監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ
経費精算書とは、会社の従業員が事業活動をする上で発生する経費を適切に精算するための書類です。スムーズかつ正確に経費を精算するには、経費精算書を適切に運用することが欠かせません。ただし、経費精算書にはさまざまな種類があることや添付書類が必要なことから、経理担当者にとっては業務が煩雑になる場合があります。
この記事では、経費精算書の基本的な知識や運用上のポイントについて解説します。経費精算書を作成するときの注意点や、経費精算を効率化する方法にも触れているので、経費精算に携わる担当者の方はぜひ参考にしてください。
目次
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経費精算書とは
経費精算書とは、業務上で必要となる費用を従業員に立て替えてもらう場合などに必要となる書類です。従業員が事業活動をするとなると、取引先を訪問したり、中には接待をしたりするケースもあるでしょう。通常業務で使用するような文房具などを一時的に従業員が立替払いすることも考えられます。
従業員が立替払いをしたさまざまな経費を精算する際は、経費精算書を用いて処理します。ただし、出張が多い従業員の場合は費用が高額になることもあるため、仮払いする(金銭を事前に渡しておく)ケースも少なくありません。
経費とは
経費とは「必要経費」の略称で、企業が事業活動を行う上で必要となる出費を指します。
一般的な経費として挙げられる費用
- 人件費
- オフィス賃借料
- 光熱費
- 接待交際費
- 広告宣伝費
- 出張旅費交通費
- 消耗品費
- 通信費
- 事業に関連する税金(事業税、印紙税など)
正しい損益計算、経営状態の把握には、適切な経費計上が欠かせません。また、計上できる経費が増えるほど法人税などの節税につながるという側面もあります。
【関連記事】
経費とは?計上できる費用や税金との関係をわかりやすく解説
経費精算にはなぜ領収書が必要なのか?
領収書は、商品やサービスに金銭を支払ったことを証明する書類です。経費精算に領収書を用いる必要性は、主に下記が挙げられます。
経費精算に領収書が必要な理由
- 精算が完了したことを証明し、過払いを防ぐ
- 経費の内容を正確に把握する
- 不正な経費申請を防ぐ
取引の事実を確認し、従業員による不正行為や代金の二重払い・過払いを防止するため、経費精算においては領収書の提出が求められます。
なお、企業は適切な経費処理を行った上で、従業員から受け取った領収書を適切に保管しなければなりません。適切な保管は効率的な経費管理の実現につながり、税務申告や監査対応もスムーズになります。
【関連記事】
経費精算とは?種類や一連の流れ、領収書が必要な理由などを解説
領収書がない場合の対処法
領収書は、経費を使用した事実、精算した事実を証明するために重要な書類です。しかし、領収書をもらえなかったり紛失したりした場合でも、完全に経費精算ができなくなるわけではありません。従業員から「手元に領収書がない……」といった相談があった場合は、以下の選択肢を検討してみてください。
領収書再発行を依頼する
まずは、発行元の事業者に再発行を依頼しましょう。領収書の発行は支払いと同時が原則のため、事業者によっては再発行に応じてくれない可能性もありますが、「再発行」と明記することで応じてくれるケースもあります。
レシートで代用する
領収書の原本を紛失してしまっても、レシートがあれば経費精算は可能です。ただし、レシートが経費精算の証拠書類として有効と判断されるには、領収書と同様に以下の項目がすべて記載されている必要があります。
レシートに記載されるべき項目
- 発行者(店名)
- 日付
- 金額
- 明細(取引内容)
上記が記載されていれば、レシートは領収書の代わりとして経費精算に使用できる可能性が高いといえます。ただし、企業によっては独自のルールを設けている場合もあるため、事前に社内規定を確認しておきましょう。
出金伝票として取り扱う
領収書の再発行が困難で、かつレシートもない場合は、出金伝票に取引内容を記録することで経費として計上できる場合があります。出金伝票とは、現金で支払った際に作成する伝票です。領収書がない場合でも、出金伝票なら取引の記録を残せます。
出金伝票を作成する際は、以下の4つの項目を記載しなければなりません。
出金伝票に記載すべき項目
- 支払先:費用を支払った相手先の会社・店舗名
- 支払日:費用を支払った年月日
- 但し書き:具体的な明細(バス代・ガソリン代など)
- 金額:実際に支払いをした金額
これらの情報に加えて、領収書を紛失した旨を記載しておくとより明確になります。
- 電車やバスなど公共交通機関を使用した交通費
- ご祝儀などの慶弔費
- 接待交際費(割り勘をした場合など)
- 自動販売機から購入した飲み物代
出金伝票は自身で作成するものであるため、証拠としての信頼性は領収書やレシートより高くありません。税務調査で支払いの事実を証明する場合に備え、契約書やメールでの支払いに関するやりとりの記録などをまとめていく必要があります。
【関連記事】
経費精算で領収書はなぜ必要?紛失した場合の対処法や電子帳簿保存法における保存方法なども解説
経費精算書の種類
一言で「経費精算書」といっても、その種類はたくさんあります。一般的に企業が多く活用している書類には、以下のようなものが挙げられます。
主な経費精算書の種類
- 仮払経費申請書
- 仮払経費精算書
- 出張旅費精算書
- 交通費精算書・旅費精算書
- 立替経費精算書
似たような名前の書類もありますが、それぞれ内容や役割が異なるため、正確に把握しましょう。
仮払経費申請書
仮払金とは、経費の支出金額が正確に決まっていない場合に、事前に概算で渡しておく現金のことです。従業員が出張する際の飛行機代や新幹線代、滞在先のホテルの宿泊費、出張先での交通費など、さまざまな費用に充てられます。
従業員がこの費用を全額立て替えるとなると、かなりの金銭的負担となることがあります。そういった場合に仮払経費申請書を使って経費の概算金額を事前申請しておけば、仮払金を使うことが可能です。
仮払金は高額になることもあるため、出張先までの交通手段やその費用、滞在予定のホテルやその費用など、できる限り詳細な記載を求める必要があります。
仮払経費精算書
仮払経費精算書は、仮払経費申請書とセットとなる書類です。
仮払経費申請書で仮払いした経費を精算するため、仮払いされた現金がどのように使われたのか、余剰金または不足金があったのかを正確に申告し、余剰や不足があった場合に精算する目的で使用します。余剰があれば仮払された現金を返金してもらい、逆に不足があればその分を従業員に支払います。
仮払経費申請書は、事前に概算費用を従業員に払うためのものです。そのため、仮払いした経費を精算するための仮払経費精算書では、実際に使った金額の証拠となる書類として領収書などの添付が欠かせません。
出張旅費精算書・旅費精算書
出張旅費精算書・旅費精算書とは、出張や社員旅行で発生した費用を精算するための書類です。出張旅費精算書と旅費精算書を分けている会社もあれば、旅費精算書だけで運用している会社もあります。
旅費精算は、会社ごとに規定が細かく決められています。食事代やその他の費用など使い道が決められていたり、出張で使える接待交際費の上限が決まっていたりすることもあるため、事前に社内規程を確認しておきましょう。
交通費精算書
交通費精算書は、業務中の移動で発生した交通費を立て替えた従業員が、会社に精算を求めるための書類です。通常、交通費精算には領収書が必要ですが、特急・新幹線以外の電車やバスなどは領収書の取得が難しいこともあります。このようなケースでは、交通費精算書が領収書の代わりとなります。
営業先・取引先への訪問など業務上必要な移動に伴って発生した交通費は、通勤手当と異なるため、交通費精算書による精算が必要です。
立替経費精算書
立替経費精算書とは、従業員が業務で立て替えた費用を会社に返金してもらうために用いる書類です。立替経費には、本来会社が負担すべき消耗品費、交通費、接待交際費などが含まれます。
書類には、立て替えた費用項目、金額、日付、領収書などを記載します。立替経費精算書によって従業員は一時的に負担した費用を会社から受け取ることができ、会社は経費管理を最適化できます。
なお、企業の業務効率を上げるためには、経費精算が可能な期間を設けたり、数万円を超える大きな金額となる場合には仮払いにしたりするなど、運用しやすいルールを決めておくとよいでしょう。
従業員に周知しておくべき経費精算書の注意点
経費精算書の取り扱いでは、正確な記録や適切な対応が求められます。経理部門における確認・処理作業の負担増加や精算の遅れを招かないためにも、従業員に対してあらかじめ以下の内容を周知しておくのが望ましいでしょう。
従業員に周知しておくべきこと
- 社内規程やルールを確認しておく
- 添付書類(領収書など)を忘れない
- 領収書がないものは出金伝票を作成する
- 提出期限を厳守する
特に気をつけたいのが、領収書の出ない交通費や香典・祝儀などの慶弔費です。これらの経費を立て替えた場合は、出金伝票の作成とセットで必ず「事実を証明できる各種書類の収集」を求めましょう。
インボイスによって経費精算はどう変わった?
2023年10月1日からインボイス制度が始まり、経費精算の方法が変わりました。インボイス制度の開始により、消費税の仕入税額控除を受けるためには、領収書や請求書、納品書などが、適格請求書(インボイス)または適格簡易請求書(簡易インボイス)の要件を満たしている必要があります。
主な変更点は、以下の4つです。
インボイス制度における変更点 | 詳細 |
---|---|
領収書を分類する | 「インボイス対応のもの」と「それ以外」に分類する |
少額の取引も領収書が必須 | 3万円未満の経費も原則として適切な形式の領収書が必要 |
領収書の確認項目が増加 | 「登録番号」「税率区分」など、新しい記載項目の確認が必要 |
帳簿の記載ルール変更 | 取引内容や税率区分をより詳しく記載することが求められる |
なお経過措置期間として、2029年9月30日までは従来の領収書でも経費計上できる場合があります。
【関連記事】
インボイス制度で経費精算はどう変わる?請求書ごとの経費計上の方法について解説
経費精算を効率化する方法
社内の経費精算処理は、経理担当者にとって負担の大きい業務のひとつです。申請書のフォーマットを統一して従業員にわかりやすく周知したり、法人カードやICカードなどを活用してそもそも現金精算を減らしたりするなど、効率化できる方法を検討してみましょう。
経費精算書のテンプレートを作成しておく
経費精算業務を効率化したいなら、経費精算書のテンプレートを作成しておくことをおすすめします。あらかじめ社内ルールや必須項目を考慮したテンプレートがあれば、従業員は入力・記載するだけで済むほか、必要な情報を把握しやすくなるため経理担当者にとっても効率的です。
経費精算書に必要な項目とは
経費精算書のテンプレートを自身で作成する際は、処理をする上で必要な項目を漏れなく記載できるようにしておかなければなりません。
先に紹介した各種書類(仮払経費申請書・仮払経費精算書・出張旅費精算書・交通費精算書・旅費精算書・立替経費精算書)によっても異なりますが、一般的に企業で使われている経費精算書には以下のような項目があります。
経費精算書の主な項目
- 申請日
- 所属部署・部署コード
- 従業員番号
- 職位
- 申請者氏名・フリガナ
- 支払日
- 支払先・利用交通機関
- 支払内容
- 支払金額(小計・合計)
- 領収書番号
- 仮払金額
- 承認欄・決裁欄
- 経理処理欄
なお、一からすべて作成するのが大変という場合は、無料の経費精算テンプレートを活用するのが効率的です。ダウンロードしてお使いください。
それ以外にも各種さまざまな「無料ビジネステンプレート」があります。
ルールを明確化・マニュアル化する
経費精算のルールを明確化・マニュアル化することは、全社的な業務効率化の重要なポイントです。
経費精算のルールが曖昧だと、申請書に間違った記載をしたり、期日までに経費精算が行われなかったりするケースが起きてしまいます。こういった問題を防ぐために、「経費精算の期限」「正しい書式や申請方法」「期日を過ぎた場合のペナルティ」などをマニュアルへ記載しておくのがよいでしょう。
経理担当者の観点からも、処理方法のルール作りは不可欠です。特に、複数の担当者が業務を行う場合は、経費として認められる項目と認められない項目を明確に線引きすることが差し戻しの手間削減につながります。
経費精算における代表的なルール
独自の経費精算ルールを整備している企業も多くありますが、マニュアルに記載されている内容におおむね違いはないでしょう。よくあるルールには、以下のようなものがあります。
経費精算に関する社内ルールの一例
- 仮払金がある場合は、必ず月内に精算する
- 該当する定型フォーマットを必ず使用する
- 飛行機代、新幹線代、タクシー代は必ず領収証か金額を確認できる資料を添付する
- 領収証は必ず原本を使用する
- 稟議を通している場合は、必ず決裁画面・決裁書面を添付する
- 接待費は一人あたり●●●●円、一回あたり●●●●●円以内とする
- 自社社員のみの場合は接待費の立替経費申請を認めない
- ●●●●●円以下の場合は仮払経費申請を認めない
法人カードを利用する
備品・消耗品などの発注頻度が高い場合は、法人カードの活用がおすすめです。こまごまとした品物の精算は経理担当者の負担になるだけでなく、計算ミスのリスクも伴います。
法人カードを活用すれば、利用した費用が法人口座から直接引き落とされるため、従業員が現金で立て替えたり経理担当者が小口現金を管理したりする必要がなくなります。クレジットの利用明細を見れば、日付や店名、金額、合計額などの確認も容易です。
ただし、一定の条件を満たしていなければクレジットカード利用明細を領収書の代わりにすることはできません。また、クレジットカード利用明細がインボイス記載事項を満たす書類に該当しない点にも注意が必要です。
出典:国税庁「インボイス制度開始後において特にご留意いただきたい事項」
ICカードと連携し交通費精算を自動化する
交通系ICカードと交通費精算を連携することで、煩雑な精算業務は効率化できます。交通費は出張や営業活動などで日常的に発生する経費のため、精算の頻度が高くなりがちです。また、経理担当者は、最安運賃の割り出しや定期区間の控除などの確認や計算に多くの時間を費やすため、大きな負担となってしまいます。
交通費精算をICカードと連携すれば運賃が自動で算出されるため、手作業での計算が不要になります。事前に定期区間を設定しておくことで、指定区間を控除した運賃の自動計算も可能です。
経費精算システムを導入する
経費精算システムを導入すれば、経費の申請から支払いまでを一元管理できます。従業員はスマートフォンやパソコンから領収書やレシートを取り込むだけで申請でき、その後の承認プロセスもすべてオンライン上で完結します。
また、支払いデータは自動で会計システムと連携するため、経理担当者の負担も削減できます。紙の領収書や申請書が不要になることでペーパーレス化も実現できるため、保管スペースの削減や電子帳簿保存法への対応も容易です。
このように、経費精算システムの導入は業務効率化だけでなく、コスト削減や法令遵守の面でも大きなメリットがあります。
【関連記事】
本当に必要?経費削減を行う意味と具体例
経費精算システムとは?機能や導入費用、メリットについて解説
まとめ
経費精算書は、従業員が事業活動をしていく中で立て替えた経費を精算するための書類です。精算時に使用する経費精算書の種類や処理の仕方は、会社の規程などで細かく決まっていることがあります。
経費精算処理の作業が煩雑になり過ぎると、経理担当者の負担が増えてしまい、事業活動そのものに支障をきたしてしまうかもしれません。組織として業務効率の改善を図りたい場合は、経費精算書のテンプレートの作成やルールのマニュアル化、ICカードとの連携、法人カードや経費精算システムの導入などを検討してください。
面倒な経費精算を秒速で終わらせる方法
経費精算は、「面倒だ・手間だ」という声をよく聞きます。
紙のレシートの保管が面倒、申請するのが手間、業務が忙しくて後回しになってしまう、申請内容の確認が手間、承認のやり取りに手間がかかる、入力ミスでの差し戻しでのコミュニケーションに時間がかかる、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に時間がかかる・・・など、申請者・承認者、経理担当とそれぞれに課題があり、負荷がかかりがちな業務です。
経費精算の業務は、経費精算システムを導入することで、申請から承認、処理・保存までラクな仕組みに変えられます。
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よくある質問
経費精算書とはどんなもの?
経費精算書とは、従業員が業務中に立替払いをしたさまざまな経費を精算するための申請書類です。取引先への訪問にかかった移動費、飲食などにかかった接待費、デスクワークで使用する文房具など、さまざまな経費の精算に用いられます。
詳しくは「経費精算書とは」をご覧ください。
経費精算で領収書がない場合の対処法は?
領収書をもらえなかったり紛失してしまったりした場合は、「再発行を依頼する」「レシートで代用する」「出金伝票を作成する」などの方法で対処できる場合があります。
詳しくは「領収書がない場合の対処法」をご覧ください。
経費精算を効率化する方法は?
経費精算業務を効率化するには、「テンプレートを作成する」「ルールを明確化・マニュアル化する」「法人カードを利用する」「ICカードと連携して交通費精算を自動化する」「経費精算システムを導入する」などの方法があります。
詳しくは「経費精算を効率化する方法」をご覧ください。
監修 宮川 真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。