契約の基礎知識

収入印紙はコンビニで買える?電子契約では貼付不要となる理由も解説

監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

電子契約に収入印紙は不要?国の見解と印紙税の削減方法を解説

収入印紙は印紙税の納付を示す重要な証票です。ビジネスにおいてやりとりすることの多い契約書や領収書といった文書には、記載された金額や内容によって法律で定められた金額の収入印紙を貼付する必要があります。

しかし、電子契約の場合は印紙税がかからず、収入印紙を購入・貼付が不要になります。

本記事では、収入印紙と印紙税に関する基礎知識や電子契約サービスの導入によって印紙税を削減できる理由について解説していきます。

目次

収入印紙とは

収入印紙とは、国に対して印紙税を納付するために課税文書に貼付する証票です。納付者が納付金額分の収入印紙を購入して文書に貼付することで、印紙税などの税金や手数料などの納付が完了する仕組みになっています。

なお、印紙税は主に商取引に伴って作成する文書に対して課せられるものです。1万円以上の契約書や5万円以上の受取書(領収書)を作成する際などは、収入印紙を貼付する必要が生じる場合があり、約束手形や預金通帳なども印紙税の課税対象です。

収入印紙の仕組みは、「収入証紙」や「郵便切手」とよく似ていますが、それぞれ役割が異なるので注意しましょう。

  • 収入証紙:地方自治体に対して租税や手数料などの納付をするための証票
  • 郵便切手:郵便料金を事前に納めたことを証明する証紙

課税対象となる文書の分類

収入印紙は、印紙税法における課税文書を作成したときに貼付するものです。印紙税の対象となるのは下記20種類の文書です。

課税対象となる文書

  1. 不動産・鉱業権・無体財産権・船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書、地上権又は土地の貸借権の設定又は譲渡に関する契約書、消費貸借に関する契約書、運送に関する契約書
  2. 請負に関する契約書
  3. 約束手形・為替手形
  4. 株券・出資証券若しくは社債券・投資信託、貸付信託・特定目的信託若しくは受益証券発行信託の受益証券
  5. 合併契約書・吸収分割契約書・新設分割計画書
  6. 定款
  7. 継続的取引の基本となる契約書
  8. 預金証書・貯金証書
  9. 倉荷証券・船荷証券・複合運送証券
  10. 保険証券
  11. 信用状
  12. 信託行為に関する契約書
  13. 債務の保証に関する契約書
  14. 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書
  15. 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書
  16. 配当金領収証・配当金振込通知書
  17. 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書、売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書
  18. 預金通帳・貯金通帳・信託通帳・掛金通帳・保険料通帳
  19. 消費貸借通帳・請負通帳・有価証券の預り通帳・金銭の受取通帳等の通帳
  20. 判取帳

契約書にかかる収入印紙代

契約書にかかる収入印紙代(納税額)は、契約内容にかかわらず一定額のものと、文書に記載されている内容によって変動するものがあります。

収入印紙代が一定の契約書の一例

  • ・合併契約書、吸収分割契約書、新設分割計画書
  • ・定款
  • ・継続的取引の基本となる契約書(※契約期間が3ヶ月以下かつ更新の定めがないものは除く)など

収入印紙代が変動する契約書の一例

  • ・不動産売買契約書
  • ・請負に関する契約書
  • ・売上代金の受領書(領収書) など

印紙税額については、国税庁が公表している「契約書や領収書と印紙税」をご覧ください。

収入印紙はコンビニでも買える?購入可能な場所と購入方法

課税対象となる文書には、必要な金額の収入印紙を用意しなければなりません。収入印紙は1円から10万円まで全部で31種類があり、購入できる場所もさまざまです。収入印紙の主な購入場所は、下記の4ヶ所があります。

<収入印紙の購入可能な場所>

  • コンビニ
  • 郵便局
  • 役所・法務局
  • 金券ショップ

コンビニ

収入印紙はコンビニで購入可能です。コンビニは24時間営業の店舗も多いため、急に収入印紙が必要になったときでも購入することができて便利です。

ただし、コンビニで取り扱う収入印紙の種類には限りがあります。需要の高い200円の収入印紙しか扱っていない店舗も多いため、高額の印紙が必要な場合は、後述する郵便局などに出向いたほうがよいでしょう。コンビニによっては、希望する収入印紙の額面を事前に伝えておけば、取り寄せが可能な場合もあります。

なお、すべてのコンビニで収入印紙が購入できるわけではない点にも注意が必要です。個人経営や駅構内のコンビニでは、収入印紙を取り扱っていない可能性が高いです。収入印紙の取り扱いがある店舗は「切手・はがき・印紙」という掲示があります。

郵便局

郵便局の窓口では、原則として31種類すべての収入印紙を購入できます。ただし、簡易郵便局などでは全種類取り扱っていない場合があるため、事前に確認しておきましょう。

誤った額面の収入印紙を購入してしまった場合は、未使用であれば、郵便局の窓口で他の額面の収入印紙と交換できます。その際には、収入印紙1枚につき5円の手数料がかかります。たとえ未使用であっても、汚れたり損傷していたりするものは、偽造防止等の観点から交換できないので注意しましょう。

また、「課税文書に所定の印紙税額を超える収入印紙を貼り付けてしまった」「課税文書ではない文書に誤って収入印紙を貼り付けてしまった」といった場合には、税務署に申請すると還付を受けられることがあります。

役所・法務局

法務局では郵便局と同様に、31種類すべての収入印紙を取り扱っています。ただし、法務局の出先機関である支局や出張所では、高額の収入印紙は購入できない場合があるので注意が必要です。

また、市町村の役所でも、役所内または近隣に設置されている自動販売機や窓口などで収入印紙を購入できます。ただし、地域によっては役所で収入印紙を取り扱っていない可能性もあり、扱っていても、すべての種類がそろっているとは限らないため、事前に確認しましょう。

金券ショップ

金券ショップではほとんどの場合、額面よりも安い価格で収入印紙を購入できます。しかし、金券ショップで収入印紙を購入する場合は、消費税がかかります。事業に関わるものであれば課税仕入となり、仕入税額控除を受けられるため、実質的な負担金額をさらに抑えることが可能です。

ただし、金券ショップには、欲しいタイミングで必要な額面の収入印紙があるとは限りません。在庫数も少ない可能性もあります。

ほかにも、数はそれほど多くないものの、収入印紙売りさばき所(販売所)に指定されているスーパーなどでも、収入印紙を購入できます。「切手・はがき・印紙」という看板や掲示があれば収入印紙を取り扱っているので、希望する額面のものがあるかどうかを確認してみましょう。

電子契約に収入印紙が不要な理由とは

同じ契約内容でも電子契約の場合は収入印紙が不要とされる理由について、国税庁の見解などを通して説明していきます。

理由1:現状の課税実務の解釈では不要と判断される

印紙税はそもそも紙の文書に対して課せられる税金のことです。収入印紙による印紙税の納税義務について記載されている印紙税法第2条と第3条によれば、印紙税法によって課税対象とされた文書に印紙税がかかると記載されています(なお、クレジットカードで決済した領収書の場合は、信用取引により商品を引き渡すことから、文書に該当しないため印紙は不要)。

この印紙税法に「電子契約は非課税」とはっきり規定されているわけではありませんが、国税庁による印紙税法基本通達第44条には下記のように記されています。

印紙税法基本通達第44条
法に規定する課税文書の『作成』とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう

出典:国税庁「法令解釈通達 第7節 作成者等

このことから現状の課税実務においては、紙の文書でなければ印紙税は不要と解釈されているため、電子文書に関しては不課税と解釈されているのです。

理由2:電子メールでやりとりした契約書や電子契約書は課税文書の作成にあたらない

国税庁の「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について(別紙1-3)」に、下記の記述があります。

注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える

出典:国税庁「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について

たとえば、請負契約に関わる注文請書をPDFファイルにしてメールに添付して送信した場合には(FAXの場合と同じように)印紙税の課税対象とはならないことを示していると推定できます。すなわち、印紙税の課税は「紙の文書を契約相手に交付するという行為があることが前提」という見解です。

ただし、メールで送信した後に文書の原本(現物)を持って行くなどして相手方に交付した場合には、それは課税文書の作成に該当するので注意が必要です。その現物の文書には、収入印紙を貼付しなければなりません。

理由3:電磁的記録により作成されたものは課税されない

電子契約による文書は印紙税の課税対象ではないということが、参議院質疑における下記の国会答弁からも判断できます。

事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである

出典:参議院「印紙税に関する質問に対する答弁書:答弁本文

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電子契約で契約書作成にかかる手間・コストを削減

電子契約にすると押印や郵送、契約管理台帳へのデータ入力の必要がなく、契約に関わる手間が大幅に削減されます。さらに、オンライン上での契約締結は印紙税法基本通達第44条の「課税文書の作成」に該当しないため、収入印紙も不要です。

電子契約で完結することで、郵送する切手代や紙代、インク代なども不要となり、コストカットにつながります。

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まとめ

電子契約では印紙税が不要になることについて明記した法律はないものの、電子契約で作成された契約書は課税文書に該当しないと解釈されています。

契約書を取り交わすことが頻繁に行われている企業の場合、適切な電子契約サービスを導入することで印紙税にかかる費用を削減できます。また、契約書を作成する労力や時間をも含めたコスト削減が期待できるため、電子契約サービスの導入もおすすめです。

監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

立川法律事務所(東京弁護士法人本部)事業部長弁護士 。
大学卒業後に大手テニススクールにてテニスコーチを務めながらテニス選手として活動し、その後、弁護士を志す。現在は、地元である東京都立川市に拠点を構える立川法律事務所(東京弁護士法人本部)にて、事業部長弁護士として、個人向け業務から法人向け業務まで、民事事件から刑事事件まで幅広い業務を担いながら、さまざまな分野・業種の企業法務を多く取り扱っている。

監修者 関口勇太弁護士

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