経費精算の基礎知識

経費が節税となる理由と仕組みとは?注意点についても解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

経費が節税となる理由と仕組みとは?注意点についても解説

経費は節税につながります。法人税をはじめとする節税の仕組みを理解できれば、手元の資金を残しながら経営を安定させやすくなります。さらに、適切なタイミングで経費計上することによって、資金繰りに悪影響が出ることもありません。

本記事では、経費による節税の仕組みや節税する際の注意点、経費以外で節税する方法などを詳しく解説します。

経費については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

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経費とは?計上できる費用や税金との関係をわかりやすく解説

目次

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経費が節税となる理由

経費が節税につながる理由は、事業の支出を経費として計上すると課税所得が減り、納税額を抑えられるからです。

特に法人では、決算の時期が近づくと法人税の支払いを意識するようになります。税負担を軽くする方法のひとつとして、経費計上が挙げられます。経費計上とは、事業に関連する支出を経費として処理することです。

経費が増えると利益は圧縮され、結果的に課税所得が減少します。課税所得が減ることで法人税の計算基準の金額が低くなり、納税額を抑えられるのです。

手元に残る資金が増え、事業経営に必要なキャッシュフローの確保も可能になります。このように経費計上は節税対策の一環であり、そのためには適切な会計処理が欠かせません。

なお、「経費で落とすのはずるい」という意見がよくありますが、経費で発生する支出は事業資金で支払っているため出費が発生しています。経費で落としても、決してタダで手に入れているわけではありません。

法人・個人事業主の節税対策については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

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個人事業主の節税対策|基礎知識と活用すべき制度
法人の節税対策とは? 正しく税負担を軽減する方法

経費で節税できる仕組み

経費計上するとその分の課税所得が減り、結果として納税額が減ります。法人税の税額は、課税所得に税率をかけることで決定します。そのため、経費計上することで損金が増え、税金の対象となる利益を減らせる仕組みです。損金とは、税務処理をするにあたって経費にできる資産の消費を意味します。損金は一定の条件に当てはまらないと、経費にならない場合があります。

決算前に経費計上できるものとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 修繕工事
  • 研究開発費
  • 広告費
  • 従業員の福利厚生費
  • 業務に必要な消耗品費

事業に必要な支出を正しく経費計上すれば、税金の負担を軽減できます。

課税所得の算出方法

課税所得の算出方法について、以下の例を使って簡単に解説します。

経費なしの場合


  • 収入:500万円
  • 経費:0円
  • 課税所得:500万円

経費ありの場合(例として100万円の経費計上)


  • 収入:500万円
  • 経費:100万円
  • 課税所得:400万円

課税所得は、「収入 − 経費 = 課税所得」で算出できます。上記の例のように経費計上すると課税所得が減り、法人税の負担が軽くなります。

ただし、過剰に経費計上するとキャッシュフローの悪化につながるため、財務状況を考慮しながら適切に行いましょう。

経費で節税するときの注意点

経費を活用した節税は、正しく活用すれば税金の負担を軽減できます。しかし、不要な経費計上が頻発したり計画性のない支出を繰り返したりすると、キャッシュフローの悪化を招くため注意が必要です。

経費で節税するときの主な注意点は、以下のとおりです。

  • 不要な経費計上はキャッシュフロー悪化につながる
  • 経費計上するタイミングを意識する

それぞれの注意点について、以下で詳しく解説します。

不要な経費計上はキャッシュフロー悪化につながる

節税のために不要な経費を増やしてしまうと、キャッシュフローの悪化につながり、事業運営に支障をきたす恐れがあります。

たとえば、決算が近いからといって焦って高額な設備を購入すると、一時的な税負担は減ったとしても、運転資金が不足して事業の継続に悪影響を及ぼします。

また、不要な支出は利益圧縮にはなるものの、実際には現金の支出が発生するため、資金繰りが悪化しやすくなる点にも注意しましょう。

税金の負担を減らすことだけを目的に経費を使うのではなく、事業の発展に本当に必要な支出なのかを判断することが肝心です。

経費計上するタイミングを意識する

節税対策の効果を高めるためには、経費計上するタイミングを意識することが重要です。適切なタイミングで支出を管理すれば、納税額をある程度コントロールしつつ、事業資金を確保できます。

まずは、事業年度の開始前と四半期ごとに損益予想を行い、年間の収益と費用のバランスを把握しましょう。そうすることで、年度末に慌てて経費を増やすリスクを防げます。

また、経費は事業年度の早い段階で活用することをおすすめします。事業年度の早い段階で経費を活用できていれば、年度末に利益が予想以上に上振れた場合であっても、必要な範囲内で調整しやすくなります。

その場合も不要な経費を計上するのではなく、消耗品の補充や業務効率化につながる設備投資など、計画的な支出を意識しましょう。

決算月には最終的な利益調整を行い、必要に応じて適切な節税対策を実施します。無計画な経費増加はキャッシュフローを圧迫するため、財務状況を踏まえたうえで、慎重な判断が必要です。

経費以外の節税方法

節税対策には、経費を活用する方法以外にも、以下の方法が存在します。

  • 短期前払費用の損金算入や未払費用の計上を行う
  • 要らない固定資産を売却する
  • 少額の消耗品を買い替える
  • 決算賞与を支払う

上記の節税対策を適切に行えば、税金の負担を軽減しながら事業資金を有効に活用できます。

それぞれの節税方法については、以下で解説します。

短期前払費用の損金算入や未払費用の計上を行う

前払いや後払いの費用を適切に計上すると、節税効果が高まります。前払費用とは、継続的な役務に対して支払ったものの、まだサービスを受けていない部分の費用のことです。たとえば、家賃やシステムリース料、月額課金型のサービスなどが該当します。

この前払費用のうち、支払日から1年以内に提供される役務の短期前払費用は、支払時の損金計上が可能です。

一方、未払費用(後払い)も適切に処理すれば、節税につながります。たとえば、社会保険料は当月分を翌月に支払うため、1ヶ月分を未払費用として計上できます。

水道光熱費やリース料など、翌月払いとなる費用も当月の経費として計上可能です。

要らない固定資産を廃棄する

要らなくなった設備や未償却部分の簿価が高い固定資産を廃棄すると、除却損として計上でき、節税につながります。特に、大規模な設備を処分する場合は損失額が大きくなり、その分利益の圧縮が可能です。

さらに固定資産を除却すると、償却資産税の節税が期待できます。償却資産税とは、事業で使用する構造物や機械装置などに対して、市区町村が課税するものです。

資産を除却すれば課税標準額が減少し、税金の負担を抑えられます。税率は標準で1.4%ですが、市区町村によって異なる場合もあるため、確認しておきましょう。

少額の消耗品を買い替える

30万円未満の消耗品を買い替えることも、節税対策のひとつです。青色申告を行っている中小企業者等は「少額減価償却資産の特例」を利用でき、1事業年度あたり最大300万円までまとめて経費計上が可能です。

ただし、少額減価償却資産として計上した場合は「償却資産税」の対象になる点に注意しましょう。

一方で、20万円未満の取得価額だと「一括償却資産」として、3年間で均等償却もできます。この方法では「償却資産税」が非課税となります。

決算賞与を支払う

決算賞与を計上すれば、法人税の負担を軽減できます。もし翌期に支給する場合でも、一定の条件を満たせば決算期の経費として認められます。

具体的な条件は以下のとおりです。

  • 決算賞与を支給すること及び支給額を全従業員に通知する
  • 通知後1ヶ月以内に支給を完了する
  • 通知した年度内に損金処理を行う

上記の条件を満たして決算賞与を支給すれば、従業員のモチベーション向上に加え節税対策の両方でメリットが得られます。

まとめ

経費を適切に計上すれば、課税所得を減らして法人税などの負担を軽減できます。特に、決算前は必要な経費を見直して、適切な節税対策を行う必要があります。

ただし、不要な経費を増やすとキャッシュフローが悪化するため、財務状況を考慮しながら計画的に活用することが重要です。正しく節税を行うためにも、会計処理のルールを守りつつ、事業の成長や発展を見据えた判断が求められます。

また、節税対策には経費計上だけでなく、前払費用や未払費用の損金計上、不要な固定資産の処分などさまざまな方法があります。これらの対策を組み合わせれば、より効果的に節税が可能です。

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よくある質問

経費はなぜ節税になる?

経費を計上すると、その分だけ利益が圧縮されて課税所得が減少します。法人税は課税所得をもとに計算されるため、経費を上手く活用すれば納税額を抑えられます。

詳しくは、記事内の「経費が節税となる理由」をご覧ください。

経費で節税できる仕組みは?

経費を増やすと損金が増え、結果として課税所得が減少します。課税所得は「収入 − 経費 = 課税所得」で算出でき、課税所得に応じて法人税の納税額が決まります。経費を適切に計上すれば、納税額を抑えられる仕組みです。

記事内の「経費で節税できる仕組み」で、詳しく解説しています。

経費で落とすことはずるい?

「経費で落とす」とは、事業に必要な支出を経費として計上することを指します。実際には事業資金から支払っているため、タダで手に入れている訳ではなく、適正な会計処理に基づいたもののため、「ずるい」というのは誤解です。

詳細は、記事内の「経費が節税となる理由」をご覧ください。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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