監修 税理士法人G&Sソリューションズ
売上高に対する利益の割合を示すものとして、「売上総利益率」「売上高営業利益率」「売上高経常利益率」「売上高当期純利益率」の4つがあります。
これらの利益率は、会社の経営成績を分析するうえで参照されるものです。
本記事では、利益率の種類別の計算方法から数値の目安、利益率の改善を図るためのポイントについて解説します。
目次
利益率とは
企業の経営成績を示す利益は「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「売上高当期純利益」の5つに分類されます。
このうち「税引前当期純利益」を除く4つの利益が売上高に対して占める割合のことを、それぞれ「売上総利益率」「営業利益率」「経常利益率」「売上高当期純利益率」といい、会社の収益力を見るための指標として活用されます。
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利益率の計算方法を種類別に解説
前述のとおり、会社の収益力を見るための指標である利益率には、以下の4つがあります。
利益率の5つの種類
- 売上総利益率
- 売上高営業利益率
- 売上高経常利益率
- 売上高当期純利益率
ここでは、それぞれの利益率の計算方法を解説します。
売上総利益率の出し方
売上総利益率は、売上高に占める売上総利益の割合で、粗利益率とも呼ばれます。売上総利益(粗利)は売上高から売上原価を差し引いた利益のことです。
売上総利益率の計算式は、以下のとおりです。
売上総利益率の計算式
売上総利益率(粗利率)= 売上総利益(粗利)÷ 売上高 × 100
たとえば、原価100円のペンを200円で販売した場合、売上総利益は100円です。売上総利益率は、100円(売上総利益)÷200円(売上高)×100=50%となります。
売上総利益率は、企業の商品やサービスから、どれぐらいの利益が上げられたかを示すものです。企業の付加価値や競争力を表し、純粋な営業活動においてどの程度稼ぐ力があるのかがわかります。
売上高営業利益率の出し方
売上高営業利益率は、売上高に占める営業利益の割合です。営業利益は、売上総利益から販売費と一般管理費を差し引いた利益を指します。
このうち、販売費には商品やサービスの販売にあたって発生した広告宣伝費や営業担当者の人件費や交際費などが該当し、一般管理費には従業員の人件費やオフィスや店舗の家賃、光熱費などが当てはまります。
売上高営業利益率の計算式は、以下のとおりです。
売上高営業利益率の計算式
売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100
例として、売上高150億円に対して、売上原価40億円、販売費20億円、一般管理費10億円の場合で計算します。
売上高から、売上原価・販売費・一般管理費を差し引くと営業利益が求められます。この場合の営業利益は、80億円です。
つまり売上高営業利益率は、80億円(営業利益)÷150億円(売上高)×100=53.3%となります。
売上高営業利益率は、営業効率が最適化されているか、また本業による収益力が高いかどうかを把握するうえで役立ちます。売上高営業利益率が低いと、本業の収益力が低いと判断できます。
売上高営業利益率の改善をするには、販売費・一般管理費の削減や販売量の増加、販売単価の値上げなどが考えられます。
売上高経常利益率の出し方
売上高経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合です。経常利益は、営業利益に営業外利益を加算し、さらに営業外費用を差し引いた利益を指します。
売上高経常利益率の計算式は、以下のとおりです。
売上高経常利益率の計算式
売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100
たとえば、売上高が150億円、経常利益が50億円の企業の場合、売上高経常利益率は50億円(経常利益)÷150億円(売上高)×100=33.3%となります。
売上高経常利益率は、企業の収益性を判断するために欠かせない重要な指標のひとつです。特に同業種の平均と比べて比率が高い場合、通常の営業活動における収益力が高いと判断できます。
売上高当期純利益率の出し方
売上高当期純利益率とは、売上高に占める当期純利益の割合です。当期純利益は、売上高から税金を含むすべての費用を差し引いた最終利益を指します。
売上高当期純利益率の計算式は、以下のとおりです。
売上高当期純利益率の計算式
売上高当期純利益率(%)=当期純利益÷売上高×100
たとえば、当期純利益が14億円、売上高が150億円の場合、売上高当期純利益率は14億円(当期純利益)÷150億円(売上高)×100=9.3%となります。
売上高当期純利益率は、会社全体の最終利益から見て収益力が高いかどうかを示します。
利益率の目安とは
4つの利益率のうち、ここでは経営状況を判断するうえで参照されることの多い「売上高営業利益率」と「売上高経常利益率」の目安について解説します。
経済産業省の「2021年企業活動基本調査確報-2020年度実績-」によると、主要産業である製造業・卸売業・小売業における、1企業あたりの売上高営業利益率と売上高経常利益率は下表のとおりです。
売上高営業利益率(平均) | 売上高経常利益率(平均) | |
製造業 | 3.4% | 6.5% |
卸売業 | 2.0% | 3.4% |
小売業 | 2.8% | 3.1% |
製造業と卸売・小売業を比較するとわかるように、業種や業界によって営業利益率や経常利益率の水準は異なります。そのため、ベンチマークしている同業種や同業界の会社に比べて自社の利益率が高いかどうかで判断する必要があります。
利益率の改善を図るには
利益率は、一般的に以下4つのポイントをおさえることで改善が図れます。それぞれのポイントについて説明します。
利益率を改善するためのポイント
- 販売数を上げる
- 販売単価を上げる
- 売上原価を下げる
- 人件費を見直す
販売数を上げる
販売数の増加は、そもそもの売上高アップにつながるため、全体的な利益率の改善につながります。
販売数増加のためには、新規顧客の獲得や既存顧客のリピート率向上が欠かせません。とくにリピーターを増やせると売上が安定するため、より利益を出しやすい経営状態になります。
販売単価を上げる
販売単価を上げることも、売上高をアップし利益率の改善を図るうえで有効な方法のひとつです。単価アップを消費者が受け入れるためには、商品の付加価値が上がらなくてはなりません。
そのために消費者ニーズを正しく把握し、消費者にとってのメリットを見極めます。消費者ニーズの高い商品の単価を高めに設定し、販売チャネルをさらに拡大できれば、効率よく利益率の改善につながるでしょう。
売上原価を下げる
とくに粗利率の改善には、仕入れや製造にかかる売上原価を下げる方法が効果的です。
製造にかかる原価であればさらなる企業努力や効率化でかなう場合があります。また、仕入れ単価に関しては大量発注の打診や外注先の見直しが挙げられます。
外注費の削減も有効です。内製化を推進し、できるだけ外注量を減らすことで、利益を確保しやすくなります。
人件費を見直す
人件費の見直しは、コストの削減と利益率の改善に有効ではあるものの、リスクもあるため慎重さが求められる手法です。
人件費の見直しには給与制度の改訂や残業時間の削減など、さまざまな対策が考えられますが、たとえば賞与や手当のカットは従業員の士気低下を招き、最悪の場合は退職につながる可能性があります。自社に必要な人件費を削減しないよう見極めが必要です。
また、業務効率化を図ることもおすすめです。バックオフィス業務などは積極的にDX化を取り入れ、生産性の高い組織を目指しましょう。
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まとめ
「売上総利益率」「営業利益率」「経常利益率」「売上高当期純利益率」の4つの利益率は会社の収益力を見るための指標として有効です。
各利益率のデータ分析から、経営状況の改善や業績目標の検討へと活かし、自社のさらなる発展につなげましょう。
よくある質問
利益率の計算方法は?
利益率には、売上総利益率をはじめとする5種類があります。売上総利益率は「売上総利益÷売上高×100」で求められます。
そのほかの利益率の出し方は「利益率の計算方法を種類別に解説」で確認できます。
利益率の目安は?
利益率の目安は業種や業界によって異なりますが、経済産業省の「2021年企業活動基本調査確報-2020年度実績-」によると、製造業における一企業あたりの売上高営業利益率は3.4%、売上高経常利益率は6.5%となっています。
詳しくは「利益率の目安とは」をご覧ください。
監修 税理士法人G&Sソリューションズ
税理士・会計士が中心となる税理士法人で、M&Aをはじめとする出口戦略(M&A・IPO・事業再生)に強みを持っています。税務申告をお手伝いするのみならず、会社の成長戦略に関するアドバイスを提供することが可能です。上場会社・上場準備会社・ベンチャー企業への対応、非上場会社に対しても高品質なサービスをご提供致します。