監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
個人事業主やフリーランスになると、確定申告を自分で行わなければなりません。確定申告には青色申告と白色申告の二種類があり、一般的に青色申告は節税効果が高いと言われています。
しかし、青色申告をするためには条件があり、事前に届出を提出する必要があります。また、これまでの白色申告から青色申告に切り替えたい人もいるかと思います。
本記事では青色申告をするために必要な「青色申告承認申請書」の概要と、その書き方を詳しくご紹介します。
2025年提出(令和6年分)の確定申告アップデート情報
所得税の確定申告期間:2025年2月17日(月)〜2025年3月17日(月)
消費税の確定申告期間:2025年1月1日(水)〜2025年3月31日(月)
※ 贈与税の申告・納税期間:2025年2月3日(月)〜2025年3月17日(月)
<2025年(令和6年分)の確定申告のポイント>
- マイナンバーカードをスマホで読み取らなくても、スマホ用電子証明書の利用で申告書の作成・e-Tax送信が可能になります。
- マイナポータルと連携すると、所得税確定申告の手続において、マイナポータル経由で控除証明書等のデータを一括で取得し、確定申告書の該当項目へ自動入力できます。
詳しくは国税庁ホームページ「令和6年分 確定申告特集」をご参照ください。
【2024年度の確定申告は2025年2月17日(月)〜3月17日(月)まで!】
目次
- 青色申告承認申請書とは?
- 青色申告承認申請書を提出するほうがよいケース
- 確定申告時の控除額を大きくしたいとき
- 赤字が生じる可能性があるとき
- 家族に給与を払いたいとき
- 青色申告承認申請書の書き方と記入例
- 青色申告承認申請書の提出期限
- 青色申告承認申請書の提出期限① 新規開業した場合
- 青色申告承認申請書の提出期限② 白色申告から青色申告に切り替える場合
- 青色申告承認申請書の提出期限③ 事業を相続により承継した場合
- 青色申告承認申請書を書く際の注意点
- 法人の青色申告承認申請書の書き方
- 個人事業主・フリーランスの青色申告承認申請書の書き方
- 青色申告承認申請書を正確に記入するために
- まとめ
- 開業freeeなら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成
- よくある質問
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青色申告承認申請書とは?
青色申告承認申請書は、確定申告を青色申告で行う場合に税務署に提出する書類です。正式名称は「所得税の青色申告承認申請書」で、青色申告をする場合は必ず提出しなければいけません。提出しなかった場合は、自動的に白色申告となります。
青色申告承認申請書は国税庁の「[手続名]所得税の青色申告承認申請手続」からダウンロード可能です。
所得税の青色申告承認申請書(PDF)
必要事項を記入のうえ、納税地を所轄する税務署に郵送もしくは持参しましょう。税務署の住所は「税務署の所在地などを知りたい方」から検索可能です。
青色申告をすると、適用条件によって10万円・55万円・65万円の控除を受けられ、さらに翌年に赤字を繰り越せるなど節税効果が高くなるメリットがあります。
青色申告のメリットについては、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】
青色申告とは?白色申告との違いや豊富なメリット、必要な準備・書類を解説
青色申告承認申請書を提出するほうがよいケース
青色申告承認申請書は、青色申告を行いたいときに提出が必要な書類です。開業するときに必ず提出が求められる「開業届」などの書類とは異なり、「青色申告承認申請書」は提出必須の書類ではありません。
具体的にどのようなケースで青色申告が必要になるのか紹介します。
確定申告時の控除額を大きくしたいとき
青色申告をすると、最大65万円の「青色申告特別控除」が適用されます。
控除額が大きくなると課税対象額が減るため、所得税を節税できます。確定申告時の節税効果を高めたいときには、青色申告承認申請書を提出し、青色申告ができる状態にしておきましょう。
赤字が生じる可能性があるとき
青色申告をしているときは、今年の赤字を翌年以降に繰り越して、翌年以降の所得から控除できます。個人事業主なら最大3年間繰り越せるため、赤字分を節税に活かすことが可能です。
たとえば、今年300万円の赤字が生じ、翌年に400万円の黒字が生じたとします。青色申告をしていない場合は赤字を翌年以降に繰り越せないため、翌年は400万円に対して所得税の納付が必要です。
しかし、青色申告をしている場合、今年の赤字を翌年に繰り越せるため、翌年は100万円(400万円-300万円)に対してのみ所得税を納付することになります。
家族に給与を払いたいとき
青色申告をしていない個人事業主は、家族に支払う給与は経費計上できません。しかし、青色申告をしている場合は家族に支払う給与を「青色専従者給与」として経費計上できるため、課税所得額を減らせます。
また、青色申告をしていない場合は、以下のいずれか小さいほうの金額が給与として認められます。
- 配偶者は86万円、そのほかの親族は50万円
- 所得÷(専従者人数+1)
一方、青色申告をしていれば、仕事に見合った給与なら上限なしに決めることが可能です。
青色申告承認申請書の書き方と記入例
ここからは、青色申告承認申請書の書き方と記入例をご紹介していきます。記入例などを見ずにすぐに届出を作成したい方は、記事後半「開業freeeなら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成」をご覧ください。
細かい書き方を知らなくても簡単に作成できます。
No | 記入項目 |
---|---|
① | 所轄の税務署名と提出日 |
② | 開業する事業と事業主の基本情報 |
③ | 青色申告を開始したい年度 |
④ | 事業所又は所得の起因となる資産の名称及びその所在地 |
⑤ | 個人事業の所得区分 |
⑥ | いままでに青色申告承認の取消しを受けたこと又は取りやめをしたことの有無 |
⑦ | 届出を提出する年の1月16日以降に個人事業を新規開業する場合の開業日 |
⑧ | 相続による事業承継の有無 |
⑨〜⑫ | その他参考事項 |
①青色申告承認申請書を提出する、所轄の税務署名と提出日を記入します。どこの税務署に提出したらいいかわからない場合は、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」から検索可能です。
②これから開業する事業と事業主の基本情報です。自宅を事業所として使う場合は「住所地」にチェックを入れます。
「居所地」とは継続して生活している場所です。たとえば、海外を本拠地としている人が、一時帰国し日本での活動の拠点としている場所などが該当します。オフィスをお持ちの場合は、「事業所」にチェックを入れ、住所を記入しましょう。
電話番号は携帯番号でも問題ありません。事業主の名前、生年月日、職業、屋号を書いて印鑑を押します。
③青色申告を開始したい年度を記入します。こちらの記入に関しては、後述する「青色申告承認申請書の提出期限」をご確認ください。
④事業形態によっては、複数店舗の場合もあるかと思います。「◯◯カフェ 五反田店」「◯◯デザイン 品川営業所」など、名称と住所を記入します。店舗や事務所がひとつの場合は空欄でOKです。
⑤個人事業の所得区分は事業所得です。事業所得のほかに不動産所得や山林所得がない場合には、事業所得のみにチェックをつけましょう。
⑥過去に青色申告承認の取り消しを受けたり、取りやめをしたりした場合はチェックをつけて年月日を記入します。特にない場合は「無」にチェックをしましょう。
⑦この届出を提出する年の1月16日以降に個人事業を新規開業する場合は、開業日を記入します。すでに開業している場合は、空欄でOKです。
⑧相続などで事業継承した場合は、相続開始年月日と被相続人の名前を記入します。特にない場合は「無」にチェックをします。
⑨青色申告で65万円控除を受けたい場合「複式簿記」に、10万円控除の場合は「簡易簿記」にチェックを入れます。
⑩65万円控除を受けるには、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳・預金出納帳・総勘定元帳・仕訳帳にチェックを入れます。10万円控除の場合は、現金出納帳にチェックを入れましょう。
⑪特記事項があれば、記入します。
⑫確定申告の代行をお願いする税理士がいる場合は、名前と連絡先を記入します。
青色申告承認申請書の提出期限
青色申告承認申請書には提出期限があるため、注意が必要です。新規開業した場合と、開業後1年以上経って青色申告に切り替えたい場合とで期限が異なります。
青色申告承認申請書の提出期限① 新規開業した場合
青色申告承認申請書の提出期限に関して、国税庁の「[手続名]所得税の青色申告承認申請手続」には下記のように記載されています。
青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをしたりした場合には、その事業開始等の日(非居住者の場合には事業を国内において開始した日)から2月以内)に提出してください。
つまり、ある年の1月16日以降、新たに開業した場合、開業後2ヶ月以内に青色申告承認申請書を提出する必要があります。1月1日から1月15日の間に開業した場合は、その年の3月15日までが提出期限です。
なお、新規開業の場合は、開業届も一緒に提出しなければなりません。開業時には、ほかにも従業員がいる場合や消費税の納税に関して提出する届出がありますが、後述するfreee開業を使えば、無料で作成できます。
青色申告承認申請書の提出期限② 白色申告から青色申告に切り替える場合
白色申告から青色申告に切り替えたい場合は、「青色申告をする年度の3月15日まで」に届出を提出する必要があります。
例:2019年1月16日に開業
-
開業後2ヶ月以内に届出を提出する場合
2019年度分(2019年1月1日から12月31日)以降、青色申告可能 -
上記以降に届出を提出する場合
2019年度分(2019年1月1日から12月31日)は白色申告
2020年3月15日までに届出を提出すれば、2020年度分(2020年1月1日から12月31日)から青色申告可能
青色申告承認申請書の提出期限③ 事業を相続により承継した場合
最後は、相続により事業継承をした場合です。青色申告をしていた事業主が亡くなり、相続により事業承継をした場合は、相続開始を知った日(死亡の日)の時期に応じて、それぞれ下記の期間内に提出する必要があります。
相続により事業承継した場合の提出期限
- 相続開始が1月1日から8月31日までの場合:死亡の日から4ヶ月以内
- 相続開始が9月1日から10月31日までの場合:その年の12月31日まで
- 相続開始が11月1日から12月31日までの場合:その年の翌年の2月15日まで
なお、提出期限が土・日曜日・祝日の場合は、これらの日の翌日が提出期限となります。
青色申告承認申請書を書く際の注意点
青色申告承認申請書を作成する際に間違えやすいポイントを紹介します。法人と個人事業主・フリーランスに分けて説明するので、提出前にチェックしてみてください。
法人の青色申告承認申請書の場合
法人名のフリガナを忘れるケースがあるため、提出前にチェックしましょう。また、法人番号の記入欄がありますが、不明なときは記載しなくても問題ありません。
個人事業主・フリーランスの青色申告承認申請書の場合
事業所得・不動産所得・山林所得の内、該当する事項を選択します。また、開業時から青色申告が適用されるようにしたい場合は、開業届と青色申告承認申請書を同時に提出しましょう。
青色申告承認申請書の書き方に注意点はありませんが、提出期限(開業日から2ヶ月以内)には注意が必要です。提出期限を過ぎると、開業した年は青色申告できない可能性があります。
青色申告承認申請書を正確に記入するために
ここからは、青色申告承認申請書やそのほかの必要な届出(開業届など)を正確に記入する方法をご紹介します。
青色申告承認申請書を作成するにあたっては、国税庁のホームページから届出をダウンロードして記入する方法のほか、freee開業を利用して作成する方法があります。
利用料は完全無料のうえに、届出の各項目の詳細を理解する必要はありません。
ステップに沿って必要事項を入力していくだけで届出が完成するため、PDFをダウンロードし、あて先を貼り付けるだけ(これもプリントアウト可能です)で簡単に届出の作成が完了します。
なお、青色申告承認申請書の提出はスタートにすぎません。青色申告をスムーズに行うための方法も、後述していきます。
まとめ
青色申告をすると控除額が増やせるだけではなく、赤字分を活用して翌年以降の課税対象額を減らしたり、家族への給与を経費計上できたりと、節税につながるさまざまなメリットを受けられます。
青色申告をしたい人は、青色申告承認申請書を作成し、開業届と同時に提出しましょう。開業届と同時に提出しなくても問題はありませんが、開業した年から青色申告ができない可能性があります。早めに作成して、開業届と同時に提出できるようにしておきましょう。
freee開業なら、税務署に行かずに開業届をかんたんに作成
個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。
そこでおすすめなのが「freee開業」です。ステップに沿って簡単な質問に答えていくだけで、必要な届出をすぐに完成することができます。
freee開業で作成可能な5つの届出
1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。
2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。
3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。
4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。
5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。
freee開業の使い方を徹底解説
freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。
Step1:準備編
準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。
事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。
Step2:作成編
次に、作成編です。
申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。
給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。
さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。
今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。
Step3:提出編
最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。
入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。
届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。
郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。
いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。
しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。
また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業とfreee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。
よくある質問
青色申告承認申請書を書く際は何に注意すべき?
青色申告承認申請書を作成するときは、法人の場合は法人名のフリガナを忘れないようにしてください。また、書き方自体は難しくはありませんが、提出期限に注意が必要です。開業日から2ヶ月以内とされているため、早めに提出しましょう。
詳しくは、記事内「青色申告承認申請書を書く際の注意点」をご覧ください。
青色申告承認申請書はいつまでに提出する?
青色申告承認申請書の提出時期は決まっていません。しかし、開業時から青色申告をしたいなら、開業から2ヶ月以内に青色申告承認申請書を提出しましょう。
詳しくは、記事内「青色申告承認申請書の提出期限」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。