法人住民税とは、法人が事業所を置く地方自治体に納める地方税で、「都道府県民税」と「市町村民税」があります。法人住民税は法人税割または均等割という2つの方法で計算し、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に納税しなければなりません。
本記事では、法人住民税と法人税の違いや計算方法、免除されるケースなどについて詳しく解説します。
目次
法人住民税とは
法人住民税とは、法人が事業所を置く地方自治体に納める地方税で、「道府県民税」と「市町村民税」があります。
ただし、東京都は法人地方税ではなく法人都民税という独自の税制を適用しており、税率も異なります。
法人が支払う税金には法人税や法人事業税などがあり、法人住民税はその内のひとつです。
国税 | 法人税 |
---|---|
消費税 ※課税事業者のみ納付 | |
地方税 | 法人住民税 ・道府県民税 ・市町村民税 |
法人事業税 | |
地方消費税 ※課税事業者のみ納付 |
これらの法人にかかる税金について詳しく知りたい方は、別記事「法人にかかる税金の種類は?税率や計算方法を個人事業主と比較」をご覧ください。
出典:東京都主税局「法人事業税・法人都民税」
法人住民税の目的
法人住民税は、法人が所属している地域社会の整備を行うことを目的に課税されます。法人も個人と同様に、事業所を置いている地域のゴミの収集や道路交通などその地方のサービスを日常的に受けています。そのため、法人は地方自治体に対する会費のような役割として、法人住民税の支払いをする必要があります。
出典:総務省「法人住民税」
法人住民税と法人税の違い
法人住民税と似た税金に、法人税があります。
法人税は、個人でいう所得税と同等の役割を持つ国税で、法人の事業年度の課税所得額に応じて納税額が決定します。
対して法人住民税は、法人が事業所を置く各地方自治体に納める地方税で、法人税額や従業員数・資本金額によって納税額が決まります。
法人税について詳しく知りたい場合は、別記事「法人税とは?計算方法から仕組みまでわかりやすく解説」をご覧ください。
出典:国税庁「税の種類と分類」
法人住民税と法人事業税の違い
法人事業税は、法人住民税と同様の地方税に該当します。法人事業税は、法人がその地方で事業を行うにあたって各種行政サービスを利用することから、事業所が所在する都道府県が課税するものです。法人事業税の税率は資本金や事業内容によって異なります。
法人事業税について詳しく知りたい方は、別記事「法人事業税とは? 法人税の他に「所得」に課されるもう一つの税金の特徴について」をご覧ください。
出典:総務省「法人住民税・法人事業税」
法人住民税の計算方法
法人住民税は、会計年度の法人税額をもとに算出する「法人税割」と、従業員数や資本金をもとに算出する「均等割」を用いて計算します。
いずれの計算方法も、地域によって税率が異なる場合があります。税率の詳細は、地方自治体のホームページなどからご確認ください。
法人税割
法人税割とは、納税する法人税の金額をもとに法人住民税を計算する方法です。法人税割で法人住民税を計算する際は、以下の計算式を用います。
法人税額×法人税割税率=住民税法人税割
法人税割の税率には、国が定めている「標準税率」というものがあります。これは各地方公共団体で課すべき税率の目安のようなもので、各地方公共団体は原則自由に税率を定められます。2019年10月1日より、以下の標準税率が定められています。
都道府県民税の標準税率 | 市町村民税の標準税率 |
---|---|
1.0% | 6.0% |
出典:国税庁「地方法人税の税率の改正のお知らせ」
法人税割の税率は地方自治体が自由に決められますが、上限が以下のとおり定められています。この上限の税率を「制限税率」といいます。各地方自治体は、制限税率を超えた税率の設定はできません。
都道府県民税の標準税率 | 市町村民税の標準税率 |
---|---|
2.0% | 8.4% |
出典:国税庁「法人市民税法人税割額の税率改正の概要」
なお、東京23区は、特例として独自の都民税率を採用しています。以下が、2023年12月時点の法人都民税法人税割の税率です。
区分 | 不均一課税適用法人の税率 (標準税率) | 超過税率 |
---|---|---|
23区内に事務所等がある場合 | 7.0% (道府県民税相当分1.0+市町村民税相当分6.0) | 10.4% (道府県民税相当分2.0+市町村民税相当分8.4) |
市町村に事務所等がある場合 | 1.0% | 2.0% |
出典:東京都主税局「法人事業税・法人都民税」
東京都では、資本金1億円超または年間の法人税額1,000万円超の場合に超過税率が適用されます。これらの基準を満たさない場合は、標準税率が適用されます。
「超過税率」とは、先述した制限税率と同じように用いられるもので、標準税率よりも高い税率を課税する場合に設定できる税率です。
均等割
均等割とは、企業の従業員数や資本金の金額をもとに法人住民税を計算する方法です。均等割は税率ではなく、各地方自治体ごとに納税する金額が定められています。
また、均等割にも法人税割と同様に標準税率と制限税率がありますが、制限税率が定められているのは市町村民税のみで、道府県民税には制限税率がありません。そのため、各都道府県は均等割の金額を自由に設定できます。
なお、均等割の制限税率は各地方自治体の標準税率の1.2倍と定められています。
出典:総務省「税率についての課税自主権の拡大について」
2022年度における法人住民税の均等割は、総務省「令和4年度 法人住民税・法人事業税 税率一覧表」を確認してください。なお、均等割の区分と都道府県民税・市町村民税の額については下表のとおりです。
資本金等の額 | 都道府県民税均等割 | 市町村民税均等割 (従業者数50人超) | 市町村民税均等割 (従業者数50人以下) |
---|---|---|---|
1,000万円以下 | 2万円 | 12万円 | 5万円 |
1,000万円超1億円以下 | 5万円 | 15万円 | 13万円 |
1億円超10億円以下 | 13万円 | 40万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 54万円 | 175万円 | 41万円 |
50億円超 | 80万円 | 300万円 |
出典:総務省「法人住民税」
東京都の均等割については、東京都主税局「均等割額の計算に関する明細書(第6号様式別表4の3)記載の手引令」をご確認ください。
法人住民税の税率
法人住民税の税率は、各地方自治体によって異なります。たとえば、2022年度に北海道札幌市で法人税割を用いて計算した法人住民税を納付する場合は、道府県民税と市町村民税の税率は以下のようになります。
- 道府県民税:1.8%
- 市町村民税:8.2%
道府県民税は東京都と大阪府を除き基本的に1.8%ですが、市町村民税は各自治体が設定できます。市町村民税の税率については、総務省「令和4年度 法人住民税・法人事業税 税率一覧表」を確認してください。
法人住民税が免除されるケース
法人住民税は、法人税割と均等割で計算した合計額が課税される仕組みです。しかし、課税所得が赤字となった年度は、法人税割による法人住民税は免除されます。
ただし、均等割に関しては黒字・赤字にかかわらず、道府県民税2万円・市町村民税5万円の合計である最低7万円の課税がなされることが一般的です。また、均等割が免除される条件は各地方自治体によって異なるため、事前に事業所を置く自治体のホームページなどで条件を確認しましょう。
法人住民税の納付時期・期限
法人住民税の納付期限は、原則、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。
納税する法人税額は法人が自ら計算し、確定した納税額の申告を各地方自治体に行います。申告書は、道府県民税は道府県税事務所に、市町村民税は市町村役場にそれぞれ提出する必要があります。
東京都23区が法人住民税の納税先である場合は、法人都民税の申告を都税事務所に提出してください。
出典:東京都主税局「法人事業税・法人住民税」
法人住民税の納付方法
法人住民税は、自治体によって納付方法が定められています。以下では、基本的な納付方法である窓口納付と、eLTAXでの納付方法について解説します。詳細な納付方法については、各自治体のホームページなどをご確認ください。
各自治体の窓口で納付する
法人住民税を直接納付する場合は、道府県民税分は道府県税事務所、市町村民税分は市町村役場の窓口でそれぞれ手続きが行えます。東京都23区の場合は、都税事務所にて納付可能です。
なお、法人住民税は自身で計算した上で申告・納付をする必要があるため、申告書の作成なども窓口で手続きすると効率的です。ただし、書類様式や納付方法については各自治体で異なる場合があるため、自治体のホームページをご確認ください。
eLTAXを利用して納付する
eLTAXとは、地方税の電子申告・申請・届出・共通納税が行える、地方税ポータルシステムです。法人住民税は、eLTAXの共通納税を利用することで、電子納付できます。
共通納税では、ダイレクト納付・インターネットバンキング納付・クレジットカード納付・ATM納付が利用可能です。ただし、利用する金融機関によっては手数料が発生したり、領収書の発行ができなかったりするためご注意ください。
eLTAXでは、申告に必要な書類作成もできます。
出典:eLTAX「共通納税とは」
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まとめ
法人住民税とは、法人が事業所を置く各地方自治体に納める住民税のことです。法人住民税は、法人が所属している地域社会の整備を行うことを目的に課税されます。
法人住民税は、法人税割と均等割という計算方法を用いて納税額を算出します。法人税割は課税所得が赤字の事業年度には課されませんが、均等割は赤字・黒字にかかわらず課せられます。納税方法や税額については、事業所を置く地方自治体のホームページをご確認のうえ、正しく申告・納税を行いましょう。
よくある質問
法人住民税とは何ですか?
法人住民税とは、法人が納める税金の内のひとつで、事業所を置く地方自治体に対して納める地方税です。法人住民税は、道府県民税と市町村民税に分かれており、それぞれ計算して納税する必要があります。
詳しくは記事内「法人税とは」をご覧ください。
法人住民税はいくらですか?
法人住民税の納税額は、法人税割と均等割のどちらで算出するかによって変わります。また、各地方自治体によっても税率が異なるため、所属する自治体の税率や要件などを確認しましょう。
詳しくは記事内「法人住民税の計算方法」をご覧ください。