監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

青色申告をする人は、条件を満たせば65万円・55万円・10万円の所得控除を受けられます。控除を受けるための必要書類を正しく把握して申請しましょう。
青色申告をすれば、控除以外にも、さまざまな特典を受けることが可能です。1年目から青色申告する場合は、開業届および青色申告承認申請書を税務署に提出しておきましょう。
本記事では、青色申告の必要書類を作成する方法や、確定申告の時期・提出先、書類の保存期間などを解説します。青色申告して各種特典を受けたい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
青色申告が超ラクちんに!
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!銀行口座やクレジットカード連携で入力作業を自動化し、確定申告にかかる時間や手間を大幅に削減します。freee会計で自分でできる確定申告を!
初めてでも分かりやすいfreee会計の青色申告
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!口座とのデータ連携によって転記作業も不要になり、入力ミスも大幅に削減します。
青色申告とは
青色申告とは、一定の帳簿を備え付け、日々の取引を記録し、その記録に基づいて所得金額や税額を計算して確定申告を行う制度です。
日本の納税制度の根幹をなすもので、白色申告に比べて手続きや記帳が複雑になる一方で、最大65万円の青色申告特別控除が受けられるなど、大きな節税効果を得られます。
青色申告には、すべての取引を借方と貸方に分けて記載する複式簿記と、現金出納帳や売上帳など、簡易的な帳簿を作成する簡易簿記の2種類があります。
なお、青色申告を行うには、事前に税務署に申請が必要です。
【2024年度の確定申告は2025年2月17日(月)〜3月17日(月)まで!】
青色申告の特典
「青色申告承認申請書」に必要事項を記入して税務署に提出し、青色申告で確定申告すれば、以下に示す特典(税税上の優遇措置)を受けられます。
青色申告の特典
- 青色申告特別控除を受けられる
- 青色事業専従者給与を必要経費に算入できる
- 貸倒引当金を必要経費として計上できる
- 純損失の繰越し・繰戻しが可能
青色申告特別控除とは、所定の条件を満たした場合に65万円・55万円・10万円の所得控除を受けられる特典です。
青色事業専従者給与とは、青色申告者の事業に専従している配偶者や親族(申告者と同一生計、かつ、15歳以上)に支払った給与です。事前に提出する届出書に記載された金額の範囲内、かつ、労務の対価として適正な金額であれば、必要経費に算入できます。
貸倒引当金を必要経費として計上することも可能です。原則として、売掛金などの貸倒れによる損失の見込額として、年末の貸金の帳簿価額を合計した金額の5.5%以下を計上できます(一括評価)。なお、金融業の場合は 3.3%とされることはご留意ください。
一定の事由による損失の見込額に関しては、それぞれの事由に応じた限度額までを貸倒引当金勘定に繰り入れることが可能です(個別評価)。その場合は、一括評価を実施する帳簿価額の合計額から除外されます。
そのほか、損益通算しても控除しきれない純損失がある場合は、損失額を翌年以後3年間繰越して各年分の所得金額から控除できます。前年も青色申告している人は、純損失の繰越しに代えて、損失額を前年分の所得金額に繰戻して控除し、所得税額の還付を受けることも可能です。
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
青色申告では65万円・55万円・10万円の控除を受けられる
青色申告では、条件を満たすことで65万円・55万円・10万円の青色申告特別控除を受けられます。白色申告に比べて、記帳や電子申告への対応が必要になるなどの手間がかかるものの、その分大きな節税効果を期待できます。
以下で、各金額の控除を受けるための条件を紹介します。
65万円の青色申告特別控除
65万円の青色申告特別控除を受けるためには、以下の要件を満たさなければいけません。
65万円の控除を受けるための条件
- 複式簿記で記帳する
- 青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)を作成して確定申告書に添付する
- 電子帳簿保存を実施するか、e-Taxで電子申告する
- 現金主義による所得計算の特例を選択していない
電子帳簿保存とは、仕訳帳・総勘定元帳を電子データで作成・保存することです。なお、国税庁公式サイトに掲載されている「優良な電子帳簿の要件」を満たす必要があります。
現金主義による所得計算の特例とは、現金を出し入れしたタイミングで売上や経費を計上できる特例です。前々年分の事業所得・不動産所得の合計額が300万円以下で、事前に届出書を税務署に提出した場合に認められます。
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
出典:国税庁「優良な電子帳簿の要件」
出典:国税庁「A1-13 現金主義による所得計算の特例を受けるための手続」
55万円の青色申告特別控除
55万円の青色申告特別控除を受けるためには、以下に示す要件を満たす必要があります。
55万円の控除を受けるための条件
- 複式簿記で記帳する
- 青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)を作成して確定申告書に添付する
- 現金主義による所得計算の特例を選択していない
65万円の控除を受ける場合とは異なり、優良な電子帳簿の保存を実施したり、e-Taxで確定申告したりする必要はありません。
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
10万円の青色申告特別控除
以下に示すケースでは、65万円・55万円の青色申告特別控除を受けられる要件を満たさないため、控除額は10万円となります。
65万円・55万円の控除を受けられないケース
- 単式簿記で記帳している
- 貸借対照表を作成・添付していない
- 現金主義による所得計算の特例を選択している
単式簿記であっても記帳を実施したうえで損益計算書を作成し、確定申告書に添付して提出すれば、10万円の控除を受けることは可能です。
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
青色申告の必要書類
事業を営む人が青色申告する場合は、確定申告の際に、以下の書類を税務署に提出しなければいけません。
青色申告の必要書類
- 確定申告書
- 青色申告決算書
各種控除を受ける人は、以下書類の提出または提示も必要です。
各種控除を受ける場合の必要書類
- 医療費控除を受ける場合:医療費控除の明細書またはセルフメディケーション税制の明細書
- 社会保険料控除を受ける場合:保険料または掛金の金額を証する書類
- 生命保険料控除を受ける場合:支払金額や控除を受けられることを証明する書類
- 地震保険料控除を受ける場合:支払金額や控除を受けられることを証明する書類
- 寄附金控除を受ける場合:寄附した団体から交付を受けた寄附金の受領証(領収書)など
- 住宅ローン控除を受ける場合:「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」など
出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
出典:国税庁「No.1130 社会保険料控除」
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除」
出典:国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」
出典:国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
書類を添付する場合は、添付書類台紙などに貼って申告書と一緒に提出しましょう。
下表の帳簿・書類に関しては、税務署への提出が不要なものもありますが、ご自身の手元で保存しておかなければいけません(保存期間は後述)。
種類 | 具体例 | 税務署への提出 |
---|---|---|
帳簿 | 仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳など | 不要 |
決算関係書類 | 貸借対照表・損益計算書・棚卸表など | 65万円・55万円の控除を受ける場合は、貸借対照表・損益計算書の提出が必要(10万円の控除を受ける場合は、損益計算書の提出が必要) |
現金預金取引等関係書類 | 領収証・小切手控・預金通帳・借用証など | 不要 |
上記以外の書類 | 請求書・見積書・契約書・納品書・送り状など、取引に関連して作成・受領した書類 | 不要 |
なお、請求書・領収書などを電子データでやりとりした場合は、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存する必要があります。
出典:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
必要書類の作成方法
確定申告書の作成に先だって、青色申告決算書を作成しておくことが必要です。 会計ソフトウェアで日々の取引を記録すれば、自動的に青色申告決算書(もしくは、その元資料として用いられる試算表)を作成できます。
確定申告書は、以下の流れで作成しましょう。
確定申告書の作成方法
- 「収入金額」から「収入から差し引かれる金額」を差し引いて、「所得金額」を求める
- 「所得金額」から「所得から差し引かれる金額」を差し引いて、「課税される所得金額」を求める
- 「課税される所得金額」に「所得税の税率」を乗じて、「所得税額」を求める
- 「所得税額」から「所得税額から差し引かれる金額」を差し引いて、「所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の所得税額」を求める
- 「所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の所得税額」が「基準所得税額」とされ、基準所得税額に2.1%を乗じて「復興特別所得税額」を求める
- 「所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の所得税額」と「復興特別所得税額」を合計する
- 合計金額から「所得税及び復興特別所得税の額から差し引かれる金額」を差し引いて、「所得税及び復興特別所得税の申告納税額」を求める
「所得税及び復興特別所得税の申告納税額」が生じていれば税金を納める必要があり、過払いとなっていれば還付金を受けとることが可能です。
【関連記事】
【2024年最新】確定申告の必要書類・添付書類、準備するものをケース別にわかりやすく解説
確定申告の時期と提出先
確定申告する時期は、翌年2月16日から3月15日までの1ヶ月間です。確定申告する義務がある人は、この期間中に税務署に確定申告書などを提出しなければいけません。
所得税の確定申告書は、提出時の納税地を所轄する税務署長に提出します。納税地とは通常は住所地です。つまり、国内に住所がある人は、その住所地が納税地とされます。
なお、以下に示すように、住所地以外の場所を納税地にできる特例(納税地の特例)があります。
納税地の特例
- 国内に住所のほかに居所がある人は、住所地に代えて居所地を納税地にできる
- 国内に住所・居所のいずれかがあり、かつ、事業所などがある人は、住所地・居所地に代えて、事業所などの所在地を納税地にできる
納税地の特例を受けたい人は、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」に必要事項を記入しましょう。そのうえで、本来の納税地を所轄する税務署長と、特例により納税地とする場所を所轄する税務署長の両方に提出してください。
紙の確定申告書を持参または郵送で提出する方法以外に、e-Taxで電子申告することも可能です。e-Taxとは、インターネットを介して、国税に関する各種手続きを電子的に実施できるシステムです。自宅から確定申告できるため、税務署や郵便局に足を運ぶ必要がありません。
【関連記事】
e-Tax(電子申告)で確定申告をするには?利用方法やメリット・デメリットについて解説
出典:国税庁「e-Taxの概要・利用全般」
青色申告した場合の必要書類を保存する期間
青色申告者は、下表に示す保存期間が満了するまで、帳簿や書類を保存しておかなければいけません。
税務署から申告について調査があった際に定められた保存期間の帳簿や書類がなかった場合、申告内容の正当性を主張できません。
場合によっては、懲罰的な意味の税金(加算税)も追加で納付しなければならない可能性もあるので、必ず保存するようにしましょう。
【青色申告に必要な帳簿種類の保存期間】
種類 | 保存期間 |
---|---|
帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳など) | 7年 |
決算関係書類(貸借対照表・損益計算書・棚卸表など) | 7年 |
現金預金取引等関係書類(領収証・小切手控・預金通帳・借用証など) | 7年(前々年分の事業所得・不動産所得金額が300万円以下の場合は5年) |
上記以外の書類(請求書・見積書・契約書・納品書・送り状など、取引に関連して作成・受領した書類) | 5年 |
保存期間は、帳簿に関しては、翌年3月15日の翌日から7年間です。書類に関しては、作成日または受領日が属する年の翌年3月15日の翌日から7年間または5年間とされています。
保存が必要な帳簿や書類は、紙ではなく、電子データでの保存を導入すれば保管スペースを取られることがないので便利です。また、業務負担の軽減や効率化を図ることができます。
出典:国税庁「帳簿の記帳のしかた −事業所得者用−」
まとめ
青色申告とは、条件を満たす(取引内容を記帳し、帳簿に基づいて所得や税額を正しく計算・申告する)ことで、税制上の特典を受けられる制度です。
青色申告特別控除額は、65万円・55万円・10万円の3種類があります。65万円の控除を受けるためには「複式簿記で記帳する」「e-Taxで申告する」などの要件を満たす必要があります。
青色申告する人は、確定申告書と青色申告決算書を提出しなくてはなりません。また、帳簿や決算関係書類をまとめて、保存期間が満了するまで保存する義務があります。
必要書類を把握して漏れがないように準備し、申告後は紛失しないように大切に保存しておきましょう。
青色申告が超ラクちんに!
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!銀行口座やクレジットカード連携で入力作業を自動化し、確定申告にかかる時間や手間を大幅に削減します。freee会計で自分でできる確定申告を!
初めてでも分かりやすいfreee会計の青色申告
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!口座とのデータ連携によって転記作業も不要になり、入力ミスも大幅に削減します。
確定申告をかんたんに終わらせる方法
確定申告の期間は1ヶ月です。それまでに正確な内容の書類を作成し、申告・納税しなければいけません。
ほかにも、青色申告の場合に受けられる特別控除で、最大65万円を適用するためにはe-Taxの利用が必須条件であり、はじめての人には難しい場面が増えることが予想されます。
そこでおすすめしたいのが、確定申告ソフト「freee会計」の活用です。
freee会計は、〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポートします。また、所得額や控除額の計算は自動で行ってくれるため、計算・入力ミスの削減できるでしょう。
ここからは、freee会計を利用するメリットについて紹介します。
1.銀行口座やクレジットカードは同期して自動入力が可能!
確定申告を行うためには、1年間のお金にまつわる取引を正しく記帳しなければなりません。自身で1つずつ手作業で記録していくには手間がかかります。
freee会計では、銀行口座やクレジットカードの同期が可能で、利用した内容が自動で入力されていきます。
日付や金額を自動入力するだけでなく、勘定科目も予測して入力してくれるため、日々の記帳がほぼ自動化でき、工数削減につながります。

2.現金取引の入力もカンタン!
会計ソフトでも現金取引の場合は自身で入力し、登録しなければなりません。
freee会計は、現金での支払いも「いつ」「どこで」「何に使ったか」を家計簿感覚で入力できるので、毎日手軽に帳簿付けが可能です。
自動的に複式簿記の形に変換してくれるため、会計処理の経験がない人でも正確に記帳ができます。

さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになるので、わからないことがあったらすぐに相談できます。また、オプションサービスには電話相談もあるので、直接相談できるのもメリットの1つです。
freee会計の価格・プランについてはこちらをご覧ください。
3.〇✕形式の質問に答えるだけで各種控除や所得税の金額を自動で算出できる!
各種保険やふるさと納税、住宅ローンなどを利用している場合は控除の対象となり、確定申告することで節税につながる場合があります。控除の種類によって控除額や計算方法、条件は異なるため、事前に調べなければなりません。
freee会計なら、質問に答えることで控除額を自動で算出できるので、自身で調べたり、計算したりする手間も省略できます。

4.確定申告書を自動作成!
freee会計は取引内容や質問の回答をもとに確定申告書を自動で作成できます。自動作成した確定申告書に抜け漏れがないことを確認したら、税務署へ郵送もしくは電子申告などで提出して、納税をすれば確定申告は完了です。
また、freee会計はe-Tax(電子申告)にも対応しています。e-Taxからの申告は24時間可能で、税務署へ行く必要もありません。青色申告であれば控除額が10万円分上乗せされるので、節税効果がさらに高くなります。
e-Tax(電子申告)を検討されている方はこちらをご覧ください。

freee会計を使うとどれくらいお得?
freee会計には、会計初心者の方からも「本当に簡単に終わった!」というたくさんの声をいただいています。
税理士などの専門家に代行依頼をすると、確定申告書類の作成に5万円〜10万円程度かかってしまいます。freee会計なら月額980円(※年払いで契約した場合)から利用でき、自分でも簡単に確定申告書の作成・提出までを完了できます。
余裕をもって確定申告を迎えるためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。
よくある質問
青色申告する場合の必要書類は?
青色申告で確定申告する場合は、帳簿などの内容に基づいて以下の書類を作成し、期限までに税務署に提出しましょう。
青色申告の必要書類
- 確定申告書
- 青色申告決算書
各種帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)は、ご自身の手元で保存する義務はありますが、税務署に提出する必要はありません。
詳しくは「青色申告の必要書類」をご覧ください。
青色申告した場合の必要書類は何年間保存しなければいけない?
青色申告した場合の必要書類は、以下に示す期間、保存しなればいけません。
必要書類の保存期間
- 帳簿:7年
- 決算関係書類:7年
- 現金預金取引等関係書類:7年(前々年分の事業所得および不動産所得の金額が300万円以下の場合は5年)
- 上記以外の書類:5年
保存期間が満了するまで、紛失したり、汚れたりしないように保存しておきましょう。
詳しくは「青色申告した場合の必要書類を保存する期間」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
