法人カードとは、法人や個人事業主に対して発行されるビジネス用途のクレジットカード全般を指す言葉です。コロナ禍や各種法改正などの影響によってバックオフィスの業務効率化が加速したこともあり、近年では法人カードを導入する企業が増えています。
本記事では、経理担当者にとっても関わる機会が多くなった法人カードの特徴やメリット・デメリット、選び方のポイントなどを詳しく解説します。
目次
- 法人カードとは
- 法人カードの種類
- ビジネスカードとコーポレートカードの違い
- 法人カードと個人カードの違い
- 利用限度額が違う
- 引き落とし口座が違う
- 支払い方法が違う
- 従業員用のカードを発行できる
- 法人カードを作るメリット
- 経理業務を効率化できる
- 公私を明確に区別できる
- 小口現金管理の手間・リスクを減らせる
- キャッシュフローを安定させやすい
- ビジネス向けの付帯サービスがある
- 法人カードを作るデメリット
- 年会費を支払うカードが一般的
- 追加カードの管理が大変
- 用途で考える、法人カードを選ぶポイント
- 出張が多いので法人カードの特典を利用したい
- 立替精算を効率化したい
- 法人カードで高額の支払いをしたい
- 利用用途や利用部署ごとに管理したい
- 法人カードを作る際の注意点
- 不正利用防止のルールを策定しておく
- 求められる情報をあらかじめ用意しておく
- 法人カードの作り方と流れ
- まとめ
- 面倒な経費精算を秒速で終わらせる方法
- よくある質問
法人カードとは
法人カードは、法人や個人事業主に対して発行されるクレジットカードの通称です。カードとしての基本的な機能は個人カードと同じですが、よりビジネスで利用しやすいサービスが付帯している点に違いがあります。
法人カードの引き落とし口座は、法人名義です。個人事業主の場合は、屋号付き口座か個人の口座から引き落とされます。
法人カードの多くは、社員に対してクレジットカード(追加カード)を複数枚発行することが可能です。個人カードでいう「家族会員」の形をイメージするとわかりやすいかもしれません。
法人カードの種類
法人カードというと一般的に「法人向けクレジットカード」を指しますが、支払い方法によって「クレジットカード」「プリペイドカード」「デビットカード」に分類できます。
それぞれ、支払い方法や利用条件などの特徴をおおまかに把握しておきましょう。
法人向け クレジットカード | 法人向け プリペイドカード | 法人向け デビットカード | |
---|---|---|---|
支払い方法 | 後日まとめて | 事前にチャージ | 即時 |
支払回数 |
・一括払い ・分割払い ・リボ払い | 一括払い | 一括払い |
審査 | 必要 | 基本的になし | 基本的になし ※事前に法人口座の開設が必要 |
利用限度額 | 10~500万円程度 | 原則として事前チャージ額が上限 | 法人口座の預金残高が上限 |
ビジネスカードとコーポレートカードの違い
法人向けクレジットカードは、大きく分けて「ビジネスカード」と「コーポレートカード」の2種類があります。どちらも機能面に違いはありませんが、それぞれの特徴は次のとおりです。
ビジネスカード |
・主に中小企業や個人事業主向けのカード ・経理業務の簡略化や、ビジネスに役立つサービスの利用ができ、事業の成長をサポートしてくれる ・審査では、法人や代表者個人の信用情報が問われる |
---|---|
コーポレートカード |
・主に大企業を対象に発行されるカード ・ビジネスカードより利用限度額が高く、従業員向けに追加カードを多く発行することが可能 ・企業の資本金や、財務状況などが重要な審査ポイント |
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法人カードと個人カードの違い
法人カードと個人カードでは、「利用限度額」「引き落とし口座」「支払い方法」「従業員用カードの発行可否」といった点が異なります。これらの違いを理解しておくことで、カードを正しく有効活用できます。
利用限度額が違う
法人カードは事業・ビジネスで利用し、個人カードはプライベートで使うものです。そのため、法人カードは事業で発生する経費、たとえば「事務所家賃」「備品購入」「顧客の接待費」「出張旅費」など高額の支払いにも対応できる利用限度額になっています。
具体的には、個人カードの利用限度額が一般的に最大で100万円程度であるのに対し、法人カードは500万円程度になります。また、法人カードの中でも大企業向けの「コーポレートカード」なら、さらに高額な決済が可能です。
引き落とし口座が違う
法人カードの引き落とし口座は、法人名義のものに設定します。名義はカードを使用する代表者や社員の個人名になりますが、法人名が併記されるケースもあります。個人カード同様、代表者やその他の社員など名義人のみの利用に限られ、使用時には個人名のサインが必要です。
法人カードの契約者が個人事業主の場合は、屋号付き口座もしくは個人口座からの引き落としになります。
支払い方法が違う
一般的に個人カードは、1回払い、分割払い、リボ払いなど、いくつかの中から支払い方法を選択できます。一方で、法人カードの支払い方法は原則1回払いのみで選択肢がありません。また、キャッシング機能も付帯していないものがほとんどです。
事業を行っている法人には比較的潤沢な資金があり、分割払いやリボ払いをする必要がないと考えられていることが理由です。また、3回以上の分割払いやリボ払いには利息がかかるため、企業にとって負担になり得るという背景もあります。
ただし法人カードでも、名義が代表者個人の場合は一部分割払いやリボ払いが使えるケースもあります。法人カードで支払いを延滞すると、信用情報の評価が下がってさまざまなデメリットを被る恐れがあるため注意が必要です。
従業員用のカードを発行できる
個人カードとの大きな違いとして、従業員用のカードを発行できる点が挙げられます。法人カードなら、クレジットカード、プリペイドカード、デビットカード、いずれも従業員用に複数枚のカードを発行できます。
ただし法人カードの種類によっては、追加カードの発行枚数に上限が設けられているため注意してください。
法人カードを作るメリット
法人カードを作ると、経理業務の効率化やキャッシュフローの安定などが期待できます。ポイント還元の仕組みや付帯サービスなども活用すれば、経費削減などにもつながるでしょう。
以下で、法人カードの特徴やメリットを詳しく解説します。
経理業務を効率化できる
法人カードを利用する一番のメリットは、経理業務の効率化です。法人カードを利用すれば、事業に必要な物品の購入や交通費、社用車のガソリン代などに関して経費精算の必要がなくなります。また、利用明細がデータとして残るため、「いつ、誰が、何に、いくら使ったのか」の確認も容易です。振込手数料や代引手数料の削減につながる点も見逃せません。
税理士など外部に経理業務を委託している場合には、領収書を送る手間を省くこともできます。また、自身で確定申告をしている青色申告の個人事業主は、領収書の確認や仕分けなど確定申告にかかる手間の削減も可能です。「青色申告特別控除」で必須条件となっている「複式簿記」の作業もスムーズに進められるでしょう。
公私を明確に区別できる
公私を明確に区別できるのも法人カードのメリットです。個人事業主の場合、仕事の買い物で個人のクレジットカードを使っていると、仕事の経費と個人の生活費の境が曖昧になってしまいます。そうすると、確定申告の時期になって「この支出は仕事と個人、どっちだったっけ……」など頭を抱えることになるでしょう。法人カードと個人カードで用途を分けておけば明確に区別できるため、そのような心配がありません。
法人カードによっては会計ソフトと連携する機能が付帯しているものもあり、利用することで仕訳のミスも防げるため便利です。
小口現金管理の手間・リスクを減らせる
法人カードを使うことで、煩雑になりがちな小口現金の管理をまるごとカットできます。
カードには利用履歴がすべて残るため、「帳簿と現金の照合に時間がかかってしまう」「本店から各店舗の小口現金の状況が見えにくい」「領収書が郵送がされるまで月末の締めができない」といった負担やデメリットの解消が可能です。現金の扱いが減ることから、盗難や紛失のリスクも軽減できます。
キャッシュフローを安定させやすい
法人カードでは個人カードと同様、毎月決められた日に利用代金が口座から引き落とされます。クレジットカードなら引き落としまで支払い猶予が発生するため、資金繰りの調整が可能になり、キャッシュフローを安定させやすくなります。
ビジネス向けの付帯サービスがある
法人カードといえば、ビジネスシーンをサポートしてくれる付帯サービスが特徴です。営業車の手配、オフィス必需品の配送、オフィス移転のバックアップなどに対応しているものもあります。なかには、スポーツクラブの優待や健康診断、人間ドックが割引価格で受けられるサービスが付帯されているものも珍しくありません。
業種によって必要なサービスは変わってくるため、入会の際は付帯サービスも含めて検討することをおすすめします。
法人カードを作るデメリット
メリットの多い法人カードにも、デメリットがあります。年会費を支払うため規模が小さい個人事業主の場合は負担になる可能性があり、従業員に渡した追加カードの管理にも手間がかかるでしょう。
年会費を支払うカードが一般的
一般的に、法人カードでは年会費の支払いが発生するケースがほとんどです。「初年度のみ無料」といったカードも中にはありますが、永年無料のカードは多くありません。よって、年会費を節約したい場合はデメリットになるでしょう。
年会費は経費計上できますが、できるだけ節約したい場合、カードの利用が少ない場合は年会費の少ない法人カードを選ぶといいでしょう。中には年会費・発行手数料・外貨決済手数料が無料になる法人カードもあるので、じっくり検討してください。
追加カードの管理が大変
前述したように、多くの法人カードでは従業員用の追加カードを発行することが可能です。しかし、発行した分だけ管理は大変になります。追加カードを従業員にプライベートで利用されてしまう可能性もないとはいえないため、事業に関係ない費用が計上されないよう、事業主側できちんと管理する必要があります。
用途で考える、法人カードを選ぶポイント
ここからは、優先させたい用途から適した法人カードの選び方について解説していきます。それぞれの業種や条件から、どのようなカードを選択すべきか考えることが重要です。
- 出張が多いので法人カードの特典を利用したい
- 立替精算を効率化したい
- 法人カードで高額の支払いをしたい
- 利用用途や利用部署ごとに管理したい
出張が多いので法人カードの特典を利用したい
出張の機会が多い企業におすすめなのは、空港ラウンジを利用できる法人カードです。ラウンジでは、無料のドリンクサービスや無線LAN、雑誌・新聞など、さまざまなサービスが提供されています。フライトまでの待ち時間にラウンジで業務を行うことも可能です。
海外出張が多い場合には、海外旅行傷害保険や海外アシスタンスの付帯サービスがあるカードが便利です。海外出張中に起きたけがや病気、盗難など、さまざまなトラブルを補償してくれます。日本と医療事情が異なる海外では出張に保険をかける必要がありますが、法人カードに保険が付いていれば保険料の節約になります。
立替精算を効率化したい
立替清算の負担を減らしたい場合は、従業員用の追加カードを多く発行できる法人カードがおすすめです。カードの一元管理が可能で、各カードのポイントやマイルも還元されます。
各カードの還元率は個人カードに比べて少し低く、一般的に0.5%程度ですが、追加カード分の還元ポイントを親カードにまとめることもできます。たとえば、全体で毎月100万円の利用だった場合、年間で約6万円分のポイントが法人(親カード)に還元されます。
法人カードで高額の支払いをしたい
高額の支払いをクレジットカードで行いたい場合は、利用限度額が高めに設定されているランクが高いカードを選ぶことをおすすめします。
法人ゴールドカードであれば最高500万円、法人プラチナカードであれば1,000万円以上の限度額になることもあります。ただし、審査が厳しいカードもあるため、審査基準をある程度把握した上で申し込みましょう。
また、高額利用限度額カードの加入が難しい新設法人の場合、法人向けプリペイドカードを利用する方法もあります。利用額の事前入金が必要ですが、事前入金額が利用限度額となるため与信審査なしで高額決済が可能です。
法人カードの審査に落ちる主な理由
法人カードの審査では、返済能力があるかどうかをさまざまな情報から判断されます。「経営者自身の信用情報に傷がある」「経営実績や財務状況が申込条件を満たしていない」と言った場合は審査に落ちる可能性が考えられます。
また、短期間のうちに複数の法人カードを申し込んでいると、「お金が不足している」と見なされて審査で不利になる可能性があります。クレジットカードやローンで支払遅延がある場合は、申し込みを行う前に速やかに解消しましょう。
利用用途や利用部署ごとに管理したい
備品購入や交通費(ガソリン代)の支払いといった用途別、あるいは部署・ユニット別に法人カードの使い方が異なる場合は、1枚ずつ利用上限額の設定や利用停止が可能な法人カードを選びましょう。
使いすぎの懸念や不正利用のリスクを軽減できるため、従業員へ配布するカードの管理に便利です。
法人カードを作る際の注意点
法人カードを作るときの注意点を解説します。これらに注意しておけば、よりメリットの強い法人カードになるでしょう。
不正利用防止のルールを策定しておく
法人カード、とくに従業員向けの追加カードを導入する際は、不正利用のリスクを考慮したルールを設けておかなければなりません。
「私的利用」や「経費でないものの決済」を防ぐために以下のようなルールを設け、社内に周知した上でしっかりと管理することが求められます。
- 期日を決めて領収書を提出するようにする
- 利用できる人を制限する
- 利用する時にだけカードを渡す
求められる情報をあらかじめ用意しておく
法人カードを作るときは、求められる情報をあらかじめ用意しておくとスムーズです。主に、下記の情報を求められます。
- 代表者の名前、生年月日などの個人情報
- 設立年数、社員数などの企業情報
- 事業の経営実績
- 事業の財務状況(代表者の年間所得や企業の売上高など)
- 事業代表者の信用情報(ローンやクレジットカードの借入状況や最終返済日の情報など)
法人カードの作り方と流れ
多くの法人カードはオンラインで申込みが可能です。具体的な流れは以下のとおりです。
法人カードを作成する流れ
- 銀行口座の開設
- オンライン申し込みフォームに情報を入力
- 入会審査
- カード発行・発送
- カード利用開始
カード会社やカードの種類によって異なりますが、申込みからクレジットカードの発送までは、おおよそ数日から2週間程度かかります。
まとめ
法人カードは事業の大小にかかわらず、「良きビジネスパートナー」となり得るカードです。経費削減につながることはもちろん、業務効率化から生まれるリソースは売上拡大や事業発展にも役立つでしょう。
また、ゴールド・プラチナといったランクの高い法人カードには、さらに充実した付帯サービスがあり、より手厚くビジネスをサポートしてくれます。業種や条件、用途などをふまえて自社にはどの法人カードが最適なのかを考え、使い方やサービスなどの相性を見極めることが重要です。
面倒な経費精算を秒速で終わらせる方法
経費精算は、「面倒だ・手間だ」という声をよく聞きます。
紙のレシートの保管が面倒、申請するのが手間、業務が忙しくて後回しになってしまう、申請内容の確認が手間、承認のやり取りに手間がかかる、入力ミスでの差し戻しでのコミュニケーションに時間がかかる、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に時間がかかる・・・など、申請者・承認者、経理担当とそれぞれに課題があり、負荷がかかりがちな業務です。
経費精算の業務は、経費精算システムを導入することで、申請から承認、処理・保存までラクな仕組みに変えられます。
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よくある質問
法人カードとは?
法人カードとは、法人や個人事業主に対して発行されるビジネス用途のクレジットカードのことです。法人名義の場合は法人口座から、個人事業主の場合は屋号付き口座か個人の口座からの引き落としとなり、従業員用のカードを複数枚発行できます。
詳しくは、記事内の「法人カードとは」をご覧ください。
法人カードを持つメリットは?
法人カードを持つメリットとして、「経理業務の効率化」「公私の区別」「キャッシュフローの安定」「ビジネス向けの付帯サービス」などが挙げられます。
詳しくは、記事内の「法人カードを作るメリット」をご覧ください。
法人カードを持つデメリットは?
メリットの多い法人カードにもデメリットがあり、「年会費が必要になる」「追加カード(従業員用)の管理に手間がかかる」といった点はあらかじめ考慮しておく必要があるでしょう。
詳しくは、記事内の「法人カードを作るデメリット」をご覧ください。