基幹システムとは、販売・生産・財務会計など、企業経営に欠かせない主要業務をサポートし、効率化・自動化を実現するためのシステムです。何かひとつのシステムを指す言葉ではなく、各業務の根幹をなすシステムを指す包括的な言葉と理解しておけばよいでしょう。
企業の成長と効率化を目指す上で、基幹システムの役割は不可欠です。
本記事では、基幹システムがどのような役割をもち、企業運営にどのようなメリットをもたらすのかをわかりやすく解説します。
また基幹システムと混同されやすい「ERP」や「業務システム」との違いも、解説しています。
目次
- 基幹システムとは
- 業務システムとの違いは?
- 情報システムとの違いは?
- ERPとの違いは?
- 基幹システムの種類
- 在庫管理システム
- 仕入管理システム
- 販売管理システム
- 生産管理システム
- 会計管理システム
- 人事給与システム
- 基幹システムの導入パターン
- オンプレミス型
- クラウド型
- 基幹システムを導入するメリット
- 業務の効率化につながる
- 業務の属人化を防げる
- 経営情報を可視化できる
- 基幹システムを導入する流れ
- (1)プロジェクトの目的を明確にする
- (2)導入するシステムを選定する
- (3)要件定義を行う
- (4)設計・開発を行う
- (5)テスト検証を行う
- (6)本格的に運用を開始する
- 基幹システムを選ぶポイント
- 自社に必要な機能があるか
- 導入後のサポート
- セキュリティ
- 基幹システムの導入時に気を付けたいこと
- 導入の目的を明確にする
- リスク管理の徹底
- 適切なトレーニングとサポート体制の構築
- まとめ
- よくある質問
基幹システムとは
基幹システムとは、企業経営の主要な業務を支えるシステムの総称で、特定のシステムの名称ではありません。販売・生産・財務会計などの主要業務をサポートするために導入するもので、各業務の効率化・自動化を促進します。
ここでは基幹システムと混同しがちな業務システム・情報システム・ERPとの違いについて解説します。
業務システムとの違いは?
基幹システムと業務システムの主な違いは、適用範囲です。
基幹システムとは、企業の重要な業務を遂行するために利用されるシステムで、特定の業務に特化しています。たとえば、生産管理や販売管理、勤怠管理などです。
一方、業務システムは、特定の業務や部門をサポートするためより包括的な業務が行えるよう設計されています。たとえば、販売活動をサポートする販売管理システムや、人事給与計算をサポートする人事給与システムがこれに該当します。
また基幹システムは事業の根幹を支えるシステムであり、業務システムとは異なり停止した場合、業務が遂行できません。
項目 | 基幹システム | 業務システム |
---|---|---|
適用範囲 | 特定業務に特化 | 特定の業務や部門の包括的なサポート |
主な例 | ・会計システム ・在庫管理システム ・製造プロセス管理システム | ・販売管理システム ・人事給与システム |
情報システムとの違いは?
基幹システムと情報システムとの違いは、機能と目的です。
基幹システムは企業の基本的な業務プロセスを効率化し、統合管理することに焦点を当てています。これに対して、情報システムは主に情報の収集・保存・処理・分析・共有を目的としており、より幅広い業務をサポートします。
情報システムには、スケジュール管理やメールシステムなど一般的な業務を支援するツールが多いですが、これらは日常業務をスムーズに行うためで、基幹システムのように経営上の重要性は高くありません。
比較項目 | 基幹システム | 情報システム |
---|---|---|
目的 | 企業全体の業務プロセスの統合と効率化 | 情報の収集・保存・処理・分析・共有 |
適用範囲 | 企業の業務全体 | 一般業務 |
主な例 | ・会計システム ・在庫管理システム ・製造プロセス管理システム | ・スケジュール管理システム ・メールシステム |
ERPとの違いは?
基幹システムとERPの違いは、主に目的です。
基幹システムは企業の主要業務のプロセスを統合し効率化するシステムですが、ERPは企業がもつ「ヒト・モノ・カネ」などのあらゆる資源を統合・一元管理するシステムです。します。よって、ERPが管理する資源の中には基幹システムも含まれています。
ERPを導入しシステムを一元管理すれば、あるシステムに変更を加えたときに別のシステムへも即時反映されます。そのため、自社のあらゆる部門・業務の情報がリアルタイムで確認できるのが、ERPのメリットです。
比較項目 | 基幹システム | ERP |
---|---|---|
目的 | 主要業務プロセスの効率化と統合 | 企業がもつ資源の統合・一元管理 |
適用範囲 | 企業の業務全体 | 企業経営全体 |
主な例 | 会計システム・在庫管理システム・製造システムの統合 | 財務・人事・在庫・製造・販売の統合管理 |
基幹システムの種類
業界や業種、企業規模などによって導入すべき基幹システムは異なりますが、代表的な基幹システムとしては次のようなものが例に挙げられます。
基幹システムの例
- 在庫管理システム
- 仕入管理システム
- 販売管理システム
- 生産管理システム
- 会計管理システム
- 人事給与システム
在庫管理システム
製品の在庫を一元管理するシステムです。流動的な資産である製品在庫を適切に管理することで、キャッシュフローの悪化や不良在庫の発生を防げます。
仕入管理システム
製品の仕入れ状況を管理するシステムです。在庫情報をリアルタイムで監視し、過剰在庫や品切れを避けるための適切な在庫量を維持するのに役立ちます。これにより、在庫コストの削減と、顧客への迅速な対応が可能になります。
販売管理システム
製品販売における「お金」や「物」を管理するシステムです。受発注や入出金などの情報を一元的に管理することで、業務の効率化が図れます。事業に不可欠な販売活動を担うシステムのため、自社に合ったシステムを導入できれば企業経営の質を大きく向上させられるでしょう。
生産管理システム
商品の生産情報を管理するシステムです。製品の生産フローにおけるコストや品質、納期などを総合的にマネジメントできます。
会計管理システム
入出金や財務状況を一元管理するシステムです。帳票や決算書の作成が簡単に行なえてw、記入漏れや記入ミスを防ぎます。
人事給与システム
従業員の採用管理や人事評価などを一元管理します。従業員管理が行いやすく、時間を大きく奪われる人事に関するコストを削減できます。
基幹システムの導入パターン
基幹システムの導入形態としては、「オンプレミス型(自社サーバーにシステムを構築する方法)」と「クラウド型(インターネット経由で利用するシステム)」のいずれかを選択する必要があります。
オンプレミス型
自社サーバーにシステムを構築することを「オンプレミス型」といいます。オンプレミス型の場合、システムの機能や操作性などの仕様を自由にカスタマイズできるのが大きな特徴です。
一方で、サーバー購入などの初期費用が高額になり、構築するのにも一定の期間を要します。
オンプレミス型がおすすめなのは下記に当てはまる企業です。
- 予算の潤沢な大企業
- 長期間にわたる運用を前提にしている企業
- 基幹システムをカスタマイズして利用したい企業
クラウド型
クラウド型は、サービス提供会社がインターネット上に構築した基幹システムにアクセスして利用する形態です。
自社でサーバーを用意することなく、いちからシステムを構築する必要もないため、安価ですぐに導入できるのがメリットです。また障害時の対応やバックアップ管理などを自社で行う必要がなく、法改正などで必要になった改修・システムアップデートはサービス提供会社が行います。
デメリットとしては、カスタマイズなどの自由度がオンプレミス型に比べて下がるため、システムに合わせて業務の進め方などを調整する必要がある点です。そのため業務を改めて見直したり、従業員への研修を行ったりしなければなりません。
クラウド型がおすすめなのは以下に当てはまる企業です。
クラウド型がおすすめな企業
- 導入コストを抑えたい企業
- 常に最新状態の基幹システムを利用したい企業
- 専門知識をもったエンジニアを用意できない企業
基幹システムを導入するメリット
基幹システムを導入することの主なメリットには、次の3つが挙げられます。
基幹システムを導入するメリット
- 業務の効率化につながる
- 業務の属人化を防げる
- 経営情報を可視化できる
業務の効率化につながる
基幹システムの導入によって、さまざまな主要業務を自動化できるため、作業効率が大きく高まります。同時に人為的なミスの抑制にもつながるため、作業精度の向上も期待できます。
また基幹システムが導入されていない場合、情報の一元管理ができず、部署ごとにデータを出してもらい集計するプロセスが必要です。そのため企業規模が大きくなればなるほど、情報を管理する手間は膨大になり、ミスも誘発されます。
基幹システムを導入すれば、従業員がアナログで作業する手間が省かれ、大幅なコスト削減につながります。
さらにERPの場合は、基幹システムを含む企業のあらゆる情報を一元管理できるため、部門間でのデータの受け渡し等の手間がなくなります。たとえば、販売管理システム内の受注データを一旦、請求書に起こし、それを会計システムで扱うために再度データ入力するといった作業はERPでは発生しません。
より業務効率化を進めたい場合は、ERP導入の検討もおすすめします。
業務の属人化を防げる
基幹システムを導入することで、業務の対応や進め方が統一され、一定のスピードと品質を維持できるようになります。
個人のスキルや経験に依存してしまうと、担当する人によって業務の品質に大きな差が出てしまいます。システムの導入は、業務における知見やノウハウの属人化を防ぐことにつながり、新入社員であっても十分に対応できる業務環境の整備が可能です。
経営情報を可視化できる
基幹システムを導入することで、経営や業務に関するさまざまな基幹システムのデータを一元管理でき、現状をリアルタイムかつ正確に把握できます。
経営陣なら売上や利益の実績、現場の担当者なら在庫の状況など、必要なときに必要な情報へのアクセスが瞬時に可能です。結果として、迅速な意思決定やアクションにつながります。
基幹システムを導入する流れ
基幹システムの導入の流れは以下の通りです。
基幹システムを導入する流れ
- プロジェクトの目的を明確にする
- 導入するシステムを選定する
- 要件定義を行う
- 設計・開発を行う
- テスト検証を行う
- 本格的に運用を開始する
(1)プロジェクトの目的を明確にする
基幹システムを導入する際には、具体的な業務を棚卸しして優先順位をつけます。システム化すべき業務領域を定め、プロジェクトの目的を明確化してからスタートしましょう。
プロジェクトの目的は最適な基幹システムを選ぶための判断基準となるため、このステップは必ず行う必要があります。
(2)導入するシステムを選定する
基幹システムの導入効果を最大化するためには、自社に最適なシステムを選定するのが重要です。
先述のとおり、基幹システムにはオンプレミス型とクラウド型があり、システムを扱うベンダー(販売業者)ごとに機能の特徴やサポート体制なども異なります。
それらを踏まえたうえで自社の業務実態にフィットし、メリットが大きいと考えられるシステムを選びましょう。
(3)要件定義を行う
導入するシステムが決定したら、具体的な要件定義を行います。クラウド型を選択した場合は、既にパッケージが決まっているため、カスタマイズの自由度はあまり高くありません。
一方オンプレミス型の場合は、オーダーメイドで組み立てられるからこそ、システム会社との打ち合わせが大切です。どのようにシステムを運用し、どのような機能が必要かを具体的に定義、設計・開発の土台を固めます。
基幹システムは多くの従業員が利用するため、誰でも使いやすいシステムにすることを意識しましょう。
(4)設計・開発を行う
設計・開発フェーズも、クラウド型を選択した場合はほとんど必要ありません。
オンプレミス型の場合は、要件定義に沿ってベンダーがシステム会社が設計・開発を進めます。開発期間は要件によって異なりますが、一般的には数ヶ月かかると考えておきましょう。
この期間に自社でマニュアルや研修プログラムを作成して、あらかじめ環境整備を行っておくとスムーズに運用を開始できます。
(5)テスト検証を行う
開発が完了したら、本格運用の前にシステムが問題なく作動するかなどのテスト検証を行います。システム単体の動作だけでなく、他システムとの連携に問題がないかも確認しなければなりません。
特にオンプレミス型は、想定していた通りの連携が行えないケースもあります。本格的に運用を始めた後に不具合が生じると、顧客に迷惑をかけるなどの問題にもつながります。システム連携については入念にチェックしましょう。
(6)本格的に運用を開始する
テスト検証によって問題なく動作するのが確認できたら、本格的な運用に移行します。ただし基幹システムは、導入したら終わりではありません。
導入後も定期的に現場でヒアリングし、基幹システムに不具合が生じていないかをチェックしましょう。PDCAサイクルをまわしながら継続的な改善を行い、運用効率を高めていくことが大切です。
基幹システムを選ぶポイント
基幹システムを選ぶ際のポイントは次の通りです。
基幹システムを選ぶポイント
- 自社に必要な機能があるか
- 導入後のサポート
- セキュリティ
自社に必要な機能があるか
基幹システムを選ぶ際に最も重要なポイントは、自社の業務要件に合致する機能が備わっているかどうかです。たとえば、在庫管理・財務会計・顧客管理など、どの業務に基幹システムをいれたいのかを事前にリストアップしておきましょう。
また、将来の事業拡大や方針転換に伴う機能の追加やカスタマイズの容易さも、考慮する必要があります。
導入後のサポート
導入後のサポート体制も、選定の重要なポイントです。適切なトレーニング・技術サポート・システムアップデートの提供は、システムが長期にわたり安定して機能するために不可欠です。
ベンダーが提供するサポートの質とレスポンスの速さ、緊急時の対応力を事前に確認しておきましょう。
セキュリティ
セキュリティは、企業の情報資産を保護する上で非常に重要な要素です。
基幹システムは企業の重要なデータを扱うため、データの機密性・完全性を確保する基幹システムのセキュリティ機能が充実していなくてはいけません。データの暗号化・アクセス制御・監査ログの管理など、セキュリティ対策がしっかりと施されているシステムを選ぶようにしましょう。
基幹システムの導入時に気を付けたいこと
基幹システムの導入時に気をつけたいことは、次の通りです。
基幹システム導入時に気をつけたいこと
- 導入の目的を明確にする
- リスク管理の徹底
- 適切なトレーニングとサポート体制の構築
導入の目的を明確にする
基幹システムの導入前に、導入する目的を必ず明確にしておきましょう。
基幹システムは、企業経営の課題を解決するためのものです。そのため、基幹システムの導入によってどんな課題を解決したいのか、プロジェクト全体で明確にしておく必要があります。
目的が明確でないと、導入後に業務がどう改善されたのか、どこが効率良くなったのかがわかりません。特にオンプレミス型は改善箇所がわからず不要な機能をつけてしまうと、導入費用が無駄に高額になるケースが多いです。
基幹システムの導入を検討する際は、まず導入する目的と必要な機能をまとめておきましょう。
リスク管理の徹底
基幹システムを導入する際には、多くのリスクが伴います。データの移行時やシステムの互換性、運用中のトラブルなどが挙げられるでしょう。
基幹システム導入時に気をつけたいこと
- データ移行時のデータ損失リスク:データ移行前にバックアップを取る
- システム互換性のリスク:導入前に動作確認を行う
リスクを事前に洗い出し、それぞれに対する対策計画を立てておくことが重要です。また、計画には柔軟性を持たせ、予期せぬ問題にも迅速に対応できるように準備します。
適切なトレーニングとサポート体制の構築
基幹システムを導入したあとは、従業員に対して新しいシステムの操作方法や、導入によるメリットを詳しく説明しておきましょう。
また、導入後も継続的なサポート体制を整え、現場からのフィードバックを常に得られるようにしておくと、より生産性の効率化が図れるようになります。新しいシステムは導入して終わりではなく、運用しながら最適化していくのがおすすめです。
まとめ
基幹システムは全社的に使用するものであり、影響範囲も必然的に大きいです。だからこそいい加減に導入するのではなく、本記事で解説したような流れを踏まなくてはいけません。
自社に合ったシステムはどのようなものなのか、基幹システムを導入する目的を明確化したうえで、従業員が使いやすいシステムの導入を検討しましょう。
よくある質問
基幹システムとは?
基盤システムとは、企業経営における「基幹業務」を支援するシステムのことです。基幹システムを導入することで、在庫管理や人事給与など社内で取り扱うシステムを一元管理でき、必須業務で発生する工数を大幅に削減できます。
詳しくは記事内「基幹システムとは」をご覧ください。
基幹システムを導入するメリットは?
業務の属人化を防ぎ、経営情報を可視化できることで、会社全体の作業効率・生産性を上げられます。情報を一元管理するため、リアルタイムでデータが反映され迅速な意思決定も可能です。データの入力を手作業で行わないため、人為的ミスを減らせるのも大きなメリットです。
詳しくは記事内「基幹システムを導入するメリット」をご覧ください。
基幹システムの選び方は?
社内の予算・規模・改善したい業務内容を軸に検討しましょう。基幹システムは全社的に使用するものなので、一方向からの意見だけでなく、それぞれの業務を担当する各従業員へのヒアリングが必要です。
詳しくは記事内「基幹システムの導入パターン」をご覧ください。