経費とは、事業活動を行ううえで必要になる費用のことで、「経常費用」の略称です。交通費や消耗品費など事業で利益を得るために発生したさまざまな費用が経費として計上でき、租税公課として扱える税金も経費にできます。
経費は節税にとって大きな効果をもたらすため、正しく経費計上することで支払う税金負担を減らせるでしょう。
本記事では、経費にできる費用と税金、経費計上を行う際の注意点などについて詳しく解説していきます。
目次
- 経費とは
- 「経費で落とす」の意味とは
- 経費計上を行うメリット・デメリット
- 経費計上を行うメリット
- 経費計上を行うデメリット
- 経費として計上できる費用・できない費用
- 経費として計上できる費用
- 経費として計上できない費用
- 経費として計上できる税金・できない税金
- 経費として計上できる税金
- 経費として計上できない税金
- 経費計上を行う際の注意点
- 使用する勘定科目は基本的に変えてはいけない
- 経費にできる固定資産税は事業用の部分のみ
- 自宅兼事務所の家賃・水道光熱費は家事按分が必要
- 家族に支払う給与は原則経費にならない
- 誤った経費計上を行ってはいけない
- 誤った経費計上に伴うペナルティ
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 不納付加算税
- 重加算税
- まとめ
- 面倒な経費精算を秒速で終わらせる方法
- よくある質問
経費とは
経費とは、事業活動を行ううえで必要になる費用のことで、「経常費用」の略称です。例外はありますが、業務上必要な支出であれば飲食代や交通費、スマートフォンの利用料金など、さまざまな費用が経費として認められます。
経費の対象となる費用は課税対象とはならないため、所得税の計算を行う際には収益から差し引く作業が必要です。
出典:国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」
「経費で落とす」の意味とは
「経費で落とす」とは、業務を通じて発生した費用を経費として計上することを指します。事業を行い利益を得るためには、事業運営のための設備費や備品代、取引先との打ち合わせ時にかかった飲食代など、さまざまな費用がかかるでしょう。
経費で落とすやり方は、法人においては従業員が一度支払ったのちに改めて会社が精算する場合や、会社が直接支払ったものも経費として計上する場合があります。個人事業においては、基本的に事業主が直接支払ったものとなるでしょう。
なお、法人をはじめ事業者に課される税金のほとんどは、収益から経費などの費用を差し引いた課税所得をもとに計算します。そのため、税金による支出を抑えるためにも、経費計上できるものは漏れなく計上しましょう。
経費計上を行うメリット・デメリット
経費計上を行うメリットとデメリットについて、それぞれ以下にまとめました。
メリット | デメリット |
---|---|
・節税効果が高まる | ・事務負担が増加する ・会社上の利益が減る |
経費計上を行うメリット
経費計上のもっとも大きなメリットは、節税対策になることです。
経費は、課税所得を計算する際に売上から差し引けます。税金は課税所得に対して課せられるものであり、所得が増えるとその分税金の金額も上がる仕組みです。
そのため、経費の対象となる費用を漏れなく計上することで、課税所得の減額ができ結果的に節税につながります。ただし、節税対策になるからと経費にならないものまで計上してしまうと、税務調査に入られペナルティが課せられることもあるため注意してください。
経費計上を行うデメリット
経費計上には節税対策という大きなメリットがあるものの、事務負担の増加や会計上の利益減少といったデメリットもあります。
経費の計上にあたっては、経費となる費用の内容や金額が分かる領収書やレシート、振込み証明などの書類が必要です。そのため、経費計上の作業にはこれらの書類を保管・管理する業務負担が発生します。
また、会計上の利益が「売上 − 経費」で求められることから、計上する経費の金額が多いと利益が少ないと見られてしまいます。利益が少なくなると金融機関からの借入などで不利になるケースがあるため、場合によっては経費を計上しすぎることがデメリットになることもあります。
経費として計上できる費用・できない費用
経費には、計上できる費用と計上できない費用があるため、事前に理解して正しい処理をすることが重要です。経費の対象かどうかは所得税法において定められているため、しっかり確認しましょう。
出典:e-Gov法令検索「所得税法 第37条 必要経費」
経費として計上できる費用
経費に計上できる費用には、以下が該当します。
人件費 | 雇用により発生する費用全般 |
---|---|
消耗品費 | 耐用年数1年未満、もしくは10万円未満の用品購入時にかかる費用 |
接待交際費 | 事業に関連する飲食代・謝礼など |
旅費交通費 | 業務上発生した移動を対象とした費用 |
研究開発費 | サービス・事業の新規開発にかかる費用 |
新聞図書費 | 事業で使用する書籍・DVD・情報サイトの登録料などの費用 |
通信費 | 事業におけるインターネット・電話などにかかる費用 |
広告宣伝費 | インターネット・テレビを通じてサービスを宣伝するのに必要な費用 |
地代家賃 | 事務所・店舗・駐車場など事業に関連する家賃 |
減価償却費 | 事業用の車両・建物などの固定資産取得費用を使用期間に分割して計上する |
福利厚生費 | 社員旅行や新年会など、従業員を対象とした給与以外の費用 |
修繕費 | 設備・建物などの維持管理や修理にかかる費用 |
支払手数料 | 金融機関への振り込み手数料など |
租税公課 | 事業税・印紙税・自動車税・登録免許税・固定資産税など |
経費として計上できない費用
一方で、以下に挙げる費用は経費として計上できません。
法人税・法人住民税 | ・法人税など事業の所得に対する税金 ※税務上の損金としては計上できない ・個人事業主の場合は所得税と住民税 |
---|---|
社会保険料 | ・個人事業主の国民健康保険・国民年金など ・家族従事者の社会保険料も同様 |
事業に関連しない費用 | ・飲み会費 ・趣味の道具の購入費 ・日用品代 など ※事業の売上に関連しないもの |
なお、経費と混在しやすいものとして「損金」があげられます。損金とは、法人税上における原価・費用・損失のことです。経費は企業会計における費用を示すため、経費として計上できても損金として計上できないものがあります。また、その逆も然りです。
そのため、企業会計として経費を計算するときと、法人税や所得税を算出する際の損金を計算する時は、その項目を正しく把握しなければなりません。
損金と経費の違いについて詳しく知りたい方は、別記事「損金とは?費用・経費との違いから、算入・不算入の事例までわかりやすく解説」をご確認ください。
経費として計上できる税金・できない税金
経費として計上できるものには、費用以外にも税金があげられます。ただし、すべての税金を経費として計上できるわけではありません。あくまでも、租税公課に該当する税金が経費として計上できる対象となるので、以下で詳しく見ていきましょう。
出典:国税庁「租税公課」
経費として計上できる税金
以下の税金は、租税公課として経費計上ができる税金です。
経費として計上できる税金
- 消費税※税込経理方式で仕訳している場合のみ
- 固定資産税
- 個人事業税
- 印紙税
- 不動産取得税
- 登録印紙税
- 事業用で使用する自動車の自動車税・自動車重量税・自動車取得税
消費税に関しては、税込経理方式で仕訳している場合のみ経費計上が可能で、税抜経理方式で仕訳している場合は経費計上できません。詳しくは、別記事「消費税仕訳の勘定科目は?経理方式やインボイス等による会計処理の注意点を解説」をご確認ください。
また、固定資産税や印紙税などそのほかの税金に関しては、事業を行うにあたって発生した税金が経費計上の対象となるため、私的に支払った税金と混同しないように気をつけましょう。
なお、租税公課について詳しく知りたい方は、別記事「所得税や消費税など税金の支払いはどうなる?租税公課について」をご確認ください。
経費として計上できない税金
一方で、経費として計上できない税金は、以下のとおりです。
経費として計上できない税金
- 所得税
- 住民税
- 相続税
- 贈与税
- 各種罰金・延滞税
これらの税金は所得に対してかかる税金であるため、経費として扱うことはできません。罰金や延滞税も個人に対してかかる税金となるので、経費にはしないようにしてください。
経費計上を行う際の注意点
経費計上を行う際は、以下の点に注意が必要です。
経費計上を行う際の注意点
- 使用する勘定科目は基本的に変えてはいけない
- 経費にできる固定資産税は事業用の部分のみ
- 自宅兼事務所の家賃・水道光熱費は家事按分が必要
- 家族に支払う給与は原則経費にならない
- 誤った経費計上を行ってはいけない
使用する勘定科目は基本的に変えてはいけない
経費計上する費用の勘定科目は、同じ内容である限り同じものを使い続けましょう。これは、期ごとで費用の変動などを適切に管理し、後から確認しやすくしやすくするためです。
たとえば、広報・PR活動でSNSを使用するためのインターネット費用を、前期では「通信費」として計上していたのにもかかわらず、今期では「広告宣伝費」として計上したとします。すると、勘定科目ごとの内容が変動してしまい、費用の比較をすることができません。
また、企業会計原則における「継続性の原則」という項目において、一度決めた勘定項目は継続して使い続け基本的には変えてはならないとされています。
出典:企業会計データベース「企業会計原則条文」
勘定科目について詳しく知りたい方は、別記事「勘定科目とは?仕訳方法や設定のポイントについてわかりやすく解説」をご確認ください。
経費にできる固定資産税は事業用の部分のみ
上述したとおり事業用で発生した固定資産税は、「租税公課」として経費計上できます。ただし、経費として計上できる固定資産税は事業用の部分のみに限られます。
たとえば、自宅兼事務所として使用している自宅に発生した固定資産税では、家事按分をしたうえで事業分の固定資産税を計上しなければなりません。なお固定資産税は、土地や家屋といった固定資産税評価額に、標準税率である1.4%をかけることで算出できます。
自宅兼事務所の家賃・水道光熱費は家事按分が必要
自宅を事業所として使用している個人事業主は、家賃・水道光熱費を固定資産税と同様に家事按分しなければなりません。生活における全体の使用量ではなく、事業に使用している分だけを経費として計上してください。
家事按分の計算の仕方などについて詳しく知りたい方は、別記事「家事按分とは?個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法についてわかりやすく解説」をご覧ください。
家族に支払う給与は原則経費にならない
生計をともにする家族を対象に支払う給与などは、原則経費計上できません。ただし、青色申告をする個人事業主が家族に支払う給与については、青色事業専従者給与として経費計上できます。
なお、白色申告を利用する個人事業主は、事業に従事する家族の数などに応じて一定額の経費計上が認められています。しかし、その要件は青色事業専従者給与に比べて厳しく、控除の範囲も狭くなっているため注意してください。
出典:国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」
青色事業専従者給与について詳しく知りたい方は、別記事「青色申告の専従者給与 家族への給与支払いで節税効果を高める方法」をご確認ください。
誤った経費計上を行ってはいけない
プライベートの支出を経費として計上したり、本来よりも少ない金額を課税所得として申告したりした場合などは、ペナルティが課せられる恐れがあります。そのため、安易に何でもかんでも経費にすることはおすすめできません。
税務調査が入ることも見越して、領収書やレシートなどの証拠を見せられるもののみを経費として計上しましょう。
誤った経費計上に伴うペナルティ
誤った経費計上を行ってしまうと、以下のペナルティが発生する恐れがあります。
過少申告加算税
過少申告加算税とは、本来納めなくてはならない税金よりも少ない金額で税金を申告した場合に課せられるペナルティです。過少申告加算税は、税務署の調査を受けた後に修正申告をし、申告税額の更正を受けた場合などに課せられることもあります。
過少申告加算税の金額は、再計算された差額分の税金の10%相当です。ただし、新たに納めるべきとされた税額が、当初の申告納税額もしくは50万円のいずれかを超えている場合、超過部分のみ15%となります。
出典:国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」
無申告加算税
無申告加算税とは、納税すべき税金を申請期限までに納めなかった場合に課せられるペナルティです。無申告加算税の税額は納付本税額のうち50万円までの部分には15%、50万円以上の部分は20%の割合で計算されます。
出典:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」
不納付加算税
不納付加算税とは、源泉徴収による国税が法定期限までに納付されなかった場合に課せられるペナルティです。不納付加算税の対象になってしまうと納付本税額における10%の割合で税額が加算されてしまいます。
出典:国税庁「加算税制度が納税者の税務コンプライアンスに及ぼす影響」
重加算税
重加算税とは、納税に関する事実の隠蔽や偽装が発覚した場合に課せられるペナルティです。経費の内容を故意に偽って申請してしまうと、税務調査によりバレて課せられてしまいます。
重加算税の税率は、過少申告加算税・不納付加算税の場合が納付本税額の45%、無申告加算税の場合が納付本税額の50%です。
出典:国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」
まとめ
経費とは、事業活動を行って利益を得る上で支払った費用のことです。経費には交通費や交際費などの費用や、事業用に支払った固定資産税や印紙税などの税金も該当します。
また、経費は事業活動に必要な費用で売上から差し引けるため、課税所得額が減り節税できることがメリットです。ただし、事業とは関係ないものを経費計上すると、ペナルティが課せられてしまう恐れがあるためご注意ください。
面倒な経費精算を秒速で終わらせる方法
経費精算は、「面倒だ・手間だ」という声をよく聞きます。
紙のレシートの保管が面倒、申請するのが手間、業務が忙しくて後回しになってしまう、申請内容の確認が手間、承認のやり取りに手間がかかる、入力ミスでの差し戻しでのコミュニケーションに時間がかかる、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に時間がかかる・・・など、申請者・承認者、経理担当とそれぞれに課題があり、負荷がかかりがちな業務です。
経費精算の業務は、経費精算システムを導入することで、申請から承認、処理・保存までラクな仕組みに変えられます。
freee経費精算では経費精算に関わる業務をAIがサポートし、経理担当者はもちろん、申請をする従業員、承認をする上司にも多くのメリットがあります。また、会社規模や業種を問わず、幅広い企業の経費精算を効率化できます。
<freee経費精算の機能例>
- スマホアプリ利用で最短1.5秒で経費申請が完了。紙の保管負荷を削減
- 高精度AI-OCRの自動処理で、明細も含めてAIが入力を行うので手入力ミス自体を削減
- 証憑重複自動チェックで差し戻し自体を削減 etc...
より詳しくサービスについて知りたい方は、ダウンロード資料をご覧ください。
よくある質問
経費で落とすとどんなメリットがありますか?
経費で落とすと課税所得を少なくできるため、納める税金を抑えられるメリットがあります。ただし、経費に落としすぎて利益が少なくなったり赤字計上をしたりすると、信用が下がってしまう恐れもあります。詳しくは記事内「経費計上を行うメリット・デメリット」をご覧ください。
どこまでの費用が経費となりますか?
経費にできる費用には、仕入れ費用や交通費、人件費などがあげられます。また、税込経理方式を採用している場合には、消費税などの税金も経費として扱えます。詳しくは記事内「経費として計上できる費用」「経費として計上できる税金」をご確認ください。