監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ
経費精算とは、先に会社の経費を従業員が立て替えておき、後で会社から払い戻すことを指します。経費精算は会社の経理業務において必要不可欠な作業となり、具体的なフローの把握や効率よく作業するポイントを押さえておくことが重要です。
本記事では、経費精算の種類や流れ、経費精算に領収書が必要な理由について詳しく解説します。
目次
経費精算の効率化におすすめの経費精算システム
最短1.5秒で申請完了。経費精算の面倒は自動化で極力ゼロに!申請・承認・経理業務をAIがサポート。freee経費精算は会社規模や業種を問わず、幅広い企業におすすめの経費精算システムです。
経費精算とは
経費精算とは、従業員が業務のために立て替えた費用を、会社から後日払い戻すことを指します。
会社が事業を行ううえでは、日々さまざまな経費が発生します。経費とは「経常費用」の略称で、事業活動を行ううえで必要になる費用のことです。経費について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
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しかし経費が発生するたびに、その場で会社が費用を支払うのは現実的に困難です。そのため、従業員が一時的に費用を立て替えるケースが一般的です。立て替えた費用は、経費精算書や領収書などの必要書類を会社に提出し、業務に関連する経費だと認められた場合は払い戻されます。
経費精算のルールには、会社からの振込期限を設定することが重要です。たとえば「毎月15日」「毎月末」といった明確な期日を社内規程に記載し、従業員に周知しましょう。
立替経費については、以下の記事もご覧ください。
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経費精算の種類
経費精算の種類は、以下の3つに分類されます。
- 小口精算
- 交通費精算
- 旅費精算
これらは使った経費の目的によってどの経費精算に当てはまるか違いがあるため、それぞれ詳しく解説します。
小口精算
小口精算とは、日常業務で使用する消耗品の費用(消耗品費)や交通費、会議費などの比較的少額で頻繁に支出する経費について、小口現金を用いて精算する方法です。
小口現金は、細々とした出費に備えて手元で管理する少額の現金のことを指します。小口精算では、現金の出入りを正確に把握するために現金出納帳で管理を行います。なお、最近はクレジットカードの利用やリモートワークなどが増えていることにより、キャッシュレス化が進んでいます。このことからも、小口現金制度の縮小廃止が流れとなっています。
現金出納帳とは、現金をいつ、どこに(誰から)、支払った(受け取った)のかを管理する台帳のことです。詳しくは以下の記事で解説しているのでご覧ください。
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現金出納帳とは?作成するメリットや記載項目について解説
交通費精算
交通費精算は、業務で発生した電車代やバス代、タクシー代などの交通費を後日精算する手続きです。たとえば、従業員が取引先や顧客を訪問する際にかかった交通費を立て替えて、後日会社に申請して精算すれば、会社から払い戻しされます。
電車代やバス代は領収書や乗車券などの証憑がないため、経費精算書で精算手続きを進めることになります。交通費精算について詳しくは、以下の記事で解説しているのであわせてご覧ください。
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交通費精算の方法と、処理の際に気をつけたい点とは
旅費精算
旅費精算は、遠方への出張などで発生する比較的高額な経費を精算するための手続きです。具体的には、新幹線や飛行機代など出張にかかった交通費やホテル代などの宿泊費、出張手当なども含まれます。
旅費精算においても、移動や宿泊にかかった費用を証明する領収書などが必要です。会社は領収書などの証憑をもとに、従業員にかかった費用を後日返金します。
出張にかかる経費は細かく申請する必要があり、移動日や宿泊日、目的地などを詳細に記録しておくことが重要です。旅費精算について詳しくは、以下の記事で解説しているのであわせてご覧ください。
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旅費精算のやり方と処理するときに気を付けたいポイント
経費精算の対象になるもの
経費精算の対象となるものは定められており、たとえば以下の5つがあります。
- 旅費交通費
- 交際費・会議費
- 消耗品費
- 福利厚生費
- 雑費
それぞれの項目について詳しく解説します。また、経費精算に関する勘定科目については以下の記事でも解説しているので参考にしてください。
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経費精算で用いる勘定科目とは? 仕訳例や処理時のポイントも解説
旅費交通費
旅費交通費とは、通常の勤務地以外の場所に移動するために発生した交通費や宿泊費、出張に伴う日当や手当を計上するために使用する勘定科目です。
たとえば、従業員が取引先を訪問する際に発生した新幹線料金やホテルの宿泊代を精算する場合は、旅費交通費勘定で処理します。
交際費・会議費
交際費は、取引先や顧客との接待や贈答など、業務上の人間関係を円滑にするために使われる費用を計上する勘定科目です。飲食店での会食や贈答品の購入に使われた費用が該当します。
会議費は、社内外での会議にかかる費用を計上する勘定科目です。株主総会や社内会議、取引先との打ち合わせで使用した飲料品代、会場費など、会議のために発生した費用であれば、会議費の勘定科目で処理します。
消耗品費
消耗品費は使用可能期間が1年未満、または取得価額が10万円未満の備品や什器の購入費用を計上するための勘定科目です。日常業務で使用する文房具やコピー用紙などが該当します。
オフィスで使われる消耗品が対象であり、これらの備品は頻繁に購入されるため経費精算の際によく見られる項目です。また、10万円未満のパソコンなども消耗品費として計上されます。
消耗品費については以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
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消耗品費とは?具体例や雑費との違い、仕訳方法について解説
福利厚生費
福利厚生費とは、従業員の福利厚生を目的として会社が支出した費用を計上するための勘定科目です。具体的には、社員旅行やクラブ活動の補助、食事補助やレクリエーション費用などが該当します。
会社は従業員が働きやすい環境を提供するために、これらの費用を負担します。福利厚生費は給与以外で従業員のために支出される経費です。
雑費
雑費は、他の勘定科目に当てはまらず少額の支出の際に用いられる勘定科目となります。具体的には、銀行などの手数料やゴミ処理費用、クリーニング代、所属団体の年会費などです。
雑費は消耗品費との使い分けに注意が必要な勘定科目です。文房具などの物品は、消耗品費として計上されます。一方でクリーニング代やゴミ処理費用などのサービスに関する支出は、雑費の勘定科目が用いられます。
雑費に関しては以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
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雑費とはどのような勘定科目?消耗品費との違いや仕訳方法などを解説
経費精算のやり方
一般的な経費精算の流れについて解説します。経費精算の流れを知って、スムーズに対応できるようにしておきましょう。
1. 立替払いをする
経費精算の最初のステップとして、業務で発生する費用を立て替えるところからスタートします。日々の業務においては、さまざまな費用が発生する可能性があります。具体的には、備品の購入費用や営業先に訪問するための交通費、接待にかかる交際費などです。
2. 領収書を受け取り保管する
費用を立て替えたら必ず領収書を受け取り、払い戻しを受けるまで大切に保管しておきます。領収書は実際に経費が発生した証拠となり、経費精算書を作成する際に必要です。
経費の中には、領収書が発行されないものもあります。その場合は、出金伝票に支払日や支払先、金額、内容などの詳細を記載するなど、会社内でルールを決めておくことが重要です。
3. 経費精算書を作成・提出する
領収書を受け取ったら規定の申請書の台紙に貼り付けて、決裁権限のある上司に提出します。上司が承認すると、承認印が押された経費精算書が経理部門に回されます。
また、会社によって経費として認められる条件や金額の上限、申請期限が決まっているため注意しましょう。事前にマニュアルを確認して、漏れなく申請してください。
4. 立て替えた費用が払い戻される
経理部門に回された申請書に問題がなければ承認され、社内ルールに基づき決まった日にちに費用が払い戻されます。経費の精算方法としては、小口現金から支払いを行うか、給与支給と同時に銀行振込など、会社や経費の金額によっても変わってくるため、あらかじめ確認しておきましょう。
また、経費精算する際には、経理部門の方で仕分けを行う必要があります。
経費精算で領収書が必要な理由
経費精算の際には領収書が発行できない取引を除き、領収書が必要です。また、領収書ではなくレシートの場合でも、日時や金額、取引先の名前の記載などがあれば領収書の代わりに使用できます。
経費精算の際に領収書が必要な理由について、詳しく解説します。
なお、経費精算の際には領収書とあわせて経費精算書も必要です。経費精算書や領収書に記載する内容については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
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業務に必要な取引だったかを確認するため
領収書は、経費申請された取引が本当に業務に関連して必要だったのかを証明するために必要な書類です。領収書には、取引の内容や取引があった日付、金額、取引先の名称などが記載されています。
経理担当者は領収書の内容をもとに記帳することで、正確な取引情報を帳簿に付けることができます。
二重払いを防止するため
経費精算の際に領収書が必要な理由としては、二重払いを防止する目的もあります。経費精算において領収書がなければ、過去に同じ経費が支払われたかどうかを経理担当者が確認できず、二重払いのリスクがあるためです。
余計に支払いをしたり、同じ内容を二度帳簿に付けたりするミスを防ぐためにも、領収書を根拠として処理することで財務管理の正確性を保てます。
虚偽申告を防止するため
経費精算の際に領収書の提出を義務化することで、虚偽申告を防止できます。領収書には具体的な取引内容が記載されているため、架空取引や改ざんなどが難しくなります。
また、税務調査が入った際にも領収書があれば取引内容の根拠を示せるため、経費として認められやすくなるのです。虚偽申告を防ぎ、正しい経費精算を促すためにも、従業員には領収書を必ず提出させるようにしましょう。
効率良く経費精算するポイント
経費精算を効率よく進めるには、経費精算システムの利用やルールを設けることが重要です。それぞれのポイントについて詳しく解説するので参考にしてください。
経費精算システムを活用する
経費精算システムを導入することで、経費精算業務の効率を大幅に向上させられます。経費精算システムでは規定のマニュアルに沿って簡単に作業できるため、担当者が複数いても同じ方法で経費精算が進められます。経費精算業務の効率化だけでなく、属人化を防げる点がメリットです。
経費精算システムのなかでも利用しやすいのが、「クラウド型システム」や「会計ソフトと連携したシステム」です。
クラウド型システムではクラウドへのデータのバックアップが自動的に行われるため、パソコンの故障によるデータの損失を最小限に抑えられます。また、経費精算の流れを一緒にまとめられるため、セキュリティ対策しやすくなるのも特徴です。
インターネット環境があればどこからでもアクセスできるため、リモートワークが社内で浸透している場合はとくに有効です。また、スマートフォンでも利用できるシステムなら場所を選ばずより手軽に利用でき、従業員にかかる経費精算の手間を減らせます。
会計ソフトと連携したシステムの場合は、経費精算の内容が自動的に会計データに反映されるため、記帳作業や決算書作成にかかる労力や時間を大幅に削減できます。
経理担当者の作業効率向上だけでなく、ミスの防止にもつながるため、会社全体の業務効率向上も期待できるのがメリットです。
経費精算の社内ルールを明確化する
経費精算する際の社内ルールを設けるのも、効率的に経費精算を進めるために有効です。具体的には、以下のようなルールを設定するのがおすすめです。
- 経費として認められる対象や金額の上限を設定する
- 経費精算の申請期限を決める
- 高額な経費の精算に関する手続きを決める
社内ルールを決めてマニュアル化し、従業員に周知すれば経費精算に関するトラブルが減り、効率的に運用を進められます。
まとめ
経費精算は、経費の種類に応じて勘定科目が異なるなどいくつかのルールが存在します。使った経費がどの勘定科目になるか覚えておくことで、経費精算がスムーズになるでしょう。
また、経費精算を効率的に進めるためにも、社内ルールの整備や経費精算システムの導入を検討することも大切です。経費精算はミスが発生すると税務調査が入った際に指摘されるなど、後から大きなトラブルにつながるため、ルールを理解して正しく処理を行える環境を整えましょう。
面倒な経費精算を秒速で終わらせる方法
経費精算は、「面倒だ・手間だ」という声をよく聞きます。
紙のレシートの保管が面倒、申請するのが手間、業務が忙しくて後回しになってしまう、申請内容の確認が手間、承認のやり取りに手間がかかる、入力ミスでの差し戻しでのコミュニケーションに時間がかかる、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応に時間がかかる・・・など、申請者・承認者、経理担当とそれぞれに課題があり、負荷がかかりがちな業務です。
経費精算の業務は、経費精算システムを導入することで、申請から承認、処理・保存までラクな仕組みに変えられます。
freee経費精算では経費精算に関わる業務をAIがサポートし、経理担当者はもちろん、申請をする従業員、承認をする上司にも多くのメリットがあります。また、会社規模や業種を問わず、幅広い企業の経費精算を効率化できます。
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よくある質問
経費精算はいつ振り込まれる?
経費精算の振込タイミングは、会社によって「毎月15日」「毎月末」のように異なります。あらかじめ社内規程を確認しておきましょう。
詳しくは「経費精算とは」で解説しているので、参考にしてください。
経費精算の種類は?
経費精算の対象となるものは?
経費精算の対象となるものは決まっており、以下の項目に分類されます。
- 旅費交通費
- 交際費・会議費
- 消耗品費
- 福利厚生費
- 雑費
使った経費の内容によってどの勘定科目で計上するかが異なるため、しっかりルールを確認して間違いのないようにする必要があります。
詳しくは「経費精算の対象になるもの」で解説しています。
監修 宮川 真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。