経理には、財務会計・管理会計と並んで重要な「税務会計」という分野があります。
この記事では税務会計の概要、また税務会計に大きく影響を与える平成29年度の税制改正の概要についても詳しく説明します。
目次
税務会計とは
税務会計とは、企業の課税されるべき所得額を算出するための会計です。
法人税法などの規定に従って行われる会計で、国および地方自治体が課税する税金を計算するうえで用います。
つまりは税額を決定するための会計であり、企業側としては「所得をできるだけ抑えておきたい」と考え、税務署側としては「費用をできるだけ計上させず、課税所得の額を大きくしたい」という、両者正反対の意識のある会計となります。
大企業では「税効果会計」を適用し、中小企業では税務会計を適用するのが一般的です。
税務会計は、正確には財務会計の一部となっています。
しかし財務会計と税務会計では目的が異なるため、収益や費用などを算出する時の規定は異なります。そのため、財務会計上の収益や費用の記載内容と税務会計上のそれとは必ずしも一致しないことになります。
財務会計・管理会計・税務会計の違い
税務会計と似た言葉である「財務会計・管理会計」との違いについて解説します。
「財務会計」とは、当該期の自社の経営成績を外部の利害関係者に対して開示するための会計を指します。外部の利害関係者には、投資家や株主、債権者や取引先などがあります。
開示される書類は、決算時に作成される財務諸表になります。財務諸表は銀行での融資申込みの際に提出されたり、投資家が企業の財務状態を客観的に把握し投資の是非を判断したりする目的で閲覧・分析する書類ともなります。
「管理会計」は、企業の内部でのみ用いられる会計情報になります。経営者や責任者が自社の現状を把握し、意思決定の材料としたり今後の経営戦略を策定したりするために用いられます。
原価計算やキャッシュフロー分析、経営分析や予算管理などが行われます。
管理会計によって得られる会計情報は、次のような分析をすることによってその真価を発揮することとなります。
- 長期的スパンで見た場合の自己資本比率、および固定長期適合率等の安全性についての分析
- 純利益や営業利益、経常利益など「収益性」の分析
- 労働分配率や労働「生産性」などの分析
- 売上高増加率や経常利益増加率など会社の発展度合いや「成長性」の分析
順調で健全な経営を続けるため、また問題点を早期に発見するためには、管理会計の情報をこのように細かく分析することが必要です。
このように、財務・管理・税務それぞれの明確な違いは用途にあります。
財務会計・・・経営状況を外部へ報告するための会計
管理会計・・・企業内部で閲覧・分析するための会計
税務会計・・・課税所得を計算するための会計
税務会計における留意点
ただでさえ必要な知識が多く処理が大変な税務会計ですが、毎年実施される税制改正にも遅れずに対応していかなくてはなりません。
目まぐるしく変化する改正内容をすべて把握しようとすることは非常に困難です。そのため、自社と関係のありそうな項目から理解するよう努めることができます。
ここで、平成29年後の税制改正において一般企業に深く関連があると思われるポイントを7つご紹介します。
1.所得拡大促進税制の見直し
企業の収益が増加することで、雇用が増えたり賃金が上がったりします。さらに消費や投資の増加につながるという好循環を生み出すべく、高い賃上げを行う企業には税額控除の割合を増やすなどの支援を行うという改正です。
2.法人税等の延長期限が拡大されることに
これまでは事業年度が終わった翌日から3か月以内に定時総会の招集が必要で、スケジュールの調整が非常に大変でした。
そこで、定時総会の開催日程に余裕を持たせられるように、改正が行われました。
具体的には、法人税などの確定申告期限の延長可能月数を1月から4月に拡大するという内容です。
これによって従来は5月末~6月末頃に集中していた株主総会が最長で9月末まで開催できるようになり、企業と株主・投資家との間で充実した対話が可能になると見込まれています。
3.中小企業向けの各租税特別措置の適用対象の限定
平均所得金額が年間15億円を超え、中小企業ではあっても財務状況が脆弱とは言えない法人に対して、一部の租税特別措置について適用除外の対象とするという改正です。
今回の改正で適用除外とされたのは「研究開発税制」「公害防止用設備の特別償却」「貸倒引当金の法定繰入率」の3項目です。これらは平成31年4月1日以後に開始する事業年度より適用となります。
他の租税特別措置についても、今後適用除外とされる可能性があるとされています。
4.組織再編税制関係の改正
組織再編を円滑に進めるためには、柔軟に対応できる税制度が求められます。
例えば、企業内で好調な特定事業を、別会社として独立させるいわゆる「スピンオフ」の場合です。
そこで当該改正によって、独立する別会社に対する次の点について課税の繰り延べが可能になりました。
- 独立する会社に対する譲渡損益
- 株主配当に対する課税
また、スクイーズアウトについても、一定の要件を満たす場合については、税制適格要件を満たせるよう調整がされました。
5.役員給与等の見直し
以前の役員給与に関しては、一定の期間ごとに同額を支給するケースの場合、不相当に高額な部分等を除いて損金として算入されていました。また日本では固定報酬が主流であり、業務実態に合わせてインセンティブを効かせるなどが困難でした。
今回の改正により、株式交付やパフォーマンスキャッシュなど、欧米先進諸国で採用されているような多種多様な報酬形態を利用できるようになりました。
6.国際課税関係の改正
今回の改正では、「外国子会社合算税制」が総合的に見直されています。
従来までは、外国子会社における税金負担の水準が度々問題となっていました。具体的には、経済実態があるにも関わらず所得が合算されなかったり、実体がないのに合算されたりと、不合理な部分がありました。
そこで、国際課税において租税回避に対して効果的に対応するため次のように改正が行われました。
経済実態がない受動的所得は合算対象とするものの、実体のある事業からの能動的所得であれば子会社に適用される税金の負担率に関係なく合算対象外とし、申告の必要もないとする改正がなされました。
この改正は外国関係会社に対し、平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
7.消費税増税時期の延長
当初は平成29年4月1日に予定されていた消費税率10%への引き上げ時期が、昨今の世界経済の混迷を鑑みた結果、平成31年10月1日に2年半延期されました。
これにより、区分記載請求書等保存方式に係る措置や適格請求書等保存方式に係る措置も見直しがなされています。地方法人税、法人住民税法人税割の税率改正の実施時期も2年半延期されていますので注意が必要です。
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まとめ
税務会計は、企業の課税対象の所得額を算出するために必要な会計です。
税務会計担当者には、財務会計と管理会計に関する知識と理解だけでなく、さらに高度な税知識や会計知識を有していること、および毎年の税制改正への柔軟な対応が求められます。