コスト削減は、会社を経営するうえで重要な要素です。会社経営におけるコストは、固定費から変動費、人件費など多種多様なものが存在します。コストを最適化することで、適切な経営判断が可能です。
しかし目先の利益に囚われてやみくもにコストを削減すると、かえって業務の非効率化や企業価値の低下を招く恐れがあります。
そこで本記事では、効率的なコストの削減方法について具体的なアイデアとともに解説します。コスト削減によって得られる効果を改めて確認し、目的を明確にして無駄のないコスト削減を目指しましょう。
目次
- コスト削減とは
- 会社にかかる主なコストとは
- 法人税などの税金
- 給与などの人件費
- 会社設備の維持費
- その他の経費
- コスト削減で得られる効果とは
- 会社の利益の増加
- 業務の効率化
- 企業価値の向上
- コスト削減の効果的な進め方
- 1.会社にかかっているコストを把握する
- 2.削減できそうなコストを選出する
- 3.コスト削減による効果を予想し優先度を決める
- 4.具体的な目標とプランを設定する
- 5.実行し評価と改善を行う
- コスト削減の具体的なアイデア
- 採用方法の見直しでコスト削減
- アウトソーシングの導入で業務効率化とコスト削減
- 消耗品の見直しでコスト削減
- 節電で光熱費のコスト削減
- まとめ
- 経理を自動化し、日々の業務をもっとラクにする方法
- よくある質問
コスト削減とは
そもそもコストとは「利益を増やすために必要とされる費用」を意味します。そして利益は売上からコストを差し引いた部分であるため、コストを減らせばそのまま利益の増加につながります。
たとえば売上が5,000万円、コストが3,800万円であれば、「売上 - コスト」で利益は1,200万円です。しかしコスト削減によって3,500万円に抑えることができれば利益は1,500万円となり、コスト削減する前より300万円利益が増える計算となります。
コスト削減の目的は、会社の利益の増加や経営の見直しのためです。
会社にかかる主なコストとは
会社経営にかかるコストは、主に以下の種類に分けられます。
会社にかかる主なコスト
- 法人税などの税金
- 給与などの人件費
- 会社設備の維持費
- その他の経費
法人税などの税金
会社を経営していると、利益の有無にかかわらず税金の支払いが求められます。
利益が発生している会社であれば、その金額に応じて法人税や法人住民税が課せられます。赤字であっても税金の支払いは避けられません。
これら税金の支払いは毎年発生する固定費の一種です。ただし税金は、適切な対策を施せば節税も見込めます。
法人の節税対策について詳しく知りたい方は、別記事「法人の節税対策とは? 正しく税負担を軽減する方法」をあわせてご確認ください。
給与などの人件費
人件費も固定費のひとつで、以下のように多くの種類が挙げられます。
- 従業員への給与や賞与
- 役員報酬
- 退職金
- 福利厚生費
- 人材採用費
人件費は特に大きな割合を占めるコストのため、人件費の削減から取りかかる企業も少なくありません。
しかしながら、企業からの一方的な解雇や退職勧奨による人員削減は、労働基準法や労働組合法といった法律に違反する可能性もあり、慎重に進める必要があります。給与や賞与のカットも、従業員のモチベーションが低下する要因になったり、労使間のトラブルに発展したりするため、従業員と交渉しながら進めていく姿勢が求められます。
出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
会社設備の維持費
会社設備にかかる維持費の例としては、以下が挙げられます。
- 賃料
- 水道光熱費
- 通信費
- オフィスの備品
- パソコン機器のリース代
いずれも利用状況や仕入先の見直し、節電による削減が可能です。
それぞれの設備は小さな積み重ねではあるものの、長期的に考えればコスト削減につながるため、会社全体で取り組んでいく体制づくりが求められるでしょう。
その他の経費
その他の経費には、社内外で発生するコストが含まれます。
- 取引先との交際費
- 広告宣伝費
- 社内研修費
- 顧問税理士への報酬
社外の人が関係する費用は、どうしても抑えるのが難しいこともあるでしょう。
研修費の削減は社内で取り組むことができるため、コスト削減しやすいといえます。ただし、研修を減らすことで従業員のスキルが低下してしまうと生産性が下がり、コストがかさむ要因にもなるため注意が必要です。
コスト削減で得られる効果とは
コスト削減によって得られる効果は複数ありますが、いずれも今後の会社経営に大きく影響を与えるものばかりです。具体的には以下のような効果があげられます。
コスト削減で得られる効果
- 会社の利益の増加
- 業務の効率化
- 企業価値の向上
会社の利益の増加
コスト削減は、適切に収支管理を行い無駄な経費がどこに発生しているのかを知ることが重要です。会社経営におけるコスト削減は、社内のコストから整理されることがあります。そのため利益増加の実現にあたり、売上増加よりもコスト削減のほうが、取り組みやすいでしょう。
また、コスト削減によって発生した利益は、従業員へ賞与として還元が可能です。従業員のモチベーションや満足度も上がるため、各自が売上増加に向けた業務へ積極的に取り組むようになり、さらなる利益向上を期待できるでしょう。
業務の効率化
業務の見直しや不要な業務の洗い出しの実施によって、コスト削減だけでなく、業務効率化や生産性向上も見込めます。
たとえば、時間のかかる単純業務を自動化する仕組みを導入し、人件費や業務に使われていた備品費などを抑えると、コスト削減と業務効率化の双方が実現します。
日々の業務に無駄な工程やコストがないか改めて確認すると、少ない時間や労力で多くの成果を挙げられるようになるでしょう。
企業価値の向上
コスト削減によって生み出された利益を、新規事業への投資や技術開発、ブランディングに活用する選択肢もあります。
会社が新しい挑戦をすれば企業価値も向上し、ステークホルダーからの信頼度上昇も期待できるでしょう。
コスト削減の効果的な進め方
コスト削減を効率良く進めるには、正確に状況を理解し、明確な目標を持って取り組みと改善を繰り返していく仕組みが欠かせません。
具体的には以下のステップで進めていきます。
コスト削減の効果的な進め方
- 会社にかかっているコストを把握する
- 削減できそうなコストを選出する
- コスト削減により効果を予想し優先度を決める
- 具体的な目標とプランを設定する
- 実行し評価と改善を行う
1.会社にかかっているコストを把握する
まずはどれだけのコストがどのようなものに対して使われているのかを把握します。何に対して一番コストがかかっているのかといった割合も確認しましょう。
費用を洗い出す際には、リストやグラフなどによる可視化がおすすめです。コストを可視化すれば、現状がどうなっているのかを理解しやすくなり、無駄な部分も浮き彫りになって削減を進めやすくなるでしょう。
2.削減できそうなコストを選出する
内訳を把握できたら、削減できそうなコストを選びます。使用頻度の低いものや、すでに使用していないものから先に選出していきます。
たとえば、あまり使われていないサイズのコピー用紙の補充費や、社員旅行費や慶弔見舞金といった発生頻度の低い福利厚生費が当てはまるかもしれません。他にも、年に1回しか使用しない備品が何度も発注されていたり、ほとんど使われていないのにリース契約をしている機器があったりする可能性もあります。
ただし、無理をして必要なコストまで削減しないように注意しましょう。無理にコストを減らすと業務負荷や従業員のモチベーション低下に繋がり、労働環境の悪化を招く可能性があります。
3.コスト削減による効果を予想し優先度を決める
削減すべきコストが明確になったら、時間はどれくらいかかるのか、効果はどのくらい得られるのかなどについて試算します。
また、業務の進め方や社内ルールを変更することでコスト削減につながらないかも考えられるとよいでしょう。
加えて、コスト削減によるデメリットが生じるかどうかもよく確認する必要があります。先述したように必要なコストまで削減し、状況が悪化してしまっては本末転倒です。
コスト削減による効果が取り組みにかかる労力と見合うように、事前にしっかりと優先順位をつけておきましょう。
4.具体的な目標とプランを設定する
取り組むべきコスト削減の優先順位を決めたら、より具体的な目標やアクションプランを設定しましょう。
たとえば、「誰が」「いつまでに」「どのくらい」「どのように進めていくのか」といった点を明確にします。またその際には、従業員の負担にならない範囲で進められるようなプランを設定しましょう。
目標やプランを策定できたら社内へ周知し、全員に目的や目標を共有することも大切です。コストの削減を担うのは、経営者や経理担当者だけではありません。
実現には従業員の協力が欠かせないため、社内の全員がすぐに実行に移せるようプラン内容を具体的にわかりやすく通達しましょう。
5.実行し評価と改善を行う
コスト削減に向けて準備が整ったら、手順4で設定したプランを実行します。しかし、ただ実行して終わりではありません。
コスト削減によって実際どの程度の効果があったのか、思うように効果が出なかった項目はなぜそうなったのかを検証します。
具体的には、PDCAサイクルを用いて計画から改善までの仕組みづくりをするのがよいでしょう。
PDCAサイクルとは、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)の頭文字を取ったもので、効率良く業務を進めるためのフレームワークです。たとえば、実際にコスト削減をしてみて失敗したときや、継続が難しいと感じたときは、原因を探り改善策を立てて再度実行していきます。
このPDCAサイクルを繰り返していけば、不要なコストを効率良く削減でき、業務改善や利益向上につながるでしょう。
PDCAサイクルについて詳しく知りたい方は、別記事「PDCAサイクルとは?ビジネスでの活用方法や具体」をあわせてご確認ください。
コスト削減の具体的なアイデア
コストを削減するにあたって、具体的な手法がなかなか思いつかないときもあるかもしれません。そのようなときは以下の4つの視点に立ってみると、効率良くコスト削減を進められます。
コスト削減のアイデア
- 採用方法の見直しでコスト削減
- アウトソーシングの導入で業務効率化とコスト削減
- 消耗品の見直しでコスト削減
- 節電で光熱費のコスト削減
採用方法の見直しでコスト削減
まずは、コストの中で大きな割合を占める人件費を見直します。特に人材の採用にはさまざまな手法があり、その方法を見直してみるだけでも大幅なコスト削減に繋がるでしょう。
たとえば近年では、既存従業員や離職者からの紹介によるリファラル採用や、求人サービスを通さないダイレクトリクルーティングといった手法があります。従来の採用方法では、求人広告の掲載料や就職・転職フェアへの出展費用、会社説明会の会場費といったコストがかかっていましたが、リファラル採用やダイレクトリクルーティングを取り入れることでコストカットが可能です。
また、会社説明会や面接をオンラインに移行して、費用を削減する方法もあります。
アウトソーシングの導入で業務効率化とコスト削減
コスト削減をしたうえで業務効率化も実現するには、アウトソーシングが役立ちます。アウトソーシングとは社内の業務を社外へ委託する経営手法の一種です。業務委託のコストは発生しますが、人件費の削減や人材不足の解消、生産性向上も期待できます。
たとえば、会計システムの導入によって、経理課の一部の従業員にしかできなかった業務を外部へ委託できるようになり、それまで配置されていた人員を人手の足りない部門へ再配置することもできます。アウトソーシングで業務を分散し、適切な人材配置を施せば、社内の従業員がコア業務に集中できる環境を生み出せるでしょう。
会計・経理のアウトソーシングについて詳しく知りたい方は、別記事「給与計算のアウトソーシング・代行のメリット・デメリットと相場について解説」をあわせてご確認ください。
消耗品の見直しでコスト削減
簡単ですぐに取り組めるコスト削減方法としては、消耗品や備品の見直しが挙げられます。業務のペーパーレス化または電子化を進めていけば、それまでにかかっていたインク代やコピー用紙代、コピー機のリース料などの節約が可能です。
消耗品を購入するときには、まとめ買いで費用を抑えるのもよいでしょう。品質に特にこだわる必要のない部分は、安価な中古品に置き換えるのも有効です。
節電で光熱費のコスト削減
オフィスの光熱費が気になるのであれば、節電に力を入れてみましょう。照明機器をLEDに替えたり、何年も交換しておらず高い電力を消耗している電化製品を新しいものに替えたりするだけでも、大きな節電効果を得られます。
社内で節電のためのルールを決めて、従業員に不要な電力は使わない意識を持たせる雰囲気づくりも重要です。具体的には、退室する際に電気やエアコンを消したり、エアコンを適切な温度設定にしたりするように注意喚起します。
ただし、無理な節電は従業員の負担にもなるため、可能な範囲で進めましょう。
まとめ
社内で発生するコストには、税金や人件費、設備費などさまざまな種類が挙げられます。これらのコストを効率良く削減すると、利益の増加や業務効率化、企業価値の向上が期待できます。
上手にコストを削減するためには、PDCAサイクルを取り入れて検証や改善を繰り返していくのが大切です。
また、アウトソーシングや会計ソフトの導入も有効な手段のひとつです。コスト削減で業務効率化や生産性向上を目指して導入を検討してみるのもよいでしょう。
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よくある質問
会社のコスト削減のためにどんなアイデアがあるか
コスト削減をするには、採用方法の見直しやアウトソーシングの活用、業務のペーパーレス化、節電といった方法が有効です。
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詳しくは記事内「コスト削減の具体的なアイデア」をご覧ください。
効率的なコスト削減の手順は
コストを効率良く削減するには、以下の手順に沿って進めるのがおすすめです。
- 会社にかかっているコストを把握する
- 削減できそうなコストを選出する
- コスト削減による効果を予想し優先度を決める
- 具体的な目標とプランを設定する
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詳しくは記事内「コスト削減の効果的な進め方」をご覧ください。