経費精算の基礎知識

経費精算は月またぎでも問題ない?できるケースとできないケース、計上漏れとならないポイントを解説

監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ

経費精算は月またぎでも問題ない?できるケースとできないケース、計上漏れとならないポイントを解説

経費精算が月またぎとなってしまっても、基本的に翌月に経費精算を行うことが可能です。経費精算が月またぎとなるケースとしては、月末から翌月初にかけての出張が発生したり、繁忙期の忙しさから経費精算を忘れてしまったりすることが挙げられます。

ただし、月をまたいだ経費精算は通常の精算手続きとは異なる流れになるため、経理担当者に余計な負担がかかることがあります。とくに年度末の経費が申請期限に間に合わない場合は、大きなトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。

本記事では、月またぎの経費精算が認められるケースや、月をまたいだ経費精算を防ぐためのポイントについて解説します。

目次

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経費精算は月またぎでも可能

経費精算は月またぎでも処理できます。そもそも月またぎの経費精算とは、その月に発生した経費を翌月に精算することです。たとえば、10月に発生した経費を11月に精算する場合が該当します。

月末が繁忙日だったり、月末から月初にかけて出張が発生したりするなど、月内の経費精算が困難なケースは多々あります。このように月内に経費精算できなかった場合、会社ごとの規程にもよりますが、一般的には翌月の経費精算が可能です。

しかし、本来月内に行うはずの経費精算が翌月に持ち越されるため、経理担当者は通常と違うフローでの処理が必要になり、負担が増えることになります。

また、万が一年度末に経費精算できなかった場合は、計上漏れが発生することで税務上のトラブルにもつながるため注意しましょう。

従業員ができるだけ月内に経費精算をスムーズに済ませられるように、経理担当者は経費精算に関するルールを定めたり、マニュアルの作成を行ったりする必要があります。

経費精算の期限については以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。

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経費立替は違法?経費ハラスメントにならないための精算ポイントを解説

月またぎで経費精算できるケース

会社の業務によっては、経費精算が月内に間に合わず、月をまたいで処理が行われることも珍しくありません。月またぎで経費精算できるケースは、主に3つのケースが挙げられます。

経費の利用期間が月またぎになった

月またぎでの経費精算の代表例として、出張が挙げられます。たとえば10月末に出発し、11月初旬に帰ってくるスケジュールの出張が発生した場合、出張にかかった交通費や宿泊費は月をまたいで発生します。

このような場合は、翌月にまとめて経費精算を行うのが一般的です。出張先から経費精算を申請できれば理想的ですが、実際には領収書や経費精算書を提出して、上司から承認を得ることを考慮すると、出張先から経費精算申請を完了するのは難しいでしょう。 そのため、帰社後にまとめて経費精算することになりますが、このケースは月またぎでも問題なく認められます。

月末や年度末の最終日に経費がかかった

月末や年度末最終日に経費を立て替えた場合でも、精算が間に合わなければ、翌月や翌年度の精算が可能です。

経費精算は、実際に支払いを行った日から数日後に書類をまとめて請求する場合もあります。経費を支払った日が月末なら、書類の準備が間に合わないことも考えられるためです。

また、営業担当者で外出が多い場合は、経理担当者がいる時間帯に帰社しなければ経費精算ができず、月をまたぐ可能性が高くなります。

月末に立て替えた経費については翌月精算になってしまいますが、このケースにおいても月またぎや年度またぎの経費精算自体は可能です。

経費精算申請が月末に間に合わなかった

経費精算申請には通常、上司の承認が必要です。上司が外出や出張で不在にしていたり、多忙だったりする場合は、月末までに経費精算申請が完了しない可能性も考えられます。

また、リモートワークが中心で出社が少ない従業員の場合は、経費精算書を上司に提出する機会がないというケースもあるかもしれません。このような状況の場合も、月またぎでの経費精算が認められます。

月またぎで経費精算できないケース

月またぎで経費精算できるケース」で解説したように、やむを得ない月またぎの経費精算は基本的に認められています。しかし、一部のケースでは月またぎでの経費精算ができないため注意が必要です。

経費精算規定の期限を過ぎている

経費精算は、会社の就業規則や経費精算規程に従って運用されるのが原則です。それぞれの規程で経費精算の申請期限や、期限を超過した際の対応方法が定められています。そのため、経費精算の期限を過ぎている場合は、経費精算が認められません。

また、申請期限を過ぎた場合の対応方法についてもあわせて記載されていることもあるため、ルールを確認した上で適切な対応が必要です。とくに繁忙期の経費精算は忘れてしまう可能性もあるため、早めの申請を心がけましょう。

決算日から2ヶ月以上経過している

会社は法律上、決算日から2ヶ月以内に税務申告を行う必要がありますが、万が一、年度またぎの経費精算をする場合、修正申告が必要になってしまいます。

一般的に、月またぎの経費精算は認めていても、年度またぎの場合は処理が難しい会社は少なくありません。

月またぎの経費精算が起こる原因

月またぎの経費精算が発生する原因としては、従業員の申請漏れ以外にも、社内の運用体制やフローに問題があることも考えられます。経費精算のフローが複雑だったり、承認に時間がかかったりすると、月またぎになってしまう可能性があります。

紙での経費申請が主流で、経費精算システムを導入していない企業では、このような問題が頻発しがちです。

経費精算の社内フローが複雑

経費精算書を紙媒体で運用している企業の場合、とくに交通費のように頻繁にかかる経費については記入や提出に手間がかかり、遅れが生じる場合があります。

紙媒体の経費精算書は、手書きに加えて領収書を貼り付けて提出が必要になるため、従業員の手間が大きいことから後回しにされがちです。

また、経費精算システムを導入している企業であっても、従業員がシステムに慣れていない場合やマニュアルが整っていない場合など、申請がスムーズに進まず月またぎでの経費精算が発生することがあります。

その場合は、従業員に対して研修を実施したり、使いやすい経費精算システムに切り替えたりするなどの対策が必要です。

経費精算の承認に時間がかかっている

経費精算の承認プロセスが遅れることも、月またぎの経費精算が発生する原因につながります。とくに、紙媒体の経費精算書を使っている企業では、上司や承認者が不在だったり別の業務などで忙しかったりする場合、承認印を押してもらえず申請が進まないケースもあります。

さらに、承認手続きが複数の関係者によって行われる場合、それぞれの関係者による承認作業が必要です。そのためひとりの承認が遅れれば遅れるほど、経費精算の遅延が発生します。

社内の負担を減らすため月またぎの経費精算を防ぐポイント

経理担当者の負担を増やす月またぎの経費精算を防ぐには、会社の運用体制やフローを改善する必要があります。

従業員に対して経費精算のルールや手続き方法をしっかり周知し、効率化を目指しましょう。

経費精算の社内フローの周知を徹底する

月またぎの経費精算を防ぐポイント」で説明したように、経費精算の運用方法がわかりづらく、従業員が把握できていない場合は経費精算の申請漏れが増えてしまいます。とくに、経費精算の申請期限や提出フローが不明確だと、正しいタイミングでの経費申請ができない場合があります。それによって月またぎの経費精算につながるのです。

ルールや申請期日が決まっているのであれば、従業員一人ひとりが理解できるまで周知する必要があります。周知する手段としては、社内の掲示板やメール、定期的な研修を活用するのが効果的です。

また、従業員が確認しやすいように、ポータルサイトなどのすぐアクセス可能な場所にマニュアルを載せておくのもよいでしょう。

分かりやすい経費精算システムを導入する

紙媒体で経費精算の手続きを行っている会社は、経費精算システムの導入を検討しましょう。

経費精算システムを導入すれば、経費精算書への記入や領収書を手作業で貼り付けて直接承認をもらう手間がなくなります。その結果、経費精算フローが効率化され、月またぎでの経費精算の削減に大きな効果が期待できます。

すでに経費精算システムを導入している会社でも、月またぎでの経費精算が多い場合は、従業員が使い慣れていない可能性があるため、正しい運用がされているのか確認することが大切です。もし現行のシステムが煩雑で使いづらい場合は、より操作しやすいシステムへの移行も検討しましょう。

簡単に経費精算できるシステムを導入すれば、経費精算の遅れやミスを減らして、結果的に月またぎの経費精算を減らせます。

まとめ

月またぎでの経費精算は会社の繁忙期と重なっていたり、月をまたぐスケジュールでの出張があったりするケースが考えられるため、基本的には認められています。しかし、経理部門にとって経費精算自体が大きな負担となりがちです。

システム化やクレジットカードの導入を行うと、月をまたいだものも含め経費精算にかかる負担軽減を期待できます。自社の状況や課題を整理し、効果的な対策を検討しましょう。

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経費精算は、「面倒だ・手間だ」という声をよく聞きます。
紙のレシートの保管が面倒、申請するのが手間、業務が忙しくて後回しになってしまう、申請内容の確認が手間、承認のやり取りに手間がかかる、入力ミスでの差し戻しでのコミュニケーションに時間がかかる、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に時間がかかる・・・など、申請者・承認者、経理担当とそれぞれに課題があり、負荷がかかりがちな業務です。

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よくある質問

経費精算は月またぎでもできる?

基本的に、月またぎの経費精算は認められています。会社によっては繁忙期で月末までに申請できなかったり、月をまたぐスケジュールでの出張もあったりするためです。

詳しくは記事内「経費精算は月またぎでも可能」でも解説しています。

月またぎで経費精算できないケースは?

月またぎの経費精算は基本的に認められていますが、一部例外があります。具体的には「会社の申請期限の規程を過ぎている」「決算日から2ヶ月以上経過している」などが挙げられます。

詳しくは記事内「月またぎで経費精算できないケース」を参考にしてください。

監修 宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。

税理士・CFP® 宮川真一

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