
署名とは、契約書や伝票などの書面に自筆で氏名を記載する行為のことです。署名と似た言葉に「記名」がありますが、署名と記名は似て非なる行為であり、両者には大きな違いがあります。
本記事では、そもそも署名とは何かをはじめ、署名の法的効力や契約書などにおけるルール、電子契約に用いられる電子署名やその仕組みなどについて解説します。
目次
署名とは
署名とは、自筆によって契約書や伝票、各種法的文書などに氏名を書き記す行為を指す言葉です。「自署」や「サイン」も、同じ意味で使われます。
手書きで行われる署名は筆跡の鑑定が可能なことから、法的な証拠として効力を持つと認められます。そのため、ある物事について本人が同意した場合に「その意思表示を確定させるもの」として、署名が広く用いられています。
署名が求められるのは、主に以下のような書類です。
- 領収書や伝票
- 誓約書や確認書
- 契約書
契約の締結など署名を行うことが一般的なやりとりにおいて、署名なしで約束を交わすことも不可能ではありません。しかし、こういった合意確認では客観的な証拠がないとトラブルになりやすく、証拠能力を高めてそうした事態を回避するために用いられるのが署名です。
記名とは
署名と混同されやすい言葉に、「記名」があります。違いについて押さえておきましょう。それぞれの定義は以下のとおりです。
種類 | 内容 |
---|---|
署名 | 自筆によって書面・文書などに氏名を記す行為 |
記名 | 自筆以外の方法で氏名を記す行為 |
「氏名が掘られたゴム印を使用する」「PCなどで作成した氏名データを印刷する」「他人が代筆する」といった行為は、すべて署名ではなく記名に該当します。
署名の法的効力
署名の法的効力について、詳しく解説します。
署名は自筆で氏名を記すことから、筆跡鑑定による筆者識別(本人であることの証明)が可能です。民事訴訟法第228条第4項では、その文書が作成者の意思に基づいて作成されたことを示すための形式的証拠力(成立の真正)が規定されており、署名行為はこれにあたります。
その一方で、自筆以外の方法によって名前を記す「記名」は署名に比べて本人性が担保されにくく、なりすましが可能なため単体では法的効力を持ちません。法的な効力を担保するには、記名に加えて押印が必要となります。
契約書における署名のルール
基本的に、署名には強い法的効力があります。しかし、署名を行うシーンや署名を行う人によっては「適切なルールに基づいていない」と判断されてしまい、署名として機能しないこともあり得ます。
契約書における署名のルールについて、いくつかのパターンを例に解説します。
代表者による署名が基本
原則として、企業間の契約では会社の代表者となる人物が契約書に署名しなければなりません。
契約当事者が法人である場合、契約上の「本人」が法人にあたるため、業務に関する一切の行為の権限は定款で代表権を持つと定められた代表者(代表取締役など)が持つものと見なされます。そしてそれは、署名についても同様です。
契約担当者などの代表権を持たない人物が契約書に署名捺印をしても、「無権代理」と見なされることがあるので注意が必要です。
出典:e-GOV法令検索「会社法 第三百四十九条」
代表者以外の署名が有効になるケースもある
前述のとおり、原則として代表権を持たない人物が契約書に署名捺印しても「無権代理」となってしまいます。しかし、代表者がすべての書類に署名を行うのは現実として難しいというケースも多いでしょう。
適切な手順を踏めば、代表者以外による署名も有効になる場合があります。
民法第113条第1項の条文には、仮に無権代理による行為(署名)があったとしても、代表者の意思決定として当該無権代理行為を追認(事後的に容認)しなければ効力は生じないと記載されています。
これは、いい換えれば代表者が追認すれば署名は効力を持つということ。つまり、代理行為であっても契約が有効に成立することを意味します。
そのほか、代表者が身体上の理由で直接サインするのが難しいケースで、補助を目的に代筆したという場合も契約は成立します。
署名がある場合は押印不要
民事訴訟法第228条第4項の記載を踏まえると、私文書は「署名または押印がある場合に真正に成立する」と考えられます。つまり、署名がある契約書への押印は必須ではないということです。
ただし、「署名のみ」よりも「署名捺印」のほうが法的な証拠としての効力が高いことから、契約の信用性を高めるために署名に加えて印鑑を押すことが慣例となっています。
法的効力が強い順に並べると、以下のとおりになります。
- 署名+押印
- 署名のみ
- 記名+押印
記名単体の場合、法的効力はないので注意が必要です。
出典:e-GOV法令検索「民事訴訟法 第二百二十八条第四項」
捺印と押印の違い
判を押す行為には「捺印」と「押印」の2種類があります。どちらも「印鑑を押す行為」ですが、両者には違いがあるので押さえておきましょう。
種類 | 内容 |
---|---|
捺印 | 「署名捺印」の略語で、自署に加えて印鑑を押すこと |
押印 | 「記名押印」の略語で、自署以外によって記された氏名に加えて印鑑を押すこと |
押印は捺印よりも法的効力が弱いとされていますが、印鑑証明書で本人確認が可能な場合は効力が認められることもあります。
署名はフルネームが望ましい
署名は、氏または名のいずれかのみでも、作成者と他人の混同を生じない場合は有効です(大審院大正4年7月3日判決)。とはいえ、疑いの余地をできる限りなくすため、フルネームでの署名が望ましいといえます。
契約書に署名をする場合は、調印頁(署名欄)にわかりやすく記載しましょう。
電子契約の場合に対応する電子署名とは
近年はオンライン上のサービスを介して締結する電子契約の増加にともない、電子署名を用いるケースも増えています。以下、詳しく確認しておきましょう。
電子契約とは
電子契約は、紙を使わず電子ファイルや電子データを用いてインターネット上で締結する契約のことです。紙の契約で行われていた署名などを電磁的な仕組み(電子署名法の条件を満たした電子署名など)に置き換えることで、紙の契約書と同等の法的効力を有します。
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電子署名とは
直接相手とやりとりをせず、インターネットを介して行う電子契約では、本人性の確認や情報漏えい・改ざん防止の対策が欠かせません。そこで採用されている技術が「電子署名」です。
電子署名とは、電子文書が本人によって作成されたことを示す電子的な措置のこと。電子契約を締結する場合は、電子署名が「自筆による署名の代わり」になります。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
出典:e-GOV法令検索「電子署名法 第三条」
適切な形で電子署名を付すことは、電子契約の有効性を確保する観点から非常に重要です。
通常の署名は作成者が自筆で行いますが、電子契約の原本には通常の署名を行えないため、電子契約サービスなどを通じて電子署名を行うケースが一般的です。
また、電子契約を締結する際、電子署名に加えてタイムスタンプを付与すれば、「いつ」「誰が」契約を締結したのかを証明できるため法的効力が高まります。
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電子署名の法的効力
電子署名法が示す以下の要件を満たした電子署名が付された電子情報(電子契約など)は、「真正に成立したもの」と見なされます。
- 本人性(電子署名法第2条1項1号)
- 非改ざん性(電子署名法第2条1項2号)
一般にリリースされている電子契約サービスは、原則としてこの「本人性」と「非改ざん性」の要件をクリアする電子署名機能を有しています。
電子署名のない電子契約でも成立し得ますが、電子署名があれば推定効(書面などが真正に成立したものと推定できる状態)によってその有効性を確保できるため、トラブルの防止に役立ちます。
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電子署名の方法
データファイルに電子署名を付与する方法は、主に3種類あります。以下、代表的なやり方を確認しておきましょう。
Word・Excelデータなどへの電子署名
電子署名を付与したいファイル(Word、Excel、PowerPointなど)を開きます。まず、「ファイル」タブをクリックして「情報」を選択。続けて「文書の保護」、「デジタル署名の追加」をクリックし、「Microsoft Office署名ライン」を選択します。
「署名」のダイアログボックスから「契約の種類」を選び、氏名やメールアドレスなどの情報を入力します。「署名」ボタンをクリックし、確認メッセージの表示後に「OK」ボタンをクリックしたら完了となります。
PDFデータへの電子署名
Acrobat Readerなどの編集ソフトを使えば、PDFファイルにも電子署名ができます。はじめに「編集」メニューから環境設定画面を開き、署名の設定画面でメールアドレスと氏名を入力し、デジタルIDを作成しましょう。デジタルIDは事前に作成しておくとスムーズです。
その後、PDFファイルを開いて「ツール」、「証明書」を選択し、署名を入れたい場所を指定します。デジタルIDを選択してパスワードを入力し、署名済みのファイルを保存したら完了です。
電子契約サービスを利用した電子署名
重要な書類に電子署名を入れたい場合は、一般にリリースされている電子契約サービスを利用するのがおすすめです。電子署名を付与するまでの方法や手順はサービスによって異なりますが、一般的な流れに大きな違いはありません。
はじめに、契約書などの文書をプラットフォーム上にアップロードします。続けて文書内の署名箇所を指定したら、署名依頼先のメールアドレスを記載して送信するだけで完了。他の方法に比べて手間がかからないのがメリットです。
まとめ
署名は、自筆によって領収書や伝票、誓約書、確認書、契約書などの書面などに氏名を記す行為です。手書きで行われることから筆跡の鑑定が可能であり、法的な証拠として効力を持つものと見なされます。しかし、ルールに基づいたものでなければ有効性が認められない可能性もあるので注意が必要です。
近年は電子契約の普及により電子署名が用いられる機会も増えていますが、いずれも適切に扱うことで効力を発揮します。本記事を参考に、署名の基本的な知識やルールをあらためて確認しておきましょう。
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文書に応じて電子サイン・電子署名の使い分けが可能!
電子契約サービスの中には、どんな文書であっても1通送信する度に100~200円程度の従量課金が発生するものも少なくありません。freeeサインでは、従量課金のない「電子サイン」と従量課金のある「電子署名」のどちらを利用するかを、文書の送信時に選択できます。
重要な契約書や、後に争いが生じる可能性が高い文書には「電子署名」を利用して、より強固な証跡を残し、それ以外の多くの文書には「電子サイン」を利用するといった使い分けができるので、コスト削減につながります。
電子契約で契約書作成にかかる手間・コストを削減
電子契約にすると押印や郵送、契約管理台帳へのデータ入力の必要がなく、契約に関わる手間が大幅に削減されます。さらに、オンライン上での契約締結は印紙税法基本通達第44条の「課税文書の作成」に該当しないため、収入印紙も不要です。
電子契約で完結することで、郵送する切手代や紙代、インク代なども不要となり、コストカットにつながります。
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よくある質問
署名と記名の違いは?
「署名」は、自筆によって書面などに氏名を記す行為です。一方の「記名」は自筆以外の方法で氏名を記す行為を指し、「ゴム印を使用して押印する」「データで作成したものを印刷する」「他人が代筆する」といった方法が該当します。
詳しくは記事内の「署名とは」をご覧ください。
署名の法的効力は?
自筆で氏名を記す「署名」は筆跡鑑定による筆者識別(本人であることの証明)が可能なため、証拠としての法的効力が高いと考えられます。
詳しくは記事内の「署名の法的効力」をご覧ください。
記名捺印と記名押印の違いは?
「捺印」は自署に加えて印鑑を押すことで、正式には「署名捺印」といいます。対する「押印」は「記名押印」の略で、自署以外によって記された氏名に加えて印鑑を押すことです。
詳しくは記事内の「捺印と押印の違い」をご覧ください。