監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

誤送金とは、本来の振込先とは異なる口座へ送金したり、誤った金額で振り込みを行ったりしてしまうことです。
振込側の人的ミスで発生することが多く、「本来振り込まれるべき金額と異なる」「入金があったが何のお金かわからない」など、振込先からの連絡で発覚するケースが多い傾向にあります。
本記事では、誤送金してしまった場合、反対に誤送金されてしまった場合のそれぞれの対処方法について解説しますので、参考にしてください。
目次
誤送金とは
誤送金とは、本来の振込先とは異なる口座へ送金したり、誤った金額で振り込みを行ったりしてしまうことです。
誤送金が発生する主なケースとしては、以下が挙げられます。
- 振込先の金融機関や支店コード、口座番号、口座名義などを誤って入力した
- 振込金額の桁数を誤って入力した
- インターネットバンキングの操作を誤った
- 請求書に記載されていた情報が誤っていた
万が一、誤った内容で送金手続きをしてしまった場合、金融機関の処理が確定しておらず振込先の口座に入金されていなければ、手続きを取り消せる可能性があります。ただし、一般的に金融機関の手続きに数日かかるケースは少なく、原則として取り消すのは難しいと考えておきましょう。
すでに金融機関が処理を進めている場合、振込先からの返金を求める「組戻し」の手続きが必要です。
組戻しとは
組戻しとは、振込手続きが完了したあとでその振込を取り消す手続きのことです。組戻しによって振込先に誤送金分の返金を求めることができますが、振込先の承諾が得られない場合は原則として返金がされないため注意が必要です。
なお、組戻しの手続きを行う場合は、金融機関に対して所定手数料を支払う必要があります。
取引先に誤送金した場合の対応
一般的に、誤送金の場合は前述した方法で金融機関の手続きを行いますが、取引のある企業間で誤送金が発生した場合には、まずは取引先に直接連絡することをおすすめします。
取引先が誤送金に気付いていない可能性もあるため、できるだけ早く事実の報告とともに謝罪を行いましょう。先方との関係性や影響範囲の大きさによっては、直接訪問して対面で報告と謝罪をするのが望ましいでしょう。
報告が完了して先方の承諾が得られたら、返金依頼書を作成して先方に送付します。返金依頼書のフォーマットは以下のとおりです。
株式会社●●●●●
経理ご担当者殿
誤振込みによる返金依頼
拝啓
貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、令和●年●月●日付で貴社の口座にお振込みをいたしました金額につきまして、本来●●代金●●●●●円をお振込みすべきところ、当社の手続きに誤りがあり、●●●●円をお振込してしまいました。つきましては、下記のとおり、ご返金の手続きをお願いしたく、通知申し上げます。
お手数をおかけして大変恐れ入りますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
記
銀行名 ●●●銀行
支店名 ●●●支店
口座番号 普通 ●●●●●●●
口座名義 株式会社■■■■■
返金いただく金額 金●●●●●●円
なお、振込手数料は当社で負担いたします。
以上
令和●年●月●日
住所●●●●●●●●●●●●
株式会社■■■■■■
経理部 ●●●●●●
誤送金先がわからない場合
誤送金先が特定できないケースや、まったく取引のない相手に送金してしまったケースでは、早急に金融機関に連絡し組戻しの手続きを行う必要があります。
金融機関を介して組戻しの手続きを行ったにもかかわらず誤送金先からの承諾を得られない場合は、弁護士や法テラス(日本司法支援センター)に相談し、返金を要求することも可能です。
誤送金先に返金を拒否された場合
法律上、誤送金を受け取った側には金額の返還義務があるため、すぐに返金に応じる必要があります。振り込まれた金額は「不当利得」にあたり、民法第703条で返還義務が定められています。
もしも誤送金先が返金に応じてくれない場合は、裁判所に不当利得返還請求訴訟を提起して法的解決に導く必要があります。返還すべき金額が140万円以下なら簡易裁判所に、140万円超の場合は地方裁判所に訴訟を提起します。
誤送金された場合の対応
前述のとおり、誤って振り込まれたお金は不当利得となり、受け取った側には法律上の返還義務が生じます。故意に誤送金をそのままにしたり、振り込まれた額を使い込んだりした場合は法的トラブルとして訴訟に発展するリスクがあるため注意が必要です。
特に、誤送金された金額と知りながら使い込んだ場合は利息付きで返還しなければならない可能性もあります。状況によっては、詐欺罪や窃盗罪が適用されるリスクもあるため注意しましょう。
万が一、過去に一度も取引のない企業から誤送金され、先方の連絡先もわからない状況に遭遇した場合は、すみやかに金融機関に相談するようにしてください。
誤送金に伴う経理処理
誤送金された場合、以下の3つの方法で一度受け取った金額を返金することになります。
- 誤送金された金額を全額返金する場合
- 誤送金された金額を一部返金する場合
- 誤送金された金額を翌月に相殺する場合
それぞれのケースにおける経理処理上の仕訳例は、以下のとおりです。
誤送金された金額を全額返金する場合
10万円分の誤入金を計上する仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 100,000円 | 仮受金 | 100,000円 | 誤入金 |
誤入金された10万円分を全額返金した際の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
仮受金 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 | 誤入金 |
振込手数料が発生する場合は、誤送金した相手方が負担するのが一般的なので、手数料分を差し引いた金額を返金します。
誤送金された金額を一部返金する場合
10万円分の売掛金に対する入金であるところ20万円が振り込まれた場合の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 200,000円 | 売掛金 | 100,000円 | A社売掛金 |
仮受金 | 100,000円 | 誤入金 |
誤入金された10万円分を全額返金した際の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
仮受金 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 | 誤入金 |
誤送金された金額を翌月に相殺する場合
10万円分の売掛金に対する入金であるところ20万円が振り込まれた場合の仕訳(4月1日入金とする)
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 200,000円 | 売掛金 | 100,000円 | A社売掛金 |
仮受金 | 100,000円 | 誤入金 |
誤入金した10万円分を誤入金の翌月に売掛金と相殺した場合の仕訳(5月1日時点とする)
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
仮受金 | 100,000円 | 売掛金 | 100,000円 | 4月誤入金分を売掛金と相殺 |
誤送金を防止する方法
誤送金が発生すると業務負荷が増えたり、会社の信用問題に関わったりするほか、最悪の場合は訴訟に発展する可能性もあります。誤送金のリスクを回避するには、あらかじめ誤送金が起こらないフローを構築することが大切です。
ダブルチェックを徹底する
誤送金は人的ミスによって発生するケースがほとんどのため、振込み手続きを行う際は、担当者の属人的な対応に任せず、複数人によるチェックを徹底するようにしましょう。特に振込先と金額が間違っていないか、入念にチェックすることをおすすめします。
また、マニュアルに基づいたダブルチェック体制は誤送金を防止するだけでなく、社内の不正行為を抑止する役割も果たします。
システムを導入する
人的ミスを減らすには、支払いシステムの導入によって業務の自動化を図ることも有効です。振込先の口座番号の入力誤りなどは、手入力をなくすだけで防止できます。
近年はAIなどを用いた自動チェック機能が充実しているシステムもあるため、手作業よりも速く正確に業務処理を行えるようになります。
まとめ
なるべく発生させないようにしたい誤送金ですが、新しい振込先の登録や金額の確認ミスなどで、起こる可能性があります。誤送金が起きてしまったときは、本記事で紹介した内容をもとに適切かつ迅速に対処することが重要です。
また誤入金があった場合も、適切に対処しなければ法的なリスクが発生するため、注意しましょう。
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よくある質問
誤送金した金額を返金してもらうには?
金融機関に組戻しの手続きを依頼し、相手先が承諾することで返金されます。ただし誤送金の相手先が取引のある企業の場合、マナーとしてまずは先方に直接連絡をすることをおすすめします。
詳しくは記事内「組戻しとは」にて解説しています。
誤送金を受け取った場合に返金義務はある?
誤送金された金額は不当利益にあたり、民法第703条で返還義務が定められています。
詳しくは記事内「誤送金された場合の対応」をご覧ください。
監修 前田 昂平(まえだ こうへい)
2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。
