会計の基礎知識

重加算税とは?適用ケースや税率・計算方法、デメリットなどを解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

重加算税とは?適用ケースや税率・計算方法、デメリットなどを解説

重加算税とは、法人税などの申告義務に対して、税額を算出する際に必要な数字や情報を隠ぺい・仮装して不正を行った場合に課せられる附帯税のことです。

重加算税の税率はケースによって異なりますが、いずれの場合も、その他の加算税より税率が高く設定されています。ペナルティによる税負担が重くなるため、重加算税が課されることがないように十分に注意する必要があります。

本記事では、重加算税の概要や適用されるケース、ケース別の税率や計算方法を解説します。重加算税が適用された場合のデメリットや近年の税制改正についても紹介するので、参考にしてください。

目次

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重加算税とは

重加算税とは、法人税などの申告義務に対して、税額を算出する際に必要な数字や情報を隠ぺい・仮装して不正を行った場合に課せられる附帯税のことです。

この場合の隠ぺい・仮装は、いわゆる「所得隠し」にあたる行為を指し、具体的には「取引書類を破棄して事実を隠す」「帳簿の情報を偽る」「売上を低く申告する」といった行為が挙げられます。

ただし、「単純な事務作業のミスがあった」「隠ぺい・仮装の意図はなくうっかり一部の申告が漏れた」という場合は不正ではなく申告漏れとみなされ、重加算税の対象になりません。

しかし不正か申告漏れかは客観的判断によるため、自社では意図的に不正を行っていないという認識であっても国税調査官などに不正行為があったとみなされると、重加算税の対象となるケースもあります。

【関連記事】
追徴課税とは?計算方法や対象期間、払えない場合について解説

重加算税が適用されるケース

重加算税が適用されるケースは次の3つに分けられます。


  • 申告した納税額が過少である場合
  • 期限内に確定申告をしなかった場合
  • 源泉所得税の納付期限を過ぎた場合

上記のいずれかに該当し、隠ぺい・仮装と疑われる事実が見つかると重加算税が課されます。それぞれのケースについて詳しく解説します。

申告した納税額が過少である場合

期限内に申告した納税額が過少で、隠ぺい・仮装の事実がある場合、重加算税の対象です。

ただし、同様のケースでも隠ぺい・仮装が認められない場合は、「過少申告加算税」と呼ばれる加算税が課されます。過少申告加算税は、追加で納付する税額の10%、さらに期限内に申告した税額と50万円のいずれかの多い額を超える部分の15%に対して追徴課税されます。

これに対して重加算税の税率は原則35%であるため、過少申告加算税が課される場合よりも重い処置になります。

期限内に確定申告をしなかった場合

期限内に確定申告を行わず、隠ぺい・仮装が認められる場合も、重加算税が課されます。

ただし、同様のケースでも隠ぺい・仮装が認められない場合には、「無申告加算税」がペナルティとして課されます。無申告加算税の税率は、追加で納付する税額の15%、50万円超300万円以下の部分に対して20%、300万円超の部分に対して30%です。

これに対して重加算税の対象となった場合の税率は原則40%です。

源泉所得税の納付期限を過ぎた場合

源泉所得税の納付期限を過ぎており、隠ぺい・仮装が認められる場合も、重加算税の対象です。

ただし、同様のケースで隠ぺい・仮装が認められない場合には「不納付加算税」が課されます。不納付加算税は、本来納付しなければならない納付すべき税額の10%分として追徴課税されます。

これに対して重加算税の対象となった場合は、35%の税率がかかります。

重加算税の税率・計算方法

前述のとおり、どのようなケースで重加算税が課されるかによって、その税率は異なります。各ケースで隠ぺい・仮装が認められ、重加算税の対象となった場合の税率は以下のとおりです。


ケース重加算税の税率
申告した納税額が過少である場合追加で納付する税額の原則35%
期限内に確定申告をしなかった場合追加で納付する税額の原則40%
源泉徴収税の納付期限を過ぎた場合追加で納付する税額の原則35%

重加算税は、隠ぺい・仮装といった悪質な不正行為に課される税であるため、その他の加算税に比べて高い税率が設定されています。

たとえば、税金の根拠となる情報を意図的に隠ぺいし、300万円を過少に申告した場合、重加算税の計算式は以下のとおりです。重加算税として105万円を納付する必要があります。

3,000,000(円) × 0.35 = 1,050,000(円)

2024年以降は加算税の税率が見直されている

税制改正によって2024年1月以降の無申告課税率が見直され、高額の無申告額に対する税率が引き上げられています。加えて、繰り返される無申告に対しての加重措置も新たに設定されています。

無申告に対しての加重措置は、前年度及び前々年度の国税において、無申告加算税または無申告重加算税を課された納税者が再び無申告行為を行った場合に対象とみなされるものです。この場合、本来の税率に10%が加算されます。

つまり、納税額300万円超の無申告加算税の税率は本来30%ですが、加重措置の対象になると40%に引き上げられることになります。

加算税の見直しについて詳しくは、以下の記事も合わせてご覧ください。

【関連記事】
加算税の見直しを解説!2024年以降の無申告への加重措置の内容や改正の背景とは

重加算税のデメリット

他の加算税と比較しても特に重いペナルティである重加算税が課された場合、具体的にどのようなデメリットがあるのかを説明します。

加算税・延滞税の負担が大きい

ここまでも説明したように、重加算税の税率は他の加算税と比較して高く、負担が大きい点が最大のデメリットです。これに加えて、税金の納付期限を過ぎている場合は延滞税も課されるため、金銭的な損失はかなり大きいといえるでしょう。

原則として延滞税は納付期限から1年間のみ発生するものですが、重加算税が追徴課税される場合は、該当税額が納付されない限り無期限に延滞税が課される仕組みです。

つまり、納付期限を2年過ぎたタイミングで修正申告が必要になり、これが重加算税の対象とみなされる場合、納付金額をすぐに支払ったとしても2年分の延滞税を支払う義務が生じます。

税務調査の頻度が上がる

過去に不正が発覚し重加算税の対象となった納税者は、税務調査の対象に選ばれやすくなります。

一般的に、税務調査が10年に一度くらいの頻度で行われる事業者であれば、重加算税が課されたあとは5年に一度程度の頻度で税務調査が行われる可能性があるとされています。

加重措置による税率の引き上げ

重加算税を課される不正行為が繰り返された場合、税率が引き上げられる可能性があります。

たとえば、5年以内に重加算税の対象となる隠ぺい・仮装の行為が行われたケースで、本来の重加算税が35%であった場合、さらに10%が上乗せされた45%の税率が適用されます。これは不正の繰り返しを抑止するための重いペナルティです。

重加算税が課された場合の対応

税務調査によって重加算税の対象となる誤りが指摘された場合は、その指摘を認めて重加算税を納付するための修正申告を行う必要があります。

修正申告とは、納税者が申告書を修正して再度申告する手続きのことです。無申告の場合は期限後申告を行う必要があります。

税務調査で誤りが指摘されるケースでは、正当な事由があれば重加算税は免除される可能性がありますが、隠ぺい・仮装が明らかになれば免除は難しいと考えられます。また、修正申告によって納付が遅れた場合は延滞税も発生するため、その対応も必要です。

一方、納税者ではなく、税務署が申請内容を修正して新たに申告書を作成するケースもあります。これは更正処分といわれるものです。無申告の場合は決定処分が求められます。

不服申し立ても可能

税務調査の指摘を受け入れないという場合、通知を受けた翌日から1ヵ月以内なら不服申し立ても可能です。また、指摘のすべてではなく申請内容の一部のみ修正申告し、その他について不服申し立てすることもできます。

具体的なアクションとして、税務署長もしくは国税局長に対する再調査の請求、国税不服審判所長に対する審査の請求などがあります。

ただし、修正申告が完了してしまうと不服申し立てはできません。必ず修正申告の前に対応する必要があるため注意しましょう。

重加算税の仕訳処理

重加算税は会計上、「租税公課」という費用科目で処理します。ただし、重加算税はペナルティとして課されるものであり、減額されるべきではないという考えに基づき、その他の附帯税と同様に損金算入はできません。

そのため、企業の利益と法人税の課税所得を一致させるために行う申告調整において、会計上は費用として計上する一方、税務申告上は損金ではないことを明確にする処理が必要になります。

たとえば、重加算税として105万円を支払うことが確定した場合の仕訳例は以下のとおりです。


借方貸方
租税公課1,050,000円現金1,050,000円

まとめ

重加算税は単体での税率が高いことに加え、延滞税や加算措置が加わることでさらに大きな負担になります。重加算税の対象になることで、税務調査が高頻度で実施されるようになる可能性もあり、企業にとっては重い措置であるといえるでしょう。

本記事で解説した重加算税が適用されるケースや不服申し立ての対応などを参考に、正しい対応を検討してください。

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重加算税とは?

重加算税とは、法人税などの申告義務に対して、税額を算出する際に必要な数字や情報を隠ぺい・仮装して不正を行った場合に課せられる附帯税のことです。

詳しくは記事内「重加算税とは」をご覧ください。

重加算税は何パーセント課されますか?

重加算税の税率はケースによって異なります。ケースごとの税率は以下のとおりです。


ケース税率
申告した納税額が過少である場合追加で納付する税額の原則35%
期限内に確定申告をしなかった場合追加で納付する税額の原則40%
源泉徴収税の納付期限を過ぎた場合追加で納付する税額の原則35%

詳しくは記事内「重加算税の税率・計算方法」で解説しています。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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