青色申告の基礎知識

10万円ちょっとの医療費で控除を受けるのは意味ない?金額をシミュレーション

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

10万円ちょっとの医療費で控除を受けるのは意味ない?金額をシミュレーション

会社員が年間10万円を少し超える医療費となった場合は、医療費控除を受けるべきか判断が難しい場合があります。医療費控除は、保険金の受け取りを除いて年間10万円以上の医療費を支払ったときに、その金額に応じて所得税や住民税の控除が受けられるものです。

会社員も医療費控除を受けるときは確定申告が必要ですが、その手間を考えると、少額の場合は控除を受けるべきかどうかは判断が難しいところです。

本記事では、10万円ちょっとの医療費で控除を受けるのは意味があるのかについて、具体的な金額の例を示しながら解説します。

2025年提出(令和6年分)の確定申告アップデート情報

所得税の確定申告期間:2025年2月17日(月)〜2025年3月17日(月)
消費税の確定申告期間:2025年1月1日(水)〜2025年3月31日(月)
※ 贈与税の申告・納税期間:2025年2月3日(月)〜2025年3月17日(月)

<2025年(令和6年分)の確定申告のポイント>

  1. マイナンバーカードをスマホで読み取らなくても、スマホ用電子証明書の利用で申告書の作成・e-Tax送信が可能になります。
  2. マイナポータルと連携すると、所得税確定申告の手続において、マイナポータル経由で控除証明書等のデータを一括で取得し、確定申告書の該当項目へ自動入力できます。

詳しくは国税庁ホームページ「令和6年分 確定申告特集」をご参照ください。

目次

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医療費控除とは

医療費控除は所得控除のひとつで、1年間に10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等×5%)以上の医療費を支払った人が、その金額に応じて税金の一部を免除してもらうことができるものです。

保険金の受け取りがある場合は、10万円を超える医療費から保険金の受取額を差し引いた金額が対象となります。

医療費控除は年末調整ができないため、会社員が医療費控除を受ける場合には確定申告が必要です。確定申告で医療費控除を適用することで、払いすぎた金額分の所得税の還付が受けられます。


出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

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医療費控除とは?対象となる費用や申請方法について解説

医療費控除の対象となるもの・ならないもの

医療費控除は、自分だけでなく生計を一にする家族や親族にかかった医療費も対象となります。

生計を一にしている家族であれば、家を出た子どもにかかった医療費も合算できますし、確定申告さえ行えば、給与所得者、事業所得者(自営業者)など、働き方の違いにかかわらず、すべての人が控除を受けられます。

ただし、病院で支払った医療費が、すべて医療費控除の対象になるわけではありません。医療費によっては、医療費控除の対象外のものもありますので注意が必要です。

医療費控除の対象となる主な費用、対象とならない主な費用をまとめると次の通りです。

種類内容
医療費控除の対象と
なる主な費用
・医療機関での医師・歯科医師による診療や治療にかかった医療費
・処方された薬代
・出産費用や定期健診などの費用、通院費
・入院費
・あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、はり師、きゅう師の施術に支払った費用
・医療機関で診療を受けるための通院費
・市販の風邪薬などの購入費用
・子どもの不正咬合のために必要とされた歯列矯正費
・子どもの通院に付き添う場合の交通費
・介護保険制度のサービスを受けた場合の自己負担額
・介護老人保健施設や指定介護老人福祉施設などへ入るための介添人の交通費
・保健師・看護師・准看護師あるいは、家政婦などに病人の付き添いを依頼した場合の費用
医療費控除の対象と
ならない主な費用
・人間ドックやその他の健康診断費用(病気が発見されれば医療費控除の対象になる)
・予防接種にかかった費用
・ビタミン剤やサプリメント類の購入費用
・容姿を美しくするための歯列矯正費用
・美容整形の費用
・入院中の子どもの世話のために病院へ通う際の交通費
・自家用車での通院にかかるガソリン代や駐車場料金

セルフメディケーション税制

医療費控除には、特例として「セルフメディケーション税制」という制度が設けられています。

セルフメディケーション税制とは、健康の維持・増進及び病気の予防への取り組みとして導入されたもので、「スイッチOTC医薬品」(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した場合、購入費用について所得控除が受けられるというものです。

2026年12月31日までの間に一定の健診や予防接種などを受けている場合、1年の購入額が12,000円を超えた分だけ所得控除が受けられます(限度額は88,000円)。


出典:厚生労働省「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について」

医療費控除の計算方法

医療費控除の対象になるのは、支払った医療費すべてではなく「一定金額を超えた分」のみとなります。 また、医療費控除の対象額の計算式は、年間の総所得金額等が200万円以上か未満かで異なります

医療費控除額=1年間に支払った医療費-保険金などで補填される金額-10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等×5%)

このうち、「保険金などで補填される金額」とは、民間の医療保険や共済などから支払われる入院給付金や通院給付金、高額療養費などのことです。

また、交通事故の相手方から支払われた、医療費を補うための損害賠償金も含まれます。

なお、出産育児一時金として受け取った額などもこれにあたりますが、出産手当金は医療費の補填にはあたらないため、医療費控除で差し引くことはありません。


出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

10万円ちょっとの医療費で控除を受けるのは意味ない?

結論、年間10万円ちょっとの医療費を支払った場合でも、医療費控除の適用は検討してみる価値があります。

たとえば、医療費が年間11万円で保険金の受け取りがない場合、医療費控除の金額は11万円-10万円=1万円です。

医療費控除を受けると、所得税率が10%であれば1,000円、20%であれば2,000円、23%であれば2,300円、33%であれば3,300円分の所得税が還付されます。

また、翌年の住民税も所得割の部分を医療費控除で軽減することが可能です。医療費控除が1万円の場合、所得割の税率10%をかけた1,000円分の住民税が軽減されます。

【関連記事】
住民税の控除とは? 種類と控除金額を解説

医療費控除を利用するのに必要な手続き

確定申告書

出典:国税庁「申告書第一表・第二表【令和5年分以降用】」

医療費控除の制度を利用するには、個人事業主・給与所得者を問わず確定申告を行う必要があります。

青色申告者・白色申告者は、通常の確定申告の際に医療費控除に関する部分を記入して、確定申告書提出期限内に所轄の税務署に提出するだけで問題ありません。

勤務先が行う年末調整では医療費控除は適用できないため、給与所得者でも自分で確定申告を行う必要があります。

申告書類提出の際は、医療機関の領収書や交通費の明細などの添付が必要になりますので、こちらも普段から保管しておきましょう。

医療費控除のために必要な書類

医療費控除の確定申告のための必要な書類は、具体的には以下の4つです。

医療費控除の確定申告のための必要書類

  • 医療費控除の明細書
  • 確定申告書
  • 医療費通知書
  • 本人確認書類

医療費控除の明細書は税務署で入手するか、国税庁「医療費控除の明細書【内訳書】」のページからダウンロードできます。

確定申告書も税務署で入手するか、国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」のページからダウンロードできます。

医療費通知書は、自身が加入している健康保険組合から送られてくる書類です。医療保険者などから交付を受けた医療費通知を添付することで、明細書の記入を省略することもできます。


出典:国税庁「医療費控除を受けられる方へ」

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医療費控除の申請方法とは?確定申告時の必要書類や計算のやり方を分かりやすく解説

医療費控除の明細書の書き方

医療費控除の明細書
出典:国税庁「医療費控除の明細書【内訳書】」

医療費控除の明細書には、大きく以下の3つの事項を記載します。

医療費控除の明細書に記載すること

  1. 医療費通知に関する事項
  2. 医療費(1以外)の明細
  3. 控除額の計算

「医療費通知に関する事項」は、以下の内容を記入します。

医療費通知に関する事項に記入する内容

  1. 自身が負担した医療費の合計額を記入。通知が複数ある場合はすべての合計額
  2. 1のうち、その年に実際に支払った医療費の合計額を記入
  3. 生命保険契約、損害保険契約、健康保険契約などで受け取った保険金や給付金を記入

「医療費(1以外)の明細」は、自身や配偶者、その他親族のために支払った医療費について、領収書から必要事項を記入します。

「控除額の計算」の項目では、医療費通知に関する事項、医療費の明細で記載した合計額をもとに控除額を計算します。記載に沿って計算をすることで、医療費控除額の算出が可能です。

【関連記事】
医療費控除の申請方法とは?確定申告時の必要書類や計算のやり方を分かりやすく解説

まとめ

年間11万円の医療費でも医療費控除を受けると、所得税率が20%であれば2,000円、23%であれば2,300円です。33%であれば3,300円分の所得税が還付されます。また、住民税の所得割も1,000円分の負担を軽減することが可能です。

会社員の場合、医療費控除を受けるためには確定申告が必要になり、そのための手間がかかりますが、確定申告ソフトを使うなど工夫をして申告をすると時間と手間を削減できます。 特に会社員の場合は、医療費控除の金額を概算したうえで、確定申告の手間に見合うかどうかで医療費控除を受けるべきか判断していきましょう。

確定申告を簡単に終わらせる方法

確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。

確定申告書を作成する方法は手書きのほかにも、国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用するなどさまざまですが、会計知識がないと記入内容に悩む場面も出てくるでしょう。

そこでおすすめしたいのが、確定申告ソフト「freee会計」の活用です。

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よくある質問

医療費控除の対象になるものは?

たとえば、診療費や治療費、処方された薬代、出産費用や定期健診などの費用、通院費、入院費などが医療費控除の対象です。自分だけでなく生計をともにする家族や親族にかかった医療費も医療費控除の対象となります。

医療費控除の対象になるものについて詳しく知りたい方は「医療費控除の対象となるもの・ならないもの」をご覧ください。

11万円の医療費で控除を受けるのは意味ない?

年間11万円ほどの医療費でも医療費控除で数千円以上の節税になる場合があり、医療費控除を受けることを検討してみる価値はあります。

11万円の医療費で控除を受けるときの具体的な節税額を知りたい方は「10万円ちょっとの医療費で控除を受けるのは意味ない?」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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