会計の基礎知識

決算整理仕訳とは?手順や仕訳の具体例などをわかりやすく解説

監修 神谷 竜介 税理士法人H&P

決算整理仕訳とは?手順や仕訳の具体例などをわかりやすく解説

決算整理仕訳とは、決算時の帳簿上の数字と実際の数字を合わせるために事業年度末に行う仕訳のことです。期中に正しく帳簿を作成したとしても、事業年度をまたぐ売上などが発生した場合、決算整理仕訳によって数字を合わせなくてはいけません。

決算整理仕訳では減価償却費の計上や貸倒引当金の繰入、売上原価の計算・仕訳などを行います。事業年度を締める決算の最後に実施する仕訳のため、数字に間違いのないように仕訳することが重要です。

本記事では、決算整理仕訳の進め方や仕訳例、間違いを減らすためのポイントなどについて詳しく解説します。

目次

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決算整理仕訳とは

決算整理仕訳とは、決算時の帳簿上の数字と、実際の数字を合わせるために事業年度末に行う仕訳のことです。期中では実施せず、決算時の最後の調整として事業年度末に一度だけ実施する作業のため、決算整理仕訳で行う処理内容を把握しておく必要があります。

決算整理仕訳で行う処理には、次のようなものが該当します。

決算整理仕訳で行う処理の具体例

  • 当期収益費用の計上
  • 棚卸資産や減価償却費、貸倒引当金の計上
  • 有価証券の期末時価の確認

期中は複式簿記により日々の取引を記録していますが、決算時には実際の数字と帳簿の数字にずれが生じていることがあります。たとえば事業年度をまたぐ売上などが生じると、決算時に帳簿の修正が必要です。このような調整のために、決算整理仕訳を行います。

決算整理仕訳に必要な書類

決算整理仕訳には「決算整理前残高試算表(試算表)」と「精算表」を使用します。

決算整理前残高試算表とは、期中すべての仕訳が記された総勘定元帳の情報をもとにして作成する書類です。決算整理前残高試算表の借方と貸方の数字が一致していれば、仕訳が正しく行われていることになります。

試算表について詳しく知りたい方は、別記事「試算表とは?種類や見方、効率的な作り方などについて解説」をご覧ください。

精算表とは、決算整理前残高試算表から決算整理仕訳、貸借対照表と損益計算書の作成までの流れをまとめた書類です。精算表は必ず作成すべき書類ではありませんが、作成しておくと決算整理仕訳の後に会計処理のミスがないかを確認することができます。

決算整理仕訳の進め方と仕訳例

決算整理仕訳は、以下の手順で進めます。

決算整理仕訳の進め方

  1. 決算整理前残高試算表を作成する
  2. 売上の漏れがないか確認する
  3. 現金・預金と帳簿の過不足がないか確認する
  4. 当期費用を計上する
  5. 棚卸資産を計上する
  6. 固定資産の減価償却を行う
  7. 有価証券の期末時価を確認する
  8. 貸倒引当金を計上する
  9. 仕訳帳の反映と総勘定元帳に転記を行う

手順を事前に理解しておくと、スムーズに決算整理仕訳を進めることができます。

1.決算整理前残高試算表を作成する

前述の決算整理前残高試算表を作成し、仕訳帳の処理に間違いがないか確認します。間違いがなければ、残高試算表の借方と貸方の数値は一致します。もし間違いが見つかったら、正しい仕訳に修正しなくてはいけません。

2.売上の漏れがないか確認する

期中の売上が漏れなく計上されているかについて、納品書・請求書と仕訳帳・総勘定元帳を照らし合わせて確認します。

企業会計では、入金日ではなく納品日に売上を計上する「発生主義」が基本です。「期末の3月に納品されたが入金は翌期の4月となる」といった場合は、3月の売上として計上しなくてはいけません。

【関連記事】
仕訳帳とは?書き方や仕訳例、基礎知識を解説

3.現金・預金と帳簿の過不足がないか確認する

現金・預金の実際の残高が、帳簿と過不足ないかを確認します。一致していれば問題ありませんが、過不足が生じた場合は原因を調べて正しく仕訳の処理をする必要があります。

よくある過不足の原因は、受け取った相手が換金していない「未取付小切手」や、銀行の都合で換金できてない「未取立小切手」などです。

決算整理仕訳でミスに気づくと修正に手間や時間がかかります。このような事態を避けられるように、日頃から残高確認をしておくことが大切です。

4.当期費用を計上する

「当期の費用に漏れがないか」「翌期の費用が間違って計上されていないか」を確認します。当期費用の計上に関して確認すべき仕訳は、以下の4つが挙げられます。

  • 前払費用
  • 前受収益
  • 未払費用・未払金
  • 未収収益

前払費用とは、期中に支払いは済んでいるものの、サービスは翌期に受ける分の費用です。まだサービスを受けていない期間の費用は、翌期に振り替えないといけません。前払費用の当期計上の仕訳例として、翌期分の支払いを済ませている保険料があげられます。


借方貸方
前払費用5,000円保険料5,000円

前受収益とは、代金の受け取りは済んでいるが、翌期にサービス提供する分の費用です。この場合、翌期分の収益は前受収益に振り替える必要があります。前受収益の当期計上の仕訳例として、翌期に提供するサービスに対する受け取り済みの手数料があげられます。


借方貸方
受取手数料20,000円前受収益20,000円

未払費用・未払金とは、期中に提供を受けたサービス等に対して、支払いが済んでいないものです。期中に受けたサービスに該当する費用は、当期費用として計上しなくてはいけません。未払費用の当期計上の仕訳例として、期をまたぐ通信費の支払いがあげられます。


借方貸方
通信費10,000円未払費用10,000円

未収収益とは、期中に提供したサービス等に対して対価の受け取りが済んでいないものであり、当期分の収益として計上します。未収収益の当期計上の仕訳例としては、翌期に利息を受け取ることができる貸付があげられます。


借方貸方
未収収益15,000円受取利息15,000円

光熱費のように毎月の費用がほとんど変わらない科目は、収入や支出が確定した時点で帳簿をつける「発生主義」でなく、出入金があった時点で帳簿をつける「現金主義」が認められることもあるため、処理の方法を会計士と相談しておくと安心です。

【関連記事】
発生主義とは?現金主義・実現主義との違いや適用場面をわかりやすく解説

5.棚卸資産を計上する

棚卸資産とは在庫のことを指します。期末の在庫を確認し、実際に販売したものの売上原価を算出して棚卸資産を計上します。期末の棚卸高は貸借対照表の「商品」の欄に記載し、翌期の期首商品棚卸高とします。

売上原価と棚卸高の関係を表す式は、以下のとおりです。

売上原価 = 期首商品棚卸高 + 商品仕入高 − 期末商品棚卸高

たとえば、期首の棚卸残高が10万円、期中の仕入れが20万円、期末商品棚卸残高5万円のとき、売上原価は「100,000円 + 200,000円 − 50,000円 = 250,000円」となり、仕訳は次のようになります。


借方貸方
仕入高100,000円繰越商品100,000円
繰越商品50,000円仕入高50,000円

【関連記事】
売上原価をわかりやすく解説!勘定科目や計算方法も押さえておこう

6.固定資産の減価償却を行う

減価償却とは、建物や自動車といった固定資産の取得にかかった費用を、耐用年数に応じて費用計上することです。

固定資産によって耐用年数が異なり、同じ固定資産であっても取得年によって未償却額も異なるので、固定資産台帳と照らし合わせながら減価償却していくと間違いを防げるでしょう。

減価償却の方法には、毎年一定の金額を費用計上する「定額法」と残存価額に一定の割合で費用計上する「定率法」があり、仕訳は「直接法」または「間接法」によって行います。直接法と間接法は、これまで利用していた方法を適用すれば問題ありません。

たとえば、250万円で取得した資産が耐用年数5年だった場合、定額法で減価償却すると次のように仕訳を行います。

【直接法の仕訳例】

借方貸方
減価償却費500,000円固定資産500,000円

【間接法の仕訳例】

借方貸方
減価償却費500,000円減価償却累計額500,000円

【関連記事】
減価償却とは?償却できる資産や計算方法、耐用年数をわかりやすく解説
固定資産台帳とは?書き方や見方を分かりやすく解説

7.有価証券の期末時価を確認する

有価証券の取得価額と期末の時価を比べ、帳簿価額を修正します。この処理を「評価替え」といいます。

このときに確認する有価証券は「決算翌日から1年以内に満期を迎える満期保有目的債券」または「売買目的で保有している売買目的有価証券」のみです。たとえば取得価額が30万円だった有価証券が10万円に下落し、評価損を計上する場合は下記の仕訳を行います。


借方貸方
有価証券評価損200,000円売買目的有価証券200,000円

ただし、会計上は時価が取得価額の50%超下落した場合のみ認められているので、実際には行われないケースも多くあります

8.貸倒引当金を計上する

貸倒引当金とは、売掛金や未収入金などが貸し倒れとなる可能性を考慮して計上するものです。貸倒引当金として繰り入れた金額については、法人税法で認められた範囲内で経費として認められるため、節税にもつながります。

計算方法は「期末の債権額 × 繰入率」で算出する「一括評価」と、貸金ごとに算出する「個別評価」の2種類があります。一括評価を用いるケースが多く、繰入率は過去の貸倒実績率に基づくなどの方法で算定された率を使用します。

貸倒引当金の勘定残高よりも貸倒見積額が多い場合は、次の仕訳を行います。


借方貸方
貸倒引当金繰入額10,000円貸倒引当金10,000円

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貸倒引当金とは?計算方法や勘定科目の種類、仕訳について解説

9.仕訳帳の反映と総勘定元帳に転記を行う

最後に決算整理仕訳の内容を仕訳帳へ反映し、総勘定元帳に転記します。

また、決算整理仕訳にミスがないかを確認するために、決算整理仕訳の一連の流れをまとめた精算表も作成すると安心です。

決算整理仕訳を行う際のポイント

決算整理仕訳をミスなくスムーズに進めるためのポイントを、3つ紹介します。

前期の決算整理仕訳を振り返る

決算整理仕訳の計上漏れを防ぐには、前期に行った決算整理仕訳と比較することが効果的です。前期の仕訳を確認し、同様の手順を踏むことで、漏れやミスを防げます。

数字が合わないなど、決算整理仕訳の結果に疑問が生じたとしても、前期と比較すれば手順の再確認ができます。

各勘定科目残高が間違っていないか確認する

決算整理仕訳は「決算を確定させる」ための作業であり、正確性が問われます。決算整理仕訳後の各勘定科目残高が貸借対照表や損益計算書に直接反映されるため、ここで各勘定項目残高を間違えてしまった場合は企業にとって重要な決算に誤りが生じてしまいます。

そのためにも精算表を作成し、実際の残高と各勘定科目の残高が合っているか、最終確認を怠らないようにしましょう。

会計ソフトを利用する

決算をサポートしてくれる会計ソフトを利用すると、決算整理仕訳をスムーズに進めることができます。年度の締めと同時に、決算書類などが自動で作成されるため、決算整理仕訳を行う手間を省けるでしょう。

たま、決算整理仕訳には多くの仕訳が発生するため、計算ミスや転記ミスなどのヒューマンエラーも起こりかねません。会計ソフトを利用すると、人的ミスを防止できるため、業務効率化につながります。

まとめ

決算整理仕訳とは、決算時の帳簿の数字と実際の数字を合わせるために行う仕訳のことです。決算整理仕訳を間違ってしまうと決算にも誤りが生じるため、企業の社会的な信用を損なわないように正しく実施しなければいけません。

そのためにも正しい手順を把握するだけでなく、「精算表」などの書類も上手に活用することをおすすめします。また、決算をサポートする機能が付いている会計ソフトを導入するのもよいでしょう。

前期の仕訳を確認するなどの対策を講じながら、正確に決算整理仕訳を行いましょう。

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よくある質問

決算整理仕訳とは何ですか?

決算整理仕訳とは、決算時の帳簿の数字と実際の数字を合わせるために行う仕訳のことです。

詳しくは記事内「決算整理仕訳とは」で解説しています。

決算整理仕訳を行う手順は?

決算整理仕訳は下記の手順で進めていきます。


  1. 決算整理前残高試算表を作成する
  2. 売上の漏れがないか確認する
  3. 現金・預金と帳簿の過不足がないか確認する
  4. 当期費用を計上する
  5. 棚卸資産を計上する
  6. 固定資産の減価償却を行う
  7. 有価証券の期末時価を確認する
  8. 貸倒引当金を計上する
  9. 仕訳帳の反映と総勘定元帳に転記を行う

詳しくは記事内「決算整理仕訳を行う手順は?」で解説しています。

監修 神谷 竜介

2014年税理士登録。税理士法人H&Pに所属し、主に会社の合併・分割をはじめ、その他の法人業務を担当。

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