監修 椎名 潤 椎名公認会計士事務所
売上高とは、企業が営業活動を通じてサービスや商品を販売することで得た対価の総額のことです。売上高は、企業の利益の起点であり、企業の業績にもっとも重要な影響を与える指標です。
本記事では、売上高と利益の違いについて説明するとともに、黒字化に必要な売上高の目安となる「損益分岐点」の計算方法についても解説します。
目次
売上高とは
売上高とは、企業が商品やサービスを提供して得る対価の総額のことです。売上高は、企業における本業の業績や事業規模を示す指標にもなります。
ただし、企業が獲得する収益の中でも、営業活動とは直接関係のない取引から発生した「営業外収益」は売上高に含まれません。
売上高は、基本的に以下の計算式で求められます。
売上高の計算式
売上高 = 販売単価(円) × 販売数量(個)
※製造業や小売業など「モノ」を扱う業種で用いられる計算式であり、業種によって単位などは異なります
たとえば、1個1,500円の商品を提供している場合、300万個売れると売上高は45億円ということになります。
売上高と利益の違い
利益とは、企業が事業活動を通じて得た収益から費用を差し引いた金額のことであり、以下の計算式で求められます。
利益 = 売上高 - 費用
利益を増やすためには、費用を抑えるもしくは売上高を増やす必要があります。
売上高と利益を把握することにより、売上高に対する利益の割合、すなわち利益率の分析にも役立ちます。
なお利益は、含まれる費用の内容に応じて次の5つの種類に分かれます。
利益の種類
- 売上総利益(粗利)
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
利益について詳しく知りたい方は、別記事「利益とは?売上や粗利との違いから利益の種類、利益を上げる方法を紹介」を、利益のうち「売上総利益」については、別記事「売上総利益とは?売上高との違い、計算方法、改善のポイントについて解説」をご覧ください。
損益分岐点と売上高の関係
損益分岐点とは、事業における「売上」と「営業費用」の金額が一致する点、すなわち営業利益がゼロになる点です。また、損益分岐点を売上高の金額で示したものを「損益分岐点売上高」といいます。
損益分岐点売上高と比較して実際の売上高が上回っていれば営業利益がプラスであり、下回っていればマイナスであることがわかります。損益分岐点は、企業の毎月の売上目標を設定する際や、現状の売上が損益分岐点を下回っている場合に対応策を議論する際の判断材料として活用されます。
損益分岐点の算出では、売上の変動とは無関係に発生する「固定費」、売上の増減に応じて発生する「変動費」に分けて把握することが重要です。
損益分岐点について詳しく知りたい方は、別記事「損益分岐点とは?計算式・活用方法やグラフの作り方をわかりやすく解説」をご覧ください。
固定費と変動費とは
固定費とは、売上の変動とは関係なく発生する費用のことです。
固定費の例
- 事務所や工場、店舗などの家賃
- 人件費
- 福利厚生費
- 減価償却費 など
対して変動費とは、売上によって金額が変動する費用のことです。
変動費の例
- 仕入原価
- 材料費
- 運送費 など
そのほか、建設業であれば動力費や設計費など、業界特有の変動費もあります。
損益分岐点の算出方法
損益分岐点売上高の計算式は以下のとおりです。
損益分岐点売上高の計算式
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率)
「変動費率」とは、売上高に対する変動費の割合です。変動費率は、以下の計算式で求められます。
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
たとえば、固定費が300万円、変動比率が50%の場合、以下の計算式に基づき損益分岐点売上高は「600万円」となります。
300万円 ÷ (1 - 0.5) = 600万円
目標利益達成に必要な売上高の計算方法
損益分岐点の計算式を応用すると、目標とする利益を達成するには売上高がいくら必要かを試算することが可能です。
試算には以下の計算式を用います。
目標利益到達のために必要な売上高の算出方法
目標利益達成に必要な売上高 = (固定費 + 目標利益) ÷ (1 - 変動費率)
たとえば、固定費が300万円、変動費が50%の企業が500万円の利益を達成したいケースで考えてみましょう。このとき、変動費率は前述の計算式から0.5であるため以下の計算により、目標利益達成に必要な売上高は1,600万円であることがわかります。
(300万円 + 500万円) ÷ (1 - 0.5) = 1,600万円
売上高を増やす方法
目標利益を達成する手法として、売上高を増やす方法が考えられます。前述のとおり、売上高は「販売単価(円) × 販売数量(個)」で表されるため、売上高を上げるためには「販売単価を増額する」もしくは「販売数量を増やす」という2つの方法があります。
具体的には、以下の方法が考えられます。
売上高を増やすための具体的な施策例
- 客先との交渉により販売価格を増額する
- リピーターの増加によって顧客の購入頻度と数量を増やす
もし必要な売上高に到達するのが難しい場合は、固定費や変動費率を下げて売上原価を抑えることで、利益を上げることができます。その場合、以下のような方法が有効です。
固定費や変動費を下げるための施策例
- 調達先との交渉や調達先の見直しにより、原材料単価を削減する
- 家賃の安い立地に事務所を移転する
利益を上げる方法について詳しく知りたい方は、別記事「利益とは?売上や粗利との違いから利益の種類、利益を上げる方法を紹介」をご覧ください。
まとめ
企業にとって売上高は、業績や事業規模を示す重要な指標となります。ただし、費用や利益などと合わせて、これらの金額が発生する仕組みを理解しておかなければ、正しい業績の分析や経営状況の把握はできません。
売上高や利益について理解を深め、定期的に損益分岐点分析などを行うことにより、企業の成長へとつなげていきましょう。
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よくある質問
売上高とは?
売上高とは、企業がサービスや商品を提供して得る対価の総額のことです。また、企業の事業規模を示す指標としても使われることがあります。
詳しくは記事内「売上高とは」をご覧ください。
利益とは?
利益とは、企業が営業活動を通じて得た収益から費用を差し引いた総額のことです。売上総利益(粗利)や営業利益、当期純利益などの種類があります。
詳しくは記事内「売上高と利益の違い」をご覧ください。
利益を上げるための売上高の計算方法とは?
利益を上げるための売上高の計算は、「(固定費 + 目標利益) ÷ (1 - 変動費率)」の計算式で求められます。算出した目標売上高の数値にハードルの高さを感じる場合は、固定費や目標利益を調整するとよいでしょう。
詳しくは記事内「目標利益達成に必要な売上高の計算方法」をご覧ください。
監修 椎名 潤
公認会計士試験合格後、大手監査法人へ入所し、一般事業会社向けの会計監査及び内部統制監査業務に従事。その後、国内コンサルティングファームにて、内部統制導入支援や経理決算常駐支援などのアドバイザリー業務に従事。2023年より公認会計士として独立。