進です。
商品の販売や請負などで競争が激しくなると、メーカーは契約金額の一定歩合を流通業者に戻すことを条件として、その契約を成立させます。つまり、謝礼を渡すことで自社の商品を取り扱ってくれる取引先や取引量を増やしてもらう目的があります。
リベートはあらかじめ取引金額や商品の代金を割引するのではなく、支払金額の一部を払い戻すことが特徴です。
キックバック・バックマージンとの違い
リベートとよく似た言葉に「キックバック」「バックマージン」がありますが、実質的な意味の違いはほとんどありません。
キックバックやバックマージンはセールス部門において使われますが、マイナスな印象を与えることがあるため、最近はリベートという言葉がよく使われています。
リベートは日本よりも海外のほうが盛んに行われており、ヨーロッパ各国ではごく一般的な取引として知られています。
違法なリベートと判断されるケース
リベートは合法的な日本の商慣習として認められているため、違法ではありません。しかし、次のようなケースでは違法と判断されることがあります。
リベートが違反になるケース
- 契約書など書面でリベートの内容が通知または明確にされていない
- 会計処理が不適切または、帳簿に記載されていない不透明な取引
- 市場を独占しかねない好条件なリベートを提示する
- 個人が下請け業者に依頼料を高く受注させて、その水増し分を受領する
- 公務員や政治家などの公的な職種がリベートを利用する
リベートは正式に契約を交わし、会計上の処理も適正に行う必要があります。
また、個人が金銭を取得することを目的に取引先と協力し、本来支払うべき適正な金額にリベート分を上乗せした請求金額を支払わせるなど、会社に損害を与える悪質な行為は違法と判断されるおそれがあります。
さらに、独占禁止法に触れていないかどうかも注意が必要です。ほかの企業が入る余地のないような非常に好条件なリベートは市場を独占する可能性があり、違反行為とみなされます。
加えて、公務員や政治家などの公的な職種がリベートに関わることも違法です。金銭・物品・接待などを受け取ることは職権を用いて便宜を求めたとみなされ、罪に問われる場合があることを覚えておきましょう。
出典:公正取引委員会「独占禁止法の概要を知ろう」
代表的なリベートの種類
リベートは大きく「支払リベート」と「受取リベート」の2つに分類することができます。両者の違いをわかりやすく説明します。
支払リベート
支払リベートは商品の売上高をもとに支払われる手数料で「売上割戻」のことを指します。
後述しますが、経理で仕訳する際には混同しやすく、契約書がある場合とない場合では計上時期が異なります。
受取リベート
受取リベートは仕入れ時に発生する手数料であり「仕入割戻」のことを指します。受取リベートの代表的な例として、次の4つが挙げられます。
仕入れ実績に比例するリベート
仕入れ実績に比例するリベートとは、一定期間内の購入量や購入額などの仕入れ実績に、契約で決まった比率をかけて算出される金額を支払うリベートのことです。
また、一定の数量や金額を上回る仕入れが行われた場合に、上回った分に対するリベートが支払われるケースもあります。このケースは、次に説明する達成リベートのような扱いと考えることもできます。
達成リベート
達成リベートとは、あらかじめ契約によって決められた条件を満たした場合に支払われるリベートのことです。
ある一定期間に一定以上の数量または金額を仕入れたら、一定金額のリベートが支払われる契約などがあります。
目標を達成した場合に支払われるので、取引先のモチベーション向上のためによく利用されます。
販促強化を目的としたリベート
販促強化を目的としたリベートは、小売店の特売に合わせて、メーカーの販売量強化のために支払われるリベートのことです。
小売店はリベートを原資に大幅な値下げをして、顧客への販促活動を行います。
仕入れ先の要求に応じたリベート
仕入れ先から出されるさまざまな要求に応じた場合、リベートが支払われるケースもあります。
具体例を挙げると、商品を売場の目立つ棚に陳列してもらう、化粧品の販売員に商品の教育を受けさせるといった場合です。
このような例は、協賛金や販促協力金のような性質をもち、実際に商品を販売したわけではありません。
しかし、販売につながる営業活動に協力してくれたという意味合いで、リベートとして支払われることがあります。
リベートのメリット
メーカー側がリベートを支払う一番の目的は、売場スペースの確保や販売促進です。
メーカーが好条件のリベートを支払うことで、小売店や卸売業者に対する発言権が強まります。
これによって関係性が強固になり、競合他社よりも優位なポジションに立てる点がメリットといえるでしょう。
小売店がリベートを受け取る最大のメリットは、最低ラインの収入が確保でき、予算やコストの計画が立てやすくなる点です。
商談や契約で設定された条件をクリアするとリベートが支払われるため、モチベーション向上にもわかりやすくつながります。
また、大手メーカーの特約店であればブランド力や信頼性を高める効果も期待できます。
リベートのデメリット
メーカー側と小売店や卸売業者側に共通するリベートのデメリットは、経理処理やコスト面の負担です。
適切に経理処理をしないと違法と判断されるおそれがあるため、慎重に行う必要があるためです。
特に、メーカー側は立場上断れない取引先に言い値でリベートを決めさせる、不適切な内容のリベートを受け入れさせるなどの行為が発覚した場合、コンプライアンス抵触や違法のリスクがあります。
また、慣習的なリベートについてはメーカー・卸売業者側のメリットが少ないといえます。リベートが定着すると特別感がなくなり、商品価値の低下につながるからです。
小売店側が売り場や売り方の配慮をしてくれないと、メーカー・卸売業者側はコストだけが発生し、さらなるリベートを要求される可能性もあります。
このようなデメリットから、リベートを廃止した企業は少なくありません。
しかし、リベートは戦略的に展開するのであればマーケティング上、有用な手段です。慣習的に行うのではなく、対象製品や期間を絞って明確な目的のもとで行ったほうが効果を発揮できるでしょう。
リベートの会計処理
実は日本の会計基準では、リベートに関する明確な会計基準が存在しません。
「売上値引き」として売上から控除する場合もあれば、販売促進費(販売費及び一般管理費)として計上する企業もあります。取引条件やその支払の実態に応じて、個別の判断が求められます。
一般的には、リベートを支払った場合は「売上割戻し」という勘定科目で処理します。税務上、リベートは全額損金となる点がポイントです。
損金とは、法人税法上、課税される収入から差し引くことができる支出を意味します。会計上の利益に一定の調整をして計算します。
リベートを受け取った場合は「雑収入」として営業外収益に計上するか、あるいは仕入金額から控除するかたちで会計処理を行います。
製造業など、原価を正確に管理しなければならないケースでは、後者のように仕入金額から差し引く方法を取る方が望ましいとされています。ちなみに「営業外収益」とすると、その分税金がかかることになるため、節税という意味では不利になります。
どの処理方法を採用しても問題ありませんが、同じ契約内容のリベート取引が継続しているケースでは、一貫して同じ会計処理の方法を適用することが望ましいといえます。
会計処理上の注意点
リベートの会計処理は、契約書の定めによって処理するタイミングが異なります。
また、損金として認められない場合もあるため、注意点を押さえておきましょう。
契約の定めによって処理方法が異なる
契約でリベートの定めがある場合
契約によってリベートの定めがある場合は、売上を計上するタイミングで会計処理をします。
たとえば、「契約どおり、仕入れ金額に対してリベートとして5万円を割り戻した」場合、次のとおり、借方に「売上割戻し:50,000」、貸方に「売掛金:50,000」と仕訳をします。
借方 | 貸方 | ||
売上割戻し | 50,000 | 売掛金 | 50,000 |
契約でリベートの定めがない場合
次に、リベートについての契約がない場合、仕入先に割戻しを通知した日または実際に支払った日に計上します。
たとえば、「商品100万円を取引先が掛で購入、リベートとして5万円を割り戻した」場合、次のとおり、借方を「売掛金:950,000、売上割戻し:50,000」、貸方を「売上高:1,000,000」と仕訳をします。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 950,000 | 売上高 | 1,000,000 |
売上割戻し | 50,000 |
損金として認められないことがある
リベートが損金として認められるのは、リベートが社会通念上、合理的であると考えられる場合のみです。次のケースは適用外となりますので注意しましょう。
リベートが損金として認められないケース
- リベートの金額や割合が不当に高いとみなされる場合
- リベートの割合が取引金額や数量に応じて累進的に設定されている場合
- 取引先ごとに金額の水準が設定されている場合
リベートの金額や割合の水準が不当に高いとみなされる場合は損金として認められません。
取引金額や数量が高くなればなるほどリベートの割合が高くなるように設定されている場合も要注意です。
また、取引先によってリベートの金額を変えると、多くは交際費と判断されます。原則として、交際費はその全額が損金とはなりません。
損金算入を上限なく認めてしまうと、多額の交際費を計上して不当に税負担を免れる可能性があるためです。
リベートと交際費の違い
取引先との食事代や土産代、ゴルフなど、会社のお金で接待する費用を「交際費」、情報提供料として金品を支払った場合は「リベート」と区別されます。
交際費は私的な支出と混同されることが多いため、税務上計上できる額が制限されています。
リベートではなく交際費であると税務署から認定されてしまうと、収入から差し引く支出と認められる額が大幅に減ってしまうので注意しましょう。
まとめ
リベートは、メーカーが商品の販売を促進したり、小売店のモチベーションを向上したりする目的で行われています。
戦略的に活用すれば高い効果を発揮しますが、一歩間違えると違法になってしまうケースもあり、慎重に行う必要があります。
リベートが関わる案件は会計処理が複雑化するため、経理担当者の負担が大きくなりがちです。
素早く正確な会計処理を行いたい場合は、販売管理システムの導入もおすすめです。効率的な商談契約につなげるためにも、検討してみるとよいでしょう。
よくある質問
リベートの意味は?
リベート(rebate)とは、英語で手数料・謝礼・賄賂を意味します。卸売業や小売業の取引高に応じて、メーカーがその仕入代金の一部を払い戻すことを指します。
詳しくは記事内「リベートとは」をご覧ください。
リベートとキックバックの違いは?
リベートとキックバックに実質的な意味の違いはほとんどありません。キックバックやバックマージンはセールス部門において使われますが、マイナスな印象を与えることがあるため、最近はリベートという言葉がよく使われています。
詳しくは記事内「キックバック・バックマージンとの違い」をご覧ください。
リベートの正しい会計処理は?
実は日本の会計基準では、リベートに関する明確な会計基準が存在しません。一般的には、リベートを支払った場合は「売上割戻し」という勘定科目で処理します。
詳しくは記事内「リベートの会計処理」をご覧ください。
リベートと交際費との違いは?
取引先との食事代や土産代、ゴルフなど、会社のお金で接待する費用を「交際費」、情報提供料として金品を支払った場合は「リベート」と区別されます。
詳しくは記事内「リベートと交際費の違い」をご覧ください。