経営管理の基礎知識

省人化とは?省力化や少人化との違いから具体事例、導入ポイントを解説

省人化とは?省力化や少人化との違いから具体事例、導入ポイントを解説

省人化(しょうじんか)とは、業務の無駄な工程を見直して人員を削減させたり、機械やロボットを活用して人員を削減する取り組みのことです。近年、労働人口不足や働き方改革推進を背景に、さまざまな企業で推し進められています。

本記事では、省人化とは何か、推進されている詳しい背景、省人化に取り組むメリットとポイントを解説します。企業の事例も紹介しますので参考にしてください。

目次

見たい数字をリアルタイムに出力できる会計ソフト

AI機能による自動仕訳を元に作成されたレポートから、月々の資金繰り状況を手軽に把握可能。事業別の売上データもリアルタイムに可視化・比較できるので、スピーディな経営判断に役立てられます。

省人化とは

省人化(しょうじんか)とは、業務の無駄な工程を見直して人員を削減させたり、機械やロボットを活用して人員を削減したりする取り組みのことです。

省人化は人員の削減に目を向けた取り組みですが、単に人員を削減するわけではなく、企業の生産性向上などを最終的な目標としています。 具体的には、製品やサービスの品質を損なわないような分析を行ったうえで人員削減を検討・実施したり、IT技術などの活用により人員調整を行ったりします。

省人化と省力化・少人化の違い

省人化と混同されやすい用語に、省力化(しょうりょくか)と少人化(しょうにんか)という言葉があります。

省力化とは、生産性の向上を目的として、工程あたりまたは従業員一人あたりの労力を減らす取り組みのことです。人員を削減することが目的ではなく、生産性の向上を目的にコスト削減が実施される取り組みとなります。省人化と省力化では、削減する対象が異なります。 少人化は、少人数で生産性を高める取り組みを意味します。つまり、より人員を少なくして需要の変動にも対応しつつ、生産体制を整える取り組みです。省人化や省力化の先に少人化があり、生産体制の基盤を強化させることに役立ちます。

省人化が推進されている背景

日本のさまざまな企業で省人化が推進されている背景について解説していきます。

人手不足・人件費高騰

先進諸国では少子高齢化が進んでおり、特に日本ではその影響が問題視されています。生産年齢とされている15~64歳の人口は、1995年をピークに減少し続けているのが現状です。2050年には5,275万人となり、2021年から29.2%減少することが見込まれています。

生産年齢人口が減少することで、企業では人手不足の影響が深刻化しています。また、人手不足の問題だけではなく、最低賃金の引き上げや社会保険料の増加による人件費の増加も、企業の負担となっているのが現状です。 そのため、特に人手を多く必要とする業界では、省人化によってコストを削減し、経営の安定を図る動きが加速する傾向にあります。これらの問題に対応するため、省人化で業務を維持・効率化する必要性が高まっているのです。

働き方改革の推進

働き方改革においても、省人化が注目されています。働き方改革とは、長時間労働の是正や労働環境の向上、ワークライフバランスの向上を目的とした取り組みです。

人手が不要な業務を見直し、より生産性の高い働き方を実現する手段として、省人化に取り組む企業は増えつつあります。

DXの進展

DXの進展も、省人化が推進されている背景のひとつです。

近年はAIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、IoT、クラウドサービスなどの技術が進化しています。これらによって、業務の自動化や遠隔操作が可能となり、効率化を図る動きが強まっています。

オフィスワークから工場作業まで、さまざまな分野で省人化が実現しやすくなっているといえます。

DXについては、以下の記事もご覧ください。

【関連記事】
DX推進とは?具体例や課題、推進される背景までまとめて解説

省人化の具体的な業務

省人化の具体的な業務として、以下のようなものが挙げられます。


  • モバイルオーダーシステムの導入
  • 配膳ロボット・無人店舗の活用
  • セルフレジ・キャッシュレス決済の導入
  • ECサイトのAIチャットボット対応
  • AIによる画像解析の活用

モバイルオーダーシステムの導入

モバイルオーダーシステムは、特にカフェやファストフード店、居酒屋などの飲食店を中心に広く普及しています。自身のスマートフォンや備え付けのタブレット端末などから注文・決済ができる仕組みです。

モバイルオーダーシステムを導入することで注文や会計の手間を削減でき、業務効率化につながります。人件費の削減やオーダーミスの減少といった効果も期待できます。

配膳ロボット・無人店舗の活用

人手不足の飲食業やコンビニ業界において、配膳ロボットや無人店舗の活用が広がっています。配膳ロボットは、AIとセンサーを搭載したロボットが料理を運びます。顧客のテーブルを認識し、自動で配膳できるのが特徴です。無人店舗は、カメラやAIレジなどを活用し、従業員を配置せずに24時間営業可能な体制を整備できます。

人手不足の解消だけでなく、労働コストの削減や店舗の省スペース化と効率化も可能です。

セルフレジの導入

セルフレジやキャッシュレス決済の導入により、会計業務の省人化を実現します。セルフレジは、顧客自身が商品のバーコードをスキャンしてレジに読み込み、支払いまで行うレジのことです。

従業員の負担を軽減し、レジ待ち時間を短縮することで顧客満足度も向上します。

ECサイトのAIチャットボット対応

ECサイトにAIチャットボットを導入し、問い合わせ対応を自動化させる仕組みも、省人化を期待できます。

顧客からの質問への自動応答が24時間対応可能となり、顧客満足度向上や、問い合わせ対応スタッフの負担軽減にもつながります。

AIによる画像解析の活用

AIによる画像解析を活用し、紙の文書(契約書や請求書、領収書など)をデータ化して検索・管理を効率化することも可能です。ペーパーレス化によるコスト削減にもつながります。

特にAI-OCRが搭載されたツールを活用すれば、手書き文字や崩れたフォントでも高精度で認識してもらえるため、より業務効率化を期待できます。また、ほかの業務システムと連携できるAI-OCRなら、AI-OCRだけでは対応できない範囲の自動化も可能です。

AI-OCRについては、以下の記事もご覧ください。

【関連記事】
AI-OCRとは?OCRとの違いや価格に対する効果について解説

省人化に取り組むメリット

省人化によって得られるさまざまなメリットを解説します。

人件費を削減できる

前述のとおり、省人化によって給与や福利厚生費といった人件費が削減できるメリットがあります。

これにより、人手不足でも事業を安定して継続できるほか、採用コストを削減することにもつながります。

業務効率が上がる

省人化によって業務効率の向上も期待できます。作業の標準化が進んで無駄な稼働を減らせるほか、AIやロボットの導入によって業務の属人化も防げます。

業務のスピードと正確性が向上することに加え、単純作業を機械化することで従業員が必要な業務に集中できるようになるのです。

人的ミスを防げる

省人化によって手作業の工程が減ることになるため、結果的にヒューマンエラーが起きづらくなり、対応品質の安定化が期待できる点もメリットといえるでしょう。

データ入力や計算など、ミスが許されない業務を自動化することで信頼性が向上します。

省人化の具体事例

省人化に成功した企業の事例を紹介します。

【JR東海】生成AIを活用した顧客対応で鉄道省人化

JR東海は、2024年6月から顧客の問い合わせ対応に生成AI(人工知能)を導入しています。従来は顧客からの問い合わせに対して職員が社内資料をもとに回答していましたが、この作業をAIに代替させることで、業務効率化と生産性向上を図っています。

同社では、このほかにもAI技術を活用した取り組みを広げています。人手不足が深刻とされる鉄道業界において人件費の高騰も大きな負担となっているなか、人材を雇用せずにサービスの質を高めているのが特徴です。

【佐川急便グループ】物流網全体の見直しと効率化を図る

人手不足が加速しているといわれる物流業界において、トップクラスのシェアを誇る佐川急便では継続的に省人化に取り組んでいます。

2024年には、発送頻度のデータを基にしたAIの分析とロボット技術などを組み合わせ、従来比で約5割の省人化を達成したと発表しました。外部企業とも連携し、さらなる省人化を狙っています。

省人化を行う際のポイント

最後に省人化を行う際のポイントを紹介します。

目的を明確にする

まずは何のために省人化を目指すのか、目的を明確にすることが重要です。具体的にはコスト削減や生産性向上、業務効率化などが考えられるでしょう。

また、省人化が必要な理由を社内でしっかりと共有し、関係者の理解を得る必要があります。

業務と課題を洗い出す

省人化を図る際は、現在の業務フローやプロセスを可視化し、どの業務がボトルネックになっているのかを把握しましょう。

単純作業や繰り返し作業など、自動化や効率化が可能な業務を特定し、人的リソースを減らしても問題がない業務と、削減できない業務を分類していきます。

社内で対応する業務をマニュアル化する

業務をマニュアル化すれば、担当者が変わっても変更前と同じ成果を出せる仕組みを確立できます。マニュアルを作成する際は担当者の経験や感覚ではなく、定量的に判断できるように明文化するのがポイントです。

一方でマニュアル化しづらい作業については、属人的な要素が残りがちです。こうした作業は担当者が蓄積してきたノウハウやナレッジを組織で共有し、可能な限り再現性を担保する必要があります。

省人化を実現させる手法を導入する

作業現場の課題を洗い出して業務がマニュアル化されたら、AIやシステムの導入を検討しましょう。

導入を検討できるシステムやツールには、次のようなものがあります。自社の業務環境や課題に応じて適切なものを選ぶことが大切です。

  • 自動化技術の活用(AI、RPA、ロボット、IoTなど)
  • デジタルツールの導入(クラウドシステム、チャットボット、勤怠管理システムなど)

まとめ

省人化は単に人員を削減するのではなく、企業の生産性向上などを視野に入れて行う取り組みです。さらに、人手不足や人件費高騰の解消にも役立ちます。

本記事で紹介したように、社内で対応する業務をマニュアル化した上で省人化を実現させる手法を導入し、DXを推進しましょう。そうすることで、自社で省人化を実現させる最適な手法を検討しやすくなります。DX推進については、「DX推進とは?具体例や課題、推進される背景までまとめて解説」もあわせてご覧ください。

よくある質問

省人化の読み方は?

省人化の読み方は「しょうじんか」です。

詳しくは、記事内「省人化とは」をご覧ください。

省人化と少人化の違いは?

少人化は、少人数で生産性を高める取り組みを意味します。省人化の先に少人化があり、生産体制の基盤を強化させることに役立ちます。

記事内の「省人化と省力化・少人化の違い」で詳しく解説しています。

省人化はなぜ必要?

省人化が求められる背景に、人手不足や人件費高騰、働き方改革推進などがあります。

詳しくは記事内「省人化が推進されている背景」をご覧ください。

見たい数字をリアルタイムに出力できる会計ソフト

freee会計は短期での導入と運用開始が実現できる統合型の会計システムです。紙の管理や保管等の業務を一掃し、クラウドを活用したデジタル化をスムーズに実現できるので、経理業務にかかる作業時間もコストも削減できます。