経費精算の基礎知識

経費立替は違法?経費ハラスメントにならないための精算ポイントを解説

監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ

経費立替は違法?経費ハラスメントにならないための精算ポイントを解説

経費立替とは、従業員が業務において必要な費用を一時的に立て替えて、後で会社に精算を申請する仕組みを指します。経費立替に違法性はなく、常識的な金額の範囲内であれば特に問題はありません。

ただし、経費立替には注意すべき点が存在するほか、精算期限も決まっているため迅速かつ丁寧に処理する必要があります。

また、従業員に経費を一時的に負担させることになるため、「経費立替が多くてきつい」と感じさせてしまう懸念点もあるかもしれません。

本記事では、会社と法律それぞれの経費立替のルールや注意点について解説します。経費立替について理解を深め、効率的に処理できるようにしましょう。

「立替金」や「立替経費」について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

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目次

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経費立替の精算期限

経費立替には、会社としての期限と法律上の期限がそれぞれ決まっています。会社として期限を設定する理由は、精算漏れのリスクや決算スケジュールへの影響などが関わってきます。

また、法律上の期限を過ぎてしまうと経費精算が認められない可能性があるなどの問題も起こり得ます。ルールを把握しておくとともに、社内で明文化して周知することが重要です。

会社としての基本的な期限

経費立替の精算期限として意識しておくべきタイミングは、以下のとおりです。

経費精算の期限となるタイミング

  • 月次(15日締め、月末締め、翌月数日以内など)
  • 四半期(3ヶ月ごと。四半期の決算を行っている会社が対象)
  • 半期(6ヶ月ごと。半期の決算を行っている会社が対象)
  • 年度末(期末日)

多くの会社では、月次(1ヶ月)の処理が基本です。月次の中でも、「毎月15日」「月末」「翌月初の数日以内」などの期限が会社ごとに設定されています。期限を定めることで経費処理がスムーズになり、経理担当者の負担が減ります。

期限をルールとして周知するためにも、あらかじめ規程やマニュアルに期限を明記しておくのが一般的です。

また、会社の決算のタイミングによっては「四半期」「半期」「年度末」など、期限が長い場合もあります。しかし、精算漏れが発生したり、一気に精算することで経理担当者の負担が増えたりするため、このような長い精算期限はあまりおすすめできません。

法律上の期限

決算日の翌日から2ヶ月以内に提出する必要がある確定申告書は、対象となる事業年度(1年間)の決算結果をもとに作成するのが一般的です。経費立替が確定申告の期限内に完了しており、その年度の経費として処理されていればとくに問題はありません。

たとえば3月期決算の会社の場合、年初の4月に発生した経費は翌年3月までに計上すれば、年度内の経費として認められます。一方で、翌年3月までに計上していない場合、未払計上が必要になります。

そのため、法律上は年度内を期限と考える必要がありますが、仮に期限を過ぎた場合でも従業員側の経費精算を受ける権利がなくなるわけではありません。

従業員側の経費精算を受ける権利の消滅時効は、2020年4月1日に施行された改正民法の適用を受けます。しかし、消滅時効については改正前から変わらず5年のままであるため、従業員側は消滅時効のタイミングを過ぎていない限り申請できます。

ただし、5年間というのはあくまで法律上のことで、実務では早期の申請が理想的です。

経費立替は違法?

経費立替は、従業員が業務に必要な交通費などを一時的に自分のお金で立て替えて、後日会社に対して精算手続きをすることで払い戻される流れです。

一時的とはいえ、経費立替は従業員自身のお金を業務のために使用することになるため、法規的に問題があるのではないかとも考えられますが、経費立替という行為は違法ではありません。

ただし、月に何度も経費立替が必要な場合は負担に感じる従業員も少なくないでしょう。最近では従業員の負担軽減のために、従業員のクレジットカードで立て替えるように促しているケースも増えつつあるようです。

クレジットカードの決済で立て替えると実際に引き落とされるのは1〜2ヶ月後となるため、その間に従業員が精算を済ませれば実際の金銭的な負担を避けられます。

また、業務に必要な経費を確保する手段としては、事前に仮払金を支給して出張費用などに充てる方法もありますが、不正や着服のリスクが伴うため注意が必要です。

経費ハラスメントにならないための経費精算のポイント

会社側からすると、経費立替に違法性はなく、仕組みとしては珍しくありません。たとえば、会社の消耗品の補充費用や出張の際にかかる交通費などを先に立て替えておき、後から経費精算するなどはよくあるケースでしょう。

しかし、経費立替が頻発したり、会社に対して経費精算を申請しづらい風土があったりする状況は、近年「経費ハラスメント」と呼ばれています。また、経費精算のフローがシステム化されておらず、申請方法が面倒な場合も経費ハラスメントにつながる可能性があるため注意が必要です。

経費ハラスメントにならないための経費精算のポイントについて、詳しく解説します。

経費精算は給与支払日に合わせる

経費精算のタイミングを調整する上で、給与支払日に合わせた精算は非常に効果的です。

従業員が経費の払い戻しを受けるタイミングが給与と同じ日になるため、お金のやりくりがしやすくなるのがメリットです。多くの会社では、経費精算と給与支払を同時に処理するのが一般的となっています。

従業員に期限日までの経費精算申請を徹底してもらう

経費精算は、会社ごとに期限が決まっています。従業員が経費精算の期限を守らないと、会社の経理業務に大きく支障をきたすだけでなく、従業員への払い戻しにも時間がかかる可能性があります。

そのため、従業員には経費精算のルールをしっかり守り、期日までに経費精算申請をしてもらうよう促しましょう。

経費立替でかかる負担

経費立替は、従業員と経理担当者それぞれに負担がかかります。たとえば、従業員側だと立て替えする際の資金を用意しなければならない点が挙げられます。

経理担当者であれば、従業員が立替をしたものが本当に必要な経費なのかチェックする手間がかかったり、規程の限度内にしっかり収まっているか確認したりするなどの負担があるでしょう。

従業員と経理担当者それぞれにかかる負担について、詳しく解説します。

従業員にかかる負担

従業員が経費立替を行う際には、まず自分の資金を準備する必要があります。後から返金されるとはいえ、とくに高額な経費や頻繁に経費がかかる場合は一時的な負担が大きくなってしまいます。

たとえば、出張費や高額な備品の購入など、万単位の経費が重なると従業員の生活が苦しくなる恐れもあります。さらに、経費精算の申請には、領収書の管理や申請書類の作成などが必要になるため、頻繁に経費立替が必要になるとその分負担も大きくなるのです。

提出した申請が経費として認められなければ精算されないリスクもあり、従業員にとって大きなストレスとなることも考えられます。こうしたトラブルを防ぐためにも、マニュアルの作成など、事前に経費になる出費の種類を周知しておくことが大切です。

経理担当者にかかる負担

経理担当者にとっても、経費精算の処理は大きな負担がかかる業務です。従業員が申請した経費内容を細かく確認し、適正な支出かどうかを判断しなければなりません。

とくに経費として認められない出費が含まれている場合、その確認や修正依頼のために従業員とのコミュニケーションが必要となり、手間が増えます。

さらに、経費精算が予算内に収まっているか、帳簿との整合性が取れているかなど、厳密なチェックも不可欠です。これらが正しく処理されていないと、企業の会計上の問題に発展します。

また、税務処理の対応も経理担当者にとって大きな負担となります。税務上、正しく処理されているかを確認しなくてはなりません。

経費立替にかかる負担を減らす方法

前項で挙げた経費立替にかかる負担を減らすために、3つの方法を紹介します。これらの方法は、企業や従業員いずれにとっても経費立替の負担を減らすのに役立ちます。

会社でクレジットカードを作り従業員に使ってもらう

従業員の負担軽減のために、経費が必要な場合には会社のクレジットカードを従業員に使ってもらうことも対策のひとつです。

会社のクレジットカードなら従業員のお金を使うこともなく、会社としても経費精算の処理をする必要がないことがメリットといえます。

経費精算をアウトソーシングする

前述のとおり、経費精算処理は経理担当者に負担のかかる作業となります。この負担を減らす方法のひとつとして挙げられるのが、経費精算のアウトソーシングです。

アウトソーシングによって煩雑な経費精算の業務負担を軽減でき、社内のほかの業務に時間を使えるようになります。経理担当者が少ない企業においては、経費精算業務を社内で対応する必要がなくなることで生産性向上にもつながります。

経費精算システムを導入する

とくに手作業で経費精算を実施している企業においては、経理担当者の経費精算処理負担を軽減させる点だけでなく従業員の作業負担を減らすという点からも、経費精算システムの導入を検討することをおすすめします。

経費精算システムは企業側と従業員側の双方にかかる負担を減らせるだけでなく、経費の入力や計算の自動化が可能です。システムの中には、クレジットカードとの連携も可能である場合もあるため、業務効率化にもつながります。

経費精算システムについては以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】
経費精算システムとは?機能や導入費用、メリットについて解説

まとめ

本記事では経費立替と法律の関係、立替をするときのポイントを説明しました。経費立替は一時的に従業員に負担が発生してしまうため、スムーズに経費精算ができるように経費精算システムの導入などの効率化が求められます。

また、経費精算を後回しにして後から一気に申請を行うと、経理担当者の負担が増える恐れがあります。このような懸念を解消するためにも、会社内でもルールを決めて迅速な経費精算を促すことが重要です。

従業員と経理担当者双方の負担を減らすためにも、経費立替に伴うルール決めやマニュアルの整備などを行い、可能な限り効率化を目指していきましょう。

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経費精算は、「面倒だ・手間だ」という声をよく聞きます。
紙のレシートの保管が面倒、申請するのが手間、業務が忙しくて後回しになってしまう、申請内容の確認が手間、承認のやり取りに手間がかかる、入力ミスでの差し戻しでのコミュニケーションに時間がかかる、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に時間がかかる・・・など、申請者・承認者、経理担当とそれぞれに課題があり、負荷がかかりがちな業務です。

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よくある質問

経費立替は違法?

一時的とはいえ、経費立替は従業員自身のお金を業務のために使用することになるため、法規的に問題があるのではないかとも考えられますが、経費立替という行為は違法ではありません。

しかし、1ヶ月のうちに何度も経費が発生してしまったり、高額な経費立替が発生したりした場合は、従業員の手元のお金が減り生活が苦しくなってしまう恐れがあります。

詳しくは記事内「経費立替は違法?」で解説しています。

経費ハラスメントにならないための経費精算のポイントは?

従業員が月内に何度も高額な経費立替を行う必要があったり、経費精算の申請が複雑で申請しにくい雰囲気だったりする場合は「経費ハラスメント」になる恐れがあります。

会社側は、従業員が経費精算をしやすい雰囲気づくりのために、ルール決めやマニュアルの整備、経費精算システムの導入などに取り組む必要があります。

詳しくは記事内「経費ハラスメントにならないための経費精算のポイント」をご覧ください。

監修 宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。

税理士・CFP® 宮川真一

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