稟議書とは、組織内で自身の権限だけでは決定できない事案について、上司やそれ以上の役職者などの関係者から承認を得るための書類のことです。申請を確実に通すには、きちんとした稟議書の書き方やポイントを押さえておく必要があります。
稟議書は紙の書面だと効率が悪く、業務のデジタル化が進む現代においては稟議書の電子化も注目されています。本記事では、稟議書の基礎知識や書き方、承認を得やすくするポイント、稟議書の電子化について紹介します。
目次
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稟議書とは
稟議とは、企業などが意思決定を行う際に、文書を回覧して関係者全員から承認を得るための手続きを指します。この際の文書は、紙媒体でも電子媒体でも問いません。稟議は企業や組織によって種類が異なりますが、契約稟議や購買稟議、採用稟議などが存在します。
稟議書とは、自身の権限では決定できない事案について、関係者の承認や決裁を得るために作成される文書のことです。立案書とも呼ばれます。
多くの企業では、事案に対して決定権を持つ関係者の承認を得たうえで意思決定を行いますが、稟議の内容は大小さまざまです。そのため、稟議の際に毎回関係者が集まるのは現実的ではありません。
稟議書を活用することで関係者が毎回集まる必要なく承認を得られるため、効率的に業務を進められます。
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稟議書と決裁書の違い
稟議書と似た用語に、決裁書という言葉があります。稟議書は関係者の承認を得るために、下位の承認者から順番に複数名で回覧されます。一方で、決裁書は稟議書の内容に対する最終的な判断を下すための書類です。
決裁書については、稟議書と異なり、決裁者ひとりで決裁が行われます。稟議書は事案に対する承認プロセスを進めるための書類で、決裁書は最終判断を行うための書類という点で明確な違いがあります。
稟議書と起案書の違い
稟議書と似た役割をもつ書類として、起案書があります。起案とは、社内で実行したい事案やプロジェクトに関する原案を作ることです。起案書は、起案の際に作成した原案を意味します。
原案を作って承認を得るプロセスである点で、稟議と起案は似た手続きです。近年では稟議と起案を同義とするケースも少なくありません。
基本的に起案が事案やプロジェクトの最初のステップ、稟議はその後に承認を得るために使われる手続きであることを覚えておきましょう。
稟議書のメリット
稟議書を活用すれば、社内での承認プロセスが効率的に進みます。稟議書を活用して得られるメリットについてそれぞれ詳しく解説します。
審議のための会議を減らせる
稟議書を活用する最大のメリットは、事案のたびに関係者が集まって審議しなくてもよい点です。稟議書には事案の詳細や必要な情報がすべて記載されているため、承認者は文書1枚を確認するだけで内容が把握でき、可否を判断できます。
稟議書が丁寧に作られていれば、担当者が説明に大きく時間を割く必要もなく、効率的に意思決定が進められます。
事案に取りかかるまで時間短縮できる
稟議書を活用すると、事案に取り掛かるまでの時間を大幅に短縮できます。稟議書であらかじめ関係者に事案の内容が共有できるため、承認が得られればすぐ業務に取り組めます。
そのため、無駄な時間を省き業務のスピードアップが可能です。とくに急ぎの案件や重要な事案において、稟議書を活用することで迅速に対応できます。
稟議書のデメリット
稟議書には新しい事案を効率的に進めるうえでメリットがある一方、承認者が複数いるため、一人ひとりの責任意識が薄れやすい点がデメリットといえるでしょう。とくに稟議書を回覧する際に、各承認者が内容を十分に確認せず情報の矛盾を見逃したり、判断を誤ったりする可能性があります。
万が一、あとからその稟議に関わる問題が発生した場合、多くの承認者が存在するため責任の所在が不明瞭になる恐れもあります。会社の意思決定プロセスに関わるため、外部から批判を受けるリスクも考慮しなければなりません。
不正な申請はもちろん、申請者自身も気づいていない欠陥まで完全に排除することは容易ではありませんが、問題が発生した際に責任の所在を明らかにする仕組みづくりが重要です。
稟議書の書き方
稟議書は組織内で承認を得るための重要な書類です。スムーズに承認を得るには、内容を正確かつ簡潔に記載することが求められます。
仮に記載内容が不明確だったり、重要な情報が抜けていたりすると差し戻しにつながり、承認が遅れる恐れもあります。稟議書に記載するべき項目について詳しく解説するので、参考にしてください。
稟議書への記載項目
稟議書に必ず記載するべき項目は以下のとおりです。
- 作成日
- 起案部署・起案者氏名
- 件名
- 稟議内容
- 添付書類
- 決裁者所見
1. 作成日
稟議書を作成した日付を記載します。いつ申請された稟議なのかを明確にできます。
2. 起案部署・起案者氏名
稟議書を作成した担当者の氏名や所属部署を記載します。これらを記載することで、誰が稟議を申請したのかがわかり、問い合わせ先も明確になります。
3. 件名
稟議書の内容を簡潔に示す件名を記載します。たとえば「〇〇の契約手続きについて」など、おおまかな内容が件名だけで理解できる状態が望ましいです。
4. 稟議内容
申請内容の詳細や目的について記載します。なぜその申請が必要なのか、承認を得たい具体的な理由をわかりやすく説明しましょう。
5. 添付資料
申請に関する資料やデータがあればあわせて添付します。資料やデータを添付すれば、承認者も稟議の内容をスムーズに理解できます。
6. 決裁者コメント
承認者からのコメントがあれば記載するスペースです。承認を得るための確認事項などがあれば記載されます。
主に上記の項目は必ず稟議書に入れるべき内容です。漏れなく記載し、簡潔にまとめられれば、スムーズに承認プロセスを進められます。
稟議書の記載例とテンプレート
新たに営業部で利用するノートPCを導入するケースを挙げ、「稟議書への記載項目」で解説した項目に沿った稟議書の記載例を作成しました。
稟議書
作成日: 2025年2月3日
起案部署: 第一営業部
起案者: 山田太郎
件名: 営業部で使用するノートPCの購入について
稟議内容:
営業部で使用するノートPCを以下の内容で購入したく、承認をお願いいたします。背景や導入効果については以下のとおりです。
背景・理由:
営業部では外回りでの提案活動を行う際、印刷したパンフレットや資料を持参して顧客に説明しています。しかし、紙の資料の持ち運びや印刷に手間がかかっているのが現状です。そこでノートPCを導入することによって、これらの作業負担を軽減し、より効率的な営業活動が可能になると考えています。ノートPCを使用すればデジタル資料を活用し、提案内容の変更や資料の追加をその場で柔軟に対応できるため、顧客への提案力が向上します。
購入内容:
対象製品名: ○×社製 ノートPC○○
価格: 1台85,000円
数量: 8台(営業部員8名に1人1台貸与するため)
導入効果:
営業部員へのヒアリングの結果、現在1週間あたり資料準備に約1時間を要しているところ、ノートPCを導入することでこれが30分に短縮される見込みです。印刷費用の削減効果もあり、年間で約80,000円のコスト削減が期待されます。これにより、営業活動の効率化が進み、営業提案の質の向上にもつながると考えています。
使用開始希望日: 2025年3月17日
添付書類:
○×社製 ノートPCの製品パンフレット
営業部員アンケート結果(資料準備時間、PC導入による効果の予測)
稟議書を作成する際に決まった書式がない場合は、インターネット上でテンプレートを取得できます。freeeでも、稟議書の無料テンプレート集をご用意しています。会員登録不要で利用できるので、活用してみてください。
稟議書の承認を得やすくするポイント
稟議書を回覧してもらいスムーズに承認を得るには、稟議内容を簡潔でわかりやすくまとめて必要なデータを用意したり、根回しをしたりすることが大切です。
稟議書の承認を少しでも得やすくするためのポイントについて詳しく解説します。
承認に必要な情報を簡潔にまとめる
稟議書で承認者が知りたい情報は主に以下のとおりです。
承認者が知りたい情報
- 導入する目的や目指す目標
- 稟議申請の理由や背景
- 承認してもらいたい内容
- 導入によるメリットや効果
上記の内容がわかりやすく記載されている必要があります。ただし、ダラダラと長い文章では、論点が不明瞭になり承認者の理解を得られない恐れがあります。箇条書きや5W1Hなどを意識して、簡潔にまとめましょう。
信頼性を高めるデータを含める
提案内容の承認を得やすくするには、信頼性を高める具体的なデータを含めることが重要です。ただし、稟議に必要ない情報までむやみに含めるのではなく、費用対効果がわかるデータや売上予測に基づくデータなど、承認者が納得しやすい根拠を示しましょう。
具体的には、導入後のコスト削減額や生産性向上の見込みなどの数値を示せば説得力が増します。
承認者や決裁権者に事前に根回しする
稟議書が承認者のもとに届く前に、根回しをしておくのも大切です。自分が聞いていない事案がいきなり稟議書で回ってくると、リスクを警戒して承認してもらえないケースも考えられます。
口頭で「この内容の稟議書を提出します。部署の問題解決につながるので早めに承認をお願いします」と事前に説明しておくと、スムーズに承認プロセスが進みます。
稟議申請を行えるシステムを利用する
稟議書の承認を得やすくするには、稟議のフローを効率化することも重要です。そのためには、社内の稟議を電子化したシステムを利用するといった方法があります。
稟議システムを導入すれば、インターネット上で稟議のフローが完結できることがメリットです。場所や時間にかかわらず稟議申請や承認ができるようになるため、承認者不在によって承認が滞ってしまうことも回避できます。
会計システムや経費精算システムの中には稟議申請を行えるサービスもあるため、自社にあったシステムの導入を検討することをおすすめします。
まとめ
稟議書は大小さまざまな事案に対して、複数の関係者から承認をもらい会社の意思決定を行うための重要な書類です。
そのため、要点をわかりやすく簡潔に記載して提出する必要があります。また、急に稟議を申請すると承認者からリスクを警戒される可能性があるため、申請前の根回しも大切です。
本記事を参考に、承認者に納得してもらいやすい稟議書を作成してスムーズに稟議を進めてください。
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よくある質問
稟議書とは?
稟議書とは、社内で自身の権限だけでは決定できない事案について、関係者から承認を得るための文書です。稟議書を回覧し、関係者の承認を順番に得ていくことで、会議を開かずに意思決定が進められます。
詳しくは「稟議書とは」で解説しています。
稟議書の記載項目は?
一般的に稟議書には以下の項目が含まれています。
- 作成日
- 起案部署・起案者氏名
- 件名
- 稟議内容
- 添付資料
- 決裁者コメント
上記の内容を含むことで、稟議書として必要な情報を網羅できます。詳しくは「稟議書への記載項目」を参考にしてください。