バックオフィスとは、営業やコールセンターなどの顧客折衝を行うフロントオフィスに対して、経理や人事、総務など組織運営を支える業務を担当する部署のことです。
バックオフィス業務は直接的な利益を生み出すものではありませんが、組織のいわば「屋台骨」として機能しています。バックオフィス業務の改善は最終的にサービスの品質や顧客満足度の向上にもつながっていくのです。
本記事ではバックオフィスの業務の内容から、具体的な改善方法まで詳しく解説します。
目次
- バックオフィスとは
- バックオフィスが抱える課題
- 手作業による非効率な業務フロー
- 業務の平準化が難しい
- バックオフィス業務を効率化する方法
- 業務プロセスの自動化
- バックオフィス業務の可視化
- AIツール導入による業務の精度向上
- バックオフィス業務の効率化を成功させるポイント
- 業務フローを分析して課題を特定する
- 適切なツールやシステムを選定する
- 従業員の教育や意識改革に取り組む
- バックオフィス業務の効率化の成功事例
- スプレッドシートでの労務管理にかかる手間と時間を削減
- アナログ対応だった契約関連業務のシステム化により業務フローを刷新
- 全従業員フルリモート体制の実現を支えるクラウドツール活用
- まとめ
- よくある質問
バックオフィスとは
バックオフィスとは、企業を支える間接業務のことを指します。具体的には、以下のような経理・会計、人事、総務、情報システムがバックオフィス業務に当てはまります。
部門 | 主な業務内容 |
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経理・会計 | 売上や費用の計上、決算処理、税務申告など |
人事 | 採用、給与計算、労務管理、研修など |
総務 | 庶務、設備管理、法務など |
情報システム | 社内システム管理、情報セキュリティ対策など |
営業や店舗、コールセンターなどの取引先や顧客と接する部門(フロントオフィス)を後方からサポートする業務を扱うことから、一般的に「バックオフィス」と呼ばれています。バックオフィスの業務は組織の運営に不可欠ですが、顧客と直接対面する機会は少ないのが特徴です。
バックオフィスには正確性やコンプライアンス遵守が求められる一方で、近年ではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIなどの技術が導入され、業務効率化や生産性向上が進みつつあります。
前述のとおり、バックオフィス業務は直接的な利益を生み出す部門ではありませんが、企業の基盤を支える重要な存在です。デジタルツールの活用などによりバックオフィス業務の効率化やコスト削減を図ることができれば、最終的に企業全体の生産性や顧客満足度の向上につながります。
バックオフィスが抱える課題
近年、リモートワークの導入やDXの推進など、企業を取り巻く環境には目まぐるしい変化が起こっています。それに伴い、バックオフィスにも以下のような課題が見えてきました。
手作業による非効率な業務フロー
バックオフィスにおいては従来、手作業や紙ベースで行われている業務が多く、以下のような問題点が挙げられています。
エラーの増加 | データ入力や処理を手作業で行うと人為的なミスが発生しやすくなり、エラーの原因となります。 |
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生産性の低下 | 無駄な繰り返し作業や非効率なプロセスは業務時間を浪費し、生産性の低下を招きます。 |
コストの増加 | 紙の書類や手作業による処理が多いと、書類の保管スペースやファイリングのための人件費などのコストを増加させてしまいます。 |
テレワークの制限 | 紙の書類や対面での手続きに依存した業務は、テレワークの導入を妨げます。 |
これらはDXによりシステムを取り入れたり、AI活用などの方法で改善が期待できる部分です。
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業務の平準化が難しい
バックオフィス業務は一定の専門性が求められる業務が多く、特定の担当者に業務が集中してしまうケースがあります。この属人的な状況により、以下のようなリスクが考えられます。
業務の停止リスク | 担当者が病気や退職などで不在になった場合、業務が停止してしまう可能性があります。 |
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品質の不安定化 | 担当者によって対応にばらつきが出てしまい、安定した品質が保てなくなる可能性があります。 |
担当者の負担増加 | 特定の担当者が多くの業務を抱えてしまい、残業時間が増えるなど労務上の問題が発生する可能性があります。 |
情報共有の不徹底 | 情報が共有されないことで意思決定が遅れる、別担当者が同じ作業を重複して行ってしまう、ミスやトラブルが発生しやすくなるなどの問題につながります。 |
バックオフィス業務を効率化する方法
バックオフィス業務の効率化を図り、よくある課題を解決するには以下のような方法があります。
業務プロセスの自動化
業務上で発生するさまざまな作業を自動化することによって、組織の生産性向上やコスト削減が期待できます。具体的な方法としては、以下のようなものが挙げられます。
RPA (Robotic Process Automation) | データ入力、処理、転送などの単純作業を自動化します。 |
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ワークフローシステム | 業務の流れを定義し、自動的に処理を進めるシステム。承認手続きや申請処理などの業務を効率化し、スピードアップします。 |
クラウドサービス | クラウドベースの会計ソフトや文書管理システムを導入することで、業務の効率化とペーパーレス化を実現し、リモートワークにも対応しやすくなります。 |
AI (人工知能) | 生成AIを活用した定型的な文書作成や、AIチャットボットを活用した社内問い合わせの一次対応などによって業務効率化を図ることができます。 |
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バックオフィス業務の可視化
業務の効率化には、現状の業務内容を棚卸しして抱えている課題を明確にしたうえで、それに適した改善策を検討することが重要です。そこでまず取り組みたいのが「バックオフィス業務の可視化」です。
バックオフィス業務を可視化するには、以下のような方法があります。
業務フロー図 | 業務の流れを図表で表すフロー図を作成。図として可視化することで、全体像を把握しやすくなります。 |
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KPI (Key Performance Indicator) | 日本語では「重要業績評価指標」や「重要達成度指標」といいます。 業務の目標を設定し、達成度を数値で管理することで、進捗状況を把握できるようになります。 |
データ分析ツール | ツールを導入して業務に関するデータを分析することで、課題や改善点を発見することができます。 |
業務管理システム | 業務の進捗状況や作業時間を管理することで、効率化のポイントを把握できるようになります。 |
AIツール導入による業務の精度向上
近年、バックオフィス業務の効率化において注目されているのが、AI技術です。作業のスピードと精度に長けているAIツールを活用すれば、これまで時間がかかったり、ヒューマンエラーが発生したりしていた業務を、早く正確に処理できるようになります。
バックオフィス業務に活用できるAIツールには、以下のようなものが挙げられます。
AI-OCR | 紙の書類をスキャンして、自動的にデータ化するAI-OCRを活用することで、ペーパーレス化を実現します。 |
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AIリーディング | 契約書や報告書などの文書を自動的に読み取り、分析するAIリーディングを活用することで、業務の効率化を図れます。特に外国語書類が多い場合などは、スピードアップや人件費削減を期待できます。 |
バックオフィス業務の効率化を成功させるポイント
バックオフィス業務を効率化する際には、かえって関係者に混乱を招いたり、手間がかかったりすることを防ぐのが重要です。特に以下のポイントに注意して、効率化に取り組みましょう。
業務フローを分析して課題を特定する
前述のとおり、業務効率化にあたっては、まず既存の業務フローを分析して課題を特定する必要があります。
ワークフローを整理し、図表などを用いて業務の流れを可視化したり、従業員の稼働工数やコストなどの定量的なデータを分析したりするのはもちろん、担当者に業務の状況を細かくヒアリングし、課題や改善点を直接聞き出すのも有効な方法です。
適切なツールやシステムを選定する
課題を把握したうえで、効率化したい業務を明確にし、その業務に適したツールを選定することが大切です。また、すでに導入しているツールやシステムがある場合は、それらとの連携に不具合が生じないかも確認しましょう。
同時に、デジタル化によってセキュリティ面のリスクがないかも、あらかじめ検討すべきです。たとえば、従業員が自宅やシェアオフィスなどから社外秘の情報を多く含む業務システムにアクセスする場合、情報漏洩のリスクが高まります。必要に応じて対策を策定し、強化しておくことが必要です。
従業員の教育や意識改革に取り組む
バックオフィス業務の効率化を成功させるためには、ツールやシステムの導入だけでなく、それに伴う従業員の教育と意識改革も重要な要素といえます。
機能に優れたデジタルツールを導入しても、従業員が使いこなすことができなければ、効果は十分に得られません。また、効率化の目的や意義を理解していない従業員は、積極的に取り組む姿勢を示さない可能性もあります。そのため、「なぜそのツールやシステムを導入するか」「導入によって、どんなメリットがあるか」という意識共有を従業員に行うことが大切です。
具体的には、ツールの活用方法や業務プロセス改善の進め方について研修を実施したり、具体的なメリットをプレゼンテーションする場を設けたりして、従業員の理解を深めることが有効です。
場合によっては、目標を設定し、個人や部署で達成に向けて取り組むのもいいでしょう。業務効率化に貢献した従業員を評価する制度を設けることで、従業員のモチベーションが高まります。
バックオフィス業務の効率化の成功事例
実際にバックオフィス業務の効率化を図ったことで、企業に改善が見られた例を見ていきましょう。
スプレッドシートでの労務管理にかかる手間と時間を削減
千葉県を中心に6つの児童発達支援・放課後デイサービス施設などを運営する株式会社フクシアは、従来スプレッドシートを利用して従業員の労務管理を行っていました。
従業員が増加するなかでアナログ作業の正確性や効率性に限界を感じていたところ、解決策として「チャットで勤怠・freee人事労務」を導入することになりました。
導入の結果、勤怠管理から給与計算まで労務業務の手作業をなくし、システム上での一元管理を実現しています。また、パソコン作業に不慣れな従業員でも対応できるように、UIがLINEに近い「LINE WORKS」と連携させたことで、導入後の運用もスムーズに進みました。
出典:フリー株式会社「事例紹介|株式会社フクシア」
アナログ対応だった契約関連業務のシステム化により業務フローを刷新
北海道を代表する銘菓「白い恋人」で知られる札幌の石屋製菓株式会社は、2020年の民法改正により、450店もの特約店との契約を一斉に結び直す必要がありました。
紙の契約書で再締結する場合、書類準備の作業量が大きな負担になるだけでなく、収入印紙や郵送のコストもかかります。この事態を解決すると同時に、これまでの契約業務のフローを見直すべく、契約業務をオンラインで完結できる「freeeサイン」を導入しました。
導入後は、1年ほどの時間をかけて安定的な運用へ移行していきました。また、特約店に対してもfreeeサインのマニュアルを配布することで、電子契約へのスムーズな移行を成功させたといいます。
出典:フリー株式会社「事例紹介|石屋製菓株式会社」
全従業員フルリモート体制の実現を支えるクラウドツール活用
新潟市に拠点を置く「税理士法人ZEN」では、より本来の業務に集中できる環境を整備するためフルリモート勤務体制を採用し、通勤時間や対面会議などを最低限にとどめています。このような勤務体制を支えているのが、クラウドツールの積極的な活用です。
現在、税理士法人としてのフロント業務では「freee会計」「freee申告」「freeeサイン」を、バックオフィス業務では「freee人事労務」「freee工数管理」「freee販売」を導入しています。フルリモート勤務でネックになりがちな労務管理も「freee工数管理」によって可視化することで解決するなど、クラウドツールの導入で強いバックオフィスの構築に取り組んでいます。
出典:フリー株式会社「事例紹介|ZEN会計事務所」
まとめ
バックオフィスの存在なしでは組織の運営は成り立ちません。会社の基盤を支える存在だからこそ、さまざまなデジタルツールを活用して業務改善やコスト削減を図ることができれば、会社全体の生産性が向上し、最終的には顧客に還元できる組織体制の実現につながるでしょう。
よくある質問
バックオフィスの業務内容は?
バックオフィスには、経理・会計、人事、総務、情報システムなどの業務が当てはまります。たとえば経理・会計の場合、売上や費用の計上、決算処理、税務申告などを担当します。
詳しくは記事内「バックオフィスとは」をご覧ください。
バックオフィス業務を効率化するには?
バックオフィス業務を効率化するためには、RPAやワークフローシステム、クラウドサービス、AIなどを使った業務プロセスの自動化、バックオフィス業務の可視化、AIやツール導入による業務の精度向上が挙げられます。
詳しくは記事内「バックオフィス業務を効率化する方法」で解説しています。