「捺印と押印の違いは?」
「捺印と押印はどのように使い分けるとよい?」
「捺印・押印するとどんな法的効力が生じる?」
ビジネスシーンで、「捺印」・「押印」が求められるケースがあり、どんな意味合いや必要性があるのかわからないと感じている人もいるのではないでしょうか。
本記事では、捺印と押印の違いや意味・法的効力を解説します。
捺印と押印の具体的な使い分け方にも触れているので、ビジネスシーンで捺印と押印の使い方に迷いを感じている人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
捺印とは
捺印は自筆の署名と合わせて印鑑を押すことです。実際は「署名捺印」を意味する言葉で、書類に自分の名前を手書きで記入し、その上または横に印鑑を押すことを意味します。印鑑を押すだけが捺印ではない点に注意が必要です。
捺印は、文書の作成者が自らの意思で当該文書を作成したことを証明する役割を果たし、文書の信頼性と真正性を高める効果があります。
押印とは
押印は自筆以外の方法で自分の名前が記載された書類に印鑑を押すことです。押印は「記名押印」が省略された言葉と言われていますが、純粋に印鑑を押す行為を押印と呼ぶこともあります。
捺印と押印の違い
捺印と押印は、どちらも書類に印鑑を押す行為を指しますが、その意味と法的効力に違いがあります。
捺印は「署名捺印」を省略した言葉で、自筆で名前を書いた上で印鑑を押すことを意味します。一方、押印は「記名押印」を省略した言葉で、印刷やゴム印などで予め記された名前に印鑑を押すことを指します。
法的効力の面では、捺印の方が押印よりも高いとされています。これは、捺印には自筆の署名が含まれるため、筆跡鑑定によって本人の意思を確認できるからです。押印の場合、名前が自筆でないため、本人の意思を確実に証明することが困難です。
なお、民事訴訟法では、押印があれば文書が真正に成立したものと推定すると規定されているため、押印にも一定の法的効力はあります。しかし、より重要な契約や法的文書では、捺印が好まれる傾向にあります。
捺印と押印の法的効力
民事訴訟法第228条4項によれば、私文書に本人または代理人の署名または押印があれば、その文書は真正に成立したものと推定されます。つまり、捺印と押印のどちらも文書の真正性を推定する効力を持っています。
しかし、証拠力の面では捺印の方が押印よりも高いとされています。理由は、以下の通りです。
捺印の法的効力が高い理由
- 捺印(署名捺印)には自筆の署名が含まれるため、筆跡鑑定によって本人性を確認できる
- 押印(記名押印)は、あらかじめ記名された文書に印鑑を押すだけなので、印鑑の複製や無断利用の可能性を完全に排除できない
このため、契約書などの重要な法律文書では、より証拠力の高い捺印が好まれる傾向にあります。一方、押印は社内文書や一般的な取引文書など、比較的重要度の低い文書で広く使用されています。
ただし、近年では電子署名の普及や「脱ハンコ」の動きにより、従来の捺印や押印の重要性が低下しつつあることにも留意が必要です。
出典:e-Gov法令検索「民事訴訟法228条4項」
捺印・押印する場所
捺印・押印する場所は書類によって変わります。
捺印・押印する場所
- 請求書:捺印欄の中央、ない場合は社名あるいは住所の右側
- 契約書:契約印は署名欄の後ろあるいは名前の上
- 見積書:押印欄の枠内、ない場合は社名の右横
請求書は捺印欄の中央があれば該当箇所に押し、ない場合は社名あるいは住所の右側に押します。
社名・住所を完全に避けて押すのではなく、部分的に重なるように押してください。
少し重なるように印鑑を押すことには、偽造を防ぐ意味合いがあるため、重要な書類であればあるほど、印鑑を押す場所に注意しましょう。
契約書は署名欄の後ろあるいは名前の上に被せて押します。
契約印は他の印鑑と区別させるために、名前に近い位置で押すことが推奨されています。
見積書は押印欄の枠内に押し、ない場合は社名の右横に押してください。
見積書も請求書同様に、社名に少し重なるように押します。
どの書類でも印鑑は文字の上に重ねるように押すのが一般的ですが、例外として、印鑑証明が求められる重要書類では文字に重ならないように捺印する場合もあります。
印鑑証明などの重要書類では実印を用いることとなり、実印を使う際には印影がわかりやすく見える状態にしておくことが重要です。
捺印・押印をするシーン
捺印・押印する場所に明確な要件は決められていません。しかし、捺印と押印の法的効力の違いを踏まえると、選択する場面に線引きをしておく必要があります。
捺印は法的効力の強さがあるため、ビジネスシーンだと法人間の契約で使います。
契約書類では契約内容の合意の上で印鑑を押す必要があり、意志が伴う場面では捺印を選びましょう。
また、家や車などの資産を購入する際にも捺印が求められます。
具体的には、社宅向けの物件や対面での営業に必要な社用車を購入する場合が挙げられます。大きな金額のお金が動く契約でも捺印が用いられやすいです。
一方で、押印は以下の場面で使われます。
- 稟議書
- 決裁書
- 休暇申請
- 有給申請
- 勤怠管理表
- タイムカード
- 請求書・見積書
どの企業でも書面の内容を確認して承認する工程があり、業務効率化のために迅速な意思決定が求められます。意思決定の責任の重さ以上にスピードが重視される場面では、押印が適切でしょう。
脱ハンコで捺印・押印が不要になった書類一覧
主に民間から行政に向けた書類の手続きで脱ハンコの動きが進められており、捺印・押印が不要になった書類も見られます。
例えば、2020年に福岡市が先陣を切って、市の独自の判断で見直しできる申請書には、押印を不要とする動きを取り入れました。
脱ハンコの事例
企業間取引でも脱ハンコの一環として電子印鑑が導入されています。
フリー株式会社では電子契約サービス「freeeサイン」を提供しています。
freeeサインでは好みの印影の電子印鑑が作成できる機能が搭載されており、オンライン上の契約でも印鑑を押すことが可能です。
他にも、社内文書でもハンコ・紙の契約書類の必要性が問われ、社内の電子ワークフローシステムで手続きを完結させる企業が増えつつあります。
社内の業務システムの中に、休暇申請や請求書などの機能を追加し、簡単な申請・承認で済ませられるようになっている企業がほとんどです。
- 行政で捺印・押印が不要になった書類:「確定申告書」「給与所得者の扶養控除等申告書」など
- 企業間取引で捺印・押印が不要になった書類:「請求書」「契約書」など
- 社内文書で捺印・押印が不要になった書類:「申請書」「社内決議」など
契約にまつわる業務を簡単にする方法
契約書の作成や押印、管理など、契約にまつわる作業は多岐に渡ります。リモートワークが普及した近年、コミュニケーションを取りづらくなってしまい、契約締結までに時間がかかってしまう場合や、押印のためだけに出社しなければいけない...なんてケースも少なくありません。
そんな契約まわりの業務を効率化させたい方には電子契約サービス「freeeサイン」がおすすめです。
freeeサインはインターネット環境さえあれば、PCやスマホで契約書作成から締結まで、契約にまつわる一連の業務を完結できます。さらに、過去の契約書類はクラウド上で保存できるので、紛失や破損の心配も解消します。
契約周りのさまざまな業務をクラウド上で完結!
契約書を簡単に作成!
契約によって書式が異なるので、一から作成すると工数がかかってしまいます。 freeeサインでは、テンプレートを登録し、必要な項目を入力フォームへ入力するだけで簡単に契約書を作成できます。
社内の承認作業がリモートで完了!
freeeサインでは、契約書の作成依頼から承認にいたるまでのコミュニケーションもオンラインで管理・完結。ワークフロー機能は承認者の設定が可能なので、既存の承認フローをそのまま電子化することができます。
文書に応じて電子サイン・電子署名の使い分けが可能!
電子契約サービスの中には、どんな文書であっても1通送信する度に100~200円程度の従量課金が発生するものも少なくありません。freeeサインでは、従量課金のない「電子サイン」と従量課金のある「電子署名」のどちらを利用するかを、文書の送信時に選択できます。
重要な契約書や、後に争いが生じる可能性が高い文書には「電子署名」を利用して、より強固な証跡を残し、それ以外の多くの文書には「電子サイン」を利用するといった使い分けができるので、コスト削減につながります。
電子契約で契約書作成にかかる手間・コストを削減
電子契約にすると押印や郵送、契約管理台帳へのデータ入力の必要がなく、契約に関わる手間が大幅に削減されます。さらに、オンライン上での契約締結は印紙税法基本通達第44条の「課税文書の作成」に該当しないため、収入印紙も不要です。
電子契約で完結することで、郵送する切手代や紙代、インク代なども不要となり、コストカットにつながります。
過去の契約書もクラウド上で保存してペーパーレス化
紙ベースで契約書類を作成すると、紛失や破損の恐れがあります。また、管理するための物理的なスペースを確保しなくてはなりません。また、電子帳簿保存法の改正でPDFでの保管にも制約が発生します。
freeeサインでは、過去の契約書もPDF化してタイムスタンプ付きで保存ができるので、今まで紙やPDFで保存していた契約書も一緒にクラウド上で管理することができます。クラウド上で管理することで紛失や破損の恐れも解消され、社内間での共有も楽になります。
気になる方は、無料登録でも書類の作成や電子締結ができる「freeeサイン」をぜひお試しください。
よくある質問
契約書の押印と捺印の違いは?
捺印と押印は、どちらも書類に印鑑を押す行為です。捺印は、自筆で名前を書いた上で印鑑を押すこと、押印は、印刷やゴム印などで予め記された名前に印鑑を押すことを指します。
詳細は、記事内「捺印と押印の違い」をご覧ください。
㮈印とは?
捺印は自筆の署名と合わせて印鑑を押すことです。書類に自分の名前を手書きで記入し、その上または横に印鑑を押すことを意味します。
詳細は、記事内「捺印とは」をご覧ください。
ビジネスで押印と捺印の違いは?
ビジネスシーンだと法人間の契約書などの重要な法律文書では、より証拠力の高い捺印が好まれる傾向にあります。一方、押印は社内文書や一般的な取引文書など、比較的重要度の低い文書で広く使用されています。
詳細は、記事内「捺印と押印の法的効力」をご覧ください。
まとめ
捺印・押印は同じ印鑑でも法的効力の重さや使う場面が異なります。
請求書や見積書は押印でも済ませられますが、他企業との重要な契約書になると、意思決定の強さや責任の重さが反映されやすい捺印が使われます。
また、捺印・押印が求められる場面では、印鑑を押す場所にも注意が必要です。実印を使わない限りは、偽造を防ぐ目的で文字の上に被せてください。
近年ではさまざまな行政や企業で脱ハンコの動きも進められていますが、まだ捺印・押印をする場面も出てきます。
正しい捺印・押印の方法を押さえておき、書類手続きをきっかけとしたトラブルを起こさないように気を付けましょう。