監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ
証憑とは、請求書や領収書などの法律上保管が義務付けられている書類のことを指します。証憑は取引の正当性や内容を証明するものであり、経費精算においては領収書が証憑に当てはまります。
ただし、領収書が経費の正当性を証明する証憑として認められるには、いくつか気を付けるべきポイントがあるため注意が必要です。
本記事では、証憑の基礎知識から、証憑となる領収書に記載すべき内容、領収書が証憑と認められるためのポイントまで解説します。
目次
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証憑とは
証憑(しょうひょう)とは、取引の事実を証明するために保管が義務付けられている書類のことです。具体的には、領収書や請求書などが該当します。証憑は企業の会計処理や税務調査において、取引の正当性や内容を証明するために重要な役割を果たします。
たとえば税務調査において、調査官は申告書に基づいて企業の取引を調べており、取引の証拠を求めてくることがあります。その際に調査官へ証憑を提出すれば、「実際に取引が存在しており、正しく報告されていること」を証明することが可能です。
また、紙の書類だけでなく電子データも証憑として扱われるようになりました。電子帳簿保存法が施行されたことにより、電子データとして保存された証憑も法的に有効となっています。
証憑は税法や会社法により、一定期間の保管が義務付けられています。詳しくは以下記事にて解説しているので参考にしてください。
【関連記事】
証憑とはなにか?証憑の種類と保存方法について解説
証憑と証票の違い
証憑と同じ読み方をする用語に「証票」がありますが、これらはそれぞれ異なった意味を持ちます。証憑は取引の正当性を証明するために証拠となるものを指しており、領収書や請求書などが該当します。
一方、証票はお金のやり取りにおいて交わされる文書や、自らの身分を示す証明証などの「あることを証明するための札や書き付け」のことです。
財務会計において、「取引」が証拠の対象となるため、その正当性を示すのは証憑となります。
証憑と帳票の違い
証憑と似た言葉として、「帳票」という用語があります。どちらも会計用語として使われますが、意味が異なります。証憑は取引の事実を証明するための書類や電子データで、税務や会計の根拠となる書類です。
帳票は「帳簿」と「伝票」を組み合わせた会計用語で、帳簿や伝票、証憑書類の総称を指します。帳簿と伝票には、以下の違いがあります。
- 帳簿
主に自社の経営状態を把握するために作成される書類で、仕訳帳や固定資産台帳などが該当。 - 伝票
お金に関する取引を記載した書類で、入出金伝票や仕入れ伝票などが該当。
帳票の多くは取引の後に作成される一方、証憑は取引と同時に作成される点で異なります。帳票について詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】
帳票とは?種類や保存期間・方法、電子化のメリットを解説
経費精算で証憑となる領収書とは
経費精算の際に提出する領収書は、「実際に取引が行われたのか」「事業に必要な取引だったのか」を証明するために重要な証憑のひとつです。税務調査や会計監査においては、経費精算の正当性を裏付けるために適切な保管が求められます。
しかし、領収書なら何でもよいというわけではなく、証憑となる領収書には必要事項が記載されていなければなりません。また、新たにスタートしたインボイス制度や電子帳簿保存法についても詳しく知っておく必要があります。
経費について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】
経費とは?計上できる費用や税金との関係をわかりやすく解説
領収書に記載する内容
領収書を提出する際には、取引内容の正当性を証明できないと証憑として通用しないため、以下の項目が明確に記載されていなければなりません。
領収書の記載事項
- 取引が行われた日付
- 宛名
- 金額
- 取引内容(但し書き)
- 発行者の住所と氏名
また、金額が5万円を超えている領収書には収入印紙が貼られている必要があります。
出典:国税庁「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」
なお、タクシーや備品として使用する文具の購入などの場合には、領収書の宛名の記載は不要です。
インボイス制度における必要記載事項
2023年10月に開始したインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、領収書やレシートが適格請求書として認められるためには、以下の事項が記載されている必要があります。
インボイス制度における必要記載事項
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 取引年月日
- 軽減税率の対象品目かどうか(「※印」などで明記)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)及び適用税率
- 税率ごとに区分して合計した消費税額等(消費税額及び地方消費税額の合計額)
インボイス制度における領収書の扱い方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
インボイス制度で領収書の扱いや書き方はどうなる?発行側と受取側それぞれの対応について解説
電子帳簿保存法に従って領収書を保存したい場合に必要な対応
領収書をデータで受け渡しした場合、電子帳簿保存法に従って受領者はデータで保存することが義務づけられています。
なお、電子帳簿保存法の改正によって、データで受領した領収書は紙にプリントアウトして保存することはできません。
また、改正電子帳簿保存法に則り、タイムスタンプの付与などを実施したうえでデータ保存をする必要があります。
出典:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」
電子帳簿保存法および電子領収書については、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
電子帳簿保存法とは?対象書類や保存要件・改正内容についてわかりやすく解説
電子領収書とは?発行方法やデータ保存するメリット、注意点を解説
電子帳簿保存法のタイムスタンプとは?要件や発行方法、法改正のポイント
領収書が証憑として認められるためのポイント
領収書が証憑として認められるには、正しい内容が記載されており、適切な保存方法で管理することが求められます。必要な情報が抜けていたり、適切に保存されていなかったりすると、税務署から指摘された際に証憑として認められない可能性があります。
領収書が証憑として認められるためのポイントを解説します。
取引先に必要事項を漏れなく記載してもらう
領収書が証憑として認められるには、領収書発行元である取引先に必要事項を漏れなく記載してもらうことが大切です。領収書には「取引の正当性を証明する情報」が記載されていなければ、税務署から指摘が入った際にトラブルとなる可能性があります。
具体的には、日付や宛名、取引内容、発行者の住所や氏名といった基本的な情報が記載されている必要があります。
領収書の印字が薄まらないように保存する
領収書は法令により保存期間が決まっています。たとえば青色申告の場合は7年間、赤字決算となり欠損金の繰越控除を利用する場合は10年間の保管が必要です。
出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」
保管期間が長期になるため、現物保存だと印字された文字が掠れてくるなどの劣化が起こる恐れがあります。とくに、感熱紙タイプの領収書だと強い光に当たると印字が薄くなったり、消えてしまったりするため、暗所で保管するなどの対策が必要です。
万が一完全に文字が消えてしまって読めなくなった場合、その領収書を証憑として提出することはできません。予防策として、領収書とともに出金伝票に記載された取引の詳細内容がわかるものや、クレジットカードの請求明細などもあわせて保存しておくことが考えられます。
また、紙で受け取った領収書は一定の要件を満たせばスキャナ保存(電子保存)が認められます。紙での領収書発行ではなく、最初から電子データとして発行することも対処法のひとつです。
電子帳簿保存法や電子領収書については以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
【関連記事】
電子帳簿保存法とは?対象書類や保存要件・改正内容についてわかりやすく解説
電子領収書とは?発行方法やデータ保存するメリット、注意点を解説
まとめ
証憑は、取引の正当性を証明するための重要な書類です。適切な情報が記載された領収書を正しい方法で保管すれば、税務署の調査が入った際にも指摘されるリスクを少なくできます。
インボイス制度や電子帳簿保存法などの新しいルールの運用も始まっているため、証憑に記載するべき項目をしっかり把握して、トラブルが起こらないようにする体制を整えましょう。
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よくある質問
証憑とは?
証憑とは、企業内で行われた取引の正当性を証明するために保管される書類や電子データのことを指します。具体的には領収書や請求書が該当します。証憑は、税務調査や会計処理があった際に、取引内容を証明するために必要です。
詳しく知りたい方は「証憑とは」をご覧ください。
証憑と証票、帳票の違いとは?
「証憑」は取引の正当性を証明する書類や電子データを指します。一方で「証票」とは、お金のやり取りや身分を証明するための「モノや事柄」のことです。
また、似た意味をもつ言葉で「帳票」も存在します。帳票は「帳簿」と「伝票」を組み合わせた会計用語で、証憑も帳票に含まれます。
詳しく知りたい方は「証憑と証票の違い」や「証憑と帳票の違い」をご覧ください。
経費精算で証憑となる領収書に必要な記載事項は?
領収書が証憑として認められるには、領収書に適切な記載事項が記載されている必要があります。具体的には、取引の日付や金額、宛名、発行者の住所や氏名などが必要です。
詳しくは「経費精算で証憑となる領収書とは」をご覧ください。
監修 宮川 真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。