2024年11月1日にフリーランス法が施行され、フリーランスへ発注する企業が遵守すべき事項が定められました。働き方の多様化によってフリーランスは増加しており、フリーランスとの取引の需要は拡大が見込まれます。
本記事では、フリー株式会社が2024年7月に公開した「フリーランスとの取引に関する意識・実態調査」をもとに、フリーランスとの取引の傾向や企業が感じる課題などについて解説します。
目次
フリーランス新法(フリーランス保護新法)とは
フリーランス新法とは、フリーランスの安定した労働環境整備などを目的として制定された法律で、正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。「特定受託事業者」とは、発注事業者が業務委託を依頼する相手方で、従業員を雇わない事業者のことを指します。
2024年11月1日に施行されたフリーランス新法により、発注事業者には報酬の支払期日の設定や書面等による取引条件の明示などの遵守事項が定められました。
本記事では、特定受託事業者をフリーランスと定義して解説していきます。
出典:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」
フリーランス新法で発生する企業側の義務
フリーランス新法の施行によって、発注する企業には主に以下のような義務が生じます。
フリーランス新法で企業側に生じる義務
- 最新かつ正確な募集情報を提示する
- 発注に関する書面を交付する
- 支払いの期日を設定する
- ハラスメントに関する社内の体制を整備する
- 報復措置は禁止
- 妊娠・出産・育児・介護に対する配慮
これらはフリーランスが安心して働けるように、厚生労働省によるフリーランスの就業環境の整備と、公正取引委員会・中小企業庁による取引の適正化を図るものとして定められました。
企業に生じる義務について詳しくは、別記事「フリーランス保護法はいつから?発注者が知っておくべき義務についてわかりやすく解説」で解説しています。
出典:公正取引委員会「2024年11月1日からフリーランスの方のために、新しい法律がスタートします。」
フリーランスへの発注は増加する見込み
大手クラウドソーシングサービスの「ランサーズ」を運営する、株式会社ランサーズが実施した「新・フリーランス実態調査2021-2022年版」によると、本業・副業フリーランスの人口は1,577万人・経済規模は23.8兆円との結果が出ています。
同社が調査を開始した2015年と比較すると、人口は68.3%(640万人)、経済規模は62.7%(9.2兆円)増加していることがわかります。
そのなかでフリー株式会社eが実施した前述の調査では、今後のフリーランスの需要について19.5%が「需要が増える」、40.2%が「どちらかというと需要が増える」と回答しました。つまり、59.7%のビジネスパーソンがフリーランス需要の増加を見込んでいます。
フリーランスへの発注増の理由は「新しい働き方」の浸透
上記のフリーランス需要が増えると考えている597名に対して理由を質問したところ、「リモートワークなど新しい働き方が定着してきたため(66.5%)」が最多となりました。
続いて「優秀な人材に出会う可能性が高まったため(33.7%)」「一般の会社とフリーランスの差が縮まったため(27.1%)」との結果になっています。
これらの結果からは、フリーランスという働き方が浸透し、優秀な人材がフリーランスとしてスキルを活かして働いている現状があると考えられるでしょう。
コロナ禍もフリーランスとの取引が増えたきっかけのひとつ
フリーランス需要が増えると考えられている理由のひとつに「新しい働き方」が挙げられており、これにはコロナ禍による行動変容も影響していると本調査からわかりました。
フリーランスと取引したことのある243名に対し、コロナ禍がフリーランスとの取引にどのような影響を与えたのかを質問したところ、約6割が「取引が増えた」と回答しました。
この結果からは、コロナ禍でリモートワークなどの多様な働き方が浸透し、企業側もフリーランスの持つ知見やリソースを積極的に活用するようになったと考えられます。
フリーランスとは定期的に取引する傾向にある
今後、フリーランス需要の増加が見込まれる一方で、本調査でフリーランスと取引をした経験がある企業は24.3%にとどまりました。
しかし、フリーランスと取引をしたことがある人の企業では、約8割が定期的に取引をしているフリーランスがいると回答しています。
つまり、一度フリーランスに発注すると、定期的に取引をする関係になることが十分に考えられます。
企業がフリーランスへ発注するメリット
約8割がフリーランスに定期的な発注を行っているという結果を踏まえて、企業が仕事を発注するメリットを3つ紹介します。
専門性の高い人材の採用
社内にはない知見や実績を持っているフリーランスを採用できると、高い専門性を発揮して業務を遂行してくれるでしょう。実際に本調査では、フリーランスと取引した経験がある人の76.6%(満足している:28.0%、どちらかというと満足している:48.6%)が「仕事内容に満足している」と回答しました。
社内の従業員にフリーランスと同等の専門性を身につけさせる場合、どうしても人材育成にかかる時間や費用の負担が大きくなってしまいます。その点、フリーランスの採用はすぐに求める専門性を外部から調達できるため、企業にとってメリットがあるといえるでしょう。
需要に合わせた柔軟な発注
フリーランスにはオフィスに出社してもらうこともできれば、フルリモートで働いてもらうこともできるなど、柔軟な発注が可能です。
公正取引委員会の「フリーランスの業務及び就業環境に関する実態調査(令和5年度)」によると、1つの業務において契約締結日から契約終了日までの期間は39.5%が1ヶ月未満、23.0%が1年以上と期間の幅が広いことがわかっています。
ただし、柔軟に発注できるからといって曖昧な条件で依頼することは避けましょう。フリーランス新法でも「正確な募集情報の提示」や「支払い期日の設定」などが義務付けられています。
出典:公正取引委員会「フリーランスの業務及び就業環境に関する実態調査(令和5年度)」
コスト削減
フリーランスを採用した場合、企業側は雇用主になるわけではないため、労災保険や雇用保険の保険料を負担する必要がなく、正社員を採用するよりもコストを抑えられます。
また、保険加入の手続きも必要ないため、採用から業務開始までをスムーズに進められるでしょう。
フリーランスの採用によって削減できたコストは、別の予算に充てたり報酬に回したりすることも可能です。
フリーランスとの取引における課題
多くのメリットがあり、今後の需要拡大が見込まれるフリーランスとの取引ですが、発注する企業は課題も感じているようです。
本調査で今後フリーランスとの取引が増えると回答した289名に課題を質問したところ、最多回答は「発注や請求業務(49.8%)」、次に「フリーランス情報の蓄積と社内共有(34.3%)」「法律対応(下請法やインボイス制度等)(32.9%)」と続きました。
これらの課題を解決するためには、業務委託契約に関するシステムの導入が有効です。クラウド上で契約から支払いまで一括で管理できるものや、フリーランス法のように法改正に対応してくれるものもあります。
フリーランスへの発注を機に、社内の管理体制を見直すのもよいでしょう。
まとめ
コロナ禍を経て働き方が多様化し、フリーランスと取引する企業が増加しています。専門性の高い人材を採用でき、柔軟な働き方で発注できるフリーランスは今後も増加が見込まれます。
しかし、2024年11月1日に施行されたフリーランス新法により、発注する企業が遵守すべき事項が定められました。今後、フリーランスとの取引を考えている企業や、すでに取引をしている企業は改めて管理体制を見直しましょう。
フリーランス・業務委託先への発注を効率化する方法
フリーランスや業務委託先との取引が多い企業にとって、手間がかかるのが発注業務です。
一口に発注業務といっても、契約や発注、請求など対応すべき作業は多岐にわたり、管理が行き届かないケースがあります。たとえば、法令にもとづく適切な発注ができていなかったり、請求書の提出期日が守られなかったり、請求書の不備で差し戻しが発生したりなどの課題が挙げられるでしょう。
このような課題を抱えている発注担当者におすすめしたいのが、業務委託管理システム「freee業務委託管理」です。
freee業務委託管理を活用すると、フリーランスや業務委託先への発注に関する手続きや取引情報のすべてを一元管理できるようになります。契約締結から発注、業務期間のやり取り、納品、検収、請求、支払いまで、一連の対応をクラウド上で完結できるため、管理コスト削減や業務効率化、取引に関するトラブルのリスク低減などのメリットをもたらします。
また、フリーランスや業務委託先との過去の取引履歴や現在の取引状況の管理も可能です。発注実績や評価を社内共有しやすく、業務委託の活用による従業員のパフォーマンス向上が期待できます。
freee業務委託管理の主な活用メリットは以下のとおりです。
発注に関わる手続きや取引情報を一元管理
クラウド上で契約完了
初めて取引を行うフリーランスや業務委託先と契約を締結する際、freee業務委託管理を使えば、クラウド上でのスムーズなやり取りが可能です。
契約書はそのままクラウド上に保管されるため、契約情報をもとに発注内容を確認したり、契約更新時のアラート通知を受け取ったりすることもできます。
発注対応や業務進捗を可視化
発注書の作成・送付は、フォーマットに業務内容や報酬、納期などを入力するだけで完了します。
また、発注業務をメールや口頭でのやり取りで行っていると、管理上の手間がかかるのはもちろん、発注内容や業務進捗などを把握しづらいこともあるでしょう。freee業務委託管理は発注内容が可視化され、プロジェクトの業務進捗や残予算をリアルタイムに把握するうえでも役立ちます。
正確な請求管理を実現
発注業務でもっとも忘れてはならないのが、請求管理です。報酬の支払い漏れや遅延は企業の信用に関わるため、情報の一元管理によって正しく効率的に行う必要があります。freee業務委託管理ならフリーランスや業務委託先が請求書を発行する際も、ワンクリックで発注書に連動した請求書を作成可能。請求書の回収状況が一覧で確認できるほか、請求処理に関する上長や経理担当者の承認作業もクラウド上で行えます。
支払明細書の発行も可能
確定申告の際に必要な支払明細書(支払調書)も、フリーランスや業務委託先ごとに発行できます。発行した支払明細書(支払調書)はPDFでダウンロードしたり、メールで送付したりすることも可能です。
法令への対策が万全
近年、発注側の企業がフリーランスや業務委託先に対して優越的地位を濫用するリスクを防ぐため、下請法やフリーランス保護新法(2024年11月1日施行予定)にもとづく適切な発注対応が求められています。また、インボイス制度や電子帳簿保存法の要件を満たす書類の発行・保存も不可欠です。
こうした法令に反する対応を意図せず行ってしまった場合も、発注側の企業に罰則が科される可能性があるため、取引の安全性を確保する必要があります。freee業務委託管理なら既存の法令はもちろん、法改正や新たな法令の施行にも自動で対応しているため、安心して取引を行うことができます。
カスタマイズ開発やツール連携で運用しやすく
業務委託管理システムを導入する際は、発注業務の担当者が使いやすい環境を整えることも欠かせません。freee業務委託管理は、ご希望に応じて、オンプレミスとの連携や新たな機能の開発などのカスタマイズも可能です。また、LINE・Slack・Chatwork・freee・CloudSign・Salesforceなど、各種ツールとの連携もできます。
より詳しくサービスについて知りたい方は、無料ダウンロード資料「1分で分かるfreee業務委託管理」をぜひご覧ください。
よくある質問
フリーランス法とは何ですか?
フリーランス法とは、フリーランスの安定した労働環境整備などを目的として制定された法律で、正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。
2024年11月1日に施行されたフリーランス法により、発注事業者には報酬の支払期日の設定や書面等による取引条件の明示などの遵守事項が定められました。
詳しくは記事内「フリーランス新法(フリーランス保護新法)とは」で解説しています。
フリーランスとの取引における課題は?
フリーランスとの取引における課題には「発注や請求業務」「フリーランス情報の蓄積と社内共有」「法律対応(下請法やインボイス制度等)」が挙げられます。
詳しくは記事内「フリーランスとの取引における課題」で解説しています。