会計の基礎知識

月次決算とは?業務の流れや効率化するポイントを解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

月次決算とは?業務の流れや効率化するポイントを解説

月次決算とは、事業年度末に行う年次決算とは別に、1ヶ月ごとに締める決算のことです。月次決算を行うと、月ごとの会社の損益、財産の状況などが可視化され、タイムリーに経営状況を把握することができます。

本記事では、月次決算のメリットやデメリットをはじめ、業務の流れや月次決算を効率化するためのポイントを解説します。

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目次

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月次決算とは

月次決算とは、1ヶ月ごとに決算を締めることを指します。

自社の財務状況は決算を締めるまでわからないものです。よって、年1回の決算だけでは自社の経営判断をタイムリーに行うことができません。

月次決算を行うことで、月ごとの会社の損益、財産の状況を可視化し、単月、四半期、あるいは季節ごとの変化を把握・理解できるようにします。つまり、月次決算を行う目的は、素早い経営判断を実現させることです。

月次決算のタイミング

年次決算の決算作業は、1ヶ月程度かかる場合が多いですが、月次決算は経営状況をリアルタイムに把握する目的で行うため、あまり時間をかけることはできません。そのため、月次決算では正確かつ迅速に進める必要があります。

一般的には、記事内「月次決算の流れ」の決算作業を、月初3~7営業日で完了させます。しっかりと期限を決めて、効率良く決算作業を行ってください。

年次決算との違い

年次決算では、貸借対照表や損益計算書の作成、税務申告、外部への報告が必要となります。そのため、決算整理仕訳の記帳、税務申告書の作成、外部公表資料の準備もしなければなりません。なお、年次決算は上場・非上場にかかわらず、会社法上すべての株式会社に義務付けられています。

それに対し、月次決算は会計ソフトへの記帳作業と内部報告用の月次決算書を作成するだけでよいという点で異なります。また、月次決算は会社ごとの判断で任意に行われるものであり、法的に義務付けられてはいません。


月次決算年次決算
実施頻度1ヶ月に1回1年に1回
実施義務なし原則あり
実施目的・タイムリーに会社の経営状態を把握し、迅速な経営判断をするため
・年次決算の業務負担を軽減するため
・法的義務のもと、事業年度ごとの業績や資産状況などを取りまとめて法人税の申告・納付をするため
・株主総会などで報告するため

月次決算の早期化をしたい方は会計ソフトfreeeがおすすめです。

月次決算のメリット

月次決算を行うメリットとして、経営や業務の観点から以下の2つが挙げられます。

  • 会社の損益、資産、負債の状況がタイムリーにわかる
  • 年次決算時の作業負担を減らすことができる

会社の損益、資産、負債の状況がタイムリーにわかる

1ヶ月ごとに決算を行うことで、会社の経営状況をこまめに把握できます。月次決算をすることで、年間売上及び損益の着地見込みが予想しやすくなります。

年の途中で、当初に計画した予算と現時点の実績がかけ離れていたり、当初予測していなかった売上や費用がかかることもあります。そのため、月次決算の結果を利用して、適宜予算を修正したり、年間の業績見込みを修正することができます。

さらに、年間の業績予想の見込みをタイムリーに知ることで、経営戦略や営業方針の転換を臨機応変に実施することができます。

年次決算時の作業負担を減らすことができる

年次決算だけでは、年間の記帳・決算作業が一時期に集中してしまいます。決算日から税務申告期限まであわてて作業することになるため、記帳のミスや抜け漏れも発生しやすくなるでしょう。

この記帳作業にかかる時間や工数を月次決算によって分散させれば、決算期の負担を減らすことができます。

月次決算のデメリット

月次決算は、現状の経営状況の把握と年次決算の作業負担軽減のメリットがある一方、デメリットとしては以下の2つが挙げられます。

  • 年間全体の経営判断ができないことがある
  • 月次決算の作業時間を取る必要がある

年間全体の経営判断ができないことがある

業種・業態によっては、1ヶ月ごとの経営状況から年間の経営状況を判断できない場合があります。

たとえば、季節ごとに売上高が変わる小売業や飲食業、年間の特定の時期に売上が計上されるソフトウェア受託開発などの場合、月ごとに貴重される内容が人件費や費用だけになり、年間の業績予測が立ちません。

このような業種・業態の場合は経営判断の材料とするのではなく、あくまで年次決算の作業を分散や費用の確認を行うために利用するとよいでしょう。

月次決算の作業時間を取る必要がある

月次決算を行うためには、月初3~7営業日は作業時間を取る必要があります。個人事業主や小規模企業で記帳の人員がいない場合は自分自身で記帳をするか、アルバイトを雇う、あるいは会計事務所に記帳代行を依頼することも選択肢として挙げられます。

月次決算の流れ

月次決算は、以下の流れで行います。それぞれの決算作業を遅滞なく行うために、チェックリストを作成するなど、計画的に進めましょう。

  1. 現金・預金の残高を確認する
  2. 棚卸資産を確認する
  3. 仮払金と仮受金の振替を行う
  4. 経過勘定を計上する
  5. 引当金を計上する
  6. 減価償却費を計上する
  7. その他年間支払費用の月割を計上する
  8. 貸借対照表でマイナス残高になっていないか確認する
  9. 貸借対照表の借方と貸方が一致しているか確認する
  10. 前年同月の月次決算書と増減を比較する

①現金・預金の残高を確認する

会社の金庫にある現金や通帳、ネットバンキングの入出金明細にて、月末残高がいくらなのかを確認します。

次に、その月末残高が帳簿上の現金預金勘定残高と一致しているかを確認します。もし差異があるなら、原因を特定して正しい残高を帳簿に記帳しましょう。

②棚卸資産を確認する

月次棚卸を実施している場合は、月末時点で未販売の製品や商品、材料、切手やサンプル品などの貯蔵品が社内にどれくらいあるかをカウントし、それらが帳簿残高と一致しているか確認します。

棚卸の実施が月次ではなく半年ごと、または年1回の場合は、商品の受け払いに関する記録をもとに正しい月末残高を記帳します。

【関連記事】
棚卸しとは? 目的・実施タイミングや評価方法までわかりやすく解説

③仮払金と仮受金の振替を行う

当月に精算した仮払金や確定した仮受金の振替を行います。また、入金漏れや支払い漏れがないかどうかも確認します。

④経過勘定を計上する

当月に支払や受取が行われておらず、次月以降に支払いや収入があるものについては、未払費用や未収収益として経過勘定に計上します。

特に、月次決算中に自社に到着する請求書の未払計上が漏れることが多いので注意が必要です。

⑤引当金を計上する

年間の賞与や退職金に係る引当金相当額を年次決算で計上する場合、月次決算にて年間計上額の12分の1を計上します。

⑥減価償却費を計上する

減価償却対象の固定資産があれば、年間の減価償却費を月割り計算して計上します。

【関連記事】
減価償却とは?償却できる資産や計算方法、耐用年数をわかりやすく解説

⑦その他年間支払費用の月割を計上する

例えば、年払や数か月に1度の支払費用がある場合、月次決算にて月割計上します。


  • ・生命保険料
  • ・損害保険料
  • ・労働保険料
  • ・固定資産税

⑧貸借対照表でマイナス残高になっていないか確認する

月次決算手続きがひととおり完了したら、一度貸借対照表を確認します。もしマイナス残高になっている勘定科目があれば、どこかでミスが生じているので見直しをしましょう。

⑨貸借対照表の借方と貸方が一致しているか確認する

決算書の貸借対照表の借方と貸方が同じ金額になっているか確認しましょう。一致しない場合はどこで差異が発生しているのか見直しをしましょう。

⑩前年同月の月次決算書と増減を比較する

月次決算が仮で一通り終えたら、貸借対照表及び損益計算書の単月と累計について、前年同月の数値の増加と減少項目を比較します。

どの勘定科目が、何を原因として増えたのか?減ったのか?を把握することで、経営計画に活かすことができます。季節的な変動なのか、イレギュラーな事態が発生しているのか理解できます。

さらに、通常とは異なる増減を発見することで、記帳の誤りを発見することができます。「この月にこの科目が動くのはおかしい」、「たしかこの月にはこの科目が計上されるはずだ」という疑問を持ち、よくよく仕訳までさかのぼってみると、誤った仕訳が計上されていたり、仕訳が漏れていることもあります。

月次決算を効率的に進めるポイント

作業工程の多い月次決算作業を少しでも効率的に進めるポイントとして、以下の2つを押さえておきましょう。


  • ・取引書類を整理しておく
  • ・締日やスケジュールを全社共有する

取引書類を整理しておく

まずは日々の支払った経費の請求書や領収書、銀行口座の入出金明細、その月に発生した売上に関する資料など、月次決算に必要な取引書類を整理しておく必要があります。

取引件数が多ければ多いほど、これらの証憑の数も多くなるため、月ごとにまとめて封筒やファイルに保管しておくことが望ましいといえます。きちんと1つにまとまっていれば、毎月の決算作業がスムーズに行え、ミスも少なく効率的に進められるでしょう。

締め日やスケジュールを全社共有する

月次決算をするには、経理担当だけではなく営業や販売、人事総務などの部署や担当者の情報を集めなければなりません。そのため、各部門の担当者に月次決算をする上で必要な資料や証憑、いつまでに経理までに届けてほしいかなどの締め日やスケジュールを事前に全社共有しておくといいでしょう。

スケジュールどおりに進めば、月次決算の業務に取りかかるタイミングで必要な資料が揃っているため、効率よく決算作業を行うことができます。

まとめ

月次決算を行うことで、会社の損益、資産、負債の状況が月ごとにわかり、リアルタイムで経営状況を把握できます。また、年次決算時の記帳作業にかかる時間や工数を削減し、作業負担を減らすメリットもあります。

毎月の作業時間を確保する必要がありますが、あらかじめ取引書類を整理したり、締め日やスケジュールを全社共有したりするなど、効率的に準備を進めて、スムーズに月次決算を行うようにしましょう。

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よくある質問

月次決算はいつ行う?

月次決算は経営状況をリアルタイムに把握する目的で行うため、あまり時間をかけることはできません。よって、月初3~7営業日で決算作業を完了させることが望ましいでしょう。しっかりと期限を決めて、効率よく月次決算を行う必要があります。

詳しくは記事内「月次決算のタイミング」で解説しています。

月次決算のメリットは?

月次決算を行うメリットは、大きく分けて2つ挙げられます。1つは、経営の観点から会社の損益、資産、負債の状況がタイムリーにわかり、経営状況をこまめに把握できる点です。もう1つは、業務の観点から年次決算時の作業負担を減らすことができる点があります。

詳しくは記事内「月次決算のメリット」をご覧ください。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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