契約の基礎知識

契約書を作成するときのポイントは?契約書の種類や電子契約書との違いも解説

監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

契約書を作成するときのポイントは?契約書の種類や電子契約書との違いも解説

どのような企業でも、事業を行っていれば契約を結ぶ場面はよくあります。ビジネス上の契約は、双方が合意した内容を記した契約書を作成し、書面化するのが一般的です。

本記事では、契約書を作成する目的や書き方について解説します。また、契約書の種類や電子契約との違いについてもまとめています。

目次

契約書の作成が必要な理由

契約とは、法的な権利義務関係が発生する約束のことです。契約は原則として、一方が申し込みを行い、相手方が承諾すれば成立します。法律に特別の定めがある場合を除き、契約書の作成や契約書への署名・捺印は、契約の成立条件ではありません。

契約書を作成するのはトラブルを防ぐため

たとえば、「××を◯◯円で売ります」「買います」との口約束をするだけで契約自体は成立します。しかし、それだけでは「◯◯円ではなく△△円と言った」「買いますとは言っていない」など、双方の主張が食い違ってしまうおそれがあります。

契約をめぐってトラブルになったとしても、口約束しか交わしていない場合はどちらの主張が正しいのか確かめる方法がないのです。

こういったトラブルを未然に防ぐためにも、ビジネス上の契約は、当事者双方が署名・押印した契約書を作成し、双方の合意を書面化しておくことが一般的となっています。契約書は裁判でも契約内容を示す証拠として提出できます。

創業して間もない企業や個人事業主は、取引の際に契約書を作成しないケースも珍しくないようです。しかしトラブル防止のためにも、取引の規模や内容にかかわらず契約書は作成しておいたほうがよいでしょう。

契約書の種類

契約書の作成には、紙の書面による方法と電子契約による方法の2つがあります。どちらの方法でも契約書の意義や法的効力において基本的な違いはありません。

紙で契約書を作る場合、本人がみずからの意思で署名・押印を行うことで、その契約書が署名・押印した人の意思に基づいて作成されたものだと推定されます。電子契約をする場合は、署名・押印の代わりに電子サインを行います。

適切な電子サインがなされた電子契約書は、署名・押印がなされた紙の契約書と同じように、電子サインをした本人の意思に基づいて作成されたものと判断される可能性が高いといえます。

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電子契約とは?企業に導入するメリットと注意点、導入事例を紹介

契約書に関連するルール

契約書の作成は原則として契約の成立要件ではないので、契約書の書き方についてのルールは法律上ありません。ただし、契約書に関連するルールはあります。以下のことを理解しておきましょう。

紙の契約書には収入印紙が必要となるケースがある

印紙税法の定めにより、紙の契約書が印紙税法の定める課税事項を記載したもの(課税文書)である場合は、定められた額の収入印紙を貼付する必要があります。

課税文書は全部で20種類定められており、「請負」「不動産売買」「売買取引基本契約」「代理店契約」などの契約書は、すべて課税文書にあたります。

一方、電子契約には収入印紙税法の定めがありません。国税庁の見解により「電子ファイルや電子メールを使用した契約は文書を作成したことにはあたらない」と解釈されているため、電子契約の場合は印紙税はかかりません。

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電子契約に収入印紙は不要?国の見解と印紙コストの削減方法を解説

書面での作成が義務づけられている契約もある

契約書の作成は原則として契約の成立要件ではありませんが、法律で書面の作成が契約の成立要件とされているものや、契約時に書面の作成が義務づけられているケースもあります。

<法律で書面の作成が成立要件とされている契約>

  • 任意後見契約
  • 事業用定期借地権設定契約

<契約時に書面の作成が義務づけられているケース>
  • 建築工事請負契約
  • 農地の賃貸借契約

契約書作成のポイント | 基本構成

上述したように契約書の書き方に法律上のルールはありません。しかし、一般的に基本構成や盛り込むべき内容はある程度決まっています。

ここでは、一般的な構成や記載事項を紹介します。

<契約書の基本構成>

  1. 表題
  2. 当事者の表示(前文)
  3. 本文
  4. 後書き(後文)
  5. 作成年月日(契約締結日)
  6. 署名・押印
  7. その他

1. 表題

冒頭には、「◯◯契約書」と表題を入れます。

売買契約書、業務委託契約書、代理店契約書、譲渡契約書など、契約の内容を端的に表したものにします。

2. 当事者の表示(前文)

本文に入る前に、前文として誰と誰のあいだの契約であるのかを明示した文章が入ります。「株式会社◯◯(以下「甲」という)と株式会社××(以下「乙」という)の間で、物品の売買に関し、以下のとおり契約を締結する」などと記載するのが一般的です。

関係者が3者以上になる場合は、甲、乙のほか、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸を使います。なお、甲や乙はただの分類記号であり、そこに上下の意味はありませんが、契約相手への気遣いから、相手を甲、自社を乙とする傾向があります。

3. 本文

具体的な契約内容を、第1条、第2条…と箇条書きにしていきます。

<記載項目の具体例>

  • 契約の目的
  • 具体的な内容
  • 契約期間
  • 契約の履行方法
  • 代金
  • 支払時期
  • 不履行時の定め
  • 契約解除事由
  • 合意管轄

4. 後書き(後文)

契約書の枚数やどちらが保有するかなどについて記載します。

<紙の契約書の記載例>

「本契約成立の証として本書2通を作成し、甲乙が記名押印のうえ、各1通を保有する」

<電子契約の記載例>

「甲と乙は、本契約成立の証として本電子契約書ファイルを作成し、それぞれ電子署名を行う。なお、本契約においては、電子データである本電子契約書ファイルを原本とし、同ファイルを印刷した文書はその写しとする」

5. 作成年月日(契約締結日)

契約を交わした日付を記載します。

6. 署名・押印

契約当事者双方が署名・押印を行います。印章について認印を使うか実印を使うかは、契約書の重要度で判断することが一般的です。重要度の低い契約または更新のための契約において承認の意思を示す場合には認印を、重要度の高い契約には実印を使用するなど、使い分けることが多いでしょう。電子契約の場合は電子サインを付与するので、署名・捺印は不要です。

7. その他

付記すべきことがあれば記載します。収入印紙の貼付が必要な場合はここに貼付します。

契約書作成のポイント | 必ず記載する内容

契約書の本文に記載する内容は、大きく分けて「各契約に特有の事項」と「一般条項」の2つがあります。

各契約に特有の事項

各契約に特有の事項は、契約内容によって変わります。

たとえば、業務委託契約なら、「甲は乙に対して◯◯に関する業務(以下、「本件業務」という)を委託し、乙はこれを受託する」といった基本合意、業務の具体的内容、権利・義務の譲渡禁止、再委託の禁止、報酬価格、報酬の支払時期、報告義務について、免責になる場合についてといった事項がこれにあたります。

一般条項

一般条項とは、契約の種類にかかわらず、どの契約にも規定されることの多い条項をいいます。具体的には以下のとおりです。

  • ・契約者双方で解釈が異なる可能性がある用語の定義
  • ・契約期間
  • ・履行期間
  • ・秘密保持
  • ・債務不履行時の定め
  • ・期限の利益喪失に関する定め
  • ・危険負担の定め
  • ・保証・連帯保証の定め
  • ・費用負担
  • ・訴訟管轄
  • ・反社会的勢力排除

契約書作成のポイント | 記載しても無効となる内容

原則、契約の内容は当事者の意思によって自由に決めることができます。しかし、法律の中には当事者の意思によって変更することが許されていない、強行規定と呼ばれるものがあります。強行規定に反する契約をした場合は、契約の全部または一部が無効になるので注意が必要です。

この強行規定とは、主に下記のようなものが該当します。

公序良俗に反するもの

公序良俗とは、公共の秩序を守るための常識的な観念のことです。

たとえば、倫理に反する金銭を受け取った見返りとして裏口入学させる契約や、人権侵害・男女差別をする雇用契約などは、公序良俗違反として無効になります。ビジネスの場面では、売買契約の損賠賠償の予定額があまりに高すぎる場合などは、公序良俗違反で無効となる可能性があります。

利息制限法や労働基準法、下請代金支払遅延等防止法等の条文に違反するもの

たとえば、借入金利の上限は利息制限法によって15~20%と決められており、これを超える利息を支払う契約を結んだとしても、法定利息を超える部分は無効になります。

また、労働基準法や下請代金支払遅延等防止法などで定められた内容に反する雇用契約や下請契約も無効になります。

契約書のテンプレートを利用する際の注意点

契約書の書き方はある程度決まっており、ウェブ上には各種契約書のテンプレートや雛形も紹介されています。また、電子契約サービスでは、サービスの一環として雛形を提供しているところもあります。

電子契約サービス「freeeサイン」では、基本的な契約書について弁護士作成のテンプレートを用意しており、契約に関する基本内容は網羅できるようになっています。

ただし、テンプレートをそのまま利用したのでは、自社に合わない内容が入っていたり、大事な要項が抜けていたりする可能性は捨てきれません。どのテンプレートを使うにせよ、必ず自社に合わせたカスタマイズが必要であることは留意しておきましょう。

紙の契約書と電子契約の違い

契約書を書面で作成する場合と、電子契約による場合では、契約書の意義や法的効力において基本的な違いはないものの、契約書作成までの手順や契約書の一部文言などが異なる部分もあります。

紙の契約書と電子契約で異なる部分は、主に下記のようなものが挙げられます。

印紙の貼付

紙の契約書では、印紙税法が定める課税文書に相当する場合、額に応じた印紙の貼付が必要です。一方、電子契約の場合は必要ありません。

署名・押印

紙の契約書では、本人の意思による契約であること(本人性の担保)を証明するために、署名・押印が必要です。また、必要に応じて下記のような押印も用いられます。

種類概要
契印契約書のページをまたいで押す印。
2枚以上の契約書が正しく連続していることを示す。
割印2部以上の契約書にまたがって押す印。
2つの契約書が対であることを示す。
捨印書に誤りがあった場合に訂正印として利用するための印。
訂正印文書の一部を訂正する際に押す印。
止め印文末に押すことで文章の終わりを示す印。
後から余白に文章を書き込まれることを防ぐ。

なお、電子契約の場合は、電子サインとタイムスタンプという2つの技術で本人性と非改ざん性を担保しますので、紙の文書のような署名・押印は不要です。

契約書の文言

「書面」という言葉は紙の文書を意味するので、電子契約を行う場合には使用しません。電子契約書内で「書面で交付」や「書面で保存」などの表現は、「電子契約書ファイル」や「電子データ」に適宜修正する必要があります。

契約書の送付方法

紙の契約書は、印刷後、送付状を添えて郵便で送付します。先方で署名・押印した後、1通を返送してもらうことになります。電子契約の場合は、電子メールでやりとりするのが一般的です。

契約書の保管方法

紙の契約書は、基本的に紙のまま保管する必要があります。電子契約の場合は、一定の条件を満たした電子データで保管します。

契約にまつわる業務を簡単にする方法

契約書の作成や押印、管理など、契約にまつわる作業は多岐に渡ります。リモートワークが普及した近年、コミュニケーションを取りづらくなってしまい、契約締結までに時間がかかってしまう場合や、押印のためだけに出社しなければいけない...なんてケースも少なくありません。

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契約書を簡単に作成!

契約によって書式が異なるので、一から作成すると工数がかかってしまいます。 freeeサインでは、テンプレートを登録し、必要な項目を入力フォームへ入力するだけで簡単に契約書を作成できます。

社内の承認作業がリモートで完了!

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文書に応じて電子サイン・電子署名の使い分けが可能!

電子契約サービスの中には、どんな文書であっても1通送信する度に100~200円程度の従量課金が発生するものも少なくありません。freeeサインでは、従量課金のない「電子サイン」と従量課金のある「電子署名」のどちらを利用するかを、文書の送信時に選択できます。

重要な契約書や、後に争いが生じる可能性が高い文書には「電子署名」を利用して、より強固な証跡を残し、それ以外の多くの文書には「電子サイン」を利用するといった使い分けができるので、コスト削減につながります。

電子契約で契約書作成にかかる手間・コストを削減

電子契約にすると押印や郵送、契約管理台帳へのデータ入力の必要がなく、契約に関わる手間が大幅に削減されます。さらに、オンライン上での契約締結は印紙税法基本通達第44条の「課税文書の作成」に該当しないため、収入印紙も不要です。

電子契約で完結することで、郵送する切手代や紙代、インク代なども不要となり、コストカットにつながります。

過去の契約書もクラウド上で保存してペーパーレス化

紙ベースで契約書類を作成すると、紛失や破損の恐れがあります。また、管理するための物理的なスペースを確保しなくてはなりません。また、電子帳簿保存法の改正でPDFでの保管にも制約が発生します。

freeeサインでは、過去の契約書もPDF化してタイムスタンプ付きで保存ができるので、今まで紙やPDFで保存していた契約書も一緒にクラウド上で管理することができます。クラウド上で管理することで紛失や破損の恐れも解消され、社内間での共有も楽になります。

気になる方は、無料登録でも書類の作成や電子締結ができる「freeeサイン」をぜひお試しください。

まとめ

契約書の作成は、原則として契約成立の必須要件ではないものの、合意した内容を明確化し、万が一トラブルが起きた際には法的効力があるため、ビジネス上の契約を交わす際は必ず契約書を作成するようにしましょう。

また、契約書には紙の書面による方法と電子契約による方法の2つがあります。

どちらの方法でも契約書の意義や法的効力において基本的な違いはないものの、電子契約には印紙不要、郵送不要、電子データでの保管が可能などさまざまなメリットがあるのでおすすめです。

監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

立川法律事務所(東京弁護士法人本部) 事業部長 弁護士。
大学卒業後に大手テニススクールにてテニスコーチを務めながらテニス選手として活動し、その後、弁護士を志す。現在は、地元である東京都立川市に拠点を構える立川法律事務所(東京弁護士法人本部)にて、事業部長弁護士として、個人向け業務から法人向け業務まで、民事事件から刑事事件まで幅広い業務を担いながら、さまざまな分野・業種の企業法務を多く取り扱っている。

監修者 関口勇太弁護士

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