経理は、会社のお金を管理する業務を担う仕事であるため、難しいと言われることがあります。ミスが大きな損失を生んでしまう可能性がある責任の大きな仕事でもあるので、丁寧かつ性格に業務を行わなければなりません。
経理には、向いている性格的な特徴や専門性が活きる資格があり、人によっては適した仕事になるでしょう。
本記事では、経理が難しいと言われる理由や経理に向いている人の特徴、業務に役立つ資格などについて詳しく解説します。
目次
- 経理が難しいと言われる理由
- 一つのミスが大きなトラブルや損失につながる
- 他の仕事に比べて業務量が多い
- 業務を行うのに専門的な知識が必要
- 法改正にも正確に対応した業務が求められる
- 経理業務とは
- 日常的な業務
- 月次業務
- 年次業務
- 会計・財務・簿記との違い
- 経理業務が向いている人の特徴
- 数字の取り扱いが得意または慣れている人
- 几帳面で正確な仕事ができる人
- 年齢性別問わずコミュニケーションを取ることが好きな人
- 経理業務が向いていない人の特徴
- 大雑把な面がある人
- 数字を取り扱うのが苦手な人
- 難しい経理業務を効率化する解決策
- 会計・経理システムを導入する
- 業務フローを改めて見直してみる
- 経理業務を外注化する
- 経理業務に役立つ資格
- 簿記検定
- ビジネス会計検定
- 経理事務パスポート検定(PASS検定)
- 給与計算実務能力検定
- マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
- 経理の自動化で、業務時間を1/2以下に!日々の業務をもっとラクにする方法
- まとめ
- よくある質問
経理が難しいと言われる理由
経理の仕事は、会社のお金の管理を行う経営に必要不可欠な仕事で、以下の理由から難しいと言われることがあります。
経理が難しいと言われる理由
- 一つのミスが大きなトラブルや損失につながる
- 他の仕事に比べて業務量が多い
- 業務を行うのに専門的な知識が必要
- 法改正にも正確に対応した業務が求められる
経理が難しいと言われるきっかけとも言えるよくある失敗について、別記事「経理でよくある失敗」にて紹介しています。あわせてご確認ください。
一つのミスが大きなトラブルや損失につながる
経理は、会社のお金を管理する仕事であることから、ミスが許されない立場です。入金漏れや集計の誤りなどミスを万が一起こしてしまうと、損失を生んでしまったり、取引先とのトラブルを引き起こしたりしてしまいます。
常に正確かつ丁寧な仕事が求められるため、経理が難しいとされることがあります。
他の仕事に比べて業務量が多い
経理は、入出金や給与支払い、決算など多くの業務を抱える仕事です。仕事が減る時期は少なく、一年を通してさまざまな業務をこなさなければなりません。
とくに決算や年末調整がある年次業務を行う時期は、忙しくなってしまいます。経理の仕事は数多くの業務がある中でミスもできないため、難しいと言われています。
業務を行うのに専門的な知識が必要
経理業務を行うには、会計や簿記の知識に加え、会社法や税法など法律の知識が必要です。事前に何も知らない状態で仕事に就いてしまうと、何もかもがわからない状態でスムーズに業務が行えません。
そのため、経理を行うには事前に資格を取ったり、最低限の勉強をしたりする準備が必要です。
法改正にも正確に対応した業務が求められる
事前に専門的な知識を身につけて経理の仕事を行っていても、会社法や税法の法改正が起これば、すぐに対応しなければなりません。経理が行う確定申告や決算書の作成、請求書の管理などは、法律がかかわる業務です。
直近ではインボイス制度の開始や電子帳簿保存法の改正があり、施行された直後から経理にはすぐに対応が求められました。そのため、法改正が起きたら経理担当者はすぐに改正内容を頭に入れ、対応した業務を適切に行う必要があります。
経理業務とは
経理業務とは、会社のお金の動きを管理する仕事です。会社経営において重要な入出金管理や決算対応など、さまざまな業務を経理は担当します。
経理はどの企業にも欠かせないポジションであり、従業員を抱える多くの会社では経理担当を配置しています。小規模の会社では、代表自身が経理を行ったり税理士や専門会社に外注することもあるでしょう。
また、経理業務は日常的な業務・月次業務・年次業務の3つに分けられ、行う業務は多岐にわたります。
日常的な業務
経理が行う日常的な業務は、主に以下のとおりです。
業務 | 業務の詳細 |
---|---|
入出金管理 | 日々のお金の流れを正確に記録してわかりやすく管理する |
仕訳 | 日々の取引内容や発生した経費などを伝票や帳簿に記載する |
経費精算 | 会社で発生した経費の内容を従業員や役員から確認し精算する |
集計 | 決算書の作成などに用いる売上の集計や費用の集計を行う |
その他雑務 | 取引先とのコミュニケーションや書類整理など |
経理は、基本的に会社のお金が動くすべて取引に関与し、社内はもちろん取引先との連携も必要です。取引がない場合でも、決算の準備のためにデータ集計を行ったり、年末調整のために従業員の情報を整理したりと、常に何かしらの仕事を行います。
月次業務
経理の月次業務とは、主に月末・月初に行う業務です。具体的には、以下のようなものがあります。
業務 | 業務の詳細 |
---|---|
各種支払い | 社会保険料や年金、給料などの支払いを行う |
買掛金の支払い | 取引先から請求書を受領して支払いを行う |
売掛金の回収 | 請求書を作成して取引先へ送付し、入金を手配する |
請求書や領収書の作成・管理 | 作成・受領した請求書の管理や経費の証明として使用する領収書の作成・管理を行う |
月次決算 | 財務状況の把握や年次決算の業務負担を減らすために、売上や経費を精算し会計締めを行う |
在庫管理 | 在庫を抱える製造業や飲食業などを営む会社の場合は、月末に在庫のチェック(棚卸し)を行うことが多い |
月次業務は会社のお金が動けば動くほど業務量が多くなり、コミュニケーションコストも増えます。入出金だけではなく書類作成やデータ集計も行う必要があるため、経理にとっては一般的に忙しい時期です。
年次業務
経理の年次業務とは各年度に1度行う業務で、年次業務を行う時期の経理担当者は、とくに忙しくなります。主な業務としては、以下のようなものがあります。
業務 | 業務の詳細 |
---|---|
年次決算 | 決算月が近づいたら決算のための書類作成や売上・資産・負債のまとめ等を行う |
年末調整 | 従業員ごとの給与や所得控除等のデータを集め、年末調整に必要な書類作成・手続きを行う |
確定申告 | 法人税や消費税の確定申告のための書類作成・納付を行う |
減価償却の申告 | 会社が所有している償却資産を調査し減価償却の申告を行う |
監査への対応 | 内部監査や外部監査人が入ったときの対応を行う |
予算選定 | 次年度の経営に向けて会社のお金を適切に管理し、適切な予算設定を行う |
年次業務は早めに準備を進めるのが重要で、とくに決算や年末調整はギリギリになると負担が大きくなってしまいます。当然ながら並行して日常的な業務・月次業務を行う必要もあるため、年次業務は余裕を持って行うようにしましょう。
会計・財務・簿記との違い
経理に似た言葉として会計・財務・簿記がありますが、以下のようにそれぞれ異なった意味合いを持ちます。
言葉 | 意味 |
---|---|
経理 | 会社のお金の流れを管理する業務 |
会計 | 企業の経営成績や財政状況を記録・管理し、社内外の利害関係者へ報告する業務 |
財務 | 金融機関との融資交渉などを含む資金調達や予算管理を担う業務 |
簿記 | 日常的に発生する企業の取引やお金の流れなどを、一定の決まりに従って記録する「帳簿記入」という作業の略称 ※業務の名称とは異なる |
このように細かな意味合いは異なりますが、会社のお金に関わる業務を担うという点においては共通です。
経理業務が向いている人の特徴
難しいと言われる経理業務ですが、以下の特徴に当てはまる場合は経理に向いているといえます。
経理業務が向いている人の特徴
- 数字の取り扱いが得意または慣れている人
- 几帳面で正確な仕事ができる人
- 年齢性別問わずコミュニケーションを取ることが好きな人
数字の取り扱いが得意または慣れている人
経理は毎日数字と向き合い、会社のお金を管理する仕事です。そのため、計算が得意な人や数字の取り扱いに慣れている人は、経理に向いているといえます。
また、会社経営に欠かせない貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成する役割も担うので、データの分析や処理が好きな人にとっても、経理は向いている仕事です。
几帳面で正確な仕事ができる人
経理が行う請求書管理や経費精算などの業務では、ミスのない正確な仕事が求められます。そのため、いつでも確認を怠らず丁寧な仕事ができる几帳面な性格をしている人は、経理に向いているでしょう。
また、確実な仕事を行える経理担当者は、会社から信頼されやすいメリットもあります。
年齢性別問わずコミュニケーションを取ることが好きな人
経理は、年末調整や請求書の送付・受領など、社内外問わず多くの人とのコミュニケーションが必要になる仕事です。年齢や性別も関係なく多くの人と関わる立場なので、コミュニケーションが得意な人ほどスムーズな業務を行えるでしょう。
人によってはコミュニケーションがストレスになる場合もあるため、経理にとってコミュニケーションが好きかどうかは重要なポイントです。
経理業務が向いていない人の特徴
経理に向いている人がいる一方で、以下に当てはまる人は経理に不向きといえます。
経理業務が向いていない人の特徴
- 大雑把な面がある人
- 数字を取り扱うのが苦手な人
大雑把な面がある人
経理は会社のお金を取り扱う責任の大きな仕事を行うため、丁寧に確認することが苦手で大雑把なタイプの人は向いていません。些細なミスを起こすだけでも経理担当者としての信頼が損なわれてしまうため、社内メンバーから仕事を任せてもらえないという事態が発生する可能性があります。
ただし、日頃から整理整頓が得意で、デスクトップのファイルの整理ができ、細かいミスにも気がつく人であれば、問題なく経理の仕事ができるといえます。
数字を取り扱うのが苦手な人
数字に慣れていない人は、お金の管理やデータの集計・管理を行う経理業務には向いていません。とくに財務諸表の作成を行う場合は、ミスをしてしまうと正確なデータを算出できなくなってしまいます。
そのため、数字の取り扱いに慣れていない人にとって、経理業務はストレスを感じてしまうでしょう。
難しい経理業務を効率化する解決策
経理業務が難しいと感じて効率化したいとき、解決法としてあげられるのは以下のとおりです。
難しい経理業務を効率化する解決策
- 会計・経理システムを導入する
- 業務フローを改めて見直してみる
- 経理業務を外注化する
会計・経理システムを導入する
経理業務は、会計・経理システムを導入することで自動化し、効率的に行えるようになります。会社がシステムを導入していなければ、解決策として優先的に検討するのがおすすめです。
会計・経理システムは請求書管理から債権管理まで一元化できるため、日々の業務がより効率的に行えるでしょう。すぐにシステムの導入ができないという場合には、まずはエクセル等のツールを導入して紙による業務を脱却してみてください。
経理システムの導入メリットや選定基準については、別記事「経理システムとは?会計システムとの違いや機能、導入するメリットを解説」にて紹介しています。あわせてご確認ください。
業務フローを改めて見直してみる
日々行う業務フローを洗い出して見直すことで、効率化できる部分が見つかるかもしれません。たとえば、現金の扱いが多い場合は、キャッシュレス化を進めることで精算業務が簡略できます。
また、経理業務にかかわる担当者が複数人いる場合は、業務ごとや取引先ごとに割り振るなどすればスムーズになるでしょう。まずはできるだけ細かく業務を分けて、改善できる点がないかどうか探してみてください。
経理業務の詳しい効率方法については、別記事「経理業務を効率化するためにできること」にて紹介しています。あわせてご確認ください。
経理業務を外注化する
どうしても社内で経理業務の効率化ができないという場合には、専門会社や税理士などに外注する方法もあります。外注費用はかかりますが、経理に慣れている人が業務を行うため、ミスが起こる心配も少ないでしょう。
また、経理初心者を雇って業務が進まないケースも考えられるため、結果的に費用対効果がよくなる期待もできます。ただし、会社の機密情報や個人情報等の取り扱いには十分に配慮する必要があります。
経理代行を活用するメリットや選定基準については、別記事「経理代行とは?経理業務をアウトソーシングするメリット・デメリットを解説」にて紹介しています。あわせてご確認ください。
経理業務に役立つ資格
経理業務を効率的に行うためには、資格の勉強をする方法もおすすめです。経理に役立つ主な資格としては、以下5つがあげられます。
経理業務に役立つ資格
- 簿記検定
- ビジネス会計検定
- 経理事務パスポート検定(PASS検定)
- 給与計算実務能力検定
- マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
経理の仕事にはじめて就く人におすすめの勉強法については、別記事「【経理初心者】おすすめの勉強法は?求められる知識やスキルを確認!」をご確認ください。
簿記検定
簿記検定とは、会計帳簿のつけ方や帳簿の内容を理解する能力が身についているかを示す資格です。簿記検定は、主催者別に日商簿記・全経簿記・全商簿記の3種類があります。
なかでも知名度が高く就職や転職で有利になりやすいのは日商簿記で、ネットでも簡単に受験できることが特徴です。
出典:東京商工会議所「日商簿記検定試験」
ビジネス会計検定
ビジネス会計検定とは、財務諸表に関する知識や分析力を証明できる資格です。ビジネス会計検定の勉強をすることで、財務諸表を分析して自社のお金にかかわる状況を正確に把握できるようになります。
経理担当者が財務諸表に関する知識を保有していると、経営層からの信頼も得られやすいでしょう。
出典:ビジネス会計検定
経理事務パスポート検定(PASS検定)
経理事務パスポート検定(PASS検定)とは、経理事務作業を担うスタッフに求められる経理知識を証明する資格です。経理事務の現場に必要なスキル重視の検定なので、実際の業務に活かしやすい特徴があります。
3段階のランクに分かれていて徐々にステップアップできる仕組みのため、経理初心者が独学で勉強するのにおすすめです。
出典:日本CFO協会「経理事務パスポート検定講座」
給与計算実務能力検定
給与計算実務能力検定は、給与計算に関する実務能力を測る検定試験です。資格を取得するには、社会保険や税の仕組み、労働法令などに関する幅広い知識を身につけなければなりません。
給与計算に関するコンプライアンスのについての知識も身につく試験であるため、資格を保有しておくと会社では重宝される人材になれるでしょう。
出典:一般社団法人実務能力開発支援協会「給与計算実務能力検定試験とは」
マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)とは、Word・Excel・PowerPointを中心としたアプリケーションを効果的に使えることが証明できる資格試験です。経理業務ではとくにExcelを使うケースが多くなるため、取得しておくと会社からの信頼が得やすいでしょう。
また、マイクロソフトアプリケーションの能力は経理だけではなくあらゆる業種に活用できるので、取得しておいて損はありません。
出典:マイクロオフィススペシャリスト(MOS)
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まとめ
経理が難しいと言われるのは、会社のお金を管理する責任が伴った立場であることや、会計や簿記などの専門知識が必要なことが主な理由です。初心者には難しい仕事かもしれませんが、簿記検定やビジネス会計検定の資格勉強などにより、経理業務に慣れやすくなります。
また、性格が几帳面な人やコミュニケーションを取るのが好きな人は経理に向いている傾向があり、会社で活躍できるでしょう。どうしても経理が難しいという場合は、会計・経理システムを導入して効率よく業務を進めるのがおすすめです。
よくある質問
経理の仕事は大変ですか?
経理の仕事は常に多くの業務を抱えているため、仕事量が多いことから大変だと感じることがあります。また、お金を扱う立場上、責任が大きくなることも大変な理由の一つです。詳しくは記事内「経理が難しいと言われる理由」をご覧ください。
経理はどういう人に向いていますか?
経理は、計算が得意な人や几帳面な性格をしている人に向いています。また、コミュニケーションを取るのが得意な人も、経理への適正があるタイプです。詳しくは記事内「経理業務が向いている人の特徴」をご覧ください。