ERP(Enterprise Resource Planning)のメリットは、企業のあらゆる業務を統合し、経営の効率化を図れる点です。上手く活用することで、業務効率のアップ・コストの削減・セキュリティ強化など、企業にとってさまざまなメリットを得られるでしょう。
しかし、ERPの導入にはデメリットもあり、効果的に導入していくためには、具体的な流れを理解することが不可欠です。
そこで本記事では、ERPのメリットとデメリット、そしてその導入プロセスを詳細に解説し、企業がより効果的な意思決定を行うための方法を解説します。
目次
ERPがなぜ重要なのか
ERPは、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために、重要視されています。
ERPは、企業のさまざまな業務プロセスを統合し、効率化を図るために不可欠です。ERPシステムは、財務・人事・生産・供給など異なる部門間でのデータ共有を容易にし、リアルタイムでの情報の更新とアクセスを可能にします。
これにより、意思決定のスピードと精度が向上し、企業全体の運営効率が改善されます。また、リソースの最適な配分やコスト削減にも寄与し、企業の競争力を高めることが可能です。
またERPを利用し透明性の高い経営管理が行えれば、コーポレートガバナンスの強化に繋がります。情報を一元管理できるため、リスク管理やコンプライアンス向上が見込めるでしょう。
ERPのメリット
ERPのメリットは次の通りです。
ERPのメリット
- 経営資源の効率的な管理と最適化
- データドリブンな意思決定の支援
- 顧客満足度の向上
- 意思決定の迅速化
- リスク管理の強化
経営資源の効率的な管理と最適化
ERPシステムは、経営資源の管理と最適化を効率化します。財務、人事、生産、在庫などの重要なビジネスプロセスを一元管理し、リソースの配分を最適化することで、全体的な経営効率を高めます。
ERPシステムは経営資源の効率的な管理を可能にします。
企業が直面する最大の課題の一つは、人的資源・財務・生産・在庫などの資源を効率的に管理することです。ERPはこれらすべての要素を統合し、データの一元化を実現します。データの透明性が上がることにより、企業はリソースを最適に配分し、無駄を削減できます。
経営資源を効率的に管理することは、企業の競争力を高める重要な要素です。
データドリブンな意思決定の支援
ERPシステムは、データドリブンな意思決定を支援します。
ビジネスの意思決定は、正確でタイムリーな情報に基づき、迅速かつ正確に行わなければいけません。ERPは企業の各部門からのデータを収集し、分析することで、重要なビジネスインサイトを提供します。
たとえば、販売データの分析により、需要のトレンドや消費者行動の変化を把握することも可能です。このように、データに基づく意思決定は、リスクの低減と効率の向上に寄与します。
顧客満足度の向上
ERPシステムは、顧客満足度の向上にも大きく貢献します。顧客情報の一元管理により、顧客のニーズや過去の購買履歴を簡単に把握することができ、よりパーソナライズされたサービスを提供することが可能になるためです。
さらに、ERPシステムは供給チェーンの管理を強化し、製品の供給遅延や在庫不足を防ぐこともできます。顧客への迅速な対応と高品質なサービス提供が実現し、顧客の信頼と満足度を高めることができるでしょう。
意思決定の迅速化
ERPを活用することにより、意思決定を迅速に行えます。企業経営において、迅速かつ効果的な意思決定は、市場の変化に素早く対応するために重要です。
ERPはリアルタイムでのデータアクセスと業務プロセスの自動化を行えるため、手動で情報を集めまとめていたときよりも、素早く多くの情報へアプローチできます。
迅速な意思決定は、機会の損失を防ぎ、競争上の優位性を保つために不可欠です。
リスク管理の強化
ERPシステムは情報を一元管理することで、財務・運用・コンプライアンスなどのリスクを監視しやすくなります。
たとえば財務データの監視により、資金流の異常や不正な取引を早期に発見できます。また、生産プロセスやサプライチェーンのリスクを評価し、リスク軽減策を策定することも可能です。
コーポレートガバナンスの強化が重要となっている昨今、リスク管理の強化は、企業の安定性と成長を支える上で不可欠といえるでしょう。
ERPのデメリット
ERPを導入することで生産性向上などのメリットがある一方、初期費用やランニングコストの発生、これまで取り組んできた業務の見直しなどの作業が生じます。
ERPのデメリット
- 高い初期投資と導入コスト
- 実装の複雑さ
- システムの更新・保守の難しさ
- 従業員への教育
高い初期投資と導入コスト
ERPシステムの導入は高い初期投資を必要とします。企業がERPシステムを導入する際には、ソフトウェアの購入費用・システムのカスタマイズや統合に関連する費用・導入に伴う人的リソースのコストがかかります。
これらのコストは特に中小企業にとって大きな負担となるでしょう。また、導入後もシステムのアップデートやメンテナンスに関連する追加コストが発生します。
期待できるメリットと、とこれらのコストを比較して、ERPを導入するかを検討しましょう。
実装の複雑さ
ERPシステムの実装は複雑なプロセスを伴います。企業の既存のプロセスやシステムをERPに統合する過程は、技術的な困難さだけでなく、組織内の文化的な調整も必要です。
システムのカスタマイズやデータ移行は、特に複雑な業務プロセスを持つ企業にとっては、時間とリソースの大きな投資が必要となるでしょう。専門のスタッフがいない・雇えない場合は、実装時のサポートを行ってくれるベンダーと契約できると安心です。
システムの更新・保守の難しさ
ERPシステムの更新と保守は、継続的に必要となるコストです。現在の古いシステムをERPに取り替えるのと同じく、ERP自体も時代とともにアップデートさせていく必要があります。
これには専門知識が必要となるため、クラウド型のERPでアップデートから保守までベンダーに任せられると効率的です。
従業員への教育
ERPシステムを効果的に活用するためには、従業員への適切な教育とトレーニングが不可欠です。新しいシステムの導入・実装は、事業自体への影響も大きいですが、従業員にとっても大きな転換点となります。
適切なトレーニングが提供されない場合、従業員はシステムを最大限に活用できず、逆に生産性の低下やエラーの増加を引き起こす可能性もあります。従業員教育は時間とコストを必要とするため、これを計画に含めることが重要です。
ERPが必要な会社の特徴
ERPが必要な会社の特徴は、次のとおりです。
ERPが必要な会社の特徴
- 業務プロセスが複雑
- 属人性が高い
- データの収集・集計が大変
業務プロセスが複雑
ERPは特に、業務プロセスが複雑な企業にとって必要不可欠です。異なる部門間でスムーズに情報の受け渡しが行えるよう、ERPの導入が有効です。
ERPを導入することで、財務管理・人事管理・製造・供給チェーン管理など、企業のさまざまな業務を一元管理できるようになります。これにより、業務プロセスを可視化し、データの一貫性の確保や意思決定の迅速化が実現できるでしょう。
属人性が高い
属人性が高い企業では、特定の個人に依存した業務運営が行われていることがあります。このような状況では、その人物が不在の場合に業務が滞るリスクがあります。
ERPを導入すれば、各部門の情報を1つにまとめることが可能です。そうすることで、さまざまな情報をシステム上で共有でき、業務の透明性が高まり属人性を減らすことに繋がっていきます。
データの収集・集計が大変
多くの企業では日々膨大な量のデータが生産されますが、これらを効率的に収集・集計するのは困難な作業です。
ERPを利用することで、データの自動収集とリアルタイムでの集計が可能になり、正確なデータに基づいた意思決定が迅速に行えます。
ERP導入の流れ
ERPの導入を成功させるためには、目的の明確化から従業員への浸透まで、導入フローを守り着実に進めていくことが大切です。
主に以下3つのフローで進んでいきます。
ERP導入の流れ
- ニーズの特定と要件定義
- ERPの選定とカスタマイズ
- 実装とトレーニング
1. ニーズの特定と要件定義
まずは企業のニーズの特定と要件の定義です。企業の目標や現在の業務プロセス、システムの課題点を洗い出し、ERPによって解決したい具体的な問題を明確にします。
ERPの導入は部門を横断して進めていくので、可能であれば2名以上、ほかの部署をまたいだコミュニケーションがとれる経営層に近い役職者が望ましいです。
各部署ごとにプロジェクトに関わる代表者を決めておき、推進者は部署ごとの代表者と打ち合わせをしながら進めます。要件定義を正確に行うことで、適切なERPの選定と効果的な導入計画の策定が可能になります。
2. ERPの選定とカスタマイズ
次に、企業の要件に最も適合するERPシステムを選定し、必要に応じてカスタマイズします。
自社に合ったERPを選定するには、ニーズを満たす機能があるかだけでなく、カスタマイズ性やROIなどを検討する必要があります。
- 自社のニーズを満たす機能があるか
- 柔軟性・カスタマイズ性
- コストに見合ったROI(投資利益率)
- ベンダーのサポート体制
- セキュリティ・ベンダー自体の評価
実際に資料を取り寄せるなど、気になる情報は積極的に取り入れていきましょう。
3. 実装とトレーニング
最後のステップは、ERPシステムの実装と従業員へのトレーニングです。実装プロセスには、システムのインストール・データの移行・統合・テストが含まれます。
この段階では、計画的に進めることが重要で、予期せぬ問題に柔軟に対応するための準備も必要です。また、従業員が新しいシステムを効果的に使用できるよう、包括的なトレーニングとサポートを行いましょう。
導入初期に研修をきちんとこなしておくことで、今後トラブルが起きた際の対応も大きく変わってきます。
まとめ
ERPは企業の資源である「会計」「人事」「生産」などを一元管理し、企業活動の土台となるシステムです。ERPを導入する際には初期費用やランニングコスト、業務フローの見直しなどの労力がかかるので、無理のないよう、中長期的な視点で検討することも大切です。
導入時はそれぞれのメリット・デメリットをよく理解した上で検討しましょう。
【関連記事】
ERP導入のメリットは?導入の流れや必要な期間、注意点までわかりやすく解説
よくある質問
ERPのメリットは?
ERPのメリットは次の通りです。
- 経営資源の効率的な管理と最適化
- データドリブンな意思決定の支援
- 顧客満足度の向上
- 意思決定の迅速化
- リスク管理の強化
詳しくは記事内「ERPのメリット」をご覧ください。
ERPのデメリットは?
ERPのデメリットは次の通りです。
- 高い初期投資と導入コスト
- 実装の複雑さ
- システムの更新・保守の難しさ
- 従業員への教育
詳しくは記事内「ERPのデメリット」をご覧ください。