会計の基礎知識

税理士の探し方とは?選ぶ際に失敗しない、おすすめの方法を解説

監修 椎名 潤 椎名公認会計士事務所

税理士の探し方とは?選ぶ際に失敗しない、おすすめの方法を解説

事業主が税理士へ業務の依頼や相談をする場合、どのような税理士を選べばよいか判断に迷うことも多いでしょう。数多くの税理士がいますが、各税理士の得意分野や経験値、仕事の進め方などは多種多様です。

そのため十分な検討を行わずに税理士を決めてしまうと、報酬に見合ったサービスを受けられていないなど、不満やトラブルにつながる恐れがあります。

本記事では、効率的かつ効果的な税理士の探し方や、失敗しないためのポイントなどについて解説します。最後までお読みいただき、良い税理士選びをするための材料としてください。

目次

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税理士がなぜ必要なのか

税理士とは「納税者」である事業主のパートナーとして、税務署に提出する書類や申告書の作成業務などを担う専門家のことをいいます。

ここでは法人と個人事業主、それぞれのケースにおいて税理士はなぜ必要なのか、本当に雇ったほうがよいのかなどについて解説します。

法人の場合

法人の場合、基本的に税理士を付けることは必須ではありません。社内の担当者で税務関係の業務に対応できる場合は、無理に税理士へ仕事を依頼する必要はないといえます。

しかし、税理士に仕事を依頼することで、以下のようなメリットが期待できます。

税理士に依頼するメリット

  • 本業の経営活動に注力できる
  • 税務調査へ適切に対応できる
  • 税金関連のトラブルを未然に防止できる

税理士に仕事を依頼すべきかどうかは、上記のようなメリットと税理士へ支払う報酬などとの比較検討により判断することが重要です。

個人事業主の場合

個人事業主の税務は法人と比べてそこまで複雑ではなく、税務調整の対象となる取引件数もさほど多くはないため、事業主自身での対応も十分可能です。

ただし、専従者がおらず、個人事業主1人で本業および税務などの全業務を対応する場合は、業務の多さから本業に支障が生じるなどの悪影響を及ぼす可能性があるでしょう。

税務以外にも、資金調達や経営に関する相談が可能な経験豊富な税理士を付けていれば、事業主自身は安心して経営活動に専念できます。そのため、基本的には事業主自身の状況に応じて税理士の要否を判断することをおすすめします。

なお、年間売上が1,000万円を超える場合は消費税法上の「課税事業者」に該当し、申告業務の負担も増えるため、税理士を雇う方が合理的であるとも考えられます。

また、個人事業主の年間売上が1,000万円を超えたタイミングは、法人化(法人成り)するのに最適なタイミングだともいわれています。詳しくは別記事「個人事業主が法人化する最適なタイミングとは?メリット・デメリットからインボイス制度の対策について解説」にて解説しているので、併せてご覧ください。

税理士の探し方と各メリット・デメリット

具体的な税理士を探す方法と、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

各メリット・デメリットの概要については、下表のとおりです。


メリットデメリット
インターネット検索・スマートフォンやパソコンで簡単に検索可能 ・複数の税理士との報酬比較が可能・情報量が多すぎて絞りにくい ・ネット検索結果上位の税理士が、実際に優れているとは言い切れない
税理士検索サイト・紹介会社で探す・インターネット検索に比べて、より税理士の情報に特化して効率的に検索可能 ・無料で検索サイトを利用可能・自身と相性の悪い税理士を選ぶ可能性がある
知人・取引先からの紹介・事前に税理士の詳細な情報を把握可能・紹介を受けたあと、断りにくい ・社内情報が知人や取引先に漏れる可能性あり
税理士会・商工会議所での相談・実際に税理士と話し、業務経験などについて事前にキャッチアップ可能・税理士との都合が合わない場合、依頼しても断られる可能性がある ・他の税理士との比較が困難
セミナーへの参加・実際に税理士と話し、業務経験などについて事前にキャッチアップ可能 ・依頼しても断られる可能性が低い・業務を依頼しても、セミナーに登壇した税理士が直接担当してくれるとは限らない

それぞれの項目について詳しく解説します。

インターネットで検索する

インターネットでの検索の場合、スマートフォンやパソコンからいつでも気軽に調べられます。もし得意分野やエリアなどのこだわり条件があるならば、キーワード検索により自身のニーズにマッチする税理士の情報抽出がしやすくなるでしょう。

また、インターネット検索で上位に表示された複数の税理士のホームページを参照し、報酬体系を比較すると、自身の予算に合わせた税理士も検討しやすくなります。

一方で、検索結果の上位に出ている税理士が必ずしも良いとは限らない点に注意が必要です。評判の良くない税理士が広告費を支払ってホームページを上位に表示させていたり、たまたま上位に表示されていたりということが起こり得るため、検索結果の順位だけでは質を判断しきれません。

また、インターネット検索では膨大な量の情報が表示されるため、その中から自力で自身のニーズにマッチした税理士を選定するのはとても時間がかかり、非効率ともいえます。加えて、ホームページを持たない税理士はそもそも検索しても出会えないというデメリットもあります。

税理士検索サイト・紹介会社で探す

税理士検索サイトや紹介会社は、通常のインターネット検索よりも税理士に関する情報に特化した検索が可能なため、効率的な情報収集が可能です。また、これらの検索サイトは基本的に無料で利用可能であり、複数の税理士同士の比較がしやすいといったメリットもあります。

一方で、税理士検索サイトによっては実際に会って決めることができないケースがあります。そのため、自身と相性が悪い税理士を選定するリスクがあります。

また、見つけた税理士が依頼主の属する業界への知見を十分に有しておらず、期待するサービス内容との間にギャップが生じるケースもあります。このようなリスクを回避するために、正式に依頼する前に税理士との面談が可能かどうか確認しましょう。

知人や取引先から紹介してもらう

知人や取引先による紹介は、事前に客観的な意見や印象を聞くことができるので、相性の良い税理士を紹介してもらえる可能性が高い方法といえます。

実際に会う前に得意分野や人間性などについても確認可能なため、インターネット検索などに比べて、税理士選びで失敗する可能性を大幅に減らせるでしょう。

その一方で、紹介を受けた税理士が仮に自身と相性が合わなかったとして、知り合いとの関係性を考えると断りづらくなる恐れがあります。

また、同じ税理士に業務を依頼している関係で、自社の経営状況などといった社内の情報が知り合いや取引先に漏れるリスクもゼロではありません。

税理士会や商工会議所で相談する

税理士会や商工会議所で相談する方法では、無料で直接税理士に税務相談ができます。実際に税理士と話してみて印象や相性などの面で好感を持った場合は、その場で仕事を依頼できるため、相性の良い税理士選びという点での確実性は高いでしょう。

一方、税理士のリソースや双方が希望する料金などの面で折り合いがつかなければ、断られる可能性もあります。また、その場にいる税理士の情報しか得られないため、他の税理士との比較ができないまま決めざるを得ないといったデメリットもあります。

セミナーに参加する

確定申告の時期が近付くと、税理士事務所主催のセミナーが多く開催されます。このセミナーに参加し、登壇した税理士の得意分野や人柄を知ったうえで直接依頼することで、自身に合った税理士の選定につなげやすくなるでしょう。

また、税理士側も営業目的でセミナーを開催しているケースが多いため、仕事をお願いして断られる可能性は低いと考えられます。

一方で、セミナーに参加した税理士以外の税理士との比較ができない点や、実際に担当する税理士がセミナーで登壇した税理士本人とは限らない点に注意が必要です。

良い税理士の特徴

ここでは、良い税理士の主な特徴を6つ紹介します。

  • レスポンスが早い
  • 最新の情報を把握して共有してくれる
  • 判断材料としてリスクも提示してくれる
  • 自社の業界に対する知見が深い
  • わからないことを親身に対応してくれる
  • 顧問料金の相場が最適である

以下では、6つの項目を詳しく紹介しています。

レスポンスが早い

税理士に問い合わせを行った際の、レスポンスのスピードは非常に重要なポイントです。

確定申告は申告期限が決まっているため、不明点について質問や相談をした際にスピーディーに返信が来る場合は、安心して申告実務を進められるでしょう。また、基本的に迅速な対応を行ってくれる税理士であれば緊急のトラブル発生時にもすぐ対応してくれる可能性が高く、安心感があります。

税務関係の業務は複雑なこともあり、税理士へ質問や相談をする場面が度々生じます。その際に返信が複数日経ってもなかったり、電話を入れても全然つながらなかったりすると、実務に支障をきたして不安が募るでしょう。

税理士を探す段階から、レスポンスの早さは重視しましょう。

最新の情報を把握して共有してくれる

法人税法や所得税法などの税制改正は頻繁に行われることから、普段事業の運営で多忙な状況にある経営者が、常に最新の法改正の動向をキャッチアップしていくのは困難です。

したがって、常に最新の税制を把握している税理士から的確なアドバイスをもらえれば、経営者は安心して円滑な事業運営を行えます。

税理士を選ぶ際には、常に最新の税務情報にアンテナを張っていて、事実を誤認することなく正しく共有してくれる人を選びましょう。

判断材料としてリスクも提示してくれる

経験豊富な税理士の中には、税務面のみならず、資金調達や経営自体の相談にも応じてくれるケースがあります。

顧客である事業主のことを親身に考えられる税理士は、事業主にとって都合の良い話のみでなくリスクについても併せて説明し、ときには事業主が下した判断を軌道修正するようなアドバイスもしてくれるでしょう。

目先の利益追求や対策ではなく、長期的な視点を持ってリスクについても的確にアドバイスができる税理士は、事業主にとって心強いパートナーといえる存在です。

自社の業界に対する知見が深い

税理士によっては、不動産や医療など、特定の業界の知見に精通しているケースがあります。税理士へ仕事を依頼する際は、依頼主が属する業界の知識を十分に有しているかどうかを確認することが大切です。

自身が属している業界ならではの原価計算プロセスや、原価率の業界水準および収益構造などを理解している税理士が顧問に付いた場合は、適切なアドバイスをもらいやすくなります。

わからないことを親身に対応してくれる

税理士も「人」であるため、性格は一人ひとり異なります。

たとえば確定申告などの場面で、税法上、経費に計上可能かどうかが明記されていない項目があった際に、高圧的な態度の税理士に相談した場合は「税法に明記されていないことを聞かないでほしい」など、迷惑そうな態度を取る可能性も否めません。

また、人によってはレスポンスが遅いなど、円滑なコミュニケーションを取ることが困難なケースも想定されます。

一方で判断が難しい相談でも、業界の性質や傾向などを踏まえ論理的に説明してくれる親身な税理士も数多くいます。

税理士を探す際は、淡々と作業を行うだけでなく「困ったときの相談相手になってくれる誠実性を有しているかどうか」といった点も考慮しましょう。

顧問料金の相場が最適である

基本的に税理士の顧問料は、税理士が顧客に対して提供できる価値に応じて、水準が変わってきます。

税理士によっては、業界の相場を大きく上回る顧問料を提示してくるケースもゼロではありません。契約後、市場の相場と大幅に乖離するような不当に高い料金を請求されないためにも、顧問料金については相見積もりをして検討することが望ましいといえます。

また、ホームページで料金体系が明確になっている税理士は他と比較検討がしやすく、不当な高額料金を請求される可能性は少ないと考えられます。依頼を検討中の税理士が、サービスの内容や料金体系について詳しく説明してくれるかどうかを、慎重に見極めることが重要です。

税理士探しの前に準備しておくべきこと

実際に税理士を探す前に準備しておくべきことを3つ紹介します。
まず税理士を探す前には、以下の税理士のタイプを知っておくことが重要です。

税理士の3つのタイプ

  • 低価格重視型
  • 業種特化型
  • 付加価値重視型

タイプの合った税理士に依頼することで、依頼主・税理士双方が一番納得できる関係性が築け、依頼主の満足度は高まるでしょう。

低価格重視型

依頼費を極力安く抑えたい場合は、依頼する業務範囲を必要最低限に絞った依頼が可能な「低価格重視型」の税理士を探すことがおすすめです。

この場合、税理士に依頼できる業務は「会計システムへの記帳代行」「確定申告業務」など限られた業務に限定されますが、事業規模が小さく業績に大きな変動が生じにくい業種であれば、低価格重視でも問題ないでしょう。

業種特化型

このタイプにおいて注意すべき点は「レスポンスが遅い」「必要なときに相談にのってもらえない」など、サービス品質が想定以上に低く、すぐに税理士を変えざるを得ないケースが生じる可能性です。

新たな税理士を探すとなると非常に手間であることから、最初から低価格重視で探すのはリスクが大きいともいえます。

業種特化型

税理士の中には、特定の業界について豊富な知見を有している「業種特化型」の税理士がいます。また、身近な税務である法人税、所得税、消費税だけでなく、相続税や贈与税などといった特定の分野を強みとした税理士もいるのです。

税務の内容によっては非常に高度な専門性が求められるケースもあるので、特定の業界・分野に精通した税理士に依頼すると、より質の高いサービスが期待できるでしょう。

付加価値重視型

自身が行うビジネスや業界に関する税務に精通した税理士を探したい場合は、専門分野や得意業種を明記している税理士を探すと効果的です。

付加価値重視型

税理士の中には、税務だけでなく経営や資金調達など「税務プラスアルファ」の強みを有し、円滑な事業運営に直接的に関わるアドバイスができる「付加価値重視型」の税理士もいます。

付加価値重視型

幅広いサービスの提供が期待できる税理士に依頼したい場合は、「コンサルティング」を強みとする税理士の選定がおすすめです。

課題を洗い出して依頼する業務を明確にしておく

税理士を選ぶにあたって失敗しないためのポイントとして、現状の課題を事前に整理し、税理士を雇って解決したい課題や目的を明確にすることが重要です。

先述のとおり、税理士には大きく3つのタイプがあることを理解したうえで「税理士に何を依頼したいか(求めたいか)」を明確にすることで、自身が希望する税理士の選定が行えるでしょう。

予算を算出しておく

税理士を探す前に、雇う場合の予算を事前に決めておくことも重要です。

税理士に対して、税務以外にも資金調達や経理改善など幅広く依頼しすぎてしまうと、その分支払う報酬も増え、事業活動において必要な資金繰りにも悪影響を及ぼす恐れがあります。

税理士に依頼する業務の範囲や難易度に応じて報酬額の水準も異なるため、あらかじめ算出した予算をベースに検討し、最終的な契約金額を税理士とすり合わせておきましょう。

まとめ

日本には数万人の税理士がいますが、経験値やサービス内容、価格など特徴はそれぞれ異なります。

数ある税理士の中から自身のニーズにマッチした人を失敗することなく選ぶためには、自身が必要とする税理士への依頼業務の範囲や得意分野、予算など、優先すべき判断基準を明確に整理し、効率よく情報収集を行わなければなりません。

インターネット検索や知人からの紹介、セミナーでのコンタクトなど、幅広い方法から最適な税理士を探しましょう。

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詳細は「税理士の探し方と各メリット・デメリット」をご覧ください。

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良い税理士を見極めるポイントは、「レスポンスの早さ」や、「最新の情報を把握して共有してくれる」などがあります。

詳しくは記事内「良い税理士の特徴」で解説しています。

税理士探しをする前に準備しておくことは?

税理士探しをする前は「税理士のタイプを把握すること」「事前に課題を抽出し依頼したい業務を明確にすること」「依頼にかけられる予算を出しておくこと」の3つの準備が必要です。

詳細は記事内の「税理士探しの前に準備しておくべきこと」をご覧ください。

監修 椎名 潤

公認会計士試験合格後、大手監査法人へ入所し、一般事業会社向けの会計監査及び内部統制監査業務に従事。その後、国内コンサルティングファームにて、内部統制導入支援や経理決算常駐支援などのアドバイザリー業務に従事。2023年より公認会計士として独立。

椎名 潤

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