監修 谷 直樹 長崎国際法律事務所
下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは、発注者としての立場や資本力で優位にある事業者による、資本力が小さい事業者への不当な取引を防止するための法律です。立場が弱くなりやすい中小零細企業や個人事業主を守る法律といえます。
下請法は独占禁止法(私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律)ではカバーできない領域を補完しており、下請となる事業者への発注ルールやペナルティについて具体的に定めています。何らかの業務を他社へ委託する際は、下請法に抵触しないよう注意が必要です。
本記事では下請法の概要、下請法の対象となる取引内容、下請法で禁止されている行為および違反時のペナルティなどについて解説します。
目次
下請法とは?
下請法とは、「資本力の大きな事業者が発注者(親事業者)」「資本力の小さな事業者が受注者(下請事業者)」となる取引において、親事業者が支払うべき下請代金の不当な減額や返品、支払いの遅延などを禁止する法律です。
本来は、下請事業者に責めを負う理由がない状況で親事業者が支払うべき下請代金の減額や理由のない返品などを行うことは、独占禁止法によって禁じられています。
しかし親事業者と下請事業者の力関係上、下請事業者から親事業者の違反行為を申告するのは現実的に難しく、不当な要求にしたがわざるを得ないケースも珍しくありません。
このような経済的に有利な者による優越的地位の濫用を迅速かつ効果的に規制するのが、下請法の目的です。下請取引の公正化や、下請事業者の利益保護を図るという性質から、下請法は独占禁止法の補完法となっています。
下請法の適用はいつから?
下請法は、独占禁止法の改正によって新たに禁止された「不公正な取引方法」を規制するための特別法として、1956年に制定されました。
独占禁止法では、公正かつ自由な競争の促進のために「私的独占の禁止」「不当な取引制限(入札談合やカルテルなど)の禁止」「不公正な取引方法の禁止」といった、事業者同士の“横のつながり”に対する規制が設けられています。しかし法に基づいて対処するには、「取引実態の調査に時間がかかる」「違反認定のハードルが高い」といった問題がありました。
またその一方で、下請取引における優越的地位の濫用や下請事業者の買いたたきなど、独占禁止法だけでは対処が困難な“縦のつながり”(親事業者と下請事業者の関係)におけるトラブルも存在します。よくあるのが、親事業者として優位な地位にある大企業などによる、下請事業者への不当な取引の持ちかけや報酬の減額です。
そこで、縦のつながりにおけるトラブルに迅速に対処できるよう、下請法が制定されました。下請法は、有利に立ち回りやすい親事業者を対象に規制を行い、下請事業者となる中小企業・個人事業主などを保護することが目的です。
下請法や下請法の運用基準は、時々の社会情勢などに応じて改正が行われています。たとえば2021年12月には、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」における「価格転嫁円滑化に向けた法執行の強化」の取り組みに応じて、買いたたきの解釈が明確化されました。
出典:公正取引委員会「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」に関する公正取引委員会の取組」
さらに下請法関連以外にも、2023年4月にフリーランスとして働く人を対象とした「フリーランス新法」が可決されています。フリーランス新法の詳細は、以下の関連記事にてわかりやすく解説しています。
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フリーランス新法とは?制定される背景や企業に求められる対応を解説!
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親事業者と下請事業者の定義
下請法で規定されている親事業者と下請事業者の定義は、商取引の内容と資本金規模によって変わります。下請法が適用される商取引の種類と資本金規模の組み合わせは、上記の図のとおりです。
- 「物品の製造および修理委託」または「一部の情報成果物および役務提供委託」の商取引において、「親事業者が資本金3億円超」で「下請事業者が資本金3億円以下」
- 「物品の製造および修理委託」または「一部の情報成果物および役務提供委託」の商取引において、「親事業者が資本金1,000万円超~3億円以下」で「下請事業者の資本金1,000万円以下」
- 「そのほかの情報成果物作成および役務提供委託」の商取引において、「親事業者が資本金5,000万円超」で「下請事業者が資本金5,000万円以下」
- 「そのほかの情報成果物作成および役務提供委託」の商取引において、「親事業者が資本金1,000万円超~5,000万円以下」で「下請事業者が資本金1,000万円以下」
出典:e-Gov法令検索「下請代金支払遅延等防止法 第二条第7項」
出典:e-Gov法令検索「下請代金支払遅延等防止法 第二条第8項」
たとえば、「物品の製造および修理委託」に該当する取引で、親事業者の資本金が5億円、下請事業者の資本金が2億円なら下請法が適用されます。しかし、同じ商取引でも親事業者の資本金が2億9,000万円、下請事業者の資本金が1,100万円だった場合は下請法が適用されません。
親事業者および下請事業者「単体」の資本金規模ではなく、商取引の種類と親事業者・下請事業者の両者の資本金規模の組み合わせによって、下請法が適用されるか否かが決まります。
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下請法の対象取引は?親事業者・下請事業者の定義や禁止事項を解説
下請法で守るべき支払期日と「60日ルール」
下請法において親事業者が守るべき義務のひとつに「60日ルール」があります。
60日ルールとは、下請事業者から物品や役務の提供を受けた日(受領日)から数えて60日以内に下請代金の支払期日を定め、その全額を支払うという決まりごとです。
60日を超えてから下請代金を支払うときは、「物品・役務の受領日から60日を経過した日」から実際に支払った日までのかかった日数に対して、年14.6%を乗じて算出した遅延利息を支払わなければなりません。
60日ルールを遵守するには、あらかじめ受領日から60日以内に下請事業者への支払いができる期日を設定しておく必要があります。たとえば「納品締切月末、翌月20日支払」なら、支払いまでに60日を超えることはないので問題ありません。一方で「納品締切月末、翌々月10日支払」だと、納品日が7月1日、支払日が9月10日になった場合に60日を超えてしまうので、下請法違反に該当します。
出典:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法第4条の2の規定による遅延利息の率を定める規則」
出典:公正取引委員会「下請法 知っておきたい豆情報 その2」
さらに親事業者には、60日ルールを含めた支払期日に関する4つの義務が課せられています。詳細は「下請法における発注者側の義務」にて解説しています。
下請法とは?
下請法では、「保護されるべき4つの取引」が定められています。それぞれの取引について確認しておきましょう。
下請法の対象となる4つの取引
- 製造委託
- 修理委託
- 情報成果物作成委託
- 役務提供委託
1.製造委託
製造委託とは、物品の販売や製造を行う親事業者が規格・ブランド・品質・デザインなどを指定し、下請事業者へ製造・加工業務を委託することです。製造委託は、以下の4つに分けられます。
製造委託の類型 | 委託内容 | 代表的な例 |
---|---|---|
自社で物品を販売する事業者 | その物品に関する製造 | 食品メーカーが、自社ブランドの製品に使用する原材料・資材の製造を委託する |
他社から物品の製造を請け負っている事業者 | その物品に関する製造 | 電子機器メーカーが他社からの電子機器の製造を請け負っている場合に、その電子機器の部品の製造を委託する |
物品の修理を請け負っている事業者 | その物品の修理に必要な部品・原材料の製造 | 自動車の修理を請け負っている事業者が、自動車の修理に必要な部品の製造を委託する |
自社で使用・消費する物品を製造している事業者 | その物品の製造 | 自社が使う精密機器を内作するメーカーが、その精密機器の部品を委託する |
ただし対象となる物品は「動産」のみで、家屋などの不動産は含まれません。また、規格品や標準品をそのまま購入する場合は、原則として製造委託の対象外です。
2.修理委託
修理委託は、「物品の修理を請け負っている事業者が、その修理をほかの事業者に委託する」および「自社で使用する物品を自社で修理している事業者が、修理の一部をほかの事業者へ委託する」という2つのタイプに分けられます。
製造委託の類型 | 委託内容 | 代表的な例 |
---|---|---|
物品の修理を請け負っている事業者 | その物品に関する修理 | 家電の修理業者が、精密機器の部分の修理を委託する |
自社で使用する物品を自社で修理している事業者 | その物品に関する修理 | 生産用ロボットの修理を自社部門で実施している場合に、その修理作業の一部を委託する |
3.情報成果物作成委託
情報成果物作成委託は、下請法において指定された以下のものが該当します。
- プログラム(電子計算機に対する指令で、同一結果を得られるよう組み合わされたもの)
- 映画、放送番組、映像、音声その他の音響により構成されるもの
- 文字、図形、記号、もしくはこれらの結合、またはこれらと色彩との結合により構成されるもの
- 1~3に掲げるもののほか、これらに類するものでかつ政令が定めるもの
出典:e-Gov法令検索「下請代金支払遅延等防止法 第二条第6項」
情報成果物の具体例は、ゲームソフト、会計ソフト、アニメ、設計図、ポスターのデザインなどです。情報成果物作成委託には、次の3種類があります。
情報成果物作成委託の類型 | 委託内容 | 代表的な例 |
---|---|---|
情報成果物を製造し提供する事業者 | その情報成果物の作成行為の全部または一部 | ゲームメーカーが、ゲーム中で使用するキャラクターのデザインを委託する |
情報成果物の作成を請け負う事業者 | その情報成果物の作成行為の全部または一部 | 広告会社が、クライアントから受注したCMの製作を委託する |
自社で使用する情報成果物を作成する事業者 | その情報成果物の作成行為の全部または一部 | 家電メーカーが、内部のシステム部門で作成する自社用経理ソフトの作成の一部を委託する |
4.役務提供委託
役務提供委託とは、請け負ったサービスのすべてまたは一部をほかの事業者へ再委託することです。運送、警備、情報処理をはじめとする、サービス関係の事業全般が当てはまります。
ただし、建築工事は建設業法で別途規定があるため、下請法においては対象外となっています。また、委託事業者が自ら利用するサービスはここに含まれません。具体例としては、自動車メーカーが販売した自動車の保証期間内にメンテナンス作業を委託する場合などが挙げられます。
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「役務提供」とは?該当する契約の種類や、下請法における注意点を解説
下請法違反の取り締まりは強化されている
公正取引委員会と中小企業庁による下請法違反の取り締まりは、年々強化されています。
公正取引委員会が発表したデータによると、2022年度の指導件数は8,665件とこれまでで最も多くなりました。2018年以降は8,000件前後で推移しており、2015年度が5,980件だった点を踏まえると増加傾向にあるといえるでしょう。
また、2022年度の勧告件数は6件でした。違反行為類型の内訳(1件に対して複数の勧告あり)は、下請代金の減額が3件、返品が2件、買いたたきが1件、不当な経済上の利益の提供要請が2件でした。
さらに、中小企業などの取引公正化に向けた取り組みも進められています。
◆取り組みの具体例
- 情報提供フォームの設置による、違反行為が疑われる親事業者の情報収集
- 買いたたきの処理状況などを踏まえた、下請法上の重点立入業種の選定
- 独占禁止法やスタートアップをめぐる取引についてなど、さまざまな調査の実施
- 労働基準監督機関との連携強化(買いたたきが疑われる事案の通報対象化など)や公正取引委員会の体制強化(立入調査などを行う人員の設置など)
- 下請取引の監督強化のための情報管理システムの構築
- 下請法に関する運用基準の改正や、独占禁止法に関するQ&Aの追加
- 下請法や優越的地位の濫用に関連する相談対応の強化
出典:公正取引委員会「(令和5年5月30日)令和4年度における下請法の運用状況及び中小事業者等の取引公正化に向けた取組」
下請法における発注者側の義務
下請法では、親事業者を対象として「支払いに関する4つの義務」が課せられています。
下請法における発注者側の義務
- 発注内容を書面化する
- 支払期日を決める
- 取引記録を保存する
- 遅延利息を支払う
遵守できなかった場合は下請法違反に該当し、勧告措置を受けたり罰金を科せられたりする恐れがあります。親事業者・下請事業者にかかわらず、事前に確認しておきましょう。
1.発注内容を書面化する
口約束で発注するトラブルを回避するために、親事業者側は発注内容を発注書などとして書面化する必要があります。発注書の書面は「下請法第3条に基づいた書面(3条書面)」として発行しなけばなりません。
3条書面となる条件をクリアするには、「発注者と受注者の名称」や「受領日」など、下請法第三条に基づき制定された公正取引委員会規則により定められている12項目を発注書に記載する必要があります。下請法に沿った発注書の詳細は、以下の関連記事にて詳しく解説しています。
出典:e-Gov法令検索「下請代金支払遅延等防止法 第三条」
【関連記事】
下請法に沿った発注書の書き方解説!
2.支払期日を決める
親事業者は、先述した「60日ルール」に沿う形で、下請代金の支払期日を決める義務があります。60日の目安があるものの、できる限り早い期間内に支払期日を決めるのが原則です。
支払期日に関する取り決めをしていなかった場合は、以下の支払期日が法律で定められています。
- 物品などを実際に受領した日
- 当事者間で合意した取り決めがあっても、物品などの受領日から起算して60日を超えているときは、受領日から起算して60日を経過した日の前日
出典:e-Gov法令検索「下請代金支払遅延等防止法 第二条の二」
下請事業者へ発注したときは、直ちに発注書面を交付しましょう。この規定に違反すると、50万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。発注書の様式は定められていないので、下請事業者の誤読・見逃しなどが発生しないよう適切な発注書を作成してください。
【関連記事】
下請法の支払期日とは?問題となるのはどのような場合?具体例とともに解説
3.取引記録を保存する
親事業者が下請事業者へ委託した業務の取引が完了した際には、下請法第五条に基づいた書類(5条書類)を作成し、これを2年間保存する必要があります。違反行為に対する親事業者への注意喚起や、公正取引委員会・中小企業庁による迅速かつ正確な調査・検査に役立たせることが目的です。
5条書類の条件をクリアするには、「下請事業者の名称」「委託日」「給付の内容」「給付の受領日」など合計17項目の記載が不可欠です。詳細は、公正取引委員会の公式サイトをチェックしてみましょう。
出典:e-Gov法令検索「下請代金支払遅延等防止法 第五条」
4.遅延利息を支払う
親事業者が下請代金を支払期日までに支払わなかったときは、親事業者は納品日から起算して60日を経過した日から、実際に支払があった日までの日数に応じた遅延利息を支払わなければなりません。
出典:e-Gov法令検索「下請代金支払遅延等防止法 第四条の二」
遅延利息は、年14.6%です。民法・商法などのほかの法律や当事者間で合意した年率があったとしても、それらより遅延利息の年14.6%が優先されます。
下請法で禁止されているNG行為
親事業者が下請事業者と取引する際には、先述した支払いに関する4つの義務のほか、11項目の禁止行為が定められています。下請事業者との合意があったときや、親事業者の違法性の意識がないときでも、抵触すると下請法違反になるので注意が必要です。
◆下請法における親事業者の禁止行為事例
受領拒否 | ・注文した物品の受け取りを拒む ・例「製造を委託したが、設計が変わったので委託していた製造物が不要になり受け取らないことを決めた」 |
---|---|
下請代金の支払遅延 | ・下請代金を受領後60日以内に支払わない ・例「下請事業者への下請代金の6月末締め分の支払いを、10月末まで延期した」 |
下請代金の減額 | ・あらかじめ定めた下請代金を減額する ・例「下請事業者から納品されたが、納品物の質や予算変更の関係で事後に20万円から10万円への減額を申し出た」 |
返品 | ・受け取った物を返品する ・例「発注して受け取った製品が不要になったので、当該製品を返品して下請代金も支払わなかった」 |
買いたたき | ・類似品などの価格や市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定める ・例「下請事業者の教育などを名目に、相場100万円の仕事を1万円で請けてもらった」 |
購入・利用強制 | ・指定して製品や役務を強制的に購入・利用させる ・例「親事業者の工場で製造するものと同じ質にするために、同じ製造機器を下請事業者に自腹で購入してもらった」 |
報復措置 | ・親事業者の不公正な行為を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由として、取引数量の削減や取引停止といった不利益な扱いを強いる ・例「下請事業者による通報によって勧告を受けた報復として、契約を途中打ち切りとして未払いの下請代金の支払いをストップした」 |
有償支給材料等の対価の早期決済 | ・有償で支給した原材料などの対価を、当該原材料を用いた給付に係る下請代金の支払期日よりも早く支払わせたり相殺したりする ・例「新製品の製造に必要な原材料を、製造委託する前にあらかじめ一括で販売した」 |
割引困難な手形の交付 | ・一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付する ・例「1年を超える期間の手形を交付した」 |
不当な経済上の利益の提供要請 | ・下請事業者から金銭や労務の提供などをさせる ・例「委託内容にない金型設計図面などを、下請事業者に無償で提供させた」 |
不当な給付内容の変更および不当なやり直し | ・費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせる ・例「発注当初とは企画内容が変わったが予算は変わらなかったので、納品物に関して無償で修正を依頼した」 |
下請法に違反した場合のペナルティとリスク
下請法に違反した場合、違反内容に応じて以下のようなペナルティが科せられます。
- 勧告を受けた企業の名称と違反の事案公開
- 勧告無視等が行われた際は、独占禁止法に基づいた排除措置命令や課徴金納付命令
- 排除措置命令の無視によるペナルティ(命令確定前は50万円以下の過料、命令確定後は2年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金)
- 書面の交付義務(3条書面)違反・保存義務(5条書類)違反による50万円以下の罰金の刑事罰
- 下請代金の支払遅延による遅延利息の支払
出典:公正取引委員会「ポイント解説 下請法」
出典:公正取引委員会「独占禁止法教室」
また直接的なペナルティだけでなく、勧告措置にともなう企業名や違反事案の公開によって、社会的信用が低下するリスクも存在します。取引先や顧客からの信頼が失墜し、その後の売上に大きな影響が出るかもしれません。
ただし、親事業者側が自発的に下請法違反を申し出た場合は、勧告などが行われないケースもあります。
法令を遵守しながら業務効率化を実現する方法
親事業者はペナルティや社会的信用の低下などにつながらないよう、下請法を遵守する必要があります。公正取引委員会や中小企業庁が定めるガイドラインや公式サイトでの情報を押さえたうえで、下請事業者へ適切な発注対応を行いましょう。
しかし、下請法におけるすべてのポイントを完璧に理解して業務を遂行するのは、現実的に難しい側面があるかもしれません。法令を遵守しながら業務効率化を実現するためには、以下の施策が考えられます。
- ・下請法に適合した基本契約書の雛形を作成しておく
- ・下請法に関する要点を押さえたマニュアルやチェックリストを作成・配布する
- ・下請法に対応した電子受発注システムを導入・活用する
上記のうちでとくに効果が見込めるのは、電子受発注システムの導入です。下請法の要点をシステム的に管理・出力できれば、法律に沿った受発注業務の遂行と業務効率化が達成しやすくなります。また、発注書の発行やそのほか受発注業務もまとめて管理できるので、より効率的に業務を進められるようになるでしょう。
まとめ
下請法は、立場が優位になりやすい親事業者による下請事業者への不当な扱いを制限し、下請事業者の利益を保護するために制定された法律です。親事業者には遵守すべきさまざまな規制・義務が設けられており、違反すると勧告措置や罰金などのペナルティを受けることになります。
下請事業者への発注業務を担当している人は、支払期日に関する義務や親事業者の禁止行為について事前にしっかりチェックしておきましょう。
フリーランス・業務委託先への発注を効率化する方法
フリーランスや業務委託先との取引が多い企業にとって、手間がかかるのが発注業務です。
一口に発注業務といっても、契約や発注、請求など対応すべき作業は多岐にわたり、管理が行き届かないケースがあります。たとえば、法令にもとづく適切な発注ができていなかったり、請求書の提出期日が守られなかったり、請求書の不備で差し戻しが発生したりなどの課題が挙げられるでしょう。
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法令への対策が万全
近年、発注側の企業がフリーランスや業務委託先に対して優越的地位を濫用するリスクを防ぐため、下請法やフリーランス保護新法(2024年11月1日施行予定)にもとづく適切な発注対応が求められています。また、インボイス制度や電子帳簿保存法の要件を満たす書類の発行・保存も不可欠です。
こうした法令に反する対応を意図せず行ってしまった場合も、発注側の企業に罰則が科される可能性があるため、取引の安全性を確保する必要があります。freee業務委託管理なら既存の法令はもちろん、法改正や新たな法令の施行にも自動で対応しているため、安心して取引を行うことができます。
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よくある質問
下請法で禁止されていることは?
下請法で禁止されているのは、受領拒否、支払遅延、下請代金の減額といった親事業者から下請事業者へ行われる理不尽な行為です。具体的に、11項目の禁止行為が課せられています。
詳しくは記事内の「下請法で禁止されているNG行為」をご覧ください。
下請法の「60日ルール」はいつから?
下請法の「60日ルール」は、物品や役務を受け取った日から適用されます。受領日から60日以内に、できるだけ早い下請代金の支払いが必要です。
詳しくは記事内の「下請法で守るべき支払期日と「60日ルール」」をご覧ください。
下請法で支払期日を過ぎたらどうなる?
下請法における支払期日(受領日から60日)を過ぎると、「受領日から60日経過後」から実際に支払った日までの日数に対して、年率14.6%を乗じた「遅延利息」の支払いが必要です。
詳しくは記事内の「下請法で守るべき支払期日と「60日ルール」」をご覧ください。
監修 谷 直樹 長崎国際法律事務所
長崎県弁護士会所属弁護士。中小企業・個人事業主向けの経営相談窓口である「長崎県よろず支援拠点」に相談員として在籍し経営に関する法律問題について相談対応を行う。