会計の基礎知識

使途不明金とは?処理上の注意点や発生を防ぐ対処法を解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

使途不明金とは?処理上の注意点や発生を防ぐ対処法を解説

使途不明金とは、支出の目的が明らかではないお金のことです。不正や悪質な意図がない場合であっても、これに該当する場合は使途不明金とみなされます。

使途不明金は損金算入ができないことから、税負担が大きくなる可能性があります。悪質な隠蔽が疑われる場合は、さらなる重加算税が課されることもあるため要注意です。

本記事では、使途不明金の概要と注意点をはじめ、使途不明金を発生させない方法について解説します。

目次

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使途不明金とは

使途不明金とは、支出の目的が明らかでないお金のことです。たとえば、交際費の支出で、日付や相手、金額はわかっていても、具体的に何のために使われたお金なのかわからない場合は、使途不明金として扱われます。

使途不明金は、事業に必要な支出として会社が負担すべきか客観的な判断ができないため、税務上は損金として認められません。着服などの不正リスクが高いとみなされることもあります。

使途不明金は税務調査で指摘されやすい

使途不明金は、税務調査で発覚するケースが多いといわれます。税務調査は会社の業績が急激に伸長している時期や、会社に大きな変化が見られた場合に実施されることがあります。毎年行われるわけではなく、頻度としては数年に一度です。

税務調査では、帳簿の記載内容が適正かどうか確認されるほか、取引先の企業を調査して、内容に不正や虚偽がないかを確認する反面調査も行われることがあります。そのため、支出目的が明確ではない使途不明金が指摘されやすくなります。

税務調査で指摘された支出について内容が立証できなければ、損金算入が認められません。使途不明金として処理する必要があります。

使途秘匿金との違い

使途不明金と似た言葉に「使途秘匿金」があります。使途秘匿金は、支出の金額、相手、目的の3点すべてが明らかではないお金のことです。使途不明金は支出目的がわからないお金のことなので、この2つは区別して使われます。

支出の金額、相手、目的と、情報のほとんどを残さない使途秘匿金は、意図的な所得隠しにつながっているケースがあり、使途不明金よりも違法性が高いと判断されます。支出に関する記録が一切ないことから、使途不明金と同様に、税務上の損金算入は認められません。 あとになって使途秘匿金が発覚した場合、支出金額の40%を追徴課税として納付する必要があります。これは、課税所得が赤字であっても免除されないため注意しましょう。

ただし、以下のケースに該当する場合は、使途秘匿金に含まれません。

使途秘匿金に該当しないケース

  • 受け取った人の氏名を伏せるべき正当な理由があり、資産の譲受やその他取引の対価の支出と明らかな場合
  • 相手方の氏名や名称の記載がないことが、相手方の氏名などを秘匿するためではないと認められる場合

使途不明金が生じやすい勘定科目

使途不明金が生じやすい勘定科目に「交際費」と「雑費」があります。それぞれの勘定科目について説明します。

交際費

交際費とは、取引先などに対する接待や贈答、慰安などを目的とした支出を仕訳する勘定科目です。たとえば、目的が明らかではない会食を行った飲食店の領収書だけが提出されている場合、その飲食代は使途不明金として扱われてしまいます。

税務上、法人が経費として扱える交際費には限りがあります。その額を超えると損金算入ができません。

たとえば、資本金の額が1億円以下の法人(平成26年以降に開始する事業年度)の場合、損金算入額は交際費等のうち800万円または、飲食費の50%と定められています。加えて、交際費のうち損金算入が認められるものには定めがあり、一人あたり10,000円以下の飲食代としての「接待交際費」などに区別されます。

国税庁の定めでは、次の5つの要件を満たしたときのみ、損金算入できる支出と認められます。

(1)飲食等のあった年月日
(2)飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
(3)飲食等に参加した者の数
(4)その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
(5)その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項

出典:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」

交際費は使途不明金にあたるかどうかにかかわらず、日頃の管理が重要な科目であると考えてください。

【関連記事】
勘定科目の基礎知識:交際費とは

雑費

雑費は、会社の事業活動のなかで支出が発生したものの、いずれの勘定科目にも当てはまらないケースや、一時的・臨時的な支出で金額も少なく、勘定科目を設定するまでもないケースに用いられる勘定科目です。

たとえば、機材などのレンタル料や事業所の引越し代金などが、雑費として計上されることがあります。

雑費は使い勝手がよい一方で、勘定科目上では支出の内容がわからないことから税務調査で疑われやすい科目です。そのため、支出を雑費として計上する場合は、あとから内容を証明できるかを十分に確認する必要があります。税務調査で指摘された場合、内容を説明できなければ使途不明金として扱われます。

また、雑費として計上している支出が多すぎると、税務調査で指摘されやすくなります。どうしても雑費として処理せざるを得ないのか、十分に検討することが大切です。

【関連記事】
雑費とはどのような勘定科目?消耗品費との違いや仕訳方法などを解説

使途不明金を処理する場合の注意点

使途不明金の処理にあたっては、その判断が不正の有無によらないこと、税負担を大きくする可能性があることに注意します。

不正がなくても使途不明金になる可能性がある

不正や意図的な隠蔽がなかったとしても、領収書を紛失したり、記録が残っていなかったりといった理由で、支出の目的がわからなくなるケースもあります。不正や意図的な隠蔽がない場合でも、支出目的がわからないものに関しては使途不明金として扱われる可能性は否定できません。

よくあるケースとして、担当者がうっかり領収書をなくしてしまった、誰との何の目的の交際費か忘れてしまったなどが挙げられます。担当者が故意に行ったものでなくとも、結果として使途不明金と指摘され、会社にデメリットが生じるリスクがあるため注意してください。

税負担が大きくなる可能性がある

前述のとおり、使途不明金は損金算入が認められません。全額が所得として課税対象です。

使途不明金の金額が大きければ、その分税負担が増えます。誤って損金算入して申告していた場合に否認されると、課税対象の所得金額が増え、過少申告加算税と延滞税が追徴課税されてしまいます。さらに悪質な隠蔽が疑われる場合は、さらなる重加算税が課される場合があります。

国税庁の定めでは、次のいずれかに該当する場合に不正事実とみなし、重加算税を行う場合があるとしています。

(1)帳簿書類の破棄、隠匿、改ざん等があること。
(2)取引の慣行、取引の形態等から勘案して通常その支出金の属する勘定科目として計上すべき勘定科目に計上されていないこと。

出典:国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」

不正や隠蔽を繰り返し行ったとみなされる場合(事業年度をまたいで不正がある場合)も重加算税が発生するため、注意しましょう。

使途不明金を発生させないための対処法

使途不明金を発生させないためには、領収書や請求書などの取引に関わる書類を紛失しないように管理することが重要です。

紙の書類をファイリングする方法はもちろん、書類を電子データとして保存する方法も、電子帳簿保存法に定められているスキャナ保存などの一定要件を満たすことで有効になります。万が一紙の書類を紛失してしまった場合でも、電子データで保存しておけば、紛失リスクの低減にもつながります。

また、経費を使用する頻度の高い人は、領収書の裏面に支出の詳細を記録する方法もおすすめです。時間が経過すると、いつ、誰と、何のために使った領収書かわからなくなる可能性があるため、都度記録するようにしましょう。

電子帳簿保存法に対応している会計システムを導入すれば、システム上で書類の管理ができるため経理業務の正確性と効率を高められます。使途不明金が多く発生している場合は、会計システムの導入も検討してみてください。

まとめ

支出の目的が明らかではない使途不明金は、悪質な意図の有無にかかわらず、税負担増や重加算税のリスクがあります。使途不明金を発生させないためには、普段から領収書や書類の管理を徹底することが必要です。

社内にルールを浸透させることで、使途不明金の発生防止につながります。万が一、使途不明金が発生した場合にも、税務調査で指摘されるより前に対処できるようになるでしょう。

そのほか、見落としを防ぐ業務フローの整備や、電子帳簿保存法に対応したデータ保存への移行などを検討してください。

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よくある質問

使途不明金とは?

使途不明金とは、支出の目的が明らかではないお金のことです。交際費や雑費などの支出で、日付や相手、金額はわかっていても、具体的に何のために使われたお金なのかわからない場合に、使途不明金とみなされます。

詳しくは記事内「使途不明金とは」で解説しています。

使途不明金がある場合の注意点は?

使途不明金がある場合、その判断が不正の有無によらないこと、税負担を大きくする可能性があることに注意してください。隠蔽など悪質な行為が認められる場合は、重加算税も課されるため注意が必要です。

詳しくは記事内「使途不明金を処理する場合の注意点」をご覧ください。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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