1948年、電子部品をはじめとしたエレクトロニクス製品を扱う商社として愛知県名古屋市で創業した株式会社タイセイ。自動車や産業機器の電源供給、通信を担うワイヤーハーネスなどの製造メーカーとしても事業を拡大し、現在はアジアを中心に海外4カ国にも拠点を展開しています。
同社グループの従業員数は2,150名(2019年11月現在)。国内の商社部門と製造部門に加え、海外業務が急増し、バックオフィス業務の改善が課題でした。
これまでバックオフィス業務を紙やExcelで管 理していた同社が、freeeを導入するまでに社内でどのような働きかけがあったのか。総務部の松前 幸司さんとfreee導入プロジェクトリーダーの柴田由希乃さんにお話を伺いました。
- 【課題】
- 紙・エクセルでの業務が複雑かつ大量にあり、法改正や税制への対応も課題だった
- バックオフィス業務を効率化し、新事業への人員投入を行いたかった
- 【導入の決め手】
- 法改正に合わせて自動でアップデートが行われる
- クラウドであること、銀行口座の連携が便利
- 【導入後の効果】
- データの誤入力が減り、人員・作業時間の削減を実現
- 会計の数字をリアルタイムで把握できるようになった
- ペーパーレス化と給与計算を内製化に成功し、作業時間を3分の2に削減
創立100周年に向けて業務効率化とバックオフィスの改革が必要
――創業71年の歴史の中で、バックオフィス業務に関しても多くの経験と実績の積み重ねがあったかと思います。ま ずは、freee導入に至るまでに経緯を教えてください。
松前 昨年70周年を迎え、今後は100周年に向けて、企業としてさらに時代に合わせた変化が求められると考えています。そのためにも、バックオフィス業務の効率化を図り、新事業や新たな領域へ人員を投入していかなければならない。より複雑化する法改正や税制への対応に加え、海外事業所に関する会計などのチェック作業が増え、必然的にバックオフィス業務の改善が課題として挙がりました。できればバックオフィスを効率化して、トップラインの部署に人員を増やしたいというのがfreee会計導入のきっかけでした。
――これまでのバックオフィス業務はどのように行なっていたのですか?
柴田 freee会計導入前は、別の財務会計ソフトを使用していました。まず担当者がExcelで集計表を入力し、紙に印刷。それを別の複数の担当者が確認、その後に上長のチェッ クという管理体制です。1つの業務に関わる人数が多かったですね。
松前 私は中途採用で入社して今年で4年目。入社した当初に感じたのは「非常に業務が複雑化していた」ということです。会計業務を慎重にやっていくことは大切ですが、もっと効率よく業務ができる部分だと感じました。
人事事務についても課題がありました。これまでタイムカードは紙でチェックをして、残業時間をエクセルに入力して本社に送り、それを給与システムに入力した上で手計算をしていました。さらに、給与システムに再度データを送り、給料明細書を給与システムから出力して、それを給料袋に手で入れて社内メール便に乗せていました。海外現地法人の駐在員もいるので、海外にも送っていました。
――実際に現場で働く柴田さんは、社内の業務フローをどのように感じていましたか?
柴田 私は新卒入社してからずっとここで働いているので、他社の業務フローを知りません。1つの業務に対して携わる人が少し多いのではと感じていましたが、これまでのやり方が当たり前だと思っていたので、それを「変えよう」と最初に言われたときは戸惑いました。
松前 ちょうどそれまで使用していた財務会計システムの更新のタイミングで、会計ソフトの入れ替えについて考えていた時期でした。そこに、freeeの営業担当者からのアプローチがあり、他社ソフトと比較検討した結果、導入の話が具体的に進みました。
魅力を感じたのは、クラウドであることと銀行口座の連携が便利な点です。最終的にfreeeを導入することになった決め手は、法改正等への対応です。今回の消費税の増税についても、ソフトの入れ替えなど対応が必要になってきますが、クラウド上でアップデートされていくfreeeにはその心配がないため、魅力に感じました。
データの可視化により時間的コストの大幅削減に成功
――freee導入プロジェクトについて、具体的に教えてください。
松前 2019年1月からプロジェクトが社内で立ち上がり、現在はfreee会計とfreee人事労務を利用しています。柴田をプロジェクトリーダーに任命し、私がサポートする形で進めました。
柴田 プロジェクトリーダーに任命されたときは「なぜ私が?」と、驚きと不安でいっぱいでした。
松前 柴田をプロジェクトリーダーに任命した理由には、実務の社員の中で、彼女が中堅だったことが挙げられます。先輩からいろいろと教えてもらいやすく、後輩も 相談しやすいので、社内の多くの人を巻き込んでくれることを期待しました。
柴田 最初はfreeeの基本的な使い方もよく分からない状態で、freeeの担当の方に何度も相談させていただきました。一番大変だったのは、効率的な業務フローを構築するためにどのような運用にするか考えること。今までのフローを整理し、どこを残してどこを変えていくべきか、社内ミーティングで課題を取りまとめ、freeeの方と打ち合わせを何度も重ねました。こちらの要望に対して、freeeの担当者さんから「こう運用すれば解決できるのでは?」という提案をいくつかいただいて、それを持ち帰ってまた社内でミーティング。大変でしたが、これまでのやり方を踏襲する部分は踏襲しつつ、freeeを上手く活用するフローを何とか無事に構築することができて安心しました。
松前 当初は4ヶ月で実装する予定が6ヶ月かかってしまいましたが、柴田の頑張りのおかげで無事に導入を完了して運用を始めることができました。
柴田 やはり、最初はこれまでのソフトと並行してやらないと不安で、トラブルがあったらいつでも戻れるようにと思っていましたが、1ヶ月2ヶ月とやっていくうちにfreeeの操作や新しい業務に慣れて、トラブルもなく安心して使うことができるようになりました。
会計システムマップ
人事労務システムマップ
――実際にfreee会計を使ってみて感じたメリットについて教えてください。
柴田 freee会計は担当者が入力して、承認権限がある方が承認をしたあとは変更できません。権利者が絞られたことでデータの誤入力が減ったり、人員や時間の削減に繋がったりして、紙で作業していたころと比べてとても便利になりました。
松前 これまでは、ある程度まとめて入力していたので、会計の数字をチェックできるのは、翌月の10日以降と時差がありました。freee会計の導入後は毎日入力しているため、経費や預金残高などが可視化されて、間違っていたらその場ですぐに修正できる。非常に効率化できたと感じています。口座との連携ができるのも便利ですね。
――freee人事労務の導入効果で実感できた部分は?
松前 freee人事労務を導入することによって、関連する作業時間が3分の2に削減されました。紙が大量に発生する作業をペーパーレス化できたこと、給与計算を内製化することができたことが業務時間削減に大きく寄与しています。また、今まで給与と会計が別だったのが、同じシステムになったことで、管理する側からすると業務が可視化され、業務の検証がしやすくなったと思います 。上席に見せる資料は今まで自分たちが集計して作っていたのですが、freee導入後はリンクを送るだけで会社の数字をすぐに共有できるので、とても助かっています。
最大の効果は、社員の成長
――柴田さんのサポートをしていた松前さんから見て、プロジェクトの進行についてはどのように感じていましたか。
松前 柴田が前向きにどんどん進めてくれて、社員全員が協力的だったのは本当によかったと思います。進めていく人の姿勢は、周りに大きな影響を与えるな、と。これまでは、自分の席でパソコンに向かって個人で仕事を進める傾向が強かったんです。でもこのプロジェクトを通して、同僚と相談している場面をよく見かけるようになり、コミュニケーションが活性化していると思いました。周りをよく見てくれるようになった柴田に、みんなも応えてくれているように感じています。新卒から実務を行ってきた社員が新しいプロジェクトの先頭に立ち、社内外と協力しながらやり切ってくれたことは大きな価値があったと思います。今回のプロジェクトの最大の成 果は、柴田が成長してくれたことですね。
柴田 freeeの導入を進めていく中で、自分からオーナーシップを持って社内外のミーティングをセッティングし、すり合わせながら運用のフローを決めていくのは今までにない経験で、責任重大でした。運用がなかなか決まらず試行錯誤をしていたときにはめげそうになりましたが、freeeの担当の方の協力で無事に解決できました。
――バックオフィス業務の効率化だけでなく、人の成長や社内コミュニケーションの活性化の効果もあったのですね。今後、バックオフィスをさらに良くしていくために、どのようなことに取り組んでいきたいかお聞かせください。
柴田 まだまだ現状がベストではないと考えているので、freeeからリリースされる新しい機能をキャッチアップしてより効率的に業務ができるように改善していきたいと思います。
個人的な思いとしては、導入していくときは大変でしたが、社内外で強力なサポートをいただけて本当に助かりました。今までよりも仕事の充実感を得られるようになった気がします。今回のfreee導入のプロジェクトリーダーを務められたのは貴重な経験だったと思っています。
freeeという新しいシステムを導入して業務が効率化されてきたので、次はより効率化できるような体制づくりを目指しつつ、社員が働きやすい環境づくりにも注力したいです。
(取材・執筆:小澤 志穂 編集:阿部 綾奈/ノオト)