フリーランスと企業間の取引において、受託側としての立場の弱さを感じているフリーランスは一定数います。そこで労働環境の整備を目的とし、2024年11月1日からフリーランス新法が施行されました。フリー株式会社が実施した調査によると、フリーランス新法への対応が進んでいない企業があるとの結果も出ていますが、フリーランスは対応が進んでいる企業との取引を望んでいます。
本記事では、フリー株式会社が2024年7月に公開した「フリーランス保護新法に関する意識調査」をもとに、取引で発生したトラブルやフリーランス新法への対応状況などについて解説します。
目次
フリーランス新法(フリーランス保護新法)とは
フリーランス新法とは、フリーランスへ仕事を発注する事業者に対して、報酬の支払期日の設定や書面等による取引条件の明示などの遵守事項を定めた法律です。フリーランスの安定した労働環境整備などを目的として2024年11月1日から施行されています。
フリーランス新法におけるフリーランスとは、発注事業者が業務委託を依頼する相手で、従業員を雇わない「特定事業者」のことです。本記事では、特定受託事業者をフリーランスと定義して解説していきます。
出典:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」
フリーランスは取引において立場の弱さを感じている
本調査では「あなたはフリーランスとして企業と取引する際、フリーランスの立場が弱いと感じますか?」の質問に対して75.8%が「立場が弱いと感じる」(立場が弱いと感じる:36.3%、どちらかというと立場が弱いと感じる:39.5%)と回答しました。
フリーランス新法はフリーランスの労働環境整備を目的として定められましたが、実際に自分の立場が弱いと感じているフリーランスは多いことがわかります。
企業側に起因するトラブルは多い
企業との取引において44.5%のフリーランスはトラブルを経験したことがないものの、半数以上がトラブル経験があることが本調査からわかりました。
そのなかで経験したトラブルとしては「自身に責めるべき理由がない業務範囲・内容の変更(19.5%)」が最多であり、「支払い遅延(19.0%)」「口頭発注(17.0%)」と続きます。その他の回答を見ても「自身に責めるべき理由がない発注の取り消し・中止」など、発注側に起因するトラブルが一定数あることがわかります。
フリーランスはトラブル発生時の相談窓口を知らない
取引におけるトラブルが発生した際、フリーランスは相談窓口を知らない状態であることもわかりました。フリーランスの83.5%が「相談窓口を知らない」と回答しており、この現状も企業と取引をする際にフリーランスが不安を抱える原因となっているでしょう。
フリーランス新法(フリーランス保護新法)の認知度はまだ低い
フリーランスと発注事業者の取引の適正化のために施行されたフリーランス新法ですが、まだ認知度は低いのが現状です。「あなたはフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案)を知っていますか?」の質問に対して「知っている」と答えた人は19.5%のみという結果になりました。
フリーランスが相談窓口を知らないことと同様に、フリーランス法の認知度の低さもフリーランスが企業と取引をする際に不安を抱える原因になるでしょう。
フリーランス新法への対応を進めている企業との取引が求められている
フリーランスが企業との取引に不安を抱えている可能性があるなか、「フリーランス保護新法の対応を進めようとしていない企業」との取引については、45.8%が「取引したい(取引したい:9.0%、どちらかというと取引したい:36.8%)」と回答した一方、「フリーランス保護新法の対応を進めようとしている企業」については87.8%が「取引したい(取引したい:38.5%、どちらかというと取引したい:49.3%)」と回答しました。
つまり、フリーランス新法への対応を進めている企業の方が、フリーランスからの信用がある状況です。
なお、トラブルを経験したことがあるフリーランスは、92.3%が「フリーランス保護新法の対応を進めようとしている企業と取引したい」(取引したい:40.1%、どちらかというと取引したい:52.3%)と回答した結果もあり、企業はフリーランス新法への対応が不可欠といえるでしょう。
まだ半数以上の企業がフリーランス新法への対応が進んでいない
フリーランスがフリーランス新法への対応を進めている企業との取引を求めている一方で、半数以上の企業では対応が進んでいないのも事実です。
「あなたの取引先は、契約書内容の見直しや発注内容の明確化などフリーランス保護新法への対応準備を進めていますか?」に対しては56.5%が「進んでいないと思う」(進んでいないと思う:22.5%、どちらかというと進んでいないと思う:34.0%)と回答しました。
たとえ企業側が対応を進めていても、フリーランスには伝わっていない可能性があるため、発注に関するコミュニケーションの方法を見直すことも必要でしょう。
フリーランス新法で発生する企業側の義務
フリーランス新法の施行により、発注する企業側には主に以下のような義務が生じます。
フリーランス新法で企業側に生じる主な義務
- 最新かつ正確な募集情報を提示する
- 発注に関する書面を交付する
- 支払いの期日を設定する
- ハラスメントに関する社内の体制を整備する
- 報復措置は禁止
- 妊娠・出産・育児・介護に対する配慮
これらはフリーランスの就業環境の整備と取引の適正化を図るものとして定められました。企業がフリーランス新法を遵守できれば、依頼を受けるフリーランスは安心して仕事ができ、さらにフリーランスからも取引をしたいと思ってもらえる企業になれるでしょう。
企業に生じる義務について詳しくは「フリーランス保護法はいつから?発注者が知っておくべき義務についてわかりやすく解説」で紹介しています。
法整備への対応は業務委託管理システムの導入が便利
フリーランスへの発注は、専門性の高いスキルを持った人材に業務を依頼できるなどのメリットがあります。しかし、契約手続きや報酬の支払い、法改正への対応などの業務が発生することを頭に入れておかなければいけません。
そこで、業務委託を管理できるシステムを導入するのがおすすめです。システムによっては契約から支払いまで一括で管理でき、法改正にも対応してくれるものもあります。
今回のフリーランス新法のような法改正に対応できていれば、フリーランスの採用や取引がスムーズに進められるでしょう。
【関連記事】
業務委託契約とは?契約の種類や締結の流れを分かりやすく解説
まとめ
本調査から、企業との取引において立場の弱さを感じていたり、トラブルにあったりするフリーランスは一定数いるとわかりました。まだ認知度は低いものの、2024年11月1日から施行されたフリーランス新法へ対応している企業との取引をフリーランスは望んでいます。
お互いが安心して働ける環境を作るためにも、改めてフリーランス新法への対応を進めましょう。
フリーランス・業務委託先への発注を効率化する方法
フリーランスや業務委託先との取引が多い企業にとって、手間がかかるのが発注業務です。
一口に発注業務といっても、契約や発注、請求など対応すべき作業は多岐にわたり、管理が行き届かないケースがあります。たとえば、法令にもとづく適切な発注ができていなかったり、請求書の提出期日が守られなかったり、請求書の不備で差し戻しが発生したりなどの課題が挙げられるでしょう。
このような課題を抱えている発注担当者におすすめしたいのが、業務委託管理システム「freee業務委託管理」です。
freee業務委託管理を活用すると、フリーランスや業務委託先への発注に関する手続きや取引情報のすべてを一元管理できるようになります。契約締結から発注、業務期間のやり取り、納品、検収、請求、支払いまで、一連の対応をクラウド上で完結できるため、管理コスト削減や業務効率化、取引に関するトラブルのリスク低減などのメリットをもたらします。
また、フリーランスや業務委託先との過去の取引履歴や現在の取引状況の管理も可能です。発注実績や評価を社内共有しやすく、業務委託の活用による従業員のパフォーマンス向上が期待できます。
freee業務委託管理の主な活用メリットは以下のとおりです。
発注に関わる手続きや取引情報を一元管理
クラウド上で契約完了
初めて取引を行うフリーランスや業務委託先と契約を締結する際、freee業務委託管理を使えば、クラウド上でのスムーズなやり取りが可能です。
契約書はそのままクラウド上に保管されるため、契約情報をもとに発注内容を確認したり、契約更新時のアラート通知を受け取ったりすることもできます。
発注対応や業務進捗を可視化
発注書の作成・送付は、フォーマットに業務内容や報酬、納期などを入力するだけで完了します。
また、発注業務をメールや口頭でのやり取りで行っていると、管理上の手間がかかるのはもちろん、発注内容や業務進捗などを把握しづらいこともあるでしょう。freee業務委託管理は発注内容が可視化され、プロジェクトの業務進捗や残予算をリアルタイムに把握するうえでも役立ちます。
正確な請求管理を実現
発注業務でもっとも忘れてはならないのが、請求管理です。報酬の支払い漏れや遅延は企業の信用に関わるため、情報の一元管理によって正しく効率的に行う必要があります。freee業務委託管理ならフリーランスや業務委託先が請求書を発行する際も、ワンクリックで発注書に連動した請求書を作成可能。請求書の回収状況が一覧で確認できるほか、請求処理に関する上長や経理担当者の承認作業もクラウド上で行えます。
支払明細書の発行も可能
確定申告の際に必要な支払明細書(支払調書)も、フリーランスや業務委託先ごとに発行できます。発行した支払明細書(支払調書)はPDFでダウンロードしたり、メールで送付したりすることも可能です。
法令への対策が万全
近年、発注側の企業がフリーランスや業務委託先に対して優越的地位を濫用するリスクを防ぐため、下請法やフリーランス保護新法(2024年11月1日施行予定)にもとづく適切な発注対応が求められています。また、インボイス制度や電子帳簿保存法の要件を満たす書類の発行・保存も不可欠です。
こうした法令に反する対応を意図せず行ってしまった場合も、発注側の企業に罰則が科される可能性があるため、取引の安全性を確保する必要があります。freee業務委託管理なら既存の法令はもちろん、法改正や新たな法令の施行にも自動で対応しているため、安心して取引を行うことができます。
カスタマイズ開発やツール連携で運用しやすく
業務委託管理システムを導入する際は、発注業務の担当者が使いやすい環境を整えることも欠かせません。freee業務委託管理は、ご希望に応じて、オンプレミスとの連携や新たな機能の開発などのカスタマイズも可能です。また、LINE・Slack・Chatwork・freee・CloudSign・Salesforceなど、各種ツールとの連携もできます。
より詳しくサービスについて知りたい方は、無料ダウンロード資料「1分で分かるfreee業務委託管理」をぜひご覧ください。
よくある質問
フリーランス法とは何ですか?
フリーランス法とは、フリーランスへ仕事を発注する事業者に対して、報酬の支払期日の設定や書面等による取引条件の明示などの遵守事項を定めた法律です。
フリーランスの安定した労働環境整備などを目的として、2024年11月1日から施行されています。
詳しくは記事内「フリーランス新法(フリーランス保護新法)とは」で解説しています。
フリーランス法へ対応できていることのメリットは?
フリーランス法への対応ができていない企業よりも、対応できている企業との取引をフリーランスは望んでいます。
本調査では、フリーランス法へ対応している企業との取引を望む割合の方が約1.9倍も多い結果となりました。
詳しくは記事内「フリーランス新法への対応を進めている企業との取引が求められている」で解説しています。