会計の基礎知識

減価償却の計算をおこなう適切なタイミングとは?

減価償却の計算をおこなう適切なタイミングとは?

税務調査などで間違いを指摘されることも多い減価償却は、非常に細かく複雑なルールのもとに機能しているシステムです。

減価償却費の計算はその仕組み上、数年度に渡るためミスが生じやすく、また大きな金額が動く取引でもあるため税務署も細かく見てきます。そのため税務調査の対象にもなりやすく、自分で確定申告を行う個人事業主や経理担当者の方は、特に注意しなければなりません。

本記事では、減価償却の計算を始めるタイミングや基礎知識、具体的な計算例について詳しく説明していきます。

目次

減価償却とは?

減価償却とは、購入費用を単年度で費用計上するのではなく、定められた耐用年数に応じて数年がかりで少しずつ費用計上していく方法です。

減価償却する資産は「減価償却資産」と呼ばれ、原則として、その固定資産の使用可能期間が1年以上かつ取得価額が10万円以上の物とされています。

例えば、家賃の支払いや旅費交通費、接待交際費などの費用は購入してすぐに資産としての価値がなくなります。しかし、機械設備やソフトウェアなどの価値は通常、購入してからゆっくりとその価値を減らしていきます。そのため、費用の計上方法も購入年度だけではなく、耐用年数に応じて分割し、減価償却として処理することが義務付けられています。

減価償却の計算はいつから始めるべきか

減価償却費の計算は、税務上資産の種類ごとに定められた耐用年数表に従い、その年数で減価償却がなされます。減価償却は、対象の資産を購入した時ではなく、本来の目的のために使用を開始した日からのスタートになります。

事業に使用する設備や備品などは、購入してすぐに使い始めることも多いため、購入と同時に償却をスタートできる場合が多いです。しかし、テナントや特殊な機械装置など、実際に使用可能な状態になるまでに工事や調整を必要とする資産に関しては、実際に稼働し始めた日が減価償却開始日となります。

[令和2年4月1日現在法令等]

減価償却資産とは、法人税法施行令第13条に掲げるもので、事業の用に供しているものをいいますが、資産を事業の用に供したか否かは、業種・業態・その資産の構成及び使用の状況を総合的に勘案して判断することになります。

「事業の用に供した日」とは、一般的にはその減価償却資産のもつ属性に従って本来の目的のために使用を開始するに至った日をいいますので、例えば、機械等を購入した場合は、機械を工場内に搬入しただけでは事業の用に供したとはいえず、その機械を据え付け、試運転を完了し、製品等の生産を開始した日が事業の用に供した日となります。

なお、事業の用に供した日とは、資産を物理的に使用し始めた日のみをいうのではなく、例えば、賃貸マンションの場合には、建物が完成し、現実の入居がなかった場合でも、入居募集を始めていれば、事業の用に供したものと考えられます。

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減価償却の計算方法

減価償却費の計算方法は、その資産を取得した日や事前申請の有無によって異なります。平成19年4月1日以降に取得した減価償却資産については多くの場合「定額法」か「定率法」によって計算されます。

建物(及び平成28年4月1日以後取得の建物附属設備)は減価償却の計算方法の届け出にかかわらず、定額法により計算します。その他の資産については減価償却の計算方法を届け出ていない場合は、法人は定率法(平成19年3月31日以前に取得した資産は旧定率法)による計算が原則です。

正確な計算のためには、購入した固定資産の耐用年数も把握しておかなければなりません。

主な減価償却資産の耐用年数表

構造・用途細目耐用年数
家具・電気機器・ガス機器・家庭用品事務机・事務椅子・キャビネット(金属製)15年
金属製以外は8年
接客用応接セット5年
冷房用・暖房用機器6年
冷蔵庫6年
事務機器・通信機器パソコン4年
電話6年
小型車4年
貨物自動車(ダンプ式)4年
自転車2年

引用;国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表

上記のように品目によって耐用年数は細かく定められています。減価償却費の計算には耐用年数が関わってくるので、きちんと確認するようにしましょう。

例として、以下の減価償却資産の計算をみてみましょう。

  • 取得原価:100万円
  • 耐用年数:10年
  • 減価償却開始日:平成29年10月1日(3月決算)

定額法定率法
償却率0.1000.200
改定償却率-0.250
保証率-0.06552
償却保証額-65,520円
(1,000,000×0.06552)
1年目100,000円200,000円
(1,000,000円×0.200)
2年目〜6年目100,000円(1,000,000-1000年までの償却費の合計額)×0.200
7年目100,000円65,536円
(改定取得価額 262,144円×0.250)
8〜9年目100,000円65,536円
(改定取得価額×0.250)
10年目99,999円
期首帳簿価額 -1円<1,000,000×0.100
65,535円
期首帳簿価額 -1円<改定取得価額×0.250

引用:国税庁「定額法と定率法に夜減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)

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無形固定資産の場合

車や建物など、実態のある「有形固定資産」に対し、無形固定資産とは物的な存在形態をもたない固定資産を指します。特許権や商標権など、法的権利も無形固定資産となります。

無形固定資産の減価償却計算方法は、残存価格を0円と見なした「定額法」のみです。

無形固定資産のうち、実務でも使用頻度の高いソフトウェアを例としてみてみましょう。
ソフトウェアの耐用年数は利用目的によって異なります。
(1)販売・研究開発を目的としたもの・・・3年
(2)その他のもの・・・5年

たとえば、平成29年10月1日に20万円の自社利用目的のソフトウェアを購入・使用開始した場合は、200,000円×0.200=40,000円なので、平成34年度までの5年間にかけて年間4万円ずつを償却していく計算になります。

減価償却費の計算で気をつけるポイント

計算するタイミング以外に税務署に指摘されやすい=注意するべきポイントについても見ていきましょう。

取得価額で起こしがちな間違い

まず気をつけるべきは減価償却する資産の取得価額です。取得価額には固定資産本体の価額だけではなく、引取運賃や運送保険料、取付手数料などその本体を実際に使うためにかかった費用も含みます。

特に運賃などは領収書を整理したり記帳を行う段階で間違えてしまいがちなので、注意してください。

非減価償却資産や少額減価償却資産に注意

非減価償却資産とは、骨董品や土地など減価償却の対象にとならない資産です。こうした資産は時間が経過したらかといってその価値が毀損するわけではないので、減価償却の対象となりません。もちろん購入時も費用計上できません。

また少額減価償却資産とは、購入した資産を単年度で費用計上できる資産です。対象は中小企業や青色申告者であれば30万円未満、白色申告者は10万円未満です。

ただし、例えばソファー2つに机1つの応接セットをソファーが各12万円・机が8万円で購入した場合、個別に見れば全て30万円未満の資産ですが、この場合はセットの価格32万円で見なければならず、減価償却しなければなりません。

まとめ

減価償却は購入した日ではなく、使用を開始した日から始まります。そのため、購入した年度に使用しなかった場合は翌年度に持ち越すことになります。物品によって耐用年数は異なるため、購入と同時に把握しておく必要があります。定額法・定率法どちらで計算するのかも事前に決定しておくのが良いでしょう。

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