監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

事業に必要な費用を経費で落とすには、事業や売上につながる費用であることと、それを証明する必要書類の保管が不可欠です。正しく計上・管理していれば課税所得を抑えられ、法人税の節税につながるなどメリットがあります。
本記事では、経費で落とせるもの・落とせないものについて、それぞれ詳しく解説します。
目次
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経費で落とすとは
経費で落とすとは、事業に必要な費用を経費計上することを指します。売上から必要経費を差し引くことで会社の利益を小さくし、納める税金を適正にするのが狙いです。特に法人は、売上金額やそれにかかる法人税も高額になりがちなため、必要なものを経費で落とすことにより、一定の節税効果を期待できます。
ただし、事業に必要なお金だとしても、経費として認められないものもあります。認められないものを誤って計上して申告した場合、税務調査で指摘された際に追徴課税を支払うなどペナルティが発生する可能性があるため注意が必要です。
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経費で落とすための条件
経費として認められるかどうかは「その費用を事業のために使われているか」で判断します。つまり、「事業の売上につながっているか」を基準として考えてください。また、それを証明するためには、必要書類を正しく保管しておくことも重要です。
必要書類は領収書やレシートが該当しますが、日付・支払先・金額・但し書き(明細)が明記されているものに限られます。なお、慶弔見舞金や公共交通機関の利用など領収書が発行されない場合は、出金伝票に必要な情報を記載して作成するなど、きちんと記録しておけば問題ありません。
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経費で落とすメリット
経費で落とす大きなメリットは、法人税の計算に用いられる課税所得を減らせることにあります。また、経費を適切に処理することは、事業で必要な経費額の把握にもつながるため、将来的な事業計画を立てる際などにも役立ちます。
たとえば、人件費や広告宣伝費を効果的に使って経費計上すれば、課税所得を抑えながらも将来的な投資になります。
ただし、課税所得を減らすことだけに着目し、無理に経費を増やそうとするのはおすすめできません。経費を使いすぎることで本来得られる利益を圧迫してしまったり、資金繰りが難しくなったりする可能性があります。法律をよく理解し、ルールの範囲内で計上することが大切です。
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法人が経費で落とせるもの・落とせないもの
ここでは、法人が経費で落とせるものと落とせないものを一覧形式で紹介します。事業のために使用している費用が、実際に経費で落とせるのかどうか確認しましょう。
経費として落とせるもの
法人が経費で落とせるものの代表例は、下表のとおりです。
費用 | 概要 |
---|---|
売上原価 | 商品の製造・販売に直接関連する加工や仕入れの費用 |
人件費 | 従業員に支払う給与や賞与、退職金 |
法定福利費 | 健康保険料や厚生年金、雇用保険の雇用主負担分にあたる費用 |
福利厚生費 | 食事手当や健康診断代、慶弔金など福利厚生に関する費用 |
旅費交通費 | 業務上の移動や出張に伴う交通費や宿泊費 |
消耗品費 | 文房具やパソコン関連の備品など業務で使用する消耗品の費用 |
租税公課 | 事業税や印紙代、行政の証明書などにかかる費用 |
通信費 | 業務中に使用する電話やインターネット、郵便などの費用 |
交際費 | 取引先との関係構築のための飲食や接待、贈答品などの費用 |
地代家賃 | 事務所や店舗、駐車場などの賃借料 |
修繕費 | 事業用資産を修理したときの費用 |
水道光熱費 | 事務所や店舗の電気やガス、水道料 |
保険料 | 事業用の損害保険料 |
広告宣伝費 | 商品やサービスの宣伝、企業の広告にかかる費用 |
支払手数料 | 振込や代金支払いの際に発生する費用 |
諸会費 | 事業として加入している団体の会費 |
業務委託料 | 専門家や外注先への委託費 |
ただし、これらの費用であっても、事業と関連のない場合は経費として落とせない点に注意してください。たとえば、社内の従業員のみで行われる食事会は接待交際費にはなりません。
また交際費の損金算入額のように、経費として認められる範囲が決められている場合もあります。交際費であれば、飲食費のうち50%まで(資本金1億円以下の法人の場合は50%までか合計800万円まで)と決められており、この範囲を超える分は経費計上できません。
経費として落とせないもの
経費で落とせないものは、事業や売上に関係のないものです。プライベートな出費は、経費にはなりません。
また中小企業者等の場合は、30万円を超えるものは一括で経費計上できません。30万円を超えるものは会計上、資産となるため減価償却する必要があるためです。ただし、2025年度末を適用期限とした特例として、中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、一事業年度の合計額300万円を限度に全額損金算入が可能になります。
出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
そのほか、要件を満たしていない役員報酬や法人税などの一部税金、損金算入限度額を超える交際費なども同様に経費として認められません。
役員報酬を経費で落とす際の注意点
- 定期同額給与の場合、給与金額が毎月同額である
- 事前確定届出給与の場合、賞与はあらかじめ税務署への届出が必要
- 業績に連動する給与は有価証券報告書に記載が必要
出典:国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
役員報酬や交際費を経費で落としたいときは、要件をよく確認しましょう。
経費で落とす上での注意点
たとえ事業に必要な費用であっても、正しく計上するにはいくつかの注意点を守らなければなりません。下記の注意点を守らないと、税務調査が入った際に経費として認められなかったり、過少申告として追加納税が必要になったりする可能性があります。
経費精算のルールを規定する
前述のとおり、経費として認められるには事業に直接関係のある支出かどうかで判断されます。しかし明文化された経費精算のルールがなければ、各従業員の感覚に委ねることになり、統制が効かなくなってしまいます。
そのため、経費と認められる範囲や上限をルールやマニュアルとして明確に定め、全社に周知徹底しましょう。同時に、ルールやマニュアルの適用対象が正社員だけなのか、パートやアルバイトも含まれるのかも決めておくことをおすすめします。
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不正や架空の経費計上を防ぐ
経費で落とす処理を行う上で気をつけなければならないのは、不正や架空計上です。
法人税の節税メリットがあることから、なるべく経費で落としたいと考えてしまうものですが、水増ししたり架空の費用を経費計上したりすることは絶対にやってはいけません。交際費など不正しやすい項目は、特に注意すべきです。
従業員が架空請求や不正受給を行っている場合は、詐欺罪などの犯罪に該当する恐れがあります。税務調査でこれらが発覚した場合は、過少申告加算税や重加算税などの罰金が課せられる可能性があり企業としても避けたいものです。それだけでなく、企業の社会的な信用を失墜させかねないため、十分に注意してください。
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領収書の保存を徹底する
経費で落とす費用は計上したら終わりではありません。物品を購入する際に発行された領収書やレシートなどの書類は、必ず保管しておきましょう。
事業のためにかかった費用であることを証明するには、根拠となる書類の保管が必要不可欠です。法人の場合は原則として7年間、過去に赤字決算をしているなどの理由から翌年以降に繰越欠損金の控除を行う場合は最大10年間の保管が義務付けられています。
これらの書類は、税務調査が入った際に必要となります。確実に書類の確認ができる状態にしておくべきであるため、保管や整理整頓を徹底しておくことをおすすめします。
なお、従来は領収書を含む税務関係書類を紙で保管する必要がありましたが、改正電子帳簿保存法によって紙で受け取った領収書のスキャナ保存が可能になりました。また、メールや電子決済などの電子取引で受け渡しされた領収書は、2024年1月から電子保存が義務化されています。
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経費精算で領収書はなぜ必要?紛失した場合の対処法や電子帳簿保存法における保存方法なども解説
まとめ
経費で落とすには、事業に必要な費用であったと証明できることが重要です。事業や売上に必要な費用であることはもちろん、それを証明できる領収書やレシートの保管も不可欠です。
もっとも、事業や売上に関連していればなんでも経費で落とせるわけではありません。役員報酬や交際費など、経費で落とすための要件を理解し、正しい方法で企業経営に取り組んでください。
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よくある質問
経費で落とすとは?
経費で落とすとは、事業に必要な費用を経費計上することです。ただし、事業に必要なお金だとしても経費として認められないものもあるため注意しましょう。
詳しくは本記事の「経費で落とすとは」で解説しています。
経費で落とせるものは?
法人が経費で落とせるものは、事業や売上に関連する費用です。具体的には、売上原価や人件費、広告宣伝費、交際費などが挙げられます。もっとも、これらの費用項目に当てはまっても、経費として落とせないケースがある点に注意が必要です。
詳しくは本記事の「経費として落とせるもの」をご覧ください。
監修 前田 昂平(まえだ こうへい)
2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。
