監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

2018年は、働き方改革関連法案が整備されたことから「副業元年」と呼ばれました。多くの企業が多様な働き方を認めるようになり、副業を本格的に解禁した企業も多く見られます。
本記事では、副業を始めたいと考えている方に向けて、副業と兼業の違いや代表的な副業の種類、副業を始めるうえでの注意点を解説します。
目次
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副業の定義
副業とは、本業以外の仕事で収入を得ることを指します。兼業・サイドビジネスとも呼ばれ、雇用形態によってアルバイト・在宅ビジネス・内職などに分類されます。
日本では法律で副業が禁止されているわけではなく、就業後の時間の使い方は個人の自由です。そのため、「株式投資で利益を出した」「友人の引越しの手伝いで報酬をもらった」などのケースが懲戒の対象になることはありません。
2018年1月、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、「モデル就業規則」から副業禁止の規定を削除しました。
モデル就業規則が改定されるまでは、労働者の遵守事項に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定がありました。現在はこれを削除し、新たに「副業・兼業」の章を設けて以下のような条文が追記されています。
第14章 副業・兼業
(副業・兼業)
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行う ものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会 社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
これを受け、副業を解禁する企業が少しずつ増えてきました。
しかし、就業規則で副業を厳禁としている企業もまだ少なくはありません。また、副業を許可しているものの、実際に副業を始める際は事前に承認を得る必要があったり、条件が厳しかったりする企業も多いです。本業の企業とのトラブルを防ぐためにも、自社の就業規則は必ず確認しましょう。
複業・兼業との違いとは?
副業と似た言葉に「複業」や「兼業」があります。
複業とは、字が表す通り「複数の仕事をもつこと」です。兼業は「本業以外に事業をもつこと」をいいます。
副業と複業、兼業の違いは以下の通りです。
複業・兼業との違い
- 副業:本業以外の時間に取り組む業務のため、収入や要する時間、労力が本業と比べると少ない傾向がある
- 複業:複数の本業をもつためそれぞれに割く時間や労力が大きく、副業に比べて多くの収入を得やすい
- 兼業:複業に近い概念で、企業に勤務しながら自分でも事業を経営し、本格的にビジネスを行う
それぞれ細かな違いはあるものの、複数の経路から収入を得る手段であることは共通しています。
代表的な副業は?
副業にはさまざまな種類があります。以下で代表的な副業を紹介します。
物販の副業
自らが作成したハンドメイドの作品を販売する副業が、主婦層や一度仕事を離れて子育てに専念していた女性に人気です。
自分でECサイトを立ち上げて販売するのは大変ですが、今はハンドメイドの商品・作品を簡単に販売できる「minne(ミンネ)」などのサイト・アプリがあります。こうしたプラットフォームを利用すれば、初期費用を抑えて低リスクで物販の副業を始められます。
また、作品の制作技術が熟練してきたら、ハンドメイド初心者に作り方を教える講師を副業にする選択肢も出てくるでしょう。
メルカリやネットオークションで不用品を販売する、もしくは安く仕入れて販売する方法も副業のひとつです。ただし、梱包・商品掲載・入札者とのやり取りなどの手間はかかります。
自分でブランドを作りECサイトで販売する副業
自分でブランドを作って販売する、起業のような形でも副業は始められます。
たとえば、ネットショップサービス「BASE」を利用すると、ECサイトの開設から商品販売まで行えます。物を販売するときの最大のデメリットは在庫を抱える点ですが、ECサイトによっては、在庫をもたなくても販売できる場合があります。
もし人気が出てきたら、小ロットから発注できる工場なども活用しつつ、ビジネスを拡大してもよいでしょう。事業が軌道にのれば、独立して個人事業主として開業することも視野に入っていきます。
短期アルバイトで副業
土日や就業後の時間を活用してアルバイトをするのも副業のひとつです。タウンワークの「副業・WワークOKバイト」からは、地域別に副業・WワークOKのバイトを探せます。
平日に仕事があるサラリーマンの場合、副業の時間帯はおのずと夜もしくは休日のいずれかになるでしょう。夜にできるアルバイトの例としては、清掃・警備・ネットカフェ・ビジネスホテルのフロントなどが挙げられます。
また、土日や休日の場合は、単発のイベントスタッフや試験監督のアルバイトなどもあります。
スキルを活かした副業
ご自身がもつスキルを活かした副業もメジャーです。スキルマーケットのココナラでは、さまざまな分野でご自身のスキルを販売できます。
また、クラウドソーシングサイトのランサーズやクラウドワークスにも、自宅にいながらできるライティングやデータ入力などの仕事がたくさん掲載されています。
スキルがあれば高時給で働ける案件は多いですが、まだ未経験の人でも経験を積むことで単価を上げていけるのがこれらの副業のメリットです。
副業禁止の企業でも許容される可能性が高い副業
副業解禁の流れができているとはいえ、依然として副業を禁止する企業は少なくありません。しかし、許容される可能性が高い副業もいくつかあります。
就業規則で副業が禁止されている場合は、一度勤務先に相談をしたうえで、次に紹介する副業を検討してみてはいかがでしょうか。
株式投資、FXなどの投資
株式投資やFXなどの投資による副業は、副業禁止の企業でも許容されることが多いです。
そもそも株式投資・FXは一般的に副業ではなく資産運用と考えられているため、副業禁止の公務員でもおこなうことが許されています。そのため、一般的な企業でも許容されることが多いです。
ただし、企業によっては社内規定で禁止になっている可能性もあるので、一度確認しておくほうが安心です。
ブログ・アフィリエイトサイト運営で副業
ブログやアフィリエイトサイトを運営して収益を得る副業も、空き時間に自分のペースで進めることができ、本業に支障を出しにくいことから許可される可能性が高いです。
特定のテーマで記事を書き、アクセスを集めることができれば、広告収入を得られます。自ら運営するブログやアフィリエイトサイトから広告収入を得る方法には、大きく分けて2種類あります。
ひとつ目は、ブログに自動で広告を配信するGoogleアドセンスです。2つ目は、Amazonアソシエイト、A8.netやリンクシェアなどのASPと呼ばれるサービスをはじめとするアフィリエイトです。
Googleアドセンスは、ブログなどのアクセス数や広告のクリック数などによって広告費が決まります。アフィリエイトの場合は、商品を紹介したリンクもしくはバナー経由で注文があると売上が発生する仕組みです。
アフィリエイトの収益は商品単価の数%〜10%ほどで、扱っている商材によっては月に数十万円程度の収益を出すサイトもあります。
副業をするときの注意点
副業を始める際は、いくつか注意するべきポイントがあります。健全に副業に取り組むためにも、以下の点に気をつけてください。
機密漏えいのリスク
転職する場合に「競合他社への転職は禁止」としている企業もあるほど、機密情報の漏えいに企業は敏感です。
自分は機密を漏らすつもりがなくても、社内での信頼や業務に支障がでる可能性があります。本業の同僚や上司と気持ちよく仕事をするためにも、本業の競合にあたる企業での副業は避けましょう。
また、ほとんどの場合、就業規則に「競業避止義務に関しての記載」があるので確認しておきましょう。競業避止義務とは、在職中に得た知見を利用して所属企業に不利益をもたらす活動を控える義務です。
具体的には、独自技術や営業データなどの知的財産を流用して、自分で事業を営んだり競業する企業へ転職したり、または副業などで従事したりすることは控えなければなりません。
経済産業省が公開する『競業避止義務契約の有効性について』では、競業避止義務についての例文が下記のように記載されています。
(競業避止義務)
第◯◯条
従業員は在職中及び退職後6ヶ月間、会社と競合する他社に就職及び競合する事業を営むことを禁止する。ただし、会社が従業員と個別に競業避止義務について契約を締結した場合には、当該契約によるものとする。
また、競合にあたらない企業であったとしても、本業の機密を漏らすことは倫理的に許されません。
公務員は副業・兼業が法律で制限されている
一般的な会社員と違い、公務員は副業・兼業を行える範囲が法律により制限されています。営利を目的とする企業や団体の役員との兼業、自営業は原則として禁止です。
ただし、内閣総理大臣や所轄庁の長の許可を得ることで副業が認められる場合もあります。
出典:人事院「義務違反防止ハンドブック」
インボイス制度の影響を受ける可能性がある
インボイス制度は、取引先に対して正確な適用税率や消費税額を伝えるための制度です。インボイス制度に登録した事業者は適格請求書(インボイス)を発行でき、取引先は発行された適格請求書に基づいて消費税に仕入税額控除※を適用できるようになります。
※仕入税額控除:仕入にかかった消費税を差し引いて消費税の納税額を計算する制度
適格請求書が発行されない取引には、仕入税額控除が適用されません。

その場合、取引先の税負担が増えるため、取引先によっては請求時に適格請求書の発行を求めてくる場合があります。ただし、適格請求書を発行するためにインボイス制度に登録する場合、消費税の納税義務が発生することを覚えておかなければいけません。
通常、課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税義務が免除される「免税事業者」として扱われます。しかし、インボイス制度に登録すると消費税の納税が義務付けられている「課税事業者」となり、負担する消費税の分だけ副業で得る手取りが減ってしまいます。
なお、取引先が事業者ではなく一般消費者の場合はインボイス制度の対象外となるため、適格請求書の発行の有無を気にする必要はありません。
副業は無理のない範囲で取り組む
本業の就業後や休日などの空いた時間に副業に取り組む場合、全体の労働時間が増えます。
副業に集中しすぎて労働時間が極端に増えると、体に負担が生じやすいため気をつけてください。たとえば、自分の時間を確保できずに睡眠不足になったり、疲労が溜まって体に不調が生じたりする可能性もあります。
睡眠不足や体の不調は、本業に支障が生じる原因になりかねません。副業は自己管理をしっかり行ったうえで、無理のない範囲で取り組みましょう。
所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要
通常、サラリーマンは勤めている企業が毎月給料から所得税を源泉徴収という形で徴収し、年末に行われる年末調整によって所得税の納税手続きが完了します。そのため、基本的には自ら確定申告を行う必要はありません。
しかし、「副業の所得が1年間で20万円を超えた場合」は、サラリーマンであっても確定申告をする必要があります。
所得とは、副業で得た売上から発生した経費を差し引いた金額です。たとえば、年間の売上が100万円あったとしても、経費に85万円かかっていれば所得は差し引き15万円になるので、確定申告は不要です。
【関連記事】
副業で確定申告が必要な所得はいくらから?未申告のペナルティややり方も解説
青色申告とは?白色申告との違いや豊富なメリット、必要な準備・書類を解説
まとめ
厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を定めてからは、徐々に副業を認める企業が増えてきました。
副業の種類は多様で、たとえばハンドメイド作品を販売したり、短期アルバイトをしたりといった仕事が挙げられます。
ただし、すべての企業が副業を認めているわけではありません。副業を始める際は、念のため企業の就業規則を確認しましょう。また、副業を始めると確定申告が必要になる人も出てくるため、会計ソフトの契約などもあわせて検討しておくと安心です。
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3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
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事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。

申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。

給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。

さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。

入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。

届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
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また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
どこから副業に該当する?
基本的に本業以外に収入を得ている場合は、副業とみなされます。ただ、中には株式投資のように、得るお金が譲渡益のため副業に当たらないとする場合もあります。
詳しくは「副業の定義」をご覧ください。
副業をするときに気をつけるべきことは?
副業に取り組む際は、機密漏えいのリスクがあることやインボイス制度の影響を受ける可能性があることを覚えておきましょう。また、公務員の場合は、副業・兼業が法律で制限されている点にも注意が必要です。
詳しくは「副業をするときの注意点」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
