工数管理とは、プロジェクトや業務において必要な作業時間を計画し、実際の作業時間を記録・分析する管理手法です。単位には「人時(にんじ)」「人日(にんにち)」「人月(にんげつ)」などが使われます。
本記事では、工数管理のメリットや具体的な方法を解説します。取り入れやすいエクセルを使った方法と、専用のツールを用いた方法の2種類を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 工数管理とは?
- 工数管理を行うメリット
- 効率的なリソース配分
- プロジェクトの進捗管理
- 生産性の向上
- 利益率の改善
- 工数管理の具体的な方法
- エクセルを使った工数管理
- 専用ツールを使った工数管理
- エクセルを使った工数管理の方法
- 基本的なテンプレートの作成方法
- エクセルの機能を活用した工数管理のコツ
- エクセルを使用する際の注意点
- 工数管理ツールを使った工数管理の方法
- 工数管理ツール選定時のポイント
- 工数管理ツールの導入ステップ
- 工数管理ツールのメリットと注意点
- 工数管理におけるよくある課題と対策
- 必要なタスクが洗い出せていない
- 数値入力後の確認を怠っている
- コミュニケーションが不足している
- 自社に合った工数管理を実現するために
- まとめ
- よくある質問
工数管理とは?
工数管理とは、プロジェクトや業務において必要な作業時間を計画し、実際の作業時間を記録・分析する管理手法です。単位には「人時(にんじ)」「人日(にんにち)」「人月(にんげつ)」などが使われます。
- 人時(にんじ):1人が1時間作業した場合の作業量
- 人日(にんにち):1人が1日作業した場合の作業量
- 人月(にんげつ):1人で作業した場合に1ヶ月かかる作業量
適切な工数管理を行うことで、プロジェクトの進捗状況を把握し、コスト管理やリソースの最適化が図れます。また、問題の早期発見と対策の実施も可能になります。
工数管理を行うメリット
適切な工数管理は、それぞれの業務にかかる時間や工数を可視化し、業務効率の向上・コスト削減に役立ちます。工数管理を行う主なメリットは以下の4つです。
工数管理のメリット
- 効率的なリソース配分
- プロジェクトの進捗管理
- 生産性の向上
- 利益率の改善
効率的なリソース配分
工数管理を行うことで、リソースの効率的な配分が可能になります。
具体的には、各タスクに必要な時間と人員を正確に把握し、適切な人材を適切なタイミングで配置できます。これにより、過負荷やリソースの浪費を防ぎ、全体の作業効率を上げることが可能です。
【リソース配分の例】
- 作業量の過不足調整
- スキルに応じた人員の配置
- 余剰リソースの有効活用
プロジェクトの進捗管理
工数管理は、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握するための有効な手段です。
進行中のプロジェクトが予定通りに進んでいるか、遅延が発生していないかを確認することで、必要な調整を早期に行えます。これにより、プロジェクトの遅延を防ぎ、スケジュール通りに進められます。
また、進捗状況を可視化することで、チーム全体のモチベーションも維持しやすくなるでしょう。
【進捗管理の例】
- 一連の作業の中で時間がかかっているボトルネックの早期発見
- 当初の計画と実際の工数のズレを比較することでの進捗評価
生産性の向上
工数管理により、業務の効率化と生産性の向上が期待できます。
たとえば、最終的な成果や全体に要した時間のみ計測していると、より作業効率を上げるべき箇所が発見できません。生産性を上げるには、多くの時間がかかっているタスクを発見し、そのタスクの手順を見直し改善する必要があります。
これにより、業務全体の生産性を向上でき、より企業としての価値を高められます。
【生産性向上の理由】
- 作業工数の改善
- 無駄な作業の削減
- 中長期に渡る継続的な業務改善
生産性の向上
正確な工数管理は、各プロジェクトやタスクにかかる時間だけでなく、コストの把握にもつながります。それにより予算を適切に管理し、無駄なコストの発見や削減に役立てることができます。
たとえば各工程で外部へ発注している場合、タスクと予算を紐づけて管理することで予算オーバーを回避し、プロジェクトの利益率を上げられるでしょう。
【利益率改善の具体例】
- 各工程ごとの予算を見える化
- 予定コストと実績コストの比較
- 時間単位あたりの利益率の算出
工数管理の具体的な方法
工数管理を効果的に行うためには、適切なツールや方法を選択し、実際に入力・更新していかなくてなりません。工数管理を行う方法として、代表的なのはエクセルと専用ツールの2つがあります。
ここでは、エクセルと専用ツールそれぞれの工数管理の方法について解説します。
エクセルを使った工数管理
エクセルは、工数管理の基本ツールとして広く利用されています。エクセルを使った工数管理には、以下のような特徴と利点があります。
エクセルを使った工数管理のメリット
- 簡単・無料で始められる
- 柔軟なカスタマイズが可能
- グラフやピボットテーブルを利用した視覚的な管理・分析
ただしエクセルの場合、手動入力になるため記入ミスによるデータの正確性への影響や、入力規則を全社で統一しなくてはなりません。またエクセルで大量のデータを扱うのには限界があり、大規模なプロジェクトでの工数管理には不向きです。
専用ツールを使った工数管理
工数管理の専用ツールは、エクセルより高度で効率的な工数管理が可能で、具体的には以下のような利点があります。
ツールを使った工数管理のメリット
- データ入力や集計の自動化
- リアルタイムのデータ共有・更新
- 詳細な分析機能やレポート作成機能
専用ツールの場合、導入コストがかかったり操作の周知に時間がかかったりするのがデメリットです。また、性能はツールの機能に依存するため、自社にあった工数管理ツールを選ぶことが大切になります。
freee工数管理では、シンプルな入力画面で実際に入力する現場担当者がストレスなく使える仕様です。また、管理者側が行う「入力漏れのリマインド」や「入力状況」も自動化されます。
エクセルを使った工数管理の方法
エクセルを使った工数管理は、手軽に始められる方法であり、多くの企業で利用されています。
ここでは、基本的なテンプレートの作成方法から、エクセルの機能を活用した工数管理のコツ、使用する際の注意点まで解説します。
基本的なテンプレートの作成方法
エクセルでの工数管理は、簡単に始められるため、多くの企業で採用されています。基本的なテンプレートの作成方法は以下の通りです。
1. 新規スプレッドシートを作成
エクセルを開き、新しいスプレッドシートを作成します。
2. 必要な項目の列を設定
以下の項目を列として設定します。ガントチャートやWBS(作業構造分解図)など、管理しやすいフォーマットに合わせましょう。
- タスク名
- 担当者
- 開始日
- 終了日
- 予定工数
- 実績工数
- ステータス
3. データ入力のフォーマットを整える
データを入力しやすくするために、セルのフォーマットを整えましょう。セル幅を整えたり、日付形式や時間形式に設定したりなど、視覚的にわかりやすいデザインにします。
- 工数の計算
開始タイミングと終了タイミングの差から工数を算出します。
エクセルの計算式を用いて「工数」列に「=終了日- 開始日」のように入力して自動計算させます。 - スケジュールの設定
開始日と終了日を基に、ガントチャート形式などで進捗を可視化するスケジュール機能を追加すると、より管理がはかどります。
条件付き書式を利用するなどして、進捗状況を色分けするとより効果的です。
エクセルの機能を活用した工数管理のコツ
エクセルには、工数管理を効率化するための多くの機能が備わっています。これらの機能を活用することで、より効果的に工数管理が進められます。
ピボットテーブルの利用
ピポットテーブルは簡単にデータをドラッグ&ドロップで操作でき、視覚的なレポートを作成できます。集計したデータから、進捗やリソースの使用状況を分析するときに役立ちます。
条件付き書式の利用
条件付き書式を利用すれば、特定の条件に該当するセルを自動で強調表示できます。
たとえば、工数が一定以上のタスクを赤く表示させることで、異常値をひと目で確認できるようになります。関数を使えばさまざまな条件で発動できるため、上手く活用すればより効率的な管理が可能です。
VLOOKUP関数
VLOOKUP関数は担当者別の工数をまとめたり、特定のタスクの詳細情報を簡単に参照したりできる関数です。これにより、大量のデータから必要な情報を迅速に引き出せます。
エクセルを使用する際の注意点
工数管理をエクセルで行う場合、エクセルの機能によっては扱いづらい可能性があります。具体的には以下の2点に注意しましょう。
共同編集機能がない
エクセルは共同編集機能がないため、複数のユーザーで同時に編集を行うことができません。同じタイミングで編集してしまうと、どちらか一方のみの内容が更新され、もう一方の内容は反映されないなどの不具合が起きる可能性があります。
複数の部署が関わる案件の工数管理の場合には、事前にエクセルの更新のタイミングなどを擦り合わせておく必要があります。
データ容量が増えるとパフォーマンスが下がる
エクセルはデータの容量が増えると、更新に時間がかかったり、操作が重たくなってしまったりしてしまいます。大規模なデータを管理するのには向いていないため、案件ごとにエクセルのシートを変えるなどの対策が必要です。
工数管理ツールを使った工数管理の方法
工数管理専用のツールを使えば、エクセルを使用するよりも正確かつ簡単に管理できます。ここからはツールを使った工数管理の方法を解説します。
工数管理ツール選定時のポイント
工数管理ツールを選定する際は、以下のポイントを確認しましょう。
工数入力のハードルが低いか
ツール自体が使いにくいと、どれだけ良い機能があっても従業員が使いこなせず、正確なデータが得られません。入力画面が分かりやすく、操作しやすい仕様であれば社内でも周知しやすくなるでしょう。
ほかのツールとの連携ができるか
GoogleカレンダーやOutlookカレンダーと連携して自動入力ができると登録の手間を省くことができます。
また、パソコンだけでなく、スマホやタブレットなどのデバイスからでも手軽に入力できたりすると、リアルタイムでの更新・共有ができ、より適切な工数管理につながるでしょう。
複数プロジェクトの一元管理が可能か
複数のプロジェクトを同時に一元管理できることも大切です。
ガントチャートなどを用いて視覚的に進捗を確認できるツールは、スケジュールの遅延を減らすのに役立ちます。各プロジェクトの進捗や工数を一目で把握できれば、迅速に対応策を講じられるでしょう。
freee工数管理では、シンプルな入力画面で実際に入力する現場担当者がストレスなく使える仕様です。また、管理者側が行う「入力漏れのリマインド」や「入力状況」も自動化されます。
工数管理ツールの導入ステップ
工数管理ツールを導入する基本的なステップは以下の通りです。
1. 要件定義
自社の業務フローや必要な機能を明確にし、ツールに求める要件を定義します。これにより、選定時の基準が明確になります。
2. ツールの選定
前述のポイントを基に、複数のツールを比較検討し、自社に最適なツールを選びます。デモ版や無料トライアルを利用して、実際の操作感を確認するとよいでしょう。
3. 導入計画の策定
導入スケジュールを立て、関係者への説明を行います。ツールの導入に伴う業務フローの変更点も整理しておきます。
4. 試験導入
一部のプロジェクトや部門で試験導入を行い、実際の運用状況や問題点を把握します。この段階でフィードバックを収集し、必要な調整を行います。
5. 全社導入
試験導入の結果を基に、全社的にツールを導入します。関係者へのトレーニングを実施し、円滑な運用をサポートします。
工数管理ツールのメリットと注意点
工数管理ツールを活用すると、データの正確な収集・分析が可能になります。また、工数入力が自動化されることで入力の手間が省け、入力漏れなどのミスも軽減できます。
さらに、プロジェクトごとの進捗やリソースの使用状況をリアルタイムで把握できる点も大きなメリットといえるでしょう。データのバックアップやセキュリティ対策も個別に対応できるため、安全性も高いです。
ただし、自社の業務フローや文化に合ったツールを選定しないと、逆に使い勝手が悪くなる可能性があります。
エクセルとは違い、工数管理ツールは自由なカスタマイズが行えません。選定する際には必ず自社の業務に合っているかを確認し、従業員への十分な説明とトレーニングを行いましょう。
工数管理におけるよくある課題と対策
工数管理は、プロジェクトの効率化や生産性向上に欠かせない要素ですが、適切に行わないと以下のような課題が発生します。
工数管理におけるよくある課題
- 必要なタスクが洗い出せていない
- 数値入力後の確認を怠っている
- コミュニケーションが不足している
工数管理におけるよくある課題への対策について詳しく解説します。
必要なタスクが洗い出せていない
工数管理を行う際には、まずプロジェクトの全体像を明確にし、細かいタスクに分解するのが重要です。
工数管理をするにあたって、必要なタスクがすべて洗い出せていないと、計画と実行の間に大きな乖離がおきてしまいます。
具体的には、プロジェクトに関わる関係者全員でブレインストーミングなどを行い、漏れなくタスクを洗い出しましょう。また、業務を行っていくうえで適宜調整できるようにしておくことも大切です。
数値入力後の確認を怠っている
数値入力後の確認を怠っていると、入力ミスが発生したり、従業員にいい加減な入力でも問題ないと思われたりしてしまいます。
そうすると工数データの信頼性が低下し、工数管理の意味がなくなってしまいます。
工数管理を形骸化させないためにも、入力規則を設定してデータ入力後は必ずダブルチェックを行う習慣をつけるようにしましょう。
また入力を自動化できるツールやタイムトラッキングソフトを導入することで、手動入力によるミスや記入漏れなどを減らすことができます。
コミュニケーションが不足している
工数管理を自動化していても、従業員同士でコミュニケーションが不足していると予想外の事態に対応できません。
たとえば定期的なミーティングを実施したり、チャットツールを用いたりしてスムーズな情報共有が行えるようにしましょう。
ほかにも工数管理ツールのダッシュボード機能を使用して、プロジェクト全体の進捗状況を可視化することで、チーム全体の透明性も高められます。
自社に合った工数管理を実現するために
自社に最適な工数管理を実現するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
自社に合った工数管理を実現する方法
- 現状の把握
- ニーズの洗い出し
- 従業員の教育
- 継続的な改善
まず、現在の工数管理の方法や課題を明確にします。何が問題で、どこを改善すべきかを把握することで、自社の業務フローやプロジェクト管理のニーズに合わせて、必要な機能やツールを洗い出せます。
また新しいツールや方法を導入する際は、従業員への教育やトレーニングが不可欠です。誰でも利用しやすい機能なのか、サポート体制は整っているかなども確認しておきましょう。
工数管理導入後も、定期的に運用状況を見直し、改善を続けることで、より効果的な工数管理が実現します。
まとめ
工数管理は、プロジェクトの効率化と成功に欠かせない重要な要素です。正確な工数管理を行うことで、コスト管理やリソースの最適化が図れ、問題の早期発見と対策が可能になります。
適切なツールや方法を選び継続的に改善を行うことで、プロジェクト全体の生産性を高め、効率的な業務運営を実現しましょう。
よくある質問
工数管理はどのように始めればよいですか?
工数管理を始めるには、まず自社の業務フローを見直し、必要な機能を定義します。
次に、エクセルや工数管理ツールを選定し、試験導入を行います。その後、全社導入を進め、定期的なデータ確認とトレーニングを実施します。
具体的な手順は「工数管理の具体的な方法」をご覧ください。
エクセルで工数管理を行う際のメリットとデメリットは何ですか?
エクセルを使った工数管理のメリットには、「簡単に始められる・柔軟なカスタマイズが可能・視覚的な管理がしやすい」などが挙げられます。
一方で、「データの一貫性や正確性の確保が難しい・データサイズが大きいとパフォーマンスが低下する・バックアップが難しい」などがデメリットです。
エクセルで工数管理を行う具体的な方法は「エクセルを使った工数管理の方法」をご覧ください。
工数管理ツールはどのように選べばよいですか?
工数管理ツールを選定する際には、以下のポイントを考慮しましょう。
- 工数入力の容易さ
- 他システムとの連携
- 複数プロジェクトの管理
詳しくは「ツール選定時のポイント」で解説しています。