監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所
帳簿とは、事業を行ううえで発生する取引やお金の流れを記録するための書類であり、法人だけでなく、個人事業主であっても作成・保存が求められます。
帳簿にはさまざまな種類があり、個人事業主は確定申告の方法によって必要な帳簿が異なります。事業を営むのであれば、どの帳簿を作成し何年間保存すべきなのかを正確に把握しておきましょう。
本記事では、個人事業主に向けて会計帳簿の種類のほか、帳簿作成の流れや複式簿記・簡易簿記(単式簿記)の違いなどを詳しく解説します。
目次
確定申告が超ラクちんに!
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!口座とのデータ連携によって転記作業も不要になり、入力ミスも大幅に削減します。freee会計で自分でできる確定申告を!
確定申告が超ラクちんに!日常の経理を効率化!
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!口座とのデータ連携によって転記作業も不要になり、入力ミスも大幅に削減します。
帳簿とは
帳簿とは、事業にまつわる取引やお金の流れを記録するための帳面や台帳です。法人だけではなく個人事業主やフリーランスも、 1年間の取引内容を記載した帳簿を作成し、一定期間保存しなければいけません。
帳簿の作成・保存は、白色申告であるか青色申告であるかを問わず、事業者の義務とされています。確定申告の際に、帳簿を税務署に提出する必要はありません。ただし、作成していない場合、税務調査を受けた際に根拠資料を提示できないため、経費を否認されるなどの不利益を被るおそれがあります。
申告の方法によって記帳方法が異なり、青色申告の場合は「複式簿記」、白色申告の場合は「簡易簿記(単式簿記)」で記帳します。帳簿に記載される内容は、取引の内容や取引が行われた日時、取引先の情報、勘定科目などです。それぞれの記帳方法は、記事の後半「帳簿の付け方の基本」で詳しく解説します。
帳簿を作成する際は、記載漏れや仕訳間違いがないように注意しなければいけません。年度によって項目などが変わらないように、毎年、作成方法を統一しましょう。
出典:国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
出典:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
帳簿を付ける理由・目的
商法第19条で、法人・個人事業主にかかわらず帳簿の作成は全事業者の義務と定められています。事業を営む場合は必ず帳簿を作成しましょう。
帳簿は法律上作成義務がありますが、作成することで、経営判断にも役立ちます。
出典:e-Gov法令検索「商法|第十九条」
帳簿に関する基本用語
以下は、帳簿の作成に関連する用語です。帳簿作成にあたっては、これらの基本用語を理解しておく必要があります。
用語 | 意味 |
---|---|
帳簿 | 事業にまつわる取引やお金の流れを記録するための冊子や台帳 |
簿記 | 日々の取引を帳簿に記載し、決算書を作成すること 複式簿記または簡易簿記(単式簿記)のいずれかの方法で記帳を行う |
記帳 | 取引の内容を帳簿に記載すること |
仕訳 | 複式簿記で、取引の内容を勘定科目ごとに振り分けること |
勘定科目 | 発生した取引の種類を示す見出しのようなもの |
帳簿の種類と記載内容
帳簿は、「主要簿」と「補助簿」の2種類に大別されます。それぞれ、含まれる書類は以下のとおりです。
主要簿 | ・仕訳帳 ・総勘定元帳 | |
---|---|---|
補助簿 | 補助記入帳 | ・現金出納帳 ・預金出納帳 ・固定資産台帳 ・売掛帳 ・買掛帳 |
補助元帳 | ・商品有高帳 ・仕入先元帳 ・得意先元帳 |
青色申告で55万円もしくは65万円の青色申告特別控除を受けるためには、「主要簿」も作成しなければなりません。10万円控除の青色申告および白色申告では「補助簿」のみ作成が求められます。
【関連記事】
青色申告とは?白色申告との違いや豊富なメリット、必要な準備・書類を解説
白色申告とは?メリット・デメリットや必要書類の書き方、提出方法も解説
主要簿
主要簿は、「仕訳帳」と「総勘定元帳」の2種類があります。
仕訳帳
仕訳帳とは、発生したすべての取引を日付順に記載した帳簿で、複式簿記で記載します。
取引を借方と貸方に分け、それぞれ該当する勘定科目名と金額を記入します。このとき、借方と貸方の金額は必ず一致します。
仕訳帳は、法律などで定められたフォーマットはなく、以下の内容が記載されていれば、表計算ソフトなどを用いて自身で作成しても問題ありません。
仕訳帳に記載すべき項目一覧
- 取引が発生した年月日
- 勘定科目(貸方と借方)
- 金額(貸方と借方)
- 摘要(取引の相手先や販売数量などの備考)
【仕訳帳の書き方例】
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
8/4 | 会議費 | 2,000円 | 現金 | 2,000円 | A社打ち合わせ |
8/15 | 現金 | 200,000円 | 普通預金 | 200,000円 | 現金引き出し |
8/17 | 仕入 | 150,000円 | 買掛金 | 150,000円 | パソコン |
総勘定元帳
総勘定元帳は、事業運営にあたって発生したすべての取引を勘定科目ごとにまとめた帳簿です。特定の勘定科目の残高や増減の内容の把握に役立ちます。
総勘定元帳にも定められたフォーマットはありません。仕訳帳の内容を転記して作成します。
【総勘定元帳の書き方例】
日付 | 摘要 | 仕丁 | 借方 | 日付 | 摘要 | 仕丁 | 貸方 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
6/2 | 前月繰越 | ✔︎ | 1,000円 | 6/2 | 仕入 | 1 | 100円 |
6/10 | 売上 | 1 | 300円 | 6/10 | 次月繰越 | ✔︎ | 1,900円 |
6/18 | 売掛金 | 1 | 700円 | 6/18 | 仕入 | 1 | 1,900円 |
勘定科目とは
勘定科目とは、発生した取引の種類を示す見出しのようなものです。取引の内容に合わせて、売上高や接待交通費・通信費など、該当する勘定科目に仕訳を行います。
勘定科目の種類は、法的に定められているわけではなく、使用する勘定科目の種類や総数は、業種によっても異なります。下表に、一般的な勘定科目をまとめました。
勘定科目 | 内容 |
---|---|
売上高 | サービスや商品を提供して発生した売上 |
雑収入 | 事業の売上以外で得た収入 |
給与・賃金 | 従業員の給与 |
外注費 | 外注先スタッフに支払った金額 |
水道光熱費 | 事業用途で使用した水道代や電気代など |
旅費交通費 | 業務で使用した交通費や、出張の際に発生した宿泊費など |
接待交際費 | 事業用途で発生した接待や贈答品の購入で使用した費用 |
通信費 | 電話代やインターネット通信費など |
補助簿
補助簿とは、主要簿の作成や内容を補うために作成する帳簿で、取引の詳細を把握するために用いられます。代表的な補助簿は、以下の5種類です。
種類 | 概要 |
---|---|
現金出納帳 | 入金伝票や出金伝票から転記し、現金のやりとりをまとめた帳簿 |
預金出納帳 | 銀行口座でのやりとりをまとめた帳簿 |
売掛帳 | 取引先別に売掛金に関する取引を記入して管理する帳簿 |
買掛帳 | 取引先別に買掛金に関する取引を記入して管理する帳簿 |
固定資産台帳 | 減価償却する固定資産(パソコンや車など)を記入して管理する帳簿 |
事業の内容に応じて、必要な補助簿を作成しましょう。
たとえば、ハンドメイド作品を対面販売し、現金以外の手段による支払いを受け付けていない場合は、売掛金が発生しないため、「売掛帳」は不要です。また、ツケ(後払い)による仕入れがない場合は、「買掛帳」は不要です。
帳簿の付け方の基本
帳簿は、日々の取引が発生したタイミングで記載をし、年度末の時期にその年度の取引内容を取りまとめた決算書(財務諸表)と確定申告書を作成します。
取引の発生から確定申告までの基本的な流れは以下のとおりです。
取引が発生したら、領収書やレシート・銀行の通帳などを参照しながら取引内容を整理します。その後の処理方法は、複式簿記なのか単式簿記なのかによって異なります。
複式簿記であれば、取引内容を勘定科目ごとに仕訳を行い、仕訳帳に記載します。仕訳帳への記載が完了したら、その内容を総勘定元帳に転記し、あわせて「現金出納帳」や「預金出納帳」への記入も行いましょう。
単式簿記の場合は、収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)を作成します。売上・雑収入等・仕入・経費の4項目に関して、整然かつ明瞭に記載しなければいけません。
取引の量にもよりますが、確定申告前にまとめて処理すると作業の負担が増大する可能性があります。日々、記帳の時間を作り、こまめに経理処理を実施してください。
青色申告者であれば、確定申告前に総勘定元帳の内容をもとに「青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)」の作成を行います。白色申告者は、貸借対照表や損益計算書の作成は不要ですが、帳簿の内容を踏まえて収支内訳書を作成しなければいけません。
出典:国税庁「帳簿の記帳のしかた −事業所得者用−」
出典:国税庁「令和6年分白色申告者の決算の手引き(一般用)」
発生主義と現金主義
帳簿の作成では、期首から期末までの期間(個人事業主の場合は1月1日から12月31日まで)の損益を適切に計算することが求められます。
取引によっては、商品・サービスを納品・提供してから口座に報酬が入金されるまでに一定の時間を要するケースがあります。たとえば、12月に確定した報酬が翌年1月に入金される場合、「発生主義」であるのか「現金主義」であるのかによって年間の売上金額に差が生じます。
発生主義とは、売上や費用に関して、その債権・債務が確定した時点で取引を認識する方法です。売上は「相手から代金を受け取った時点」ではなく「相手に対して代金の請求が可能になった時点」で計上を行います。たとえば、12月25日に請求した売上が1月10日に入金された場合、売上として12月25日の時点で計上します。
一方、現金主義とは、現金や預金の入出金の事実に基づいて取引を認識する方法です。上記の例では、12月25日ではなく、実際に現金が入金された1月10日の時点で計上を行います。
正式な会計処理では、現金主義ではなく発生主義を採用します。小売業や飲食業など、業種によっては債権の発生と同時に代金を回収する場合もあるでしょう。業態に応じて、適切なタイミングで売上を計上してください。
売掛金などが発生する時期と回収する時期が異なる場合、原則、発生主義で記帳しなければいけません。ただし、以下の条件を満たせば、現金主義による記帳が可能です。
現金主義による記帳が可能となる条件
- 前々年の事業所得および不動産所得が300万円以下
- 「所得税の青色申告承認申請書 現金主義の所得計算による旨の届出書」を提出
出典:国税庁「所得税の青色申告承認申請(兼)現金主義の所得計算による旨の届出手続」
ただし、現金主義で記帳し青色申告する場合は、青色申告特別控除額は10万円しか適用されません。
出典:国税庁「所得税の青色申告承認申請(兼)現金主義の所得計算による旨の届出手続」
複式簿記と単式簿記との違い
帳簿の記帳方法は、「複式簿記」と「単式簿記(簡易簿記)」の2種類があります。単式簿記は取引の内容と収支のみを記録する方法で、複式簿記はひとつの取引に関して、借方・貸方の両側面(お金の入出金と、その原因)を記録する方法です。
複式簿記と単式簿記の違いについて詳しく知りたい方は、別記事「複式簿記とは?複式簿記の記帳方法や単式簿記との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。
記帳方法の例
たとえば、交通費として現金600円を支払ったとして、複式簿記と単式簿記のそれぞれの記帳例は以下のとおりです。
【複式簿記】
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
令和6年○○月××日 | 旅費交通費 | 600円 | 現金 | 600円 | 電車賃 |
【単式簿記】
日付 | 勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|
令和6年○○月××日 | 旅費交通費 | 600円 | 電車賃 |
上記のとおり、複式簿記では「交通費として600円使用した」という原因と、その結果「現金が600円減った」というふたつの側面からお金の流れを記録します。
記帳内容の違い
単式簿記は、売上や経費の発生額のみに注目して集計する方法です。売上・仕入・給与・交通費・通信費などの各項目でかかった金額のみを記載する、いわばお小遣い帳のような記帳方法です。
一方の複式簿記は、売上や経費だけでなく、資産や負債などの情報も記帳します。「現金はどのように出入りしたのか」「売上の代金はいつ回収されたのか」「借入金はどの口座から返済されているのか」などの情報を把握できるため、保有する財産状態が明らかになります。
ただし、複式簿記を採用する場合、仕訳帳から手作業で各種帳簿へ取引内容を転記するとミスが発生しやすいため、通常は会計ソフトを使用します。会計ソフトに日々の取引内容を入力しておけば、決算書(貸借対照表・損益計算書)をスムーズに作成できます。
確定申告が超ラクちんに!
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!口座とのデータ連携によって転記作業も不要になり、入力ミスも大幅に削減します。freee会計で自分でできる確定申告を!
確定申告が超ラクちんに!日常の経理を効率化!
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!口座とのデータ連携によって転記作業も不要になり、入力ミスも大幅に削減します。
青色申告と白色申告の違い
個人事業主は、事業で得た所得を青色申告または白色申告のいずれかの方法で確定申告します。
青色申告は、複式簿記で記帳するなどの一定の条件を満たすことで、白色申告と比べて高い節税効果を得られる申告方法です。
以下は、青色申告した場合に受けられる税制上の優遇措置です。
青色申告の税制上の優遇措置
- 最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
- 青色事業専従者給与を必要経費として計上できる
- 貸倒引当金を計上できる
- 純損失の繰越し・繰戻しが可能
- 少額減価償却資産の特例を使える
ただし、青色申告を採択するのであれば、事前に青色申告承認申請書を税務署に提出しなければいけません。
一方の白色申告は、記帳方法が単式簿記でよいことや、提出書類が少ないことから、青色申告よりも手間をかけずに申告が行えるというメリットがあります。ただし、税制上の優遇措置がなく、青色申告と比べて節税効果が期待できない点がデメリットです。
なお、白色申告の場合でも記帳は義務であり、省略は認められません。
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
【関連記事】
青色申告と白色申告の6つの違いを解説!それぞれのメリットとデメリットも紹介
青色申告と白色申告で異なる帳簿の種類や付け方
青色申告と白色申告では、下表に示すように、作成すべき帳簿の種類や帳簿の付け方が異なります。
確定申告の方法 | 作成・保存するべき帳簿・書類 | 記帳方法 |
---|---|---|
青色申告(55万円または65万円の控除) | 主要簿(仕訳帳・総勘定元帳) | 複式簿記 |
補助簿(現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳など) | ||
決算関係書類(貸借対照表・損益計算書・棚卸表) | ||
現金預金取引等関係書類(領収証・預金通帳・借用証など) | ||
上記以外の書類(請求書・見積書・契約書・納品書・送り状など) | ||
青色申告(10万円の控除) | 補助簿(現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳など) | 単式簿記 |
決算関係書類(損益計算書・棚卸表) | ||
現金預金取引等関係書類(領収証・預金通帳・借用証など) | ||
上記以外の書類(請求書・見積書・契約書・納品書・送り状など) | ||
白色申告 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 単式簿記 |
上記以外の帳簿(任意帳簿) | ||
決算関係書類(棚卸表など) | ||
業務に関連して作成・受領した書類(請求書・納品書・送り状・領収書など) |
出典:国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
出典:国税庁「帳簿の記帳のしかた−事業所得者用−」
青色申告の場合は、受けられる控除額によって、作成・提出するべき書類に違いがあります。
55万円または65万円の青色申告特別控除を受けるためには、貸借対照表と損益計算書を作成・提出しなければいけません。そのほか、主要簿(仕訳帳および総勘定元帳)および補助簿(現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳など)の作成・保存が必要です。帳簿付けは複式簿記で行います。
10万円の青色申告特別控除であれば、補助簿を作成・保存し、単式簿記で記帳することで受けられます。
青色申告特別控除について詳しく知りたい方は、別記事「青色申告特別控除とは?控除を受ける条件と節税効果について解説」をご覧ください。
白色申告では、もともと帳簿付けが義務ではありませんでしたが、2014年の法改正により、「収支内訳書」の提出が必要とされました。収支内訳書とは、1年間の収入・経費の内訳や減価償却に関する事項などを記入し、所得を計算する書類です。
帳簿書類の保存期間の違い
帳簿書類は作成するだけでなく、一定期間の保存も義務付けられています。青色申告なのか白色申告なのかによって、保存するべき帳簿の種類や保存期間が異なります。
紛失・盗難・汚損を防ぐために、保管時は鍵をかけられるキャビネットなどを利用し厳重に管理しましょう。
保存義務に違反した場合の罰則規定はありません。ただし、税務署から申告に関して問い合わせを受けた場合、帳簿や書類などの証拠資料の保存によって、申告内容の正当性を主張できます。
青色申告の帳簿書類の保存機関
青色申告での各帳簿・書類の保存期間を下表にまとめました。種類ごとの保存期間が異なるため、全帳簿・全書類を7年間保存しておけば安心です。
保存が必要な帳簿や書類 | 保存期間 | ||
---|---|---|---|
帳簿 | 仕訳帳 総勘定元帳 現金出納帳 売掛帳 買掛帳 経費帳 固定資産台帳など | 7年 | |
書類 | 決算関係書類 | 損益計算書 貸借対照表 棚卸表など | 7年 |
現金預金取引等関係書類 | 領収証 小切手控 預金通帳 借用証など | 7年 ※前々年分所得が300万円以下であれば5年 | |
そのほかの書類 | 取引に関して作成または受領した上記以外の書類 (請求書・見積書・契約書・納品書・送り状など) | 5年 |
白色申告の帳簿書類の保存機関
白色申告での各帳簿・書類の保存期間は以下のとおりです。法定帳簿のみ、7年の保存が義務付けられています。
保存が必要な帳簿や書類 | 保存期間 | |
---|---|---|
帳簿 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 |
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) | 5年 | |
書類 | 決算に関して作成した棚卸表や、そのほかの書類 | 5年 |
業務に関して作成(または受領)した請求書・納品書・送り状・領収書などの書類 | 5年 |
帳簿の電子保存
電子帳簿保存法の規定により、会計ソフトウェアなどで作成した帳簿は、紙に印刷するのではなく、電子データのまま保存することも可能です。
電子帳簿保存法とは、帳簿や書類を電子データとして保存する場合のルールを定めた法律です。電子帳簿保存法では、帳簿書類の電子保存に関する規定を以下の3つに区分します。
区分 | 内容 |
---|---|
帳簿等保存 | 会計ソフトウェアなどで作成した帳簿・書類を印刷せずに電子データのままでも保存できる |
スキャナ保存 | 紙で受領した書類(領収書など)を一定の要件を満たすスキャナでスキャンしたり、カメラで撮影したりして保存することが可能 |
電子取引データ保存 | 電子データ(PDF形式のファイルなど)で受領した書類は、紙に印刷して保存することは認められず、電子データのまま保存しなければいけない |
青色申告で最大65万円の控除を受けるには、55万円の控除要件に加え、e-Taxによる電子申告をするか、要件を満たすシステムで帳簿を電子的に作成・保存しなければなりません。
データで受け取った書類の保存方法
電子帳簿保存法では、電子データとして送受信(ダウンロード)した書類については、電子データのまま保存しなければならないと定められています。これは上記の区分のうち「電子取引データ保存」に該当し、具体的には、以下のようなケースが該当します。
領収書を電子データとして送受信するケース
- メールにPDFファイルとして請求書を添付した
- 通販サイトからPDFファイルとして領収書をダウンロードした
ただし、紙でやり取りした書類は「電子取引データ保存」に該当せず、紙のまま保存することも容認されています。
電子帳簿保存法への対応方法を詳しく知りたい方は、別記事「【2024年最新】電子帳簿保存法への対応方法をわかりやすく図解」をご覧ください。
帳簿を作成・保存しなかった場合のペナルティ
帳簿を適切に作成・保存しなかった場合、以下に示すペナルティの対象となることがあります。
帳簿を作成・保存しなかった場合のペナルティ
- 青色申告の承認を取り消される
- 過少申告加算税や無申告加算税が加重される
帳簿を作成し、定められた期間(5年または7年)が過ぎるまで保存しなかった場合、青色申告の承認が取り消される可能性があります。紛失・盗難・汚損を避けながら、期限が到来するまで保存しましょう。
また、2022年度の税制改正で、帳簿の不保存や記載不備を未然に抑止するために、過少申告加算税・無申告加算税の加重措置が導入されました。
具体的には、売上に関する帳簿を保存していないことや、売上に関する記載が不十分であることが税務調査で把握された場合、下表に示す加重措置が適用されます。
帳簿を提示しなかった場合 | 過少申告加算税・無申告加算税の割合が10%加重 |
---|---|
帳簿に記載した売上⾦額などが、本来記載するべき⾦額の2分の1未満である場合 | 過少申告加算税・無申告加算税の割合が10%加重 |
帳簿に記載した売上⾦額などが、本来記載するべき⾦額の3分の2未満である場合 | 過少申告加算税・無申告加算税の割合が5%加重 |
加重措置は、2023年分の確定申告に対する修正申告から適用対象となります。
まとめ
個人事業主であっても、法律上、帳簿の作成・保存が義務付けられており、帳簿の内容に基づいて確定申告する必要があります。
青色申告を採択する場合は、必要な帳簿書類を適切に作成・保存して複式簿記で記帳し、期限内に正しい申告と納税を行うことで大きな節税効果が期待できます。一方で、帳簿を作成・保存しなかった場合、青色申告の承認が取り消されたり、加算税を課されたりといったペナルティを受ける可能性があります。
作成した帳簿は、確定申告だけでなく、経営判断の場面でも有用な資料として活用できます。個人事業主であっても、会計ソフトの活用や専門家の力を借りるなどしながら、日々適切な帳簿付けをしましょう。
確定申告を簡単に終わらせる方法
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
確定申告書を作成する方法は手書きのほかにも、国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用するなどさまざまですが、会計知識がないと記入内容に悩む場面も出てくるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、確定申告ソフト「freee会計」の活用です。
freee会計は、〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポートします。必要な計算は自動で行ってくれるため、計算ミスや入力ミスを軽減できます。
ここからは、freee会計を利用するメリットについて紹介します。
1.銀行口座やクレジットカードは同期して自動入力が可能!
1年分の経費の入力は時間がかかる作業のひとつです。freee会計に銀行口座やクレジットカードを同期すると、利用した内容が自動で入力されます。
また、freee会計は日付や金額だけでなく、勘定科目も予測して入力します。
溜め込んだ経費も自動入力でカンタン!
2.現金取引の入力もカンタン!
freee会計は、現金での支払いも「いつ」「どこで」「何に使ったか」を家計簿感覚で入力できるので、毎日手軽に帳簿づけが可能です。自動的に複式簿記の形に変換してくれるため、初心者の方でも安心できます。
さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになります。オプションサービスに申し込めば、電話での質問も可能です。
freee会計の価格・プランについて確認したい方はこちらをご覧ください。
3.〇✕形式の質問に答えると、各種控除や所得税の金額を自動で算出できる!
各種保険やふるさと納税、住宅ローンなどを利用している場合は控除の対象となり、確定申告することで節税につながる場合があります。控除の種類によって控除額や計算方法、条件は異なるため、事前に調べなければなりません。
freee会計なら、質問に答えることで控除額を自動で算出できるので、自身で調べたり、計算したりする手間も省略できます。
4.確定申告書を自動作成!
freee会計は取引内容や質問の回答をもとに確定申告書を自動で作成できます。自動作成した確定申告書に抜け漏れがないことを確認したら、税務署へ郵送もしくは電子申告などで提出して、納税をすれば確定申告は完了です。
また、freee会計はe-tax(電子申告)にも対応しています。e-taxからの申告は24時間可能で、税務署へ行く必要もありません。青色申告であれば控除額が10万円分上乗せされるので、節税効果がさらに高くなります。
e-tax(電子申告)を検討されている方はこちらをご覧ください。
完成した確定申告書を提出・納税して確定申告が完了!
freee会計を使うとどれくらいお得?
freee会計には、会計初心者の方からも「本当に簡単に終わった!」というたくさんの声をいただいています。
税理士などの専門家に代行依頼をすると、確定申告書類の作成に5万円〜10万円程度かかってしまいます。freee会計なら月額980円(※年払いで契約した場合)から利用でき、自分でも簡単に確定申告書の作成・提出までを完了できます。
余裕をもって確定申告を迎えるためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。
よくある質問
青色申告の場合に必要となる帳簿は?
青色申告特別控除を65万円(または55万円)受けるためには、仕訳帳や総勘定元帳などの主要簿と、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳などの補助簿が必要です。
詳しくは記事内、「青色申告と白色申告で異なる帳簿の種類や付け方」ご覧ください。
個人事業主の帳簿のつけ方は?
帳簿の記帳方法には、単式簿記(簡易簿記)と複式簿記の2種類があります。単式簿記は取引の内容と収支のみを記録し、複式簿記はひとつの取引に関して、借方・貸方のふたつの側面(お金の入出金と、その原因)から取引内容を記録します。
詳しくは記事内、「帳簿の付け方の基本」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。