副業の基礎知識

副業の経費はどこまで計上できる? 条件や赤字のときの確定申告まで解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

副業の経費はどこまで計上できる? 条件や赤字のときの確定申告まで解説

副業の所得が雑所得、事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかに該当する場合、事業運営のためにかかった費用は経費計上ができます。正しく経費を計上することは、節税につながります。

経費として認められるのは「業務に使用した支出」のみですが、業務とプライベートの両方で使用している場合は、家事按分を行うことで費用の一部を計上できます。副業の業務を自宅で行っている人であれば、家賃や水道光熱費なども家事按分することで経費とできます。

本記事では、副業で経費にできる所得の種類や家事按分の方法ほか、経費計上するにあたっての注意点を解説します。

目次

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副業で経費計上ができる所得

所得は、所得税法により10つに区分されます。そのうち、経費計上が認められる所得は以下の4つです。

経費計上が認められている所得の種類

  • 雑所得
  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 山林所得

副業による収入であっても、パート・アルバイトのように企業と雇用契約を交わして業務にあたっているのであれば、その所得区分は「給与所得」に該当し、経費計上はできません。ただし、給与所得は年末調整や確定申告時に給与所得控除が適用されます。

上記4つの所得について、それぞれ解説します。

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雑所得

雑所得とは、所得税法で分類されているほかの9種類の所得に該当しない所得のことです。

雑所得に該当する副業の例

  • ネットショップでの販売
  • ネットオークション
  • フリマアプリでの販売
  • 講演料
  • FX など

副業による所得の多くは、事業所得に該当しないため雑所得に分類されます。副業で得た所得のうち、たとえば以下などが雑所得にあたります。このほか、年金収入や事業所得以外の不動産貸付による所得も、雑所得に該当します。

出典:国税庁「No.1500 雑所得」

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事業所得

事業所得とは、農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業などの事業から生じる所得をいいます。

副業であっても、その所得を得るための活動が社会通念上、事業と称するに相当すると判断されれば、事業所得と認められます。

事業所得であれば、青色申告の対象です。事前に青色申告承認申請書を所轄の税務署に届け出ることで、青色申告が可能になります。青色申告で確定申告を行うことで、経費計上に加えてさまざまな節税メリットを受けることができます。

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青色申告のメリットとは?

出典:国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」

雑所得と事業所得の違い

雑所得と事業所得は混同されがちですが、雑所得と事業所得の明確な差は「事業活動によって得た収入かどうか」です。

事業所得とは、事業を営んで得た所得で、継続して毎月安定した収入があるなど、一定の条件に該当した場合に認められます。一方の雑所得は、一時所得や給与所得、事業所得といった所得の種類のいずれにも該当しない所得です。

たとえば、会社員が業務時間外にブログを書いて広告収入を得た場合、作業時間や収入額から事業とは判断されず、雑所得とみなされるケースが多いといえます。

しかし、広告収入やアフィリエイトで安定的に生計が立てられる所得を得ている場合は、事業所得とみなされるケースもあります。金額などで一律に判断できるものではないので、自身で判断が難しい場合は税務署や税理士に相談しましょう。

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事業所得とは?申告方法や雑所得との違いや判断基準を解説

不動産所得

不動産所得とは、アパートやマンションなどの不動産の貸付けや、駐車場・土地の貸付け、船舶・飛行機などの貸付けによる所得を指します。ほかにも地代家賃や更新料、返還義務のない敷金なども不動産所得に該当します。

たとえば、下宿であっても部屋の貸付けのみであれば不動産所得になります。しかし、食事を提供するなど不動産所得に該当しないサービスも付随する場合は、事業所得または雑所得に該当します。

【関連記事】
アパート経営は不動産所得?事業所得?「確定申告」はどうするの?

出典:国税庁「法第26条《不動産所得》関係」

山林所得

山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のまま譲渡したりして得た所得です。土地付きで売った場合は、山林による所得が山林所得、土地による所得は譲渡所得になります。

ただし、山林を取得してから5年以内に譲渡した場合は、山林所得ではなく、事業所得または雑所得となります。

山林を15年以上所有している場合は、概算経費控除という特例の適用対象です。

出典:国税庁「No.1480 山林所得」

副業で経費計上できるもの

事業のために支出した費用であれば、副業であっても経費計上が可能です。副業の業務を自宅で行っている場合は、自宅設備の費用も事業のために支出した費用とみなされるので、一部を経費に計上できます。

経費計上できるものとして、以下のものが挙げられます。

副業で経費計上できるもの

  • 家賃
  • 事業に必要な設備や消耗品にかかる費用
  • 各種保険料
  • 交際費、調査費 など

家賃や自宅のネット回線などプライベートと業務の双方で利用している費用の一部は、按分して経費計上します。具体的な計算方法は後述します。

家賃

家賃も経費計上が可能です。事務所を借りている場合は、事務所の家賃を経費とできます。事務所を借りず自宅で副業の業務を行っている場合は、家賃を「業務で利用する割合」で按分して経費計上します。

事業に必要な設備や消耗品にかかる費用

副業を行ううえで必要となる設備費用に関しても、経費として計上できます。たとえば、電化製品や文房具などの小物や衣類も、業務での必要性によって経費に該当します。

消耗品で経費計上できる支出

  • パソコン、携帯電話、インターネット回線
  • 水道光熱費
  • 自家用車、バイク
  • 文房具類 など

通信機器や水道光熱費、自家用車などは、業務とプライベートで利用している場合は、家賃と同じく家事按分の対象です。

各種保険料

事業で使用する設備にかけている各種保険の保険料も、経費として計上できます。

各種保険料で経費計上できる支出

  • 自宅兼事務所や事務所の火災保険料、地震保険料
  • 事業に利用する自動車の自動車保険料 など

自宅の火災保険料や地震保険料も、自宅で副業をしている場合は、家賃と同じく按分して計上が可能です。

交際費、調査費

事業で必要であれば、飲食代や書籍購入費、交通費も経費として計上できます。

交通費、調査費用で経費計上できる支出

  • 顧客との打ち合わせに利用した外食費
  • カフェ代
  • 書籍購入費
  • 取材のための交通費 など

プライベートとの線引きが難しいものも多いですが、業務に必須かどうかが判断基準です。たとえば「カフェで仕事をした」場合、カフェを利用する費用としてコーヒー代は経費となる可能性があります。しかし、「ついでに食事もした」場合は個人的な飲食となり、経費とは認められにくいでしょう。

副業で経費に計上できないもの

業務に影響のある支出であっても、業務に直接必要でなければ経費には該当しません。具体的には以下などが該当します。

経費に計上できない支出

  • 医療費や生命保険料
  • 健康維持のための諸経費 など

医療費、生命保険料は経費計上できませんが、医療費には医療費控除、生命保険料には保険料控除を適用することで支出の負担を軽減できます。なお、生命保険料は基本的に経費になりませんが、事業融資を受ける条件として生命保険契約が必要であれば、経費として計上できます。

健康維持のための諸経費には、スポーツジム代などが該当します。健康を害すると業務に悪影響が出ますが、業務に必須ではないので経費にはなりません。

出典:国税庁「事業用固定資産の取得に伴う生命保険契約の保険料」

プライベートと兼用しているものは按分が必要

自宅を事務所や店舗と兼用している場合、家賃や光熱費も経費として計上可能です。

しかし、経費はあくまで「事業を営む上で必要な費用」のみ該当するため、事業運営のために利用した分のみを算出し経費計上する必要があります。これを家事按分といいます。

家事按分の方法は大きく以下の2つあります。

家事按分の方法

  • 居住スペースと事業で使用している「スペースの割合」から求める方法
  • 事業で使用している部屋を使用した「時間の割合」から求める方法

以下は、「スペースの割合」から求める方法で副業分の使用割合および費用を求める例です。自宅の総面積から副業で使用している面積を割り出し、その割合を家賃に掛けて副業で使用している費用を求めます。

【「スペースの割合」から家賃を家事按分する例】

  • 1ヶ月の家賃:10万円
  • 自宅総面積:100㎡
  • 副業で使用している面積:30㎡

総面積から副業で使用している面積の割合:30㎡ ÷100㎡ = 30%
経費にできる額:100,000円 × 30% = 30,000円(1ヶ月あたり)

このとき、白色申告では、その設備に関する支出金額が50%を超える場合に限り、業務上必要な費用と判断され、経費計上が認められます。ただし、50%以下であっても業務に必要な部分を明確に区分できれば経費として計上可能です。

なお、経費計上の際には金額の証拠が必要ですが、これは家事按分を行う場合であっても同様です。プライベートな支出は領収書など証憑の管理が疎かになりがちですが、支払った金額を証明できる書類は保管するようにしましょう。

出典:国税庁「〔家事関連費(第1号関係)〕」

家族への支払いは経費にならない

業務上必要があっても、生計を同じくする家族への支払いは経費にできません。「生計を同じくする」とは、同じ財布で家庭の支出を行っている状態を指し、配偶者や両親だけでなく親族も対象です。

たとえば、同居している両親の実家の一室を業務で利用し、両親に家賃の支払いをしている場合は、支払ったお金は経費になりません。

ただし、生計を同じくする家族が本人の業務利用分を含めて費用の支払いをしている場合は、経費として按分対象になります。たとえば、夫が妻の事業スペースを含む家賃を外部事業者にまとめて支払っている場合、妻は事業スペース分の家賃を家事按分して経費計上が可能です。

出典:国税庁「No.2210 必要経費の知識」

家事按分について詳しく知りたい方は、別記事「家事按分とは?個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法についてわかりやすく解説」をご覧ください。

減価償却も按分の対象になる

減価償却とは、「1年以上継続して使用し、かつ取得価額が10万円以上の資産」について、経費を毎年分割して計上する方法です。建物や車、パソコンなど時間の経過によって価値が減る資産は減価償却の対象で、家事按分して経費計上できます。

減価償却の計算法には、定額法と定率法の2種類あります。

減価償却の計算方法

  • 定額法:毎年、取得額に償却率を乗じる方法。償却率は減価償却の対象となる物品の耐用年数により異なる。毎年の経費計上額は一定になる
  • 定率法:前年に償却しきれなかった資産額に対して償却していく方法。経過年が長くなるほど、経費計上額が減っていく

出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」

個人の業務では定額法が用いられることが一般的です。耐用年数償却率は、ともに国税庁のサイト上で公開されています。

【定額法の計算式】

減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

たとえば、40万円のパソコンを購入して業務に使用した場合、家事按分前の減価償却費は以下の式で計算されます。パソコンは耐用年数4年のため、償却率は0.25です。

400,000(円) × 0.25 = 100,000(円)

この減価償却費を、毎年、業務利用分とプライベート利用分で按分します。たとえば1年目は業務とプライベートの利用が半分ずつ、2年目は業務利用が9割であれば、1年目は5万円、2年目は9万円が経費計上できます。

出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
出典:「主な減価償却資産の耐用年数表」
出典:「減価償却資産の償却率等表」


【関連記事】
減価償却とは?償却できる資産や計算方法、耐用年数をわかりやすく解説

副業の経費を計算する際の注意点

副業でも必要経費を計上すれば、節税対策ができます。しかし、誤った計算をすると、二重計上など虚偽申告につながる可能性もあるため、経費を正しく計上するためのポイントを確認しておきましょう。

クレジットカードは決済日に計上

クレジットカードは利用した日(決済日)と精算日(引き落とし日)が異なります。経費計上では、利用した日を計上日として計算します。

また、クレジットカードの利用明細は利用日の証明には使えません。クレジットカード会社のシステムにより、明細上の利用日が実際の利用日より数日遅れた日付で記載される場合があるので注意しましょう。

クレジットカードを利用した際のレシートは利用日および支払い金額の証拠となるので、保管しておきましょう。クレジットカードの利用明細とレシートをセットで保存し、経費計上したレシート分の利用明細を消し込んでいくと、二重計上の防止にも役立ちます。

経費の証憑は保管が必要

経費計上した支出を証明する書類は、所得税法によって保管期間が定められています。確定申告の青色申告と白色申告でそれぞれ期間が異なるので注意しましょう。

青色申告の場合は、確定申告の翌日から7年間の保存、白色申告の場合は5年間の保存が義務付けられています。対象となる書類は、レシート、領収書、請求書などです。

また、1枚のレシート内で経費になるものとならないものが混在している場合は、経費分に線を引くなどして、わかるようにしておくとよいでしょう。

出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

青色申告をするためには条件がある

確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。青色申告では最大65万円の青色申告特別控除が受けられるため節税に効果的ですが、青色申告を行うにはいくつかの条件を満たさなければなりません。

青色申告の対象となる条件

  • 定められた期日までに青色申告承認申請書を提出していること
  • 所得の種類が事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかあること

青色申告をするためには、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出しなければなりません。年の途中で開業した場合は、開業から2ヶ月以内に提出が必要です。提出しなかった場合は、自動的に白色申告となるので注意しましょう。

出典:「No.2070 青色申告制度」

【関連記事】
青色申告ができる条件、できない条件をそれぞれ解説!

経費の事後申告は原則認められない

2023年分以降、領収書や請求書などの取引内容等が分かる資料が無く、かつ、無申告や確定申告書に費用が記載されていない場合は、原則として事後に経費計上をすることができなくなりました。

領収書や請求書が無い場合でも、帳簿などで経費であることを明確に証明できれば事後でも認められますが、確定申告時に抜け漏れがないよう、普段から帳簿類を整理しておきましょう。

出典:国税庁「5 証拠書類のない簿外経費についての損金不算入措置」

経費を差し引いた所得が20万円を超えると確定申告が必要

副業の所得が20万円を超えると、確定申告が必要です。所得は収入から経費を差し引いた金額で、所得の種類によっては控除が適用される場合もあります。

【関連記事】
副業をしている場合の確定申告はどうなる?副業の確定申告のやり方を解説!

まとめ

副業でも雑所得・事業所得・不動産所得・山林所得に該当する場合は経費計上が可能です。経費として認められるのは「副業をする上で発生した支出」のみで、プライベートによる支出は経費計上できません。

2023年の確定申告提出分からは、明確に経費であることを証明できないものは損金不算入とされるので注意しましょう。

また、副業で得た収入から必要経費を差し引いた所得額が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。経費を漏れなく計上することは、納める税金を最低限に抑えることにつながるので、経費はしっかり計上しましょう。

※2022年10月12日更新※

国税庁は2022年8月1日に「副業収入300万円以下は事業所得ではなく雑所得にする」とのパブリックコメントを提出しましたが、これに対して約7,000件もの意見が集まり、10月7日に大幅な修正案が発表されました。

修正案では「副業収入において、帳簿や請求書などを保存している場合は原則『事業所得』とする」とあり、帳簿や請求書などの保存をしていれば収入額にかかわらず、事業所得として認められるという内容です。

詳しくは国税庁の公表した【「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募の結果について】をご確認ください。

よくある質問

副業の所得のうち、雑所得以外にも経費計上が認められる所得はある?

10種類ある所得のうち雑所得、事業所得、不動産所得、山林所得の4つは経費の計上が認められます。給与所得は経費計上ができませんが、代わりに給与所得控除を受けられます。

詳しくは記事内、「副業で経費計上ができる所得」をご覧ください。

経費計上できる支出にはどのようなものがある?

経費として認められる支出には、家賃、事業に必要な設備や消耗品にかかる費用、各種保険料、交際費、調査費などが含まれます。ただし、いずれも事業に必要な支出に限ります。また、自宅をプライベートと副業で兼用している場合には、家事按分することで、副業の使用分を経費計上できます。

詳しくは記事内、「副業で経費計上できるもの」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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