見積管理システムとは、見積書の作成・発行・承認フロー・保管など、見積書作成に関する業務を効率化するツールです。見積管理システムを活用することで、営業活動の改善や生産性の向上にもつながります。
本記事では、見積管理システムの主な機能や種類、導入するメリットについて解説します。システムを選定する際のポイントについてもまとめていますので、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
見積管理システムとは
見積管理システムとは、見積書の作成・発行・承認フロー・保管などの見積書に関する業務を効率化するツールです。
見積書には、金額・数量・工程・期間などの取引内容を記載しますが、記載事項やフォーマットに法的な決まりがありません。そのため、見積書は手書きやExcelで作成されることも少なくありません。
しかし、各自が手作業で見積書を作成すると以下のようなデメリットがあります。
手書きやExcelで見積書を作成するデメリット
- 記入項目が多いため入力ミスが発生しやすい
- 各担当者が個別で作成するため属人化しやすい
- 一元管理ができないため管理の負担が大きい
見積管理システムでは過去の見積書を参照できるため、過去の見積書に倣って誰でも簡単に適正な見積書を作成できます。
また、見積書を一元管理することで管理業務を効率化するだけでなく、成約率や利益率の分析も可能になり営業活動の底上げにつながります。
見積管理システムの主な機能
見積管理システムは主に5つの機能があります。
見積管理システムの主な機能
- 作成・発行
- 承認フロー
- 保管
- 各マスタデータの一元管理
- システム連携
作成・発行
見積管理システムは、過去の見積書をテンプレートとして呼び出したり、受注内容を取り込んで見積書を自動作成したりできる機能を備えています。
これらの機能により、見積書の作成が誰でも簡単かつ効率的に行えます。
また、商品名や数値などの入力ミスを教えてくれるAI(人工知能)アシスト機能が備わったシステムもあります。作成した見積書はワンクリックでPDFに変換し、登録した顧客のメールアドレスに添付・送信が可能です。
承認フロー
一般的に、作成した見積書は取引先に送付する前に、上長などの決裁者の承認を得る必要があります。しかし、上長が出張で不在時は、見積書の確認と承認業務が行えない問題があります。
ところが、見積管理システムの承認フローを利用することで、オンライン上で見積書の確認と承認ができるため、時間や場所に関係なく承認作業をスムーズに進められます。
また、見積金額によって承認者が異なる場合や、割引率などに応じて承認フローが変動する場合も、実務に即した承認フローを作成することが可能です。
このように、承認要件を設定したり承認されていない見積書は印刷不可にしたりすることで、適切な見積書の発行が行えます。
保管
作成・発行した見積書は自動的に見積管理システムに保管されます。
案件の進捗状況や商談時の詳細情報などを紐づけて一元管理できるため、担当者が外出していたり退職したりした場合でも顧客対応が可能です。
各マスタデータの一元管理
見積管理システムを利用すると、以下のような各マスタデータの一元管理が可能になります。
- 商品マスタ(取扱商品の分類や組み合わせが設定されている)
- 取引先マスタ(取引先情報や取引先のランクが設定されている)
見積書の作成時に各マスタから必要な情報を呼び出すことで、入力ミスなどのヒューマンエラーを抑制できます。
システム連携
見積管理システムは、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援ツール)など周辺システムとの連携機能を備えています。
これらのシステムと連携し顧客情報を活用することで、業務の効率化や自動化の精度向上につながります。
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見積管理システムを使用するメリット
見積管理システムを使用する主なメリットは以下の4つです。
見積管理システムを使用するメリット
- 情報の一元管理と成約率の向上につながる
- 見積もり精度の平準化
- 営業プロセスの効率化
- ペーパーレス化
情報の一元管理と成約率の向上につながる
見積管理システムではすべての見積書を一元管理できるため、情報の共有漏れや案件の追跡不能を防ぎ、適切な案件管理を実現します。
また、見積管理システムでは成約率が高い見積書の特徴などの分析も可能です。分析データを営業部門で共有することで、成約率の向上につながります。
見積もり精度の平準化
商品の販売においては、販売個数によって割引率が異なるものや他の商品とのアソート販売が必須なもの、取引先によって販売価格や最低ロットが異なるものなど、取引条件が複雑な場合があります。
また、見積書の作成は顧客の要望に応じた提案を反映するケースも多く、営業担当者の感覚に依存しやすい業務です。そのため、見積書の作成時に各営業担当者が手入力すると商品名が統一されなかったり、誤表記が発生したりする可能性があります。
あらかじめ見積管理システム上で顧客情報や商品情報を分類・整理し、マスタに登録しておけば、営業担当者が誰であっても適切な割引率や誤表記のない商品名で見積書を作成できます。
営業プロセスの効率化
見積管理システムでは営業プロセスが可視化されるので、進捗確認や共有がスムーズになります。
スマホやタブレットなどのモバイル端末からでも操作できるため、外出先や移動中でも見積書の作成や承認フローを進められます。見積依頼から提示までの時間を大幅に短縮でき、スピード感のある対応で顧客満足度や成約率の向上が期待できます。
また、項目・価格・成約率・利益率などを分析することで成約につながりやすい見積データの算出ができ、実績に基づいた事業戦略・経営戦略の立案が可能になります。
ペーパーレス化
従来の見積書は、印刷してFAXや郵送で送ることが一般的でしたが、近年はPDFに変換してメールやチャットツールで送付することが多くなっています。
見積管理システムを活用することで見積書をPDF化するだけでなく、ブラウザ上での閲覧や確認、保管が可能になります。これにより社内のペーパーレス化(デジタル化)を促進し、見積書の印刷や保管にかかるコストを削減できます。
見積管理システムの種類
見積管理システムは、大きく以下の3つに分かれます。それぞれの特徴やメリットについて解説します。
- 専用型
- 販売管理・ERP一体型
- 建設業特化型
専用型
専用型の見積管理システムは見積書作成に特化したシステムで、営業担当者が社外で利用する場合に適しています。
過去の見積書を参照して利用できるため、担当者の感覚や経験に頼ることなくデータに基づいた適切な見積書の作成が可能です。また、機能がシンプルで操作も簡単なので、ITリテラシーにかかわらず十分に活用できます。
販売管理・ERP一体型
見積書の作成だけでなく、出荷管理や請求管理といった部門間のやり取りも自動化したい場合は販売管理・ERP一体型の見積管理システムが適しています。
すでに販売管理システムやERPを導入しており、営業部門とも連携したい場合におすすめです。
ERPはEnterprise Resources Planningの略で、企業の経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報を一元管理する基幹システムです。
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建設業特化型
建設業特化型の見積管理システムでは、資材や人件費、機材などの費用を積み上げ、工事全体にかかる費用を算出する「積算」が可能です。
部品や材料ごとの粗利率を算出したり、現場写真や図面、議事録などの資料を見積書に紐づけたりと、建設現場ごとに柔軟に対応できるシステムもあります。
見積管理システムを選定するポイント
見積管理システムを選ぶ際のポイントは大きく分けて3つあります。
クラウド型かオンプレミス型か
見積管理システムに限らず、システムを導入する際には「クラウド型」「オンプレミス型」のどちらかを選択する必要があります。
クラウド型のメリット
・導入工数や初期費用を抑えられる
・インターネット環境があればいつでも利用可能
クラウド型のデメリット
・オフラインでの利用ができない
オンプレミス型のメリット
・セキュリティ面を強化できる
・自社の運用方法に合わせて自由にカスタマイズできる
オンプレミス型のデメリット
・初期費用が高額になるケースが多い
・社内に専門知識を持った技術者が必要
クラウド型は、自社でサーバーを用意する必要がないため、導入工数や初期費用を抑えることができます。インターネットに接続できる環境であればいつでも利用可能で、テレワークやリモートワークへの対応が可能です。
一方で、オフラインでの使用ができないため、通信障害が起きた場合は一時的に情報へのアクセスができなくなります。初期費用を抑えたい場合や社内に技術者がいない場合はクラウド型がおすすめです。
オンプレミス型は、自社サーバーにシステムを構築します。セキュリティ面を強化できるほか、自社の運用方法に合わせた自由なカスタマイズが可能というメリットがあります。
しかし、オンプレミス型は買い切りや年単位でのライセンス購入が一般的なので、初期費用が高額になるケースが多いです。また、社内に専門知識を持った技術者が必要です。
自社に適した機能を有しているか
見積書作成に必要な項目やフローは、業種や企業規模によって異なります。
特に承認フローは企業によって大きく異なるため、システムに搭載されている機能が自社の見積書作成業務のワークフローに適しているか事前に確認しましょう。
効率化したい業務はどれか
効率化したい業務の範囲とシステムを導入することによって実現できる業務の範囲を比較し、優先順位をつけましょう。
営業部門の見積書作成に伴う業務負担を軽減したいのであれば、テンプレート機能やアシスト機能を備えた見積管理システムがおすすめです。また、スマホやタブレットを使って簡単に見積書の作成・確認ができる手軽さもポイントになるでしょう。
見積書作成だけでなく出荷管理や請求管理といった販売管理の業務全体を効率化したい場合は、販売管理・ERP一体型見積管理システムの導入を検討しましょう。1つのシステムで仕入管理や在庫管理、案件管理などもカバーできます。
まとめ
見積書作成は取引において必要不可欠ですが、営業担当者それぞれの対応に依存しやすく、属人化しがちです。
見積管理システムであれば、誰でも簡単に精度の高い見積書を作成でき、一元管理が可能です。また、営業プロセスが可視化されるので、対応漏れや進捗の遅れの防止にもつながります。
見積管理システムを導入する際は、自社の業務内容に合った費用対効果の高いものを選びましょう。
よくある質問
見積管理システムとは?
見積管理システムとは、見積書の作成・発行・承認フロー・保管などの見積書に関する業務を効率化するツールです。詳しくは記事内「見積管理システムとは」をご覧ください。
見積管理システムのメリットは?
見積書を一元管理できるため、見積書の作成・承認・送付・保管などの管理業務を効率化できます。また、成約率や利益率の分析も可能になり、営業活動の底上げにつながります。詳しくは記事内「見積管理システムを使用するメリット」をご覧ください。